★13−4★



あやめに肩を貸し、廊下を走る大神。足を押さえ、うずくまるあやめ。

「大丈夫ですか!?」

「ごめんなさい、大丈夫よ…。〜〜くぅっ…!」

「少し見せて下さい」


あやめの足を触る大神。

「〜〜い…っ!」

「折れてるかもしれませんね…。少し痛みますけど、我慢して下さいね」


あやめの関節を外す大神。

「〜〜んあっ!!くぅ…う…っ!」

涙を滲ませ、大神の両腕を握りしめるあやめ。

(あやめさん…、こんな傷だらけになるまで…)

「――終わりました。帰ったら、ちゃんと手当てしてもらって下さいね」

「えぇ…、……ありがとう…」


肩を震わせ、うつむくあやめ。

「まだ痛みますか…!?」

「ううん、違うの…。……ネックレスのこと…」

「あ…」

「ごめんなさいね…。〜〜せっかく見せようと思ったのにな…」

「あやめさん…」


キネマトロンから通信。

『――こちら、さくら!聞こえますか、大神さん!?』

「さくら君か…!今、どこにいるんだ!?」

『花やしきの入口なんですけど…、いつまで経っても入れないんですよ…』

「入れない?」

『〜〜くそっ、何なんだよぉ!?』

『〜〜この私の攻撃をものともしないなんて、生意気ですわ!』


花やしきを覆う白の結界を攻撃するすみれとカンナ。

『強力な結界が張られているんです。どの攻撃も受けつけなくて…。今、紅蘭と風組が解析してくれていますが…』

操作し、結果が出る風組。

『結果、出ました!これは黒之巣会が張ったものではなさそうですね』

「え?じゃあ、誰が…?」

『それがようわからんのや。確かに結界自体は強力なんやけど、妖気や怨念みたいなもんは伝わってきいひん』

『あ〜ん!アイリスの霊力でも壊せないよ!お兄ちゃん、何とかしてぇ!』

「え?そ、そんなこと言われてもなぁ…」


察し、大神のキネマトロンに身を乗り出すあやめ。

「その結界に何か紋章のようなものはある!?」

『副司令…!?よかったぁ、ご無事だったんですね!』

『ちょっと待って下さい。えーと…、――はい、確かに天井部分に…!』

「やっぱり…。結界を破れるかもしれないわ。少し待機していて」

『了解!』


通信を切るあやめ。

「何かわかったんですか?」

「えぇ…、心当たりがあるの。一緒に来てくれる?」


★               ★


花やしきを壊す降魔達。隠れながら進む大神とあやめ。

「〜〜くそっ、さっきより増えている…」

「しっ、こっちよ…!」


メリーゴーランドに行き、操縦室の壁を叩くあやめ。隠しボタンが現れ、押す。メリーゴーランドの馬達が嘶き、走って魔法陣を描き、部屋が出現。

「これは…!」

「一気に駆け抜けるわよ!」


攻撃してくる降魔を斬りながら、走って部屋に飛び込む大神とあやめ。

「こ…、ここは…!」

「神剣白羽鳥の本当の奉納場所よ。この扉を開けられるのは、藤枝の次期巫女として認められた者だけ…」


震える手で扉に触れ、霊力を送るあやめ。霊力が切れ、扉は開かない。よろけるあやめを抱きとめる大神。

