★10−1★



崩れる建物。避難する人々。はぐれ、泣く子供。怪我人を助ける月組。

「こっちに軍が手配したバスがあります!早く乗って下さい!――押さないで!大丈夫です、全員乗れますから!」

「――加山隊長、D地区の避難、完了しました!」

「ご苦労!では、風組からの物資支援にあたってくれ」

「了解しました!」


敬礼し、去る隊員。真っ暗な空を飛ぶ翔鯨丸を不安な顔で見上げる加山。

★                ★


翔鯨丸。操縦するあやめ。機械を動かす風組。モニターに帝都崩壊の映像。

「予想以上にひどい状況だ…。帝都中の市民が避難するわけだ、これからますますパニックになるだろう」

「〜〜私達はどうすれば…?」

「市民の救護と物資調達は月組と風組に任せてある。お前達花組は天海を討つことだけを考えろ」

「〜〜そないなこと言うても、またいつ第二波が来るかわからんで?」

「落ちつけ!一度食らっちまったもんはしょうがねぇだろ?」

「司令のおっしゃる通りだ。被害拡大防止を優先に今できることをしよう」

「隊長…、そうですね…!」

「これが最後の戦いだな…!」

「この戦いが終わったら、アイリス達も皆も平和に暮らせるんだよね!?」

「あぁ、頑張れるか、アイリス?」


アイリスの頭をなでる大神。

「うんっ!」

「あぁ〜っ!アイリス、ずる〜い!大神さん、私の頭もなでて下さぁい!」「〜〜い、いぃっ!?」

「ははは…、それだけ元気がありゃ大丈夫だな。――よし、決戦に向けて、各自今のうちに休んどけよ」

「了解!」


出ていくマリア達。一緒に出ていくさくらを見つめるすみれ。

「どうした、すみれ君?休憩室に行かないのかい?」

「…言われなくても参りますわ!まったく、耳にたこができてしまいます」


つんとして行くすみれ。?な大神。すみれを見つめ、頭を掻く米田。

★                ★


呪文を唱え、帝都周囲に霊的バリアを張る夢組。見学する加山と薔薇組。

「不気味なほど静かね…」

「強大な力を使ったので、少しお休みしてるんでしょうか?」

「あぁ〜ん、一郎ちゃん達、大丈夫かしら?あのミロクとかいう毒女のせいで余計な体力使っちゃったみたいだしぃ…」

「それぐらいでへこたれる花組じゃないさ。大神達も頑張ってるんだ。俺達は俺達のできることをしよう…!」

「や〜だ!加山君ってばかっこいい〜!」

「この戦いが終わったら、私とお付き合いしな〜い?」

「〜〜え?あっははは…、……そりゃ…必ず生還しないとな…」

「ふふっ、でも、親友の加山さんが月組の隊長だったって知ったら、大神さん、どういう反応しますかね?」

「はは、そうだな。士官学校を出てもあいつはあいつのままだった。本当、大した奴だよ、大神は。――俺の自慢の親友だ…!」


空を見上げ、凛々しく微笑む加山。

★                ★


凛々しく空を見上げる大神。翔鯨丸・甲板。隣に来る戦闘服のあやめ。

「空が真っ暗ね…」

「あやめさん…!操縦はよろしいんですか?」

「自動に切り替えるよう言われたの。私も力を温存しとけですって」

「そうですか…」

「…やっぱり緊張するわよね?」

