★13−1★
大神の部屋。ナイフで切りかかるかえでをよけるあやめ。キネマトロンを取ろうとするが、邪魔されてベッドに押さえ込まれ、首を絞められる。
「〜〜や、やめ…て…!あぁっ!?」
「姉さん…、殺す…」
あやめの襟をはだけさせ、ナイフを振り上げるかえで。目を見開くあやめ。
「〜〜きゃああああ――っ!!」
ギターの音。動きが止まるかえで。
「海はいいなぁ〜」
ギターを弾き、熱唱する加山。正気に戻り、ナイフを落とすかえで。
「――え…?私…」
「OH〜!代理殿のランジェリーは純白の白なんですねぇい!」
「え…?〜〜き、きゃああああっ!?」
「うーむ、まさか、かすみっち以外の女性のこんな姿を拝める日が来るなんて、生きててよかったなぁ〜」
「〜〜いやああ〜っ!!見るな、バカ〜ッ!!」
体を隠しながら、走っていくかえで。真面目な顔になる加山。
「…やれやれ、正気に戻ったか」
「今のは一体…?ものすごい妖気だったけど…」
「どうやら操られていたらしいですね、一時的だったようですが…」
「あやめさん、大丈夫ですか!?」
走ってくる大神。はだけた寝間着を直すあやめ。加山に掴みかかる大神。
「〜〜加山、貴様…!!」
「〜〜おいおい、早まるなって…!」
「大神君、違うの!〜〜これは…」
きょとんとなる大神。帽子を深く被り直す加山。茶を入れるあやめ。
「――かえでさんがそんなことを…!?」
「あぁ。さっきので妖気は消えたが、安心するのは早いだろうな」
「すまなかった…。助かったよ、加山」
「困った時はお互い様だろ。俺も昔、色々お前に助けてもらったしな」
「〜〜かえで…」
震えるあやめを抱きしめる大神。
「今夜は傍にいてやれよ」
「あぁ」
静かにドアを閉め、帽子を被り直し、歩いていく加山。
「…やれやれ。また調べることが増えちまったな」
★ ★
「――何ぃ!?それは本当か!?」
「はい、恐らくあやめさんへの極度の嫉妬が魔を呼び寄せたのかと」
「そうか…。まぁ無事ならよかった。んで、かえで君は今どうしてる?」
「花組の稽古指導をしてます。昨晩のことは何も覚えてないようですね」
怒鳴りながら指導するかえで。慌てて謝るさくら。顔を顰めるマリア達。
「あの子を責めないであげて下さい。私がもし逆の立場だったら、似たような感情が芽生えたと思うんです。二人きりの姉妹ですから、余計に…」
「…下手に刺激すれば逆効果だしな。かえで君からは目を離さないでおこう。大神、なるべくあやめ君の傍から離れるんじゃねーぞ」
「わかってます…!」
手を強く握る大神とあやめ。
★ ★
舞台。台本を投げつけるすみれ。顔を顰めるかえで。
「もう我慢の限界ですわ!!こんなやりづらい稽古、かえって逆効果です!!」
「勝手に言ってなさい。ほら、さくら、もう一度最初から!」
「あ、は、はい…!〜〜あ…」
ふらつき、座り込むさくら。
「〜〜さくらはん…!」
「少し休ませてやれよ!さくら、何時間もぶっ通しでやってんだぞ!?」
「それが主役というものよ!だからあなた達は甘いの!今のままで客から金取って見てもらえると思う!?」
「〜〜だからって、スパルタすぎるよぉ!」
「あなたのは指導ではありません!単なる押しつけです!これでは余計にチームワークが乱れます!」
「チームワーク、チームワーク…、それがそんなに大事?まずは各自ちゃんと上達すること!舞台の上も戦場もそう!頼れるのは自分だけなのよ!?」
「あーあー、そうですか!もうはなから意見が合いませんわね!これではこの先やっていけませんわ!」
「誰も信じようとしない上官は誰からも信用されません。そんなことだから欧州星組も、神武パワーアッププロジェクトも駄目になるんですよ!?」
「〜〜何ですって!?もう一度言ってみなさ――!!」
「〜〜やめて下さいっ!!」
ハッとなるかえでとマリア達。
「今はそんなこと言ってる場合じゃないと思います…!少しでも練習して、上達して、お客様に喜んで頂くのが私達の仕事じゃないんですか…!?」