「〜〜でも、今の私じゃとても…。多分、結界の紋章は天雲神社のものよ。おそらく、叉丹が囮の封印を解いたから、現れたんでしょうね」

「じゃあ、これを開ければ…」

「えぇ、結界は破れると思うんだけど…。〜〜本当、無力ね…」

「あやめさん…。――危ない…!!」


黒い光線が飛んでくる。あやめを抱き、よける大神。光線は外れ、爆発。

「さすがは花組隊長。反射神経も見事だ」

爆発の煙の中を歩いてくる叉丹。あやめを抱きしめ、剣を構える大神。

「〜〜叉丹…!」

「ここが神剣白羽鳥の奉納場所か。案内、ご苦労だった」

「〜〜く…っ、つけられてたのか…」

「かえでは…、〜〜かえではどうしたの!?」

「あぁ、あの女か…」


指を鳴らす叉丹。常磐に担がれ、投げ捨てられる傷だらけのかえで。

「かえでさん…!!」

「〜〜かえでぇっ!!」

「貴様の妹もなかなか兵だったぞ?もっとも俺の敵ではなかったがなぁ!!」

「〜〜貴様ら…、もう許さんっ!!」


叉丹に斬りかかる大神。剣で防ぐ叉丹。

「所詮、神武がなければこの程度か…」

黒い光を全身から放出する叉丹。弾き飛ばされる大神。

「うわあっ!!」

「大神君っ!!」

「おっと!あんたの相手はこの俺だぜ?」


あやめをさば折りする常磐。

「かはああっ!!が…ああああっ!!」

「あやめさん…!!〜〜く…っ!」


叉丹の剣を刀で受け止める大神。

「よそ見している場合ではないぞ、大神一郎…!」

剣を押す叉丹。苦しみながら剣を押さえる大神。

「〜〜くぅ…っ、や、やめなさ…きゃああああっ!?」

「がはははは…!苦しいだろう!?お前の妹もこれで果てたんだぜぇ!?」

「う…ああぁ…、〜〜ぜ…、絶対に…許さ…な…い…!」

「一丁前な口叩きやがって。よくも手間取らせてくれたな!今償わせ――」


常磐の足にしがみつくかえで。

「〜〜失礼ね…!まだ…果てちゃいないわよ…っ」

「まだそんな力が残ってたか。まったく、楽しませてくれる姉妹だぜ!」


かえでの背中を踏む常磐。

「きゃああっ!!」

「がははは…!おらおらおらぁっ!!」

「や…っ、〜〜きゃ…、きゃああっ!!」

「かえで…!」


苦しむ大神とかえで。扉を見上げ、目を閉じるあやめ。

(〜〜お願いします、お母様…!私に力を…、神剣を…授けて下さい…!

少し霊力が放出して開きそうになるが、すぐ消える。

「〜〜あぁ…」

「ふふ、そうだ!早く神剣を呼び起こせ、この私の為に!!」

「〜〜あなたなんかに渡すものですか…!


開けようとするが、結果は同じ。

「はは、口だけ強がってらぁ。空しいねぇ!」

あやめを扉に投げ飛ばす常磐。扉に強打するあやめ。

「完全無欠の副司令が今じゃお荷物か。悔しかったら、扉を開けてみろ」

「き、貴様ぁ…っ!〜〜くぅっ…!!」


剣をさらに押す叉丹。苦しむ大神。扉にしがみつくあやめ。

(お願いです、私を神剣の次期継承者に…!この扉を開けさせて下さい!!)

