★14−2★
翌朝。大帝国劇場。クマができ、ふらふらで廊下を歩くかえで。
(〜〜やばい…。気になって一睡もできなかった…)
壁に寄りかかってキスしている大神とあやめ。転ぶかえで。
「〜〜あ…っ、朝っぱらから何やってんのよ!?しかもこんな廊下で…!!」
「だって、これが私達流の『おはよう』ですもの」
「ね〜!」
再びキスする大神とあやめ。普通に通っていく三人娘。
「あ、大神さん、副司令、おはようございま〜す!」
「今日もラブラブですねぇ〜!」
(〜〜な、何…!?何であれ見て普通でいられるわけ…!?)
離れ、大神の唇に人差し指を当てるあやめ。
「ふふっ、朝はこれでおしまい!」
「え〜?もうちょっとこうしてたいな…」
「ふふっ、ダーメ。これからお仕事ですもの」
「……むぅ…。わかりました…」
「よしよし。終わったらまたしてあげるから、良い子で待っててね」
「はいっ!」
(〜〜しかも半分ペット扱いだし…!?)
「――子犬みたいで可愛いですよねぇ、大神さん」
背後にいるさくらにビビるかえで。
「〜〜あ、あんた、いつの間に…!?」
「これから皆でバレンタインチョコ作るんで、その準備を」
「バレンタイン…?」
「はい!かえでさんもいかがですか?作り方、お教えしますよ」
黙ってさくらを見つめるかえで。
★ ★
調理室。花組と楽しくチョコを作るあやめ。見ているかえで。
(〜〜仕事ってこのことかよ…)
板チョコを取って見るかえで。奪い返し、睨むマリア。
「…勝手に触らないで下さい」
「…別に食いやしないわよ」
「あやめお姉ちゃん、次はどうするの?」
「湯せんでチョコを溶かすのよ。火傷するといけないから、一緒にやりましょうか」
「わ〜い!」
「なぁなぁ、隠し味にゴーヤってどうかな?」
「まったく…、何でも入れりゃいいってもんじゃありませんのよ?」
「けっ、おめぇの毒入りチョコよりましだね!」
「〜〜これはブランデーですわっ!!」
「も〜、喧嘩するなら外でしいや!ほこり入るやろぉ!?」
笑うさくら達。仲良く作るあやめと花組に、ふてくされるかえで。かえでのにチョコのかかったいちごを差し出すさくら。
「味見して頂けますか?うまくできてるか不安で…」
照れつつ、黙って食べるかえで。
「おいしいですか?」
「…まぁ、いいんじゃない?」
「あはっ、やったぁ!」
ボウルを持ってきて、かえでにぶつかるすみれ。
「そこにいられると邪魔なんですけど?作らないなら、外に出て下さる?」
「下等な私達と一緒に作るなんて嫌でしょう?」
「すみれさん…!マリアさんもそんな言い方…!」
「こっちだってあんた達の面倒なんかお断りよ」
「〜〜かえで…!」
黙るかえで。ため息をつくあやめ。
「…もうよしましょう、せっかく楽しく作ってるんですもの…。――かえでもこっち来てやりましょうよ、ね?」
「えぇ〜っ!?やだぁ〜」
「そんなこと言わないで、アイリス。かえでさんも私達の仲間なんだから」
「仲間?ふっ、馬鹿馬鹿しい」
席を立つかえで。
「あ、かえでさん…!」
「さくら、あなた、何か勘違いしてるんじゃない?私達、帝国華撃団は軍が誇る戦闘部隊であって、仲良しクラブじゃないの。そんなくだらないことしてる暇があるなら、スクワットや腕立て伏せで己を鍛えるべきだわ」
「あ〜あ、これだからお堅い軍人さんはよぉ」
「〜〜でも、私は…」
「かえで、これだけはわかって。人は鍛錬だけでは強くなれないのよ」
「…ふん、勝手に言ってなさいよ」
出ていくかえで。落ち込むさくら。廊下を歩くかえで。テラスの窓に映る自分の顔を見つめる。
『――あなたの笑顔、とても素敵でした』
『――さっきのあなたを知ったら、皆、喜んで迎えてくれますよ』
(……馬鹿じゃないの。そんなことしたってどうせ…)