「はい…。でも、この暗い空を早く綺麗な青空に戻さなくては…。それができるのは俺達だけですから」


苦笑するあやめ。きょとんとなる大神。

「ふふ、ごめんなさい。私の好きな人って皆同じこと言うんだなぁって…」

「は、はぁ…?」

「そうね。首領の天海を討てば、全ては終わる…。そして、葵叉丹も…ね」

「あやめさん…」


大神の手を握り、さするあやめ。

「さっきはありがとう。まだちゃんとお礼言えてなかったわよね?もぎりさんの大事な商売道具なのに、無理させちゃった…」

「痛みは全然感じませんでした。あなたを守るんだって必死でしたから…」

「ふふっ、でも、素手で向かっていくなんて、びっくりしたわ」

「はは…、ああするしかなかったですしね」

「駄目よ、もっと自分を大切にしなくちゃ。――私の気持ちも考えて…?」


ペンダントを大神の首につけるあやめ。

「これは…?」

「小さい頃、母がくれたお守りなの。『将来を誓う人を見つけたら、渡しなさい。きっと、永遠に二人を守ってくれるから』…ってね」

「え…?それって――」


大神を抱きしめるあやめ。あやめの背中に手を回し、抱きしめる大神。

「――約束してくれたでしょ、ずっと私の傍にいるって?」

「はい…」

「なら、私の為に無茶はしないで。辛い時は辛いって言っていいんだから」

「はい…!」

「ふふっ、よろしい。――戦いが終わったら、私と真剣にお付き合いしてくれる?正式に結婚を前提に…、このペンダントはその証なのよ」

「もちろんです…!――これからもずっと俺の傍にいて下さい」

「大神君…」


キスする大神とあやめ。隠れて見ているさくら、マリア、アイリス、紅蘭。

「お〜!アツアツやなぁ」

「〜〜お兄ちゃんのバカ〜!!アイリスとは遊びだったのぉ!?」


落ち込むさくらに気づき、見つめるマリア。

★                ★


長刀で特訓するすみれ。破邪の力を使うさくらを回想。

『――私は大好きな人達を守る為、この力を授かった…!そして、大好きな人達を傷つける奴らを葬る為、力を使う!!』

『――すみれさんは帝劇に入った時からの私の憧れでしたから!』

『――私もすみれさんみたいなスタァになりたいなぁ』

「〜〜きえええええいっ!!」


人形が斬られて倒れる。息を切らすすみれ。来るカンナ。無視するすみれ。

「準備運動とは感心だねぇ。無理すんなよ。実戦でバテたら意味ねぇしな」

「…あなたに言われなくてもわかってます!」

「はは、そりゃそりゃ結構」


人形の棒を折り、構えるカンナ。

「一回手合わせしねぇか?どうもじっと待ってるっていうんは苦手でさ」

「…ふん、まずはご自分を心配なさったらいかがっ!?」


カンナに斬りかかるすみれ。棒で受け止め、トンファーにして戦うカンナ。苦戦するすみれ。長刀が舞い、床に刺さる。下唇を噛むすみれ。

「なんだなんだ、らしくねぇぜ?これぐらいでバテるなんてよぉ」

「〜〜力を温存してるんですっ!」


長刀を引き抜くすみれを黙って見つめるカンナ。

「――悩みがあるんなら言えよ。あたい達、仲間だろ?」

「…仲間?ほほ、どいつもこいつもまったく…、そんな恥ずかしいことよ〜く口に出せますわねぇ?」