「さくら…」
「私ならまだやれます!かえでさん、ご指導の方、お願いします!」
「……ハァ…。もういいわ。やる気が失せた」
出ていくかえで。
「え?あ、あの…」
「気にすんな。あんな奴なんかいなくても、十分練習できるぜ」
「せや!うちらのチームワークがあれば、不可能なんてないやろ?」
「うーんと上手になって、あのお姉ちゃんを見返してやろうよ!」
「皆さん…、そうですね、やりましょう!」
練習し始めるさくら達を見て去るかえで。
(好きにすればいいわ。どうせ恥かくのは自分達なんだから…)
洗面所で顔を洗い、タオルで顔を拭くかえで。
『――そうだよねー。君には関係ないよねー』
驚き、顔を上げるかえで。鏡に幼少のかえでに化けた刹那。
「〜〜またあなたなの…!?」
『昨日は失敗しちゃったね。駄目じゃん、ちゃんととどめは刺さなくちゃ』
昨晩の出来事がフラッシュバックされ、頭痛がするかえで。
「〜〜まさか…、私…」
『どうするの?今頃、大神達、君のこと警戒して大騒ぎだよ?これじゃあ大尉になれるどころか殺人未遂で豚箱行きだね!』
「〜〜あ…、私…、私…」
『邪魔な妹はこれでおさらばかぁ。姉さんの思うつぼだね!アハハハ…!』
「い、嫌よ!私は…、〜〜私はまだ…!」
『――じゃあさぁ、こんなのはどう?』
★ ★
「確かここら辺に…。――あったあった。うへぇ、ほこりだらけだなぁ」
倉庫から出してきた資料のほこりを払う大神。
「ありましたよ、降魔戦争の資料!」
「あぁ、ありがとう!こっちも重要な手掛かりを見つけたわ」
机に巻物を広げているあやめ。資料を並べる大神。
「ほら、この藤堂家に伝わる言霊『女の中に生まれし光』…、これってこの神社の家紋にそっくりじゃない?」
「本当だ…!よく見つけましたね」
「実はね、この天雲神社って私の実家なの」
「え?じゃあ、もしかして…!」
「藤枝家が藤堂の末裔…かもしれないわ。まだ確定じゃないけどね」
「そうだ!この資料をここに…」
巻物と資料を合わせる大神。藤堂と神社の位置が一致。
「ぴったり…。やっぱりそうなんだ…!すごいですよ!あやめさんが藤堂神貴の血を引いてることは、ほぼ間違いありませんね!」
「おばあ様なら何かわかるかもしれないわ。神社に行ってみましょう」
「了解!」
「あ、ちょっと待って!先に玄関で待っててくれる?ちょっと着替えていきたいの。せっかく二人っきりで出かけるんですしね」
「で、でも、これは任務でデートじゃ…」
「わかってるわ。でも、最近忙しいし、少しはあなたの為におめかししたいの。先にヒントを見つけた方が好きなことできるって話だったでしょ?」
「あやめさん…」
「すぐ行くから、ちょっと待っててね…」
照れながら出ていくあやめ。
「俺の為におめかしかぁ…よ〜し、張り切っていくぞ!」
遠くから大神を見て笑うかえで。
★ ★
(……とは言ったものの…、遅いなぁ、あやめさん)
玄関で懐中時計を見る大神。
(おめかしなんかしなくても十分魅力的なのに…。女心はよくわからん…)
「――お待たせ」
新しい和服姿のあやめに化けたかえでが来る。
「あやめさん…!わぁ、新しい和服ですね」
「どう?京都から取り寄せてみたんだけど…」
「すごく素敵です!でも、これ、オーダーメイドですよね?」
「女はね、愛する男の瞳に美しく映る為には幾らでもつぎ込むものなのよ」
流し目で見つめるかえで。鼻の下をのばす大神。
「さ、行きましょうか」
「は、はい…」
腕を組み、デレデレする大神。大神を見て怪しく笑うかえで。
★ ★
大神の部屋。鏡の前でチェックする白い洋服のあやめ。隣に三越の荷物。
「…このアイシャドウ、ちょっと派手だったかしら?」
ネックレスを眺め、大神に買ってもらったことを回想するあやめ。
『――やっぱり…!このネックレス、あやめさんに似合うと思ったんです』
「初めてのプレゼントかぁ…。うふふっ」
玄関。大神の姿がなく、辺りを見回すあやめ。