つんとし、早歩きで歩いていくかえで。
★ ★
三越。レストランのショーウインドゥにへばりつく新次郎。
「うわぁ…!見て下さい、母さん!洋食の専門店がありますよ!」
味見しまくる双葉。
「――お!何これ、バカウマだなぁ!」
「欧州から取り寄せたイベリコ豚ですよ」
「イベ…?何かよくわからんが、気に入ったぞ!おばちゃん、三袋くれ!」
「ありがとうございます〜!」
「えーっと、これはうちので、これは一郎と…」
「〜〜母さんっ!そんなに買ってどうするんですか!?」
「今日ぐらいいいだろう?せっかくの帝都旅行なんだぞ?」
「でも、このペースで買ってたら、せっかくの一郎叔父からの仕送りが…」
「――あ、わかったぞ!母が帝都の名産ばかり見て、構ってやれないのが気に入らないのだな?」
「…え?」
「んもう、可愛い奴め!安心しろ、母はいつも新君が一番だからな」
新次郎を抱きしめる双葉。じろじろ見る周りの人々。
「〜〜うわ〜ん!!離して下さい、母さん!!皆さん、見てますよぉ!?」
「恥ずかしがることないだろう?もう、本当に可愛いなぁ、新君はほら、行くぞ。ずっと手を繋いでてやるからな」
「〜〜で、ですから、僕はもう15でして…」
チョコ売り場の人だかりを見つける双葉。
「お、何だ何だ?――おぉ、これがチョコレートというものか…!」
「初めて見ましたね。確かかのナポレオン軍がシベリアを抜ける際に必需品にしたという――」
ぎょっとなる新次郎。加山がかすみからチョコを食べさせてもらっている。
「う〜ん!やっぱり、かすみっちの作ったチョコは最高だなぁ〜!」
「〜〜いっ、言っておきますけど、私からもらったことは秘密にしておいて下さいね!?また由里達にからかわれちゃいますから…」
「わかったよ。かすみっちがこうして俺の為に作ってくれただけで満足だからさ」
「加山さん…」
「あのぉ…、あなたは確か…?」
「ん?おぉ!お前、新次郎だろ?大神の甥っ子の!」
「はい!加山さんですよね?お久しぶりです!」
「いやぁ、大きくなったなぁ。ん?でも、何でここに――」
「フン、いっちょまえに彼女ができたか」
仁王立ちで腕を組み、笑って加山を見る双葉。青ざめる加山とかすみ。
★ ★
大神の部屋。洗濯物を畳むあやめ。中庭。ぬいぐるみで遊ぶアイリスに近づく大型の野良犬。気づくアイリス。チョコの箱を取り、微笑むあやめ。
「西洋のお菓子なんて初めて作ったけど、喜んでくれるかしら…」
「〜〜きゃああ〜っ!!」
窓を覗くあやめ。アイリスが犬に吠えられている。
「あ〜ん、助けて〜!!」
「アイリス…!!」
木刀を持って飛び降り、構えるあやめ。
「あやめお姉ちゃん…!〜〜うわ〜ん!!怖いよぉ〜!!」
「大丈夫よ。すぐに追い払ってあげるわね…!」
襲いかかる犬を薙ぎ払うあやめ。ビビる犬。
「はあああっ!!」
寸止めで威嚇するあやめ。逃げる犬。
「やったぁ!ありがとう、あやめお姉ちゃ――」
「――逃がすか…」
怖いあやめの顔に驚くアイリス。追いかけ、木刀で犬を殴り続けるあやめ。
「お、お姉ちゃん、もう大丈夫だよ!これ以上やったら死んじゃうよ!」
笑いながら犬を殴るあやめ。怯えるアイリス。見つけるマリア。
「あやめさん…!?」
空に向かって銃を撃つマリア。我に返るあやめ。重傷の犬。
「何があったんですか…!?」
血だらけの木刀と犬にショックなあやめ。木刀を落とす。
「〜〜あ…あぁ…、わ、私…」
「あやめさん…?」
犬をいたわるマリアにしがみつき、震えるアイリス。黙るマリア。
★ ★
屋根裏部屋。犬を手当てするマリア。包帯を巻かれ、眠る犬。
「――これで大丈夫よ。傷が治ったら、放してあげましょう」
「うん。ありがとう、マリア…」
震えて泣くアイリスの頭をなでるマリア。