「すみれ…。お前、おかしいぞ?いや、おかしいのは前々からだけど…、特に仙台から帰ってきてからだ!何かあったんなら言えよな、水臭い――」


すみれの肩に置こうとしたカンナの手を払うすみれ。

「あなたに話して何になるのです?失礼、到着まで仮眠させて頂きますわ」

出ていくすみれ。うつむき、握った拳を壁にイライラ叩きつけるカンナ。

「〜〜何だよ…。あたいじゃ…、役不足だって言うのか…?」

傷がついた長刀を見ながら、悔しく廊下を歩くすみれ。向こうから落ち込んださくらが歩いてくる。互いにおでこをぶつけるさくらとすみれ。

「〜〜いっったいではありませんことっ!?どこを見て――!!」

「……すみませんでした…」


暗く歩いていくさくらを不思議に見つめるすみれ。休憩室から出てきたあやめとぶつかりそうになるさくら。

「あ…っ!?――どうしたの、ボーッとして?」

「……あ…、〜〜い、いえ――!」


休憩室から遅れて出てくる大神。ハッとなるさくら。

「どうかしたんですか?」

「何だかさくらが元気ないみたいなのよ…」

「え?どうしたんだい?不安なことがあるなら、言ってみてくれよ」


休憩室を横目で見るさくら。ベッドに寝ていた痕跡。

「ほ…っ、本当に何でもないんです…。〜〜失礼します…!」

「あ、さくら君…!…どうしちゃったんだ?」


会釈し、足早に去るさくら。休憩室を見て、黙ってさくらを見るあやめ。

★                ★


アイリスの夢。破壊されていく帝都。脇侍達を倒す花組。

『やだ…、〜〜やだよぉ…』

脇侍達を操る叉丹。燃え上がり、灰と化す帝都。倒れていく花組。

「〜〜いやあああ〜っ!!」

飛び起きるアイリス。仮眠室を息を荒くしながら見渡し、泣くアイリス。

★                ★


地下倉庫。整備服で光武の最終調整をする紅蘭。木箱に座るアイリス。

「ねぇジャンポール、アイリス達、勝てるかなぁ…?…アイリスね、何か不安なんだ。〜〜何だかすっごく悪いことが起こりそうな気がして……」

「――らしくないなぁ、アイリス?」


近づいてきて、アイリスの顔を覗き込む紅蘭。

「何もやらんうちから諦めとったら、うまくいくもんもいかなくなるで?うちらは絶対大丈夫や!今までかてそうやったやろ?」

「うん…。今まではね……」

「何や、アイリスがそんなんやとうちまで暗くなってまうやないかぁ…」


隣に座り、しょげる紅蘭。ジャンポールをぎゅっとするアイリス。

「ごめんね…。でもアイリス、さっきもすっごく悪い夢を見て…」

「夢…?」

「〜〜皆ね…、殺されちゃうの…。さくらも…、あやめお姉ちゃんも、…お兄ちゃんも…皆…〜〜皆…っ!」


泣くアイリスを抱きしめる紅蘭。

「安心しいや。な〜んも悪いことなんて起こらへん。夢ってのはな、寝ている間の喜びや不安がそのまま表れるもんなんや。悪い夢見たんは、それはアイリスが少し緊張しとるからやさかい。でも、ぜ〜んぜん心配なんてせんでええ。うちらが力を合わせれば、絶対負けやしまへん!この戦いが終われば、ぐっすり眠れるようになるさかい。な、せやから、元気出し?」

