★12−2★



中庭。ベンチに座り、湯呑を持って、雪が降る空を見上げるあやめ。

「――だいぶ積もってきましたね」

「大神君…」

「寒くありませんか?」

「えぇ、平気よ」


隣に座り、袋の豆をあげる大神。礼を言って食べるあやめ。

「やっぱり…、私のせいよね」

「え?」

「私の霊力が低下したせいでかえでが来て…、雰囲気悪くなっちゃった…」

「そんなことありません!ただ突然のことで皆少し動揺してるだけで…」

「ありがとう…。でもね、かえでがあんな風になったのは私のせいなの…」

「え…?」

「陸軍の中将だった父は、日清戦争で戦死…。巫女を継いだ母も私達が幼い頃、殺されて…ね…」

「そうだったんですか…」

「えぇ。その後、私とかえでは親戚の家にたらい回し。皆、私達が迷惑だったみたい。ただでさえ戦争続きで食糧不足なのにっていつも嫌味言われて…。だから、どんどんあの子もひねくれていって…。私が育てるしかなかったのよ。士官学校で一生懸命勉強して、早く出世して、あの子を楽させてやりたいってずっと思ってた。そしたら、あの子も私みたいな軍人になるんだって言ってくれてね。その時はすごく嬉しかったな…」

「何というかその…、あやめさんも苦労なさったんですね。普段はそんなことちっとも垣間見せないから…。俺、恋人なのに何も知らないで…」

「フフ、こう見えて、結構辛酸なめ尽くしてきたんだから。…だからかな?かえでもね、自分を強く見せたいっていう願望があるのよ。人から弱いって思われたくない、私は誰にも頼らないって無理しちゃってるのかも…」

「そうかもしれませんね。もしかしたら、あやめさんにつっかかるのも…」

「えぇ、超えたいんでしょうね、私を…。無理しすぎなのよ、あの子…。だから大神君、あの子にチャンスをあげて。確かに可愛気がないし、協調性にも欠けてるわ。でも、この任務が成功したらあの子、大尉になれるって話なの。そしたら、少しは自信と余裕を持てるようになるだろうし…」