「一体何があったの?」
「ぐすっ、あのね…、アイリスがわんちゃんに襲われてるとこをあやめお姉ちゃんが助けてくれたの…。〜〜でも…、ひっく…」
(……確かにここまでの怪我は、普通の人間では負わせられないわ…)
「あんなあやめお姉ちゃん、初めて見た…。お姉ちゃんがお姉ちゃんじゃないような気がして…、〜〜すごく怖かった…」
「…きっと、アイリスを守ろうと必死だったのよ」
「そうかな…?でも、あの時のあやめお姉ちゃんの心、真っ暗だった…」
黙るマリア。
★ ★
大神の部屋にノックして入るマリア。ベッドに座って落ち込むあやめ。
「…気分はいかがですか?」
「だいぶ落ち着いたわ…。ありがとう」
「そうですか。何かあったらおっしゃって下さいね」
「――私…」
出ていく足を止めるマリア。
「どうしちゃったのかしら…?よく覚えてないの、あの犬を殴ったこと…。アイリスを助けに中庭に飛び降りたところまでは覚えてるんだけど…。〜〜何てことしちゃったのかしら…。アイリス、怯えてたでしょう?」
「……大丈夫です。儀式が終われば、きっと――」
放送。
「藤枝副支配人、藤枝副支配人、お客様がお見えです。至急、支配人室までお越し下さい」
「――!行きましょう、あやめさん!もしかして…!」
★ ★
銀座の街。買い物袋を抱えて歩く大神。リストを見る。
「えーと、野菜にお菓子にお茶に…、――とりあえず揃ったかな。……はぁ、俺の仕事って本当こんなんばっかだよなぁ…」
キネマトロンが鳴る。出る大神。
「もしもし?――あ、マリアか」
『隊長、すぐ戻ってらして下さい』
「何かあったのか?」
『ともかく早く帰ってきて下さい!皆さん、お待ちですから』
通信を切るマリア。
「何だろう…?とにかく急いだ方がよさそうだな」
「〜〜きゃああーっ!!ひったくりよぉーっ!!」
振り返る大神。バッグを持った犯人が逃げてくる。
「逃がすか…!!」
構える大神。先に飛び出し、背負い投げして捕まえる双葉。沸く観衆。
「ふん、口ほどにもないな!」
「わぁ、母さん、格好良いです〜!!」
「〜〜ふ、双葉姉さん!!新次郎!!」
「よう、一郎!」
「〜〜お、大神ぃ〜…」
あざだらけで倒れる加山。苦笑しながら、会釈するかすみ。
「〜〜か、加山…!?」
★ ★
「――そうか。4月から新次郎も海軍士官学校の訓練生か。早いなぁ」
「えへへっ、一郎叔父のような立派な軍人になるのが僕の夢なんです!」
「そ、そうなのか?いやぁ、何か照れるな…」
「はは、表向きはただのもぎりだけどな」
「〜〜おっ、お前こそ、はたから見たら流れ者だろ!?」
「まったく、久しぶりに手合わせしてやったら、ますます弱っちくなってるんだから。どうせ今もイイ女見つけちゃ言い寄って玉砕してるんだろ?」
「OH!〜〜そんなひどいですよぉ、双葉お姉様ぁ〜」
「ははは…!今でも忘れられないよな、士官学校の入学式」
回想。大神の軍服の胸に花をつけてやる双葉。周りでくすくす笑う生徒達。
『〜〜ね、姉さん、いいって!自分でやるから…』
『照れることないだろ?――よし、オッケ!ほら、行ってきな!何事も最初が肝心だからね』
『は〜い…』
舞い落ちる桜の花と共に薔薇が落ちてくる。
『…薔薇?』
見上げ、ぎょっとなる大神。枝にぶら下がり、ギターを弾いて歌う加山。
『春はいいなぁ〜。こんな素敵な女性と巡り会える季節、罪作りだなぁ〜』
着地し、双葉に薔薇を差し出す加山。
『そこの美しい姫、あなたをこの私めに守らせて下さい』
『…この私を守るだぁ?』
『はい!この加山雄一、その可憐なお姿をいつまでも――』
木刀で地面を叩く双葉。ビビる加山。
『貴様ごとき小僧がこの私を守れる程腕が立つと…?面白い!剣をとれ!!』
『え…?〜〜えぇ〜っ!?』