「うん…。そうだね……」


立ち聞きし、黙って腕を組んでいるマリア。

★                ★


街を攻撃する脇侍の大群。破壊されていく街を見下ろす花組。

「……脇侍の総数…、ここだけで2000ってところね」

「〜〜とてもやないけど、全部を相手にしてられへんわ…」


機械を操作する風組。メインモニターに日比谷。

「日比谷に強力な妖力反応を確認!」

「おそらく、黒之巣会の本拠地と思われます!」

「そこを集中的に狙いましょう!天海さえ倒せば、帝都中の脇侍も全て消滅するはずです」

「そうね。皆、これが最後の戦いになるわ。気を引き締めていきましょう!」

「了解!」

「あやめ君も出撃してくれ。これは総力戦だ。少しでも戦力がいるからな」

「了解しました!では、大神隊長のサポートを務めさせて頂きます!」


敬礼するあやめ。眉をひそめるさくら。

「うむ、――では、これより最終作戦を行う!目標は首領・天海の討伐及び黒之巣会の壊滅!――大神、出撃命令を!」

「帝国華撃団、出撃せよ!!これを最後の戦いにするぞ!!」

「了解!!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」


走って出ていく花組。操作する風組、薔薇組からの通信に気づく。

『こちら薔薇組!劇場は心配しないで。月組が防御壁を設置してくれたわ』

『はっはっは!ま、俺達にかかればちょちょいのちょ〜いさ!』

「きゃあ!かっこいい〜!さっすが加山さん!」

「――ん?加山…?」

『え?本当、本当?んじゃ、その格好良い加山君と今度デートでも――』


立ち止まる大神。慌てて通信を切るかすみ。椿の口を塞ぐ由里。

「椿ちゃん、今、加山って言わなかったかい?」

「〜〜え…、え〜?空耳じゃないですか〜?」

「大神さん、早く行って下さい!隊長が遅れちゃ示しがつきませんよ!?」

「あ…、そ、そうだな…。じゃあ、後は頼んだよ!」


出ていく大神。手を振って見送り、安堵する風組。由里の手を払う椿。

「はぁ…。〜〜何で加山さんが月組の隊長ってこと秘密なんですかぁ?」

「決まってるじゃない、――『忍者』ですもの」


首を傾げる椿。

★                ★


格納庫。大神が考えながら、歩いてくる。背中を壁に預けているマリア。

「さっきの声…、どこかで聞き覚えのあるような…?――ん、マリア?」

「…隊長、さくらのこと、気になりませんか?」

「え?あぁ…、そういえば、あまり元気がなかったような…」

「…らしくありませんね。普段なら真っ先に隊員の心配をなさるのに」

「え…?」

「――急いで下さい。皆、待ってますから」


ダストシュートに飛び込むマリア。わからず、頭を掻く大神。格納庫。光武に搭乗する大神。機内のモニターにあやめ。

「調子はどう?」

「良好です!この戦い、必ず勝ちましょう!」

「ふふっ、頼もしいわね。期待してるわよ、隊長さん!」

「は、はい…!」

「…おいおい、あたいらも聞いてること、忘れてねぇだろうな?」

「あっついあっつい!のろけるのは、平和になってからにしいやぁ〜?」

「〜〜あ…、す、すまない…」


照れ笑う大神。黙って怒るマリア。うつむくさくらにムッとするすみれ。

「花組、搭乗確認!」

「目標、日比谷!照準セット!」

「――発射!!」


翔鯨丸から発射され、パラシュートで日比谷に降り立つ花組。

「帝国華撃団、参上!」

建物を破壊する脇侍達が気づき、寄ってくる。

「何て数だ…!?〜〜く…っ、これでは本拠地に行く前に…」

「しっかりしなさい!気迫に圧倒されたら、こちらの負けよ!?」

「そ、そうですね…!よし、全員戦闘配置につけ!各自脇侍の撃破に専念!!」

「了解!」


一斉に飛び出し、脇侍達を倒していく花組。

「一百林牌!!」

「スネグーラチカ!!」


マリアとカンナの炎と氷の合体攻撃。アイリスが花を撒き散らし、脇侍を撹乱後、爆弾を発射する紅蘭。爆発し、壊れていく脇侍達。

「かんにんな…。安らかに眠りや…」

剣と長刀で倒すさくらとすみれ。すみれに襲いかかる脇侍を倒すさくら。

「大丈夫ですか!?」

「〜〜よ…、余計なお世話ですわ!!あれぐらい一人でよけられましたっ!!」

「あ…、〜〜す、すみません…」

「いいから戦闘にお戻りなさい!」


つんとして行くすみれ。落ち込むさくらを横目で見る。

(――あの動き…、今のあの娘にあって私にないもの…。〜〜私も今まで以上に努力すれば…!)