「妹さん思いなんですね」

「まぁ。フフ、奥さんになる女にお世辞言うつもり?」

「え?お、奥さんって…!」

「儀式が成功したら、お婿さんに来てほしいな。大神君が私の旦那さんだったら、おばあ様も安心なさるだろうし。…考えといてくれる?」


照れる大神。微笑み、大神の肩に寄りかかるあやめ。

「自分でいいんですか?あなたなら、俺なんかよりもっと素敵な人と…」

「大神君がいいの。大神君じゃなきゃイヤ…!」


手を重ねるあやめ。キスし、照れくさく見つめ合い、寄り添う二人。

「ふふっ、かえでにもあなたみたいな人がいたらね…」

雪が花びらに変わる。幻想の桜の木の下で立つ殺女。青ざめるあやめ。

「――あやめさん…?」

手を前に出して握る殺女。胸が痛くなり、うずくまるあやめ。

「あやめさん…!?どうしたんですか!?しっかりして下さい!!」

「う…っ、くぅ…」

「早く医療ポッドに…!誰か…〜〜誰か来てくれーっ!!」


苦しむあやめ。花びらが黒くなり、殺女が笑って近づいてくる。

「い…や…、〜〜いやああああっ!!」

「あやめさん、大丈夫ですか!?〜〜あやめさんっ!!」


かえでが部屋の窓から見下ろし、少し驚く。叉丹が背後に立って笑う。

★               ★


医務室。医療ポッドに入り、眠るあやめ。

「脈拍、心拍数ともに正常…。もう大丈夫ですよ」

「よかった…」


眠るあやめをベッドに移し、手を握る大神。廊下から見る花組と三人娘。

「――拒絶反応…?」

「はい…。錯乱状態時に異常な霊力の高まりと心拍数を確認したんです」

「おそらく、藤枝の巫女の力によるものなんでしょうけど、詳しくは…」

「儀式を行っちゃえば、元に戻ると思うんですけどねぇ…」

「でも、さっきの狂乱ぶり…。尋常やなかったで?」

「まるで…、恐ろしい幻覚にでも襲われたかのような…」

「〜〜あやめお姉ちゃん、死んじゃうの?」

「そ、そんなことあるもんか!〜〜あやめさんに限ってそんな…」

「絶対大丈夫よ!だめでも、私達で何とかするの!それが花組ですもの」

「その通りよ。仲間の危機を放っておくわけいかないものね」

「それはともかく、姉の一大事にあの根性悪の妹は何してるんですの!?」


軍服の米田とかえでが入ってくる。

「あ、米田司令…!かえでさん…!」

「あやめ君の様子はどうだ?」

「今は落ち着いて眠っております」

「そうか…」

「軍服っちゅーことは賢人会議か?またえらい時と重なったもんやで…」

「今日から会議には私が出るわ。ゆっくり休むよう姉に伝えておいて頂戴」

「え…?いいんかよ、司令?」

「しょうがねーだろ。あやめ君はあの状態だ。とても会議には出せんし…」

「すでに報告書はまとめてありますわ。神武パワーアッププロジェクトの資料も揃えておきました」

「へ?あ…、あぁ、ご苦労だったな。…んじゃま、行くか」

「了解」

「では、お車を…」

「いいわ、私が運転してくから」

「でも…」

「――姉さんにもしもの事があったら、…どう責任取るつもり?」


かすみを睨み、米田と出ていくかえで。困り果てる米田。

「〜〜あんな言い方しなくても…。ねぇ!?」

「でも、いざとなるとお姉さんが心配なんですよ!さすが姉妹ですよね」

「そうかな…?〜〜かえでお姉ちゃんの心、とっても怖かった…。真っ暗で、すごく寒い…」

「〜〜そ、それだけ心配してるってことじゃない!」

「…やけに肩を持ちますのね」

「え?」

「あやめさんの妹さんだし、信頼したいのはやまやまよ。けど…」

「あたい、あいつが副司令の座を乗っ取ったら、ストライキするからな!」

「今回はやけに意見が合いますわねぇ。悔しいですけど、その通りですわ!帝国華撃団の和を乱す輩は、この神崎すみれが排除致しましてよ!」

「アイリスも嫌い!戻ってきたら、どっかに飛ばしちゃうもん!」

「そんなぁ…。紅蘭も何とか言ってよぉ!」

「…ま、もし、かえではんが副司令になったら、うちは花やしき支部に戻るとしますかな。その前にあの冷酷無比な心を解剖しとかな…」

「〜〜そんなぁ…」


落ち込むさくら。あやめの手を握り、心配に見つめる大神。

★               ★


「――それ故、神武の性能をアップしないことには勝利はないでしょう」

「ふむ…。米田君はどう思うかね?」

「うむ、まことに難題ですが、まず資金の…」

「――その必要はありません」


賢人会議。ざわつく面々。驚く米田。

「〜〜お、おい、かえで君…!」

「お手元の資料をご覧下さい。現在準備中の巴里、紐育華撃団の設立にあたって、新たに開発された機能です」


スクリーンに映る装置と映像。

「これはF−9903、神武の性能を最大限にまで引き上げる装置です。これはすでに米国で開発されており、私の顔で輸入はもちろん、改良も低コストで可能です。また、その威力は我が欧州星組でもすでに実験済みです」

「〜〜し、しかしだなぁ…」

「おぉ…!確かに性能も威力も桁違いだ…!」

「これなら赤字は免れますなぁ、総理!」

「うむ!よし、君の案を採用しよう!」


得意気なかえで。

「お待ち下さい、総理。いくら高性能な装置でも、暴走して帝都を崩壊させては元も子もありません。よくお調べになってからの方がよろしいかと」

「伯爵!!何をおっしゃいますの!?我々の目的はあくまでも帝都防衛です!多少の犠牲はつきものでしょう!?」

「だがねぇ、君が司令だった欧州星組は危険部隊だった。確かに軍事力は今の帝国華撃団より上だったかもしれない。だが、あれは兵器だ。都市防衛機構でなく、戦争を煽って被害を拡大させたマシーンだったはずだが?」