霊力が扉に流れるが、途切れる。座り込むあやめ。

「〜〜ど…して…」

「ふん、使えぬ女だ」

「姉さん…。〜〜ああああっ!!」

「ふはははは!出来損ないの姉を持つと苦労するなぁ?」

「姉さんが…〜〜出来損ない…ですって…?」

「そうさ!霊力がなくなって、何が巫女だ!片腹痛ぇぜ!!」


あやめの首を掴み、扉に押しつける常磐。苦しみ、悔しがるあやめ。

「〜〜く…っ、二人を放せぇーっ!!」

叉丹の剣を押し返し、常磐に斬りかかる大神。常磐の背中から腕が生える。

「さっきのようにはいかねぇぜ?」

「何…!?〜〜ぐあああっ!!」


背中の腕で大神の首を締める常磐。

「大神君…!〜〜きゃああああっ!!」

「いやああああっ!!」

「がははは…!!帝国華撃団だか何だか知らねぇが、話にならねぇな!」

「〜〜ぐ…、が…あ…」


刀を握る手を震わせる大神。握る力が抜け、落ちる刀。

「くく…、そろそろフィナーレかな?」

「〜〜うぅ…、か…えでぇ…、お…、大神…く…ん…」

「どうだ?我々に忠誠を誓えば、命は助けてやるぞ?」

「〜〜しつ…こいわね…、お断りって…言ってるで…しょ…っ!?」

「――なら、無理やり言わせるまでだ…!」


呪文を唱え、床に魔法陣を描き、三人に床から衝撃波が突き抜ける。

「うわああああ…!!」

「きゃああああ…!!」「きゃああああ…!!」

「さぁ、来い、あやめ!そうすれば、小僧と妹を助けてやってもよいぞ?」

「…!」

「〜〜ぐ…、い、行っては駄目だ、あやめさん…!」


力を入れる常磐。苦しむ大神。

「や、やめて…!あ…っ!?」

あやめの顎を押し上げる叉丹。

「愛する男と妹を助けたいのだろう?簡単なことだろう?昔の関係に戻るだけだ。同じ目的をもった者同士、依存し合ったあの頃になぁ!」

叉丹の目から催眠術。力が抜けていくあやめ。殺女が押し寄せてくる。

「――さ…、さた…ん…様ぁ…」

「目を見ては駄目です!操られてしまいます!!〜〜ぐ…っ!!」

「〜〜お…、お…がみ…くぅん…」

「さぁ、来るのだ、殺女…」


あやめにキスしようとする叉丹。

「〜〜ふざけんじゃないわよっ!!」

驚き、正気に戻るあやめ。

「この間は、あんな偉そうなこと言って!結局、自分が一番弱いじゃない!!ピンチの時こそ勝利を考えないといけないんじゃなかったの!?何一人で弱気になってるのよ!?そんなことして助けられても、恩なんか着ないわよ!?」

「けっ、お喋りがすぎるぜ、姉ちゃん!」


かえでを踏みつける常磐。

「くぅっ!!〜〜大体ねぇ、姉さんのこと知らないくせに何偉そうに言ってるのよ!?確かにっ、霊力が尽きて、巫女としては失格かもしれないわよ!でも、あやめ姉さんは誰よりも優しくて、〜〜強い信念を持ってて…」

「かえでさん…」

「かえで…。〜〜あ…っ!?」


あやめの首筋にキスする叉丹。

「騙されるな。妹も巫女の候補者。継承者争いで邪魔なお前を愛してなどいるものか。現にその憎しみが刹那の幻術を呼び寄せたのだろう?」

「〜〜そ、それは…」

「確かにかえでさんは、あなたに嫉妬していたかもしれません。でも、憎しみだけじゃない。あなたへの強い憧れがあるからです!陸軍に入ったのだって、いつかはお姉さんのようになりたかったからじゃないんですか!?」

「大神君…」

「…悔しいけど、その通りよ。それに姉さんがいなくなったら、誰があの小娘達をまとめるの!?そんなことできるの、姉さんしかいないじゃない!」

「かえで…」

「フフ…、くだらぬな」

(〜〜だめ…、力が…)

「さぁ、今こそ三つ目の種をお前に…!」


焦点が合わないあやめにキスしようとする叉丹。

「あやめさんっ!!」

「〜〜姉さああああんっ!!」


かえでから強力な霊力が放出。目が眩む大神と叉丹。

「こ、これは…!」

「〜〜何…!?ぐわあああっ!!」


倒れる常磐。解放され、咳き込む大神。立ち上がり、叉丹を睨むかえで。

「ちっ、しつこいネズミめ――」

あやめの全身から強力な霊力が放出。手を火傷する叉丹。

「〜〜ぐっ!ば、馬鹿な…!?」

着地し、合気道で叉丹を攻撃するあやめ。

「二人の霊力が共鳴している…!」

「――巫女姉妹を見くびると、怪我だけじゃ済まないわよ」

「〜〜こんのアマぁぁぁっ!!」


斬りかかる叉丹。霊力で剣を作り、叉丹と戦うあやめ。

(〜〜ど、どこからそんな霊力が…!?)