「――狼虎滅却・千変万化!!」


脇侍達を倒す大神、あやめに駆け寄る。

「大丈夫ですか!?」

「助かったわ。ありがとう!」


大神とあやめを見つめ、ショックなさくらに攻撃する脇侍。

「〜〜きゃ…っ!?」

身構えるさくら。銃で撃ち、脇侍を倒すマリア。

「…戦いに集中しなさい」

「あ…、〜〜す、すみません…」


新たに迫ってくる脇侍達の大群。

「〜〜おいおい、これじゃきりないぜ!?」

「大神はん、まずはこの大軍を何とかせな…!」

「そうだな。俺が囮になる。その隙に君達は全員本拠地に潜入するんだ!」

「でも、そんなことしたら、大神さんが…!!」

「俺なら大丈夫だ!時間がない、第二波が来る前に天海を止めなくては!!」

「――その必要はないぞ」


ビルの上に現れる叉丹。

「葵叉丹…!!」

「あなたに用はないわ!おとなしく道をあけなさい!!」

「フフッ、通りたければ、通るがいい」


指を鳴らす叉丹。本拠地が消え、闇神威が出現。

「えぇっ!?ほ、本拠地が消えちゃったよ…!?」

「残念だったな。ここははずれだ。全て私がつくった幻…」


アジトの幻影が脇侍の大群に変わり、迫る。囲まれる花組。

「〜〜ま…、まさか…、罠でしたの…!?」

「貴様達の単純な思考などお見通しだ。残念だったな、華撃団…!!」


攻撃してくる脇侍達。防御し、反撃する花組。

「〜〜このままじゃ負けちゃうよぉ…!」

「〜〜皆、諦めるな!俺達が倒れたら、誰が帝都を守るんだ!?」


紅蘭のモニターに四方からさらに脇侍の大群。唱え、空を黒いドームで覆う叉丹。翔鯨丸から見て、驚く米田と風組。

「な、何だありゃ…!?」

「ド…、ドームから異常な妖力反応を確認…!〜〜潜入不可能です…!!」

「〜〜何だと…!?」

「〜〜あかん…!逃げ道を塞がれてもうた…!!」

「紅蘭、翔鯨丸と連絡が取れるか!?」

「〜〜だ、駄目や…。通信電波を妨害されとる…!」

「はははは…!!これで助けは呼べぬな?さぁ、どうする?」

「〜〜く…っ、こうなりゃ玉砕覚悟で――」

「やめろ、カンナ!!命を粗末にするな!!皆、山作戦に切り替えるんだ!!」

「りょ、了解…!」


陣形を変える花組。前に出て戦う大神とあやめ。

「大神君、大丈夫…!?」

「自分は平気です!あやめさんも無理なさらないで下さい…!」

「えぇ…。〜〜くっ、せめて翔鯨丸の援護があればね…」

「――破邪剣征・桜花放神!!」


さくらの攻撃がすみれに当たりそうに。

「〜〜どこを狙ってるんですのっ!?」

「あ…、す、すみません…っ!」

「〜〜いいから、おどきなさいっ!!――神崎風塵流・胡蝶の舞!!」


炎がマリア達に当たりそうに。

「〜〜うわちちっ!!あっぶねぇじゃねぇか、サボテン!!」

「当たったら大やけどだよぉ!?」

「〜〜お黙りなさいっ!!考えなしに密着しているあなた方が悪いのです!!」

「〜〜んだとぉっ!?」


喧嘩を始めるカンナとすみれ。

「〜〜んもう!こんな時に喧嘩したら駄目だよぉ〜!!」

「うちに任しとき!『ぶっとびくん2号』いっくで〜っ!!」


ロケットランチャーを放つが、爆発し、真っ黒になる紅蘭とマリア達。

「げほごほ…、〜〜あぁ…、またやってもうたぁ…」

「〜〜そんなポンコツで余計な傷を増やさないで下さいましっ!!」

「〜〜ポ、ポンコツとは何や…!?」

「〜〜いい加減にしなさいっ!!これ以上陣形を乱さないで!!」


喧嘩するマリア達。泣き出すアイリス。

「ぐすっ…、〜〜喧嘩はやめてよぉ…」

「〜〜どうしたんだ、皆!?これじゃあ、いつも以上にバラバラじゃないか!!」

「〜〜皆、興奮状態に陥ってるのよ…。何とか落ち着かせなくちゃ…」

「――そうだ…!さくら君、荒鷹だ!荒鷹の霊力を使えば、突破口を開けるかもしれない…!!」

「あ…、はい!やってみますっ!」


嬉しく頷き、刀を大神と握るさくら。集中し、霊力を高め、放とうとするさくらだが、直前にあやめが脇侍に吹き飛ばされ、大神の手が離れる。

「きゃあああーっ!!」

「ハッ、〜〜あやめさん…っ!!」


あやめに駆け寄って、抱き起こす大神。ショックなさくら。

「あやめさん、大丈夫ですか!?」

「う…、ご…、ごめんなさい…。〜〜さくら、早く…!」

「あ…、は…、はい…。〜〜破邪剣征・桜花放神!!」


放つが、叉丹をすり抜ける。驚くさくら、大神、あやめ、すみれ。

「くくく…、そんな乱れた心で私を倒せるものか…!」

「〜〜あ…、あぁ…」


後ずさるさくら。拳を握るすみれ。

(〜〜何をやってらっしゃるの…!?この大事な時に――)