「そうですな。他の案とも検討して…」

「〜〜な、何をおっしゃるんです、米田中将まで…!?」

「…いかがです?総理」

「確かに一理あるな。…この話は保留だ。もう少し詳しく調べさせよう」

「総理!我々には時間がないんですよ!?一刻も早く装置を導入して――!!」

「だがなぁ…、そのせいで解散したんだろ、君の欧州星組は?」

「――!!」

「――では、これにて本日の会議を終了致します」


電気がつき、席を立っていく総理達。

「まぁ、提案者があやめ君だったら、話は早かったんだがな…」

「えぇ。彼女はまだ部外者同然ですしね…」


話して帰っていく総理達。悔しく拳を握るかえで。

(〜〜どうして姉さんばっかり…)

★               ★


鍛錬室。シュミレーション訓練する花組。監督するかえでと計測する風組。

「…さくら、反応が遅れてるわよ」

「す、すみません…。〜〜あ…!」


ゲームオーバーになるさくら。

「何やってるの!?まだノルマの半分でしょう!?」

「〜〜す、すみません、もう一度やらせて下さい!」

「――止めなさい」

「え?」

「〜〜いいから、全機止めなさい!!」

「〜〜は、はいっ!!」


アイマスクが上がり、マリア達も強制ストップ。強引に降ろし、尻もちつくさくらにモップとバケツを叩きつけるかえで。

「罰として、一か月間、帝劇の全部屋の掃除を命じます」

「そんな…!さくらは次回作の主役なんですよ!?」

「せや!体がもたんで!?」

「私は副司令よ!?あなた達より立場は上なの!!上官の命令は絶対です!!」

「〜〜いいかげんになさって!!あなたは副司令といっても代理、あやめさんの代わりでしょう!?」


ムッとなるかえで。

「こんな方がこの先取り仕切るだなんて、帝国華撃団もおしまいですわね」

「まったくだ。行こうぜ、皆!」


出ていく花組。

「待ちなさい!!まだ訓練は終わってないのよ!?」

「あなたには誰もついていけません。失礼します」

「〜〜あ、あの…」

「行きましょう、さくら」


マリアに引っ張られた反動でモップを落とすさくら。風組を睨むかえで。

「…何やってるの!?早く連れ戻しなさい!!」

「…失礼します」


顔を見合わせ、席を立つ風組。唇を噛むかえで。

★               ★


「〜〜超〜ムカツクッ!!」

紅蘭の部屋で黄の光の爆発。宙に浮かぶぬいぐるみ。平気で花札する紅蘭。

「あのお姉ちゃん、いなくなればいいのに。紅蘭の爆発でやっつけてー!」

「もう少しの辛抱や。儀式終わって、あやめはんの霊力が戻れば帰るやろ」

「むぅ…。アイリスの回復で霊力戻らないかな?」

「うーん…、うちもそれ考えとったんやけど、怪我とちゃうからなぁ…。失敗したら取り返しつかへんし、慎重にせな…」

「むぅ〜…、儀式の日、早めようよ〜!明日にしない?」

「ははは、アイリスはせっかちやなぁ」


勢いよくドアを開けるマリア。

「〜〜紅蘭!下手に爆発させないでってあれほど――アイリス…?もしかして、さっきの爆発…」

「はーい!アイリスで〜す」

「マリアはん、下手な先入観は失敗のもとやで?」

「…まぁいいわ。これから食堂で作戦会議やるんだけど、参加する?」

「敵さん、現れよったんか?」

「違うわ。…あのクソ女のよ」


眼を光らすマリア。

「きゃはは!楽しみ〜」

「行こ行こ!」

「すみれとカンナは先に行ってるわ。コーヒーでも飲んで今後の――」


食堂に着き、驚くマリア。梯子に登って飾りつけするカンナ。

「よう、こんなもんでいいか?」

「はい!さすがはカンナさん、ばっちりです!」

「〜〜な、何やってるの、あなた達…?」

「何ってパーティーの飾りつけですよ?」

「さくらが急に言い出したんだ、今日はパーティーやるんだとさ」

「パーティー!?わぁい!やろうやろう!」

「〜〜ちょ、ちょっと待って!どういうこと!?」

「ふふん、決まっているではありませんか。我が神崎財閥創立50周年を祝してでしょう?さくらさんたら、このトップスタァの私に気を使えるようになるとは、少しは成長したようですわねぇ」