「大神君…?」
すれ違い、気づく三人娘。
「あ、お洋服ですか?わぁ、素敵なネックレスですねぇ!」
「えぇ。この間、三越で大神君が買ってくれたの。今朝届いたから、ね」
「わぁお!だからこれからデートなんだぁ!ヒューヒュー!」
「だったらいいんだけどね…。ねぇ、あなた達、大神君見なかった?」
「あの…、大神さんなら和服の女性と出かけていくのが見えましたけど…」
「え…?」
「えぇ〜っ!?大神さんってば浮気ですかぁ!?」
「〜〜わ、私はてっきり副司令とかとばかり…」
「…に行ったの?」
「え?」
「――どっちに行ったの、その和服の女性と?」
目が据わっているあやめ。ビビる三人娘。
★ ★
見上げて呆然とする大神。花やしきで遊ぶ子供達と家族連れ。
「あのぉ、ここって…、〜〜花やしき…ですよね?」
乗り物を輝く目で見るかえで。
「…あやめさん?」
「え?〜〜え…、えぇ、そう、花やしきよ!」
「〜〜そうよって…。神社は一体…?」
「ごめんなさい。少し花やしき支部に寄ってもいい?研究員に調べてもらいたいことがあるのよ」
「あぁ、そういうことでしたら…!」
「少しだけ付き合ってくれる?すぐに終わるから」
「了解しました!」
刹那との会話を回想するかえで。
『――お…、教えて!どうすればいいの!?』
笑う刹那。黒い風がかえでを包む。あやめの姿になり、驚くかえで。
『君じゃまたヘマやるだろうからさぁ、姉さんの暗殺は僕に任せてよ。君はその間、その姿で大神をあやめから引き離しとくのさ』
『す、すごい…!どこからどう見てもあやめ姉さんだわ…!』
『くれぐれも正体はばれないでよね?じゃなきゃ、僕がお前を殺しちゃうから!ククク…、アッハハハ…!!』
息を呑むかえで。
「…どうかしましたか?」
「……いえ、何でもないわ」
ジェットコースターから子供達の楽しそうな声。うっとりするかえで。
「あ、あやめさん…?」
「あ…、〜〜オホホじゃ、行きましょうか」
大神と歩くかえでを遠くから見て、手中に黒い霊力を集めて笑う叉丹。
「これが憎しみの霊力か…。さすがは藤枝家の人間、すさまじい力だ…!同じ血を受け継ぐ者同士、どちらが勝つか見ものだな…。――羅刹」
現れる羅刹。
「呼んだか?」
「作戦通り、頼んだぞ」
「任せろ!俺と兄者を甦らせてくれたそなたの為、精一杯働いてくれる!」
「くれぐれも殺すなよ?あくまでも生け捕りだ。――姉の巫女の方をな」
乗り物をうっとり見ながら歩くかえで、何度も人にぶつかりそうに。慌てて避けてやる大神。見つめる叉丹。
「……妹も興味深いがな」
★ ★
路面電車を降りるあやめ。バレンタインフェアでカップルで溢れる浅草。
「かすみが言うには、この方面の電車よね…。……ここかもしれないわね」
怖い顔で歩いて探すあやめ。道行く人がビビる。
(〜〜大神君のバカ…。どうして待っててくれなかったの…?)
うつむき、立ち止まるあやめ。楽しそうなカップルがすれ違っていく。背後から近づく気配。振り返り、笑顔になるあやめ。
「大神君…!?」
青ざめるあやめ。軍服の山崎が笑って立っている。
「恋人の名前を間違えるとは心外だな」
「〜〜く…っ」
キネマトロンを使おうとするが、手首を掴まれるあやめ。
「どうした、そんなに顔色を悪くして?こっちにおいで」
「〜〜そんな格好しないで!あなたはもう山崎少佐じゃないわ!」
「その気丈にふるまう顔、相変わらず美しい。是非また我が物にしたい…」
「〜〜いや…っ!誰かぁっ!!」
「くくくっ、無駄だ」
周りの人々が全て降魔に変わる。叉丹も軍服から普段の服へ。驚くあやめ。
「四面楚歌だな。――さぁ、どうする、藤枝少佐?」
悔しく叉丹を睨むあやめ。
★ ★
花やしき。楽しく遊ぶ子供達を見る大神。
(遊園地の地下に華撃団の支部があるなんて、誰も思わないだろうな…)
カップルとチョコを売る露店を見つける大神。
(――もうすぐバレンタインか…。あやめさん、チョコくれるかな?)