「――その後、加山の奴こてんぱんにされてさ。入学初日から医務室直行だったんだよな。くく…!それにしても、あの時の加山の顔ときたら…!」
「〜〜ひ、ひどいな、大神ぃ。俺、結構マジで――あいてててっ!?」
怒り、加山の腕をつねるかすみ。
「……あなたって、昔からそういう方なんですね…」
「あれ?もしかして、ヤキモチ?あぁ、カンゲキだなぁ〜!」
「〜〜ちっ、違いますよ…!呆れただけですっ!!」
「けっ、あんたみたいなやさ男を好きになってくれたその娘を大事にするんだね!」
「〜〜ちっ、違います!私と加山さんはそんな仲では…!!」
「これからなるんだよな〜、かすみっち!」
「〜〜んもう、加山さんは黙ってて下さいっ!!」
「ハハッ、照れない、照れない!」
「〜〜ハァ…、相変わらずだねぇ、加山君も…」
かすみの肩に手を回す加山に呆れる双葉。笑う大神と新次郎。
「――さぁ、着いた。ここが帝国華撃団の本部、大帝国劇場だ」
「へ〜ぇ、結構立派じゃないか。さすがは帝都一の劇場だな」
「今は公演、やってるんですか?」
「『海神別荘』っていう恋愛物をやってるんだ。是非見ていってくれよ」
「はい、お言葉に甘えさせて頂きます!」
「なぁ、米田とかいう支配人はどこだ?着いたって報告したいんだが」
「報告?」
玄関に立ち、鋭く睨んでいるマリア。ビビる大神と新次郎。
「わひゃあ!!〜〜な、何ですか、あの人!?」
「……早く来いとあれだけ言っておいたはずですが?」
「え?――あ…!〜〜い、いや、途中でばったり姉と甥に会ったんだよ!決して忘れていたわけでは…!!」
「…何故、そんな動揺してるんです?大体、いつもそうやって隊長は――」
マリアの顔を覗き込む双葉。
「……お前が藤枝あやめか?」
「…は?」
床を木刀で叩く双葉。ビビるマリア。
「ふん、名前の割に日本人離れした顔しやがって…。来い!勝負だ!!」
「え…?」「え…?」
★ ★
鍛錬室・道場。銃を撃つマリア。弾を竹刀で弾き、突進する双葉。
「はああああっ!!」
銃が宙を舞う。手を上げるマリア。拍手する新次郎。ハラハラする大神。
「〜〜私としたことが…。……降参です…」
「はっはっは!そんな腕では一郎の妻になれんぞ、藤枝あやめ!」
「…ですから、私はあやめさんでは――」
「諦めの悪い女だなぁ。仕方ない、もう一勝負だけだぞ?さぁ、来い!」
「〜〜ですから!私はマリア・タチバナ!人違いですっ!!」
「あぁ?マリア…タ…?」
「――マリアさーん!はぁ…、探しちゃいましたよ。サロンでお茶するって約束だったじゃないですかぁ」
「さ、さくら――」
「わかったぞ!お前が藤枝あやめだな!?」
「はわあっ!?ど、どちら様ですか!?マリアさんの追っかけの方ですかぁっ!?」
「和服を着た大和撫子…。聞いた通りだな」
「そ、そんな、大和撫子だなんて…、ぽっ」
「さぁ、武器を取れ!尋常に勝負だ!!」
「〜〜双葉さん!その子はあやめさんでは――」
「一郎と結婚したいなら、この姉を倒してみろ!!」
「えぇっ!?か、勝てたら、大神さんと結婚できるんですか!?」
ひょっこり出てくるカンナ、すみれ、紅蘭。
「何だってぇっ!?」
「お姉様に勝てたら、少尉と結婚…!?」
「冗談でしたはなしやからな!?」
「……また盗み聞きしてたのね…?」
「〜〜あ、あら、何のことでしょう?おっほほほほ…」
「貴様らも一郎狙いか…!?おい、一郎!てめぇ、何股かけてるんだ!?」
「〜〜違うって!!その子達は俺の仲間で――!!」
「ぬぅ…、大神家の長男のくせに何と不埒な…」
「〜〜人の話を聞けっ!!」
「大神さんのお姉様だったんですねぇ、あの方」
「〜〜気づくの遅いっちゅーねん!」
さくらにツッコむ紅蘭。
「何人束になろうが同じ!まとめて来い!!私を倒した奴が一郎の嫁だぁ!!」