「ま、主役がこいつなんが気に食わねぇけど、パーティーは楽しいもんな」

「え?どなたが主役ですか?」

「誰って…、すみれだろ?」

「わぁ、おめでとうございます!次回作のですか?」

「はぁ?」

「今夜はそれも祝わなくちゃですね!かえでさんの歓迎会と一緒に」


硬直するマリア達。

「〜〜もう一回聞いてもええか?今夜のパーティーっちゅーんは…」

「かえでさんの歓迎と副司令代理着任を祝して、パーティーしましょう!」

「〜〜な…な、な、何それぇっ!?」

「本気で言ってるの!?」

「え?だって楽しいじゃありませんか。皆で楽しくおしゃべりしながら、おいしい御馳走をほおばって――」

「〜〜できると思いますの、あの女と…?」

「はい!パーティーでは皆が笑顔になりますから!」

「〜〜でしたら一人でケーキでも七面鳥でも焼くなりして下さいましっ!!」


出ていくすみれ。

「すみれさーん、どこ行くんですかー!?」

「あーあ、またあの蛇女のプライドが傷ついちまったな」

「え?」

「悪いけど、私達は参加できないわ。いえ、ハッキリ言ってしたくないの」

「どうしてですか!?」

「アイリス、あのお姉ちゃんと一緒にいたくない!」

「まったくだ。飯がまずくなっちまうよ!」

「〜〜皆さん…!」

「新しい舞台を控えてるのよ?さっさと片づけて、舞台にいらっしゃい!」


出ていくマリア達。

「…ほな、うちもセットの修理があるよってに」

「〜〜紅蘭…!」

「……さくらはん、付き合う人は考えた方がええで?」


出ていく紅蘭。落ち込み、手に持った飾りの花を見つめるさくら。

★               ★


医務室。眠るあやめの手を握る大神。稽古着で入ってくるさくら。

「さくら君か…。どうしたんだい?」

「いえ、休憩時間なので…」

「あぁ…。もうそんな時間か…」

「あの、大神さんも少し休まれた方が…。〜〜あ〜、でも、やっぱりこういう時って、患者さんの傍にいてあげた方がいいのかしら!?」

「〜〜お、落ち着け、さくら君!俺は大丈夫だから…」

「そうですかぁ…?」


ため息ついて、壁に寄りかかるさくら。

「どうかしたのかい?元気がないみたいだけど…」

「あ…、いえ、大したことじゃないんです…」


うなされるあやめ。

「あやめさん…!?」

「あやめさん、大丈夫ですか!?」

「や…めて…。〜〜あれは…私…じゃ……」

「え…?」

「〜〜だ…め…、お…がみ…く…ん…!」

「あやめさん、聞こえますか?大丈夫です、俺はここにいます!」


霊力値計測装置の針が振り切れ、警報音。

「〜〜霊力が…!!」

「かすみ君達を呼んでくれ!」

「わかりました!」


出ていくさくら。霊力のオーラが滲み出るあやめ。

「〜〜これは一体…!?」

「〜〜う…くぅ…」

『――来るのだ…、私の元へ…』

「いや…、〜〜いやあああっ!!」

「あやめさん…っ!?〜〜うわあっ!!」


霊力爆発に飛ばされる大神。火花を散らす装置。来る風組、加山、さくら。

「どうしました…!?――えっ!?」

「〜〜どうしましょう!?何かさっきより大変なことに…!」

「と、とりあえず測定器の電源を切って!」


火花に悲鳴をあげる由里と椿。

「〜〜駄目よ、これじゃ近づけない…!」

「でも、早く止めなきゃ爆発しちゃいますぅ!」

「そんなぁ、まだ死にたくありません!やっと主役がまわってきたのに…」

「諦めるな!こんな時こそ協力し合うのが仲間だろう!?」

「加山…!」

「さぁ、皆で歌おうではないか!曲は『荒波津波に飲み込まれ』〜♪」

「〜〜こんな時に不吉な歌、歌わないで下さいっ!!」

「俺があやめさんを落ち着かせる!君達は何とかして電源を切るんだ!」

「わ、わかりました…!」


あやめに近づくが、触れられず。弾き語る加山。

「負けるな、大神ぃ〜♪愛こそ試練なのさぁ〜♪」

「〜〜だ〜っ!!そこ、うるさ〜いっ!!」


かすみに棚が倒れてくる。

「〜〜きゃ…!?」

「――!〜〜危ない…っ!!」


かすみをかばう加山。棚を片手で支えるカンナ。

「よぉ、何だかえらいことになってるじゃねーか」

「カンナさん!皆さん!」

「下がって!」

「頼んだで、うちのちびロボ達!」

「それーっ!」


銃で装置をショートさせるマリア。装置のケーブルを切るちびロボ。光で装置の火花を押さえるアイリス。

「〜〜くっ、あやめさん…!」

あやめに指を触れ、殺女の映像が一瞬入ってくる大神。

(――何だ…、今のは…?)