加勢するかえで。姉妹の合体攻撃に叉丹の剣が飛び、床に刺さる。

「藤枝流奥儀・白鳥咲華斬!!」「藤枝流奥儀・白鳥咲華斬!!」

「うわああああ…!!」


倒れる叉丹。霊力と剣が消え、よろけるあやめとかえで。駆け寄る大神。

「あやめさん!かえでさん!」

「…ふふっ、少し派手にやりすぎたわね」

「〜〜ち…っ、常磐、絶対に逃がすな…!」


瞬間移動する叉丹。立ち上がる傷だらけの常磐。

「ぐっ、これだけは使いたくなかったんだがな…。〜〜うおおおおおおっ!!」

黒のオーラを発し、怪物になる常磐。

「これが常磐の本当の姿か…!」

「ぐはははは…!!藤枝の巫女の力、神となった俺様が全てもらいうける!!」


振り下ろす拳をよける大神、あやめ、かえで。

「神?ゾンビの間違いでしょ?」

「〜〜くっ、ですが、さらに力が増しています…!」

「ふふ、でも、不思議ね…。ちっとも恐怖を感じないわ」


支え合って立ち上がるあやめとかえで。

「――かえで、私と一緒に念じてくれる?」

「え…?」

「私、お母様に言われた通り、これまであなたを守ってきたわ。それが姉としての義務であり、藤枝の家を継ぐ為の使命だと思ってたの。でも、少し違うみたい。私があなたを守ってきたように、かえで…、あなたに逆に勇気づけられてたんだって気づいたのよ。だって、藤枝の巫女は私だけじゃない。あなたと私、二人揃って継承者ですもの」

「…ふっ、言ってくれるじゃない。――仕方ないわね」


手を繋ぎ、扉に触れるあやめとかえで。全身から強力な霊力が放出。

(ものすごい霊力だ…!二人の波長が完璧にマッチしている。姉妹が肩を並べ、信頼し合って生まれる力…。これが藤枝の巫女なのか…!)