すみれにとびかかる脇侍。

「きゃああっ!?」

悲鳴に振り返るさくら。脇侍に攻撃されるマリア達。

「〜〜皆さん…!!」

「ふはははは!今日こそ貴様達を葬ってくれよう…!」

「〜〜させるかああっ!!」


手中に妖力を集める叉丹に飛びかかる大神。火花が散り、笑う叉丹。

「ふふふ…、女にうつつを抜かす貴様に私が倒せるかな?」

「何…っ!?〜〜うわあああっ!!」

「大神君…っ!!」


弾き飛ばされ、刀で体勢を立て直す大神。叉丹を剣圧で吹き飛ばすあやめ。頬から血を流し、笑う叉丹。

「くく…、さすがはあやめだ。だが、私に気を取られている場合か?」

「え…?〜〜きゃあああああっ!!」


背後から近づき、あやめの背中を斬る脇侍。倒れ、動かなくなるあやめ。

「あやめさぁんっ!!〜〜うわああっ!!」

大神に近づき、攻撃する脇侍。倒れる大神。

「大神さん…!!」

「〜〜きゃああああっ!!」


脇侍の大群に攻撃され、倒れていくすみれ達。動揺するさくら。悔しく立って、叉丹に斬りかかるが、脇侍に弾き返される大神。

「大神さん…!!〜〜きゃああーっ!!」

脇侍に攻撃され、倒れるさくら。うつ伏せのあやめに刀を突きつける叉丹。

「愛しいあやめ、まずは貴様に制裁を加えてやろう」

闇神威に搭乗し、剣であやめの光武を斬り続ける叉丹。

「きゃあああああ〜っ!!」

「〜〜やめろぉっ!!あやめさんには手を出すな!!殺すなら俺を殺せぇっ!!」


傷だらけで立ち上がる大神。驚くさくら。

「お…、大神…さん……」

「ほぉ、くくく…、そんなにあやめを守りたいか?」


指を鳴らす叉丹。脇侍が大神を取り囲み、攻撃。耐える大神。

「〜〜だ…め…、大…神く…ん…!皆を…連れて逃げ…いやああああっ!!」

叉丹に攻撃され、意識を失うあやめ。

「や…、やめろぉっ!!〜〜卑怯だぞ、叉丹…!!」

「ふはははは…!敵の頼みを素直に聞く馬鹿がどこにいる!?」


大神とあやめへの攻撃を激しくする脇侍達。息を荒くして見るアイリス。燃える帝都。脇侍の大群。倒れていく花組。

「うぅ…、夢と…〜〜おんなじ…だよぉ…」

脇侍の大群がさくらを囲む。さくらに近づき、剣を突きつける叉丹。

「さぁ、そろそろ幕を下ろすとするか…!」

剣を振り下ろす叉丹。さくらをかばい、倒れるあやめ。あやめの腰に付けたお守りの鈴が鳴る。目を見開くさくら。幼いさくらをかばって倒れる若いあやめを思い出す。

「ほぉ、まだ動けたか――!」

脇侍の大群が破壊され、驚く叉丹。霊力を刀から大量放出する大神。

「帝国華撃団を…っ、〜〜なめるなぁっ!!」

「〜〜貴様ぁっ!!」


叉丹に斬られ、倒れる大神。幼いさくらを守る対降魔部隊を回想するさくら。霊力が昂ぶり、頭を押さえる。

「いや…、〜〜いやああああっ!!」

「な、何だ、この霊力は…!?」


撃たれ、剣を落とす叉丹。武器を構え、駆け寄るマリア達。

「アイリスと紅蘭は隊長とあやめさんの介抱を!後の者は私に続いて!!」

「了解!」「了解!」「了解!」


叉丹を一斉攻撃するマリア達。うずくまるさくらに近づき、触れるすみれ。

「ちょ、ちょいと、大丈夫ですの…?〜〜きゃ…っ!?」

すみれの指に散る霊力の火花。一気に霊力を解放するさくら、倒れている大神とあやめの霊力と共鳴し、空のドームが破れる。察し、笑う叉丹。霊力が消え、気絶するさくら。近づこうとしたアイリスを叉丹の剣が遮る。

「〜〜さくらから離れろ!!」

翔鯨丸の砲撃。叉丹が怯んだ隙にさくらを救出するマリア。

「迎えに来たぜ!全員翔鯨丸に乗りこめ!!」

マリア達を収納する翔鯨丸。剣を振り、イラついて地面に刺す叉丹。

「〜〜米田め、どこまでも私の邪魔を…!だが、これで確証はとれた…!」

さくらとあやめの霊力が共鳴し合ったのを回想し、笑う叉丹。

「――待っていろ…、必ずやこの私が帝都を無に帰してみせる…!」


10−2へ

舞台(長編小説トップ)へ