「あ…〜〜あああああっ!!」


あやめの体から出た闇のゲルが大神を襲う。

「あやめさん…!?〜〜うわ…っ!」

身構える大神。ゲルを長刀で防ぐすみれ。

「だらしがありませんわよ、少尉!」

「すまない、すみれ君…!」


近づき、あやめを抱きしめる大神。

「しっかりして下さい、あやめさん!俺がわからないんですか!?」

目を開き、力を抑えるあやめ。舌打ちする叉丹。

「――大神…君…?……ここは…」

「医務室です。大丈夫ですよ、少し気を失っていただけですから」

「あやめさん、大丈夫ですか?」

「私…、〜〜え…!?」


医務室の惨状に驚くあやめ。

「〜〜もしかして、これ、私が…!?」

「〜〜いえ、あの、これは…、――ねぇ、加山さん!」

「仲間はいいなぁ〜。あれ程の霊力暴走をものの5分で止めるとは」


三人娘にどつかれる加山。

「〜〜やっぱり…、私が…」

「だ、大丈夫ですよ!怪我人も出てませんし」

「計測器もそないに壊れてへんし、これならすぐ直りますさかい」

「儀式までの辛抱です。そしたら、また霊力値も安定しますから」

「〜〜本当に…ごめんなさい…」


震え、大神にしがみつくあやめ。驚き、あやめを見つめる大神。

「さー、一件落着したことだし、あたいらは練習に戻ろうぜ!」

「では、失礼します。行くわよ、さくら」

「〜〜パーティー…」

「パーティー?」

「…気になさらないで下さい。ほら!主役が来なくちゃ始まらないわよ」

「うえ〜ん…」


さくらを引っ張って出ていくマリア。

「な、何なんだ…?」

大神に寄りかかるあやめ。微笑む大神。

「疲れませんか?少し横になってた方がいいですよ」

「えぇ…。〜〜でも…」


怯え、大神の手を握るあやめ。殺女を思い出し、強く握り返す大神。

(もしかして、さっきのが…)

「ありがとう…。……何だか私、大神君に助けられっぱなしね」

「え?」

「本当は上官の私があなた達を支えてあげなくちゃいけないのに…。霊力がなくなった途端これですもの…。〜〜本当、副司令失格ね…」

「そんなことありません…!たとえ力は弱くなったとしても、俺はあなたがいるだけでどれだけ支えになっているか…!」

「大神君――あ…っ!」


あやめを抱きしめる大神。

「あやめさんの声、あやめさんの笑顔…。あなたの存在が俺を強く前へ押し進めてくれます。花組の皆もそうです。あなたが俺達を愛してくれているように、さくら君達も皆あなたを愛しているんです。男の俺だけでは完全にさくら君達の心をカバーできない。あやめさんの優しい心が花組全員を救ってくれてるんです。〜〜俺じゃ頼りないのはわかってます…。でも、もっと甘えて下さいよ…。あなただって人間です。辛い時は俺や花組に頼って下さい。俺が、俺達帝国華撃団が絶対にあなたを守りますから…!」

「大神君…」

「だから、元気を出して下さい。そして、いつもみたいに微笑んで俺達を励まして下さい。あなたは帝劇になくてはならない人なのですから…」

「ありがとう。私も負けないわ。大神君が傍にいてくれるんですものね!」

「あやめさん…」

「大好きよ、大神君…」


キスしながら、あやめをベッドに押し倒す大神。

「――あー、ゴホン!」

「〜〜よ、米田司令…!!」「〜〜よ、米田司令…!!」


慌てて離れ、敬礼する大神とあやめ。

「ったく、若いもんはいいなぁ…」

「あ…、〜〜か、会議、ご苦労様でした…!」

「はぁ…、まったく大変だったぜ…。それより、おめぇ達に話したいことがある。ちっとばかり支配人室に来いや」


顔を見合わせる大神とあやめ。


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