扉が開き、神剣が二本あるのが見える。

「神剣白羽鳥が二本…!?」

「がははは!これは好都合!うまい霊力は多いほど奪いがいがある…!」


飛びかかる常磐、剣の霊力に弾かれる。

「〜〜ぐあ…っ!?」

「神剣にゾンビが触れられるわけないでしょ?本当筋肉だけの馬鹿ね」

「どうやら、形勢逆転のようね」


同時に神剣に触れるあやめとかえで。光が発し、傷が癒え、結界が消える。

「すごい…!力がみなぎってくるぞ…!」

「ふぅん、想像以上ね」

「それじゃあ、反撃開始よ! 」

「了解!」「了解!」

「けっ、三人だけで何ができ――」

「――スネグーラチカ!!」


氷の精霊が常磐の足を凍りつかせる。突入してくる花組。

「〜〜な、何…!?」

「皆…!」

「やっと入れましたぁ!」

「隊長達も早く神武に乗ってくんな!ここからが本番だぜ!」

「神武の調整も完璧や!壊さん程度に暴れてくれなはれ!」

「ありがとう!行くわよ、かえで、大神君!」

「はい!」

「ふっ、腕の見せ所ね!」

「待ちやがれぇっ!!〜〜くそっ、足が動かん…!」


出ていき、翔鯨丸に飛び乗る三人。迎える風組。

「ご無事で何よりです!」

「司令、私も出撃させて下さい…!」

「……」

「〜〜お願いします…!!」


微笑み、あやめの肩を叩く米田。

「…止めても無駄みてぇだしな。よし、巫女の底力、見せてやれ!」

「米田司令…!――了解!」


敬礼するあやめ。神武に搭乗する大神、あやめ、かえで。

「帝国華撃団、出撃!花組の援護、及び常磐の討伐に向かいます!」

「了解!」「了解!」


飛び立つ神武。花やしき。

「きゃははは!や〜い!ここまでおいで〜!」

「〜〜こ、このガキがぁ…っ!」


捕まえようとする常磐。瞬間移動して鬼ごっこし、攻撃するアイリス。

「きゃははは!たっのし〜!」

「おーっほほほ!お次は私ですわ!今回出番が極端に少ない分、ここを見せ場としてファンの皆様に夢と希望を――」

「真宮寺さくら、参ります!破邪剣征・百花繚乱!!」


花吹雪が常磐を攻撃。

「〜〜ちょいと、さくらさんっ!!あなた今、わざとなさったでしょう!?」

「だって、いつまでもすみれさんが喋ってるから…」

「いいわけはおよしなさいっ!!大体、今度の舞台もこのトップスタァの私を差し置いて、なぜ田舎者のあなたが――」

「さくら、すみれ!戦闘中よ!?後にしなさい!」

「〜〜マリアさんは黙ってて頂けませんことっ!?」

「〜〜ナメやがってぇっ!!」


氷を爪で砕き、さくらとすみれに襲いかかる常磐。

「危ない…!!」

「え?〜〜きゃ〜っ!?」「え?〜〜きゃ〜っ!?」


カンナが拳で防ぐ。

「へっ、なかなか戦いがいのある奴じゃねぇか」

「カンナさん…!」

「がはは、その程度かぁっ!!」


カンナを投げ飛ばす常磐。

「うわあああっ!!」

「カンナぁ!!〜〜きゃああっ!!」

「がははは…!!何人束になろうと、神の前では無力だぁっ!!」


拳を振り下ろす常磐。身構える花組。

「――狼虎滅却・一刀両断!!」

「ぐわあああっ!!」


大神に続き、常磐を神剣で斬りつけるあやめ。後ずさり、膝をつく常磐。

「大神さん!あやめさん!」

「遅れてごめんなさい…!」

「まったく、こんなに人数いてだらしないわねぇ」

「〜〜苦戦してたのは、同じでしょう!?」

「はいはい、喧嘩はそこまで。皆、立てる?」

「はい!これで全員集合ですね!」

「では、隊長、改めてお願いします!」

「よし!――帝国華撃団、参上!」


ポーズを決め、構える全員。

「〜〜くそぉ…、全員殴り殺してくれるわぁっ!!」

「よく見てなさい、戦いとはこういうものよ!」


襲いかかる常磐を神剣で防御し、攻撃するかえで。

「やりますわね。ですが、私の方が華麗ですわ!神崎風塵流・鳳凰の舞!!」

鳳凰の羽根を撒き散らし、戦うすみれ。囲む炎を暴れて消そうとする常磐。

「おーっほほほほ…!!いかが?神崎すみれの華麗なる〜〜ふぎゃっ!?」

「あ〜らよっと!」


すみれの神武を飛び台にして飛び上がるカンナ。前につんのめるすみれ。

「仕返しだぜ!四方功相君!!」

(〜〜な、何だ、こいつら…!?さっきまでと全然動きが…!)


浮遊した常磐をゴムまりの如く何度も叩きつけるアイリス。

「きゃははは楽しい?楽しい!?」

「〜〜ぐわっ!!や、やめんか、このガキャぁっ!!」

「え〜いっ!!パース!」

「よっしゃあ!!――ほいっと!」


連弾を発射し、機械の手で常磐をマリアにパスする紅蘭。

「パールクヴィチノィ!!」

「ぎゃああっ!!づ、づめてぇっ!!」


凍りつく常磐を後ろ回し蹴りするマリア。

「頼んだわよ、さくら!」

「頼まれました!はあああっ!!」


飛び上がり、常磐を斬るさくら。

(〜〜く…っ、これが神武の力だってーのか…!?)

「〜〜ちきしょぉ…っ!!うおおおおおっ!!」


さくらの剣を掴み、振り上げる常磐。

「きゃあああーっ!!」

「さくら君っ!!」


常磐の背中を斬る大神。さくらを離す常磐。着地するさくら。

「助かりました!――もう許さないんだから…!破邪剣征・桜花放神!!」

桜吹雪に飲み込まれる常磐。

(〜〜いや、違う…!これが奴らのチームワークという奴か…!)