照れる大神。かえでが駆け寄ってくる。
「ごめんなさい、寒かったでしょう?」
「平気です。じゃあ、神社に向かいましょ――」
ぎょっとする大神。メリーゴーランドを輝いた目で見るかえで。
「〜〜あ、あの…、あやめさん?」
「――はっ!〜〜な、なぁに?」
「くすっ、乗り物、乗りますか?まだ時間ありますし」
「えっ!?〜〜べ、別にいいわよ。メリーゴーランドってガキが乗るもんだけど、きらきらしてて激カワユス〜とか、ジェットコースターって何かスリリングでガチで楽しそ〜だなんてちっとも思ってないんだから…!!」
「〜〜あ、あやめさん?何か悪い物でも…?」
「はっ!ご、ごめんなさい。どうかしてるわね、私ってば。オホホ…」
「皆には悪いけど、たまには息抜きも必要ですしね…!」
かえでの手を握り、走り出す大神。ドキッとなるかえで。
「ほら、何から乗りますか?」
大神の笑顔に赤くなるかえで。チケット売り場へ。
「――次の方ー」
咳払いするかえで。気づき、慌てて敬礼する受付。
「〜〜し、失礼しました!」
「よろしい」
「〜〜い、いいのかなぁ…?」
乗り物に優先で乗るかえでと大神。文句を言う子供達。あっかんべーするかえで。ジェットコースターではしゃぐ大神とかえで。メリーゴーランドを楽しむかえで。子供ばかりで恥ずかしがる大神。コーヒーカップで激しく回すかえで。気持ち悪くなる大神。アイスクリン屋で注文する大神。
「バニラと苺のアイスクリン、一つずつ」
「苺はデカ盛りね」
「〜〜すみません、そういうのはちょっと…」
「あら、あなた新入り?私を誰だかご存じない?何を隠そう帝国華激団・花やしき支部ちょ――」
「〜〜うわ〜っ!!ちょっとあやめさんっ!!」
かえでの口を押さえる大神。?な店員。アイスクリンを食べて歩く二人。デカ盛りで笑顔なかえで、苺のキャラのキーホルダーに目を輝かす。
「可愛いですね。買っていきましょうか?」
「え?〜〜か、勘違いしないで!私はこんなガキっぽいもの別に…」
かえでを見つけ、近づいてくる清掃員。
「お久しぶりです、支部長…!」
「え?えーと…」
「本部に転属になられてからも大活躍だそうじゃないですか!さすがは藤枝支部長、我々も鼻高々ですよ!」
暗くなり、無造作にキーホルダーを元あった場所に戻すかえで。
「あやめさん?」
「…行くわよ」
「え?あ…、すみません、失礼します」
「はい、今日は楽しんでいって下さいね!」
立ち去るかえでに追いつく大神。涙ぐむかえでに黙る大神。
★ ★
浅草。雄たけびをあげ、炎を吐く降魔。逃げる人々。走って逃げるあやめ。
「くくっ、無駄無駄ぁ!」
飛んで追う叉丹。剣を振り下ろすと地面が割れ、宙に投げ出されるあやめ。
「きゃあああああ…!!」
あやめの腕を掴もうとする叉丹。銃で撃つあやめ。怯む叉丹。信号で一回転し、着地して走って隠れるあやめ。
「くくく…、今度はかくれんぼか…」
キネマトロンで連絡するあやめ。
「浅草に叉丹と降魔が現れたわ。応援をお願い!」
「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」
凛々しく顔を上げる稽古中の花組。通信を切り、様子を見るあやめ。
(治において乱を忘れず…か。確かにその通りね。〜〜せめて刀があれば…)
あやめの足を持ち上げる羅刹。
「え…?〜〜きゃああああっ!!」
「見ーつけた」
「〜〜は、放してっ!」
スカートを押さえるあやめ。
「どうする?このままアジトに直行か?」
「せっかく召かしてくれたんだ。応えてやらないと失礼というものさ」
笑い、あやめの足を離す羅刹。倒れるあやめに剣を突きつける叉丹。