「よっしゃあ!行くぜぇっ!!」
戦う花組と双葉。
「…止めないんですか、一郎叔父?」
「〜〜俺にあの戦火を潜り抜けろと…?」
背筋が凍る大神。
「どうなさったんですか?」
「〜〜い、いや、ちょっと寒気が…。――あ!」
★ ★
支配人室。不機嫌で怖い顔のあやめ。ビビる米田。
「〜〜お、遅いなぁ、大神の野郎…?」
黙ってるあやめ。時計の針の音が響く。厳しい顔の先巫女。
「〜〜か、かえで君、お茶、お茶!」
デスクに座り、やる気なく先巫女の湯呑に注ぐかえで。飲み干す先巫女。
「……まだかい、その大神とかいう男は?」
「〜〜す、すみませんねぇ!間の悪いことに買い物を頼んじまったもんで…。もうじき戻ってくるかと…」
「ふん、相変わらず口うるさいババアだこと」
「〜〜か、かえで君…!」
「ふふっ、お前も相変わらず小者じゃなぁ、かえで」
「〜〜何ですってぇっ!?」
「す、すみませんねぇ、先巫女様。もう少しだけ待っててもらえますかい?」
「…ふん。ま、あのあやめを落とした男だからのう」
怖い顔でキネマトロンを連打するあやめ。繋がらず、舌打ち。
「〜〜あ、あやめ君、キャラ崩壊させちゃまずいから…!」
黙って怖い顔をするあやめ、かえで、先巫女。小さくなって黙る米田。ノックの音。
「あぁ、やっと来たか…!入れ!」
入ってくるラチェット。
「ハ〜イ!おひさ」
「〜〜ラ、ラチェット…!?」
「大神隊長はいる?…あら?いないみたいね」
「〜〜な、何じゃ、このメリケンは…!?」
「OH、ソーリー!申し遅れました。私はラチェット・アルタイル。アメリカから来ました。…ところで、大神隊長は?せっかく会いに来たのに…」
「〜〜んなぁっ!?大神は外人にまで手を出しておるのか!?」
「〜〜ち、違うんです!!ラチェットはほんの少しの間、この帝国華撃団に入隊しててですなぁ――」
「〜〜えぇいっ!!もう我慢の限界じゃ!!早く大神一郎を連れて来い!!さもないと――!!」
慌てて入ってくる大神。
「申し訳ありません、遅くなりました…!……あ、あれ…?」
「はぁ…、やっと来たか…」
笑顔になり、抱きつくあやめ。
「待ってたわ、大神君!」
「すみません。帰りにばったり姉と甥に会って…」
「もう、ずっと待ってたのよ」
「はは、すみません」
ラブラブで大神にデコピンするあやめ。冷や汗の米田。
「あー、やっと見つけた!会いたかったわ、大神隊長」
大神の頬にキスするラチェット。ショックなあやめとかえで。
「〜〜何すんのよ、このメリケン女ぁっ!!」
かえでの拳を受け止めるラチェット。
「あら、何をそんなに怒ってらっしゃるのかしら?」
赤くなるかえで。
「――あー、もしかして藤枝司令、大神隊長のこと…」
「〜〜うわ〜っ!!うわ〜っ!!うわああ〜っ!!」
パニックで拳を振り回すかえで。華麗によけ続けるラチェット。
「ふふっ、少し腕が鈍ったのではありません、藤枝司令?」
「〜〜あぁ〜っ、もう帰れ、お前〜っ!!」
「いやん、ひどいわ、司令ったら」
パンチし続けるかえで。笑いながら、よけるラチェット。
「〜〜そ、それで、用事って…?」
「えぇ、実はね――!」
大神を覗き込む先巫女。
「あ、あの、何か…?」
「――ふむ。なかなか良い面構えじゃ。お主が本物の大神一郎じゃな?」
「大神一郎は自分ですが…。……本物?」
「話は色々聞かせてもらったぞ。なかなか武勲をたててるそうじゃないか」
「いえ、そんな…。あの、失礼ですが、あなたは…?」
「こちらは私とかえでのおばあ様。藤枝の先巫女様よ」
「え?ということは…!」
「早く支度せい!天雲神社で儀式じゃぞ」
ニッと笑う先巫女。明るく顔を見合わす大神とあやめ。
14−3へ
舞台(長編小説トップ)へ