「〜〜だが、所詮無駄だ!どんな攻撃を受けようが、俺は死なぬぅっ!!」


黒い光で桜吹雪を消す。筋肉が隆起し、傷が治っていく。驚くさくら達。

「ふははは!出て来い、降魔軍団!楽には死なせるなぁっ!!」

降魔達が現れる。構えるさくら達。消えていく降魔達。

「〜〜な、何…!?」

「――それはこちらの台詞よ!」


常磐の背後で神剣を突きつけるあやめ。発生装置を飛ばし、斬るかえで。降魔が全て消える。

「またやられに来たか!貴様らが一番わかってるだろう、この俺の力を!?」

「確かにあんたにはつけられないわ、傷はね」

「だけど…、これはどう!?」


常磐の腹に神剣を刺すあやめとかえで。

「〜〜な、なぁ…っ!?」

「さぁ、欲しがっていた巫女の力よ!」

「存分に受け取りなさい、筋肉馬鹿!」


霊力を常磐に流し込むあやめとかえで。常磐の体が膨張する。

「ぐぎゃああああ…!!」

「なるほど…!逆に霊力を送り込んで、霊力値を暴走させるんですね!」

「さすがやな!なかなか思いつかへんで!」

「あやめさん、かえでさん!姉妹の力を見せてやって下さい!」

「えぇ!――かえで!」

「ちゃんと合わせなさいよね!」


姉妹の体が光り、常磐の体が風船のように膨らむ。

「〜〜そんな…馬鹿な…!?こんな戦い方が…あると…は…ぎゃああ〜っ!!」

爆発する常磐。お札が落ちる。神武から降りる大神。触れた直後に黒い炎に焼かれて消えるお札。

「今のは一体…?」

「大神さぁん!大変です!あやめさんが…!!」

「何…!?」


神武から崩れ落ちるあやめを抱きとめる大神。心配で見守る花組。

「あやめさん、大丈夫ですか!?」

「えぇ…、ごめんなさい…」

「ふん、霊力ないくせに張り切るからよ」

「けっ、また偉そうに…」

「でも、今回はあやめさんとかえでさんあっての勝利ですよね!」

「さくら君の言う通りです。…それは誰よりもわかってますよね?」


無言で背を向け、立ち去るかえで。

「…シカトかいな」

「…本当に絡みづらいですね、あの人」

「ってあんたに言われとうないわー!」


マリアにツッコむ紅蘭。笑う大神達。

「でも、今のかえでお姉ちゃんの心、ほんの少しだけど、温かかったよ!」

「武道の心得もそれなりにあるようですしね。私程ではありませんけど」

「――あぁっ!!」

「〜〜な、何ですの?急に大きな声を出して…」

「そういえば、まだ勝利のポーズ、決めてませんよ!――かえでさーん、勝利のポーズ、忘れてまーす!」


走って追いかけるさくら。翔鯨丸。

「…だとよ。行ってやらねぇのか?」

「…あんな恥ずかしいこと、お金積まれてもお断りです!」

「え〜?顔がにやけてますよぉ?」

「〜〜う、うるさいわねっ!!」


さくらが元気に入ってくる。

「あ、ここにいたんですね!ほら、早くポーズ決めますよ!」

「〜〜ちょ、ちょっと放しなさいよ!私はやらないって…」


かえでを引っ張って戻ってくるさくら。

「よーし、では、行きますよ!勝利のポーズ…決めっ!」

ノリノリで決めポーズするかえで。

「お、ええポーズとりますがな!」

「〜〜さ、さくらにつられただけよ…!」

「あー、赤くなってる〜」

「〜〜大人をからかわないでっ!」


笑う花組。笑うも、少し息苦しいあやめを心配し、ぎゅっとする大神。

(――あやめさん…、少し痩せた…?)

★               ★


傷だらけで戻ってくる叉丹。柱に寄りかかって座る。

「〜〜ちっ、巫女風情が生意気な…!」

『――苦戦したようだな』


叉丹の体からサタンの声。

「少し油断しただけだ。私が本気を出せば、あんな巫女姉妹…!」

『ふっ、素直に援護を求めればよいものを…』

「お前を解放するにはまだ早い。おとなしく眠っていろ」

『クク…、そう申して、少しずつ我が力が解かれてるのは気のせいか?』

「ふっ、誰が封印を解いてやったと思っている?貴様は我が分身も同然だ」


サタンの力を解放し、黒いオーラを纏う叉丹。傷が癒され、拳を握る。

「――その力、少し借りるぞ」

第13話、終わり

次回予告

Hi!ラチェットよ。いよいよあやめが巫女を継ぐ儀式の日が来たわ。
これでやっと霊力を取り戻せて、大神隊長と結婚できるのね…!
あら、大神隊長のご家族もいらっしゃるの?
あら、あのキュートなジャパニーズボーイは誰!?
うふふ…!ぜひお近づきになりたいわ…!!
次回、サクラ大戦『儀式』!太正桜に浪漫の嵐!
ところで、何故、私が喋ってるかですって?それは次回を見てのお楽しみ!


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