「今の貴様は蜘蛛の巣にかかった蝶同然。簡単には逃げられまい」
悔しく叉丹を睨むが、気配を察し、笑うあやめ。
「――それはどうかしら?」
気配に気づき、見上げる叉丹と羅刹。翔鯨丸から降り立つさくら達の神武。
「帝国華撃団、参上!」
「貴重な稽古の時間を潰してくれちゃって…、覚悟してもらうわよ!」
「ちっ、やはり来たか…。だが、こちらには人質が――」
あやめの格好をした斧彦を抱き寄せる叉丹。
「きゃっ!いや〜ん、叉丹ちゃんってば積極的なんだからぁん」
「〜〜な、何だ、貴様は!?」
叉丹と羅刹の周りが爆発。
「久々の薔薇組、登場ですっ!」
「わぁ、薔薇組だぁ!やっほ〜!」
「いつこっちに戻ってきたん?」
「ついさっきよ!巴里も良かったけど、こっちも結構楽しそうじゃない」
「副司令は私達で保護しました!もう安心ですよ」
「助かったわ、ありがとう」
翔鯨丸からマイクで言うあやめ。
「ふふっ、さすがはエリート集団。やってくれますわねぇ」
「おのれ…!いつの間に軍はこんな訳のわからん組織を作ったのだ!?」
「むき〜っ!オカマを馬鹿にしたわねぇっ!?」
「でも、イケメンだから許しちゃいましょ!ちゅっ」
「〜〜よ、寄るなぁっ!!」
「今よ!私が代理で指揮を執るわ、叉丹と羅刹を撃破するわよ!」
「了解!はあああっ!!」
さくらの剣をよける叉丹。
「〜〜ちっ、私としたことが…」
「いや〜ん、待って、さった〜ん」
「うわあああ!?〜〜くっ、来るなぁ!!」
叉丹を追いかける薔薇組。
「チャーンス!一百林牌!!」
炎の拳が当たり、体勢を崩す叉丹。慌てて逃げる羅刹。
「〜〜な、何かやばそうなんで、自分は先に…」
「〜〜こ、こらぁっ!!勝手に帰るなぁっ!!」
「おーっほほほ!楽勝ですわねぇ〜」
「〜〜す、すごいですぅ!あの叉丹があんなに動揺を…」
「〜〜恐るべし、薔薇組…」
大神とかえでにキネマトロンで連絡を試みるかすみと由里。
「〜〜駄目です、大神さんも代理も連絡が取れません…!」
ハッとなるあやめ。
「強い電波障害をキャッチしました。おそらく何者かがお二人のキネマトロンの電波を歪曲加工したのかと…」
「多分、あやめ君が昨日今日襲われた件とも関わりがあるな。…ったく離れるなとあれほど言ったのによぉ」
「…発信器から大神君の居場所を特定して!かえでも一緒のはずよ」
「了解!」
「ん?いつの間に発信器なんぞ…」
「紅蘭に頼んで、改良した物を大神君のキネマトロンにつけてもらったんです。――こんなこともあろうかとね…」
「〜〜あやめ君、顔、顔!」
おっかない顔のあやめにビビる米田。モニターに反応。
「反応ありました!浅草の花やしきです!」
「花やしき…?〜〜ふぅん、そう…」
「〜〜あ、あやめ君、ファンが泣くぞ!?」
「あら、別に怒っていませんわ。昨日、あんなに私を守るとか言っておきながら、まんまと策にはまってデートをすっぽかし、妹と楽しく私の支部で遊んでることなんて、怒りの範疇に入りません」
(〜〜大神、お前も苦労するなぁ…)
「あ〜ん、やっぱり電波障害ですぅ…。これじゃあ連絡取れませぇん」
「私が行くわ。――紅蘭、蒸気バイク借りるわよ」
「へ?あぁ、ええですけど…?」
「〜〜お一人では危険です…!」
「そうですよぉ、向こうの罠かも…!」
「…かもね。でもね、もし、大神君が危険な目にあっていたらと思うと、じっとなんかしていられないわ。彼は今まで何度も私を助けてくれた。今度は私が彼を助ける番よ」
「副司令…」
「――それに…、一言言っておきたいこともあるし…ね?」
怪しく笑うあやめ。ビビる風組。
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