★11−6★
特訓最終日。事務室で仕事する三人娘。カレンダーをチェックする椿。
「えっとぉ…、皆さんが戻ってこられる日って確か今日ですよね?」
「そうよ〜!皆さんが気持ち良く帰ってこられるように、私達は私達のできることをやっておかなくちゃ!」
「そうね。私達も精一杯、花組さんを支えましょ!」
「――ちょいと〜、支配人はどこですの?」
すみれが事務室の入口で腕を組んで立っている。
「すみれさん…!お戻りになられてたんですか?」
「たった今ね。私、疲れてますの。早く支配人の居場所を教えて下さる?」
「米田支配人なら花やしき支部ですよ。霊子水晶改良実験の最終段階に立ち会われているみたいです」
「ふぅん、なら、仕方ありませんわね。私は戻ったと伝えておいて頂戴な」
「あの…!〜〜えぇとぉ…、……すみれさんは今までどちらに…?」
「実家に帰ってのんびりしてただけですわ。せっかくのお正月ですのに帝劇は皆さん、特訓特訓ってとても休める雰囲気じゃありませんでしたもの」
「――本当なのか、すみれ君?」
首にタオルをかけ、厳しい顔で柔道着で歩いてくる大神とあやめ。
「あら、少尉に副司令。今、川崎の実家から帰って参りましたの。お陰様で毎日お買い物とエステ三昧の良い休暇が取れましたわ、お〜っほほほ!!」
「…それで、特訓はどうしたの?」
「ですから申し上げましたでしょう、トップスタァのこの私には必要ないと?スポットライトも当たらずに地味〜に努力するなど、この私にふさわしくありませんわ。少尉もそうお思いに――!」
「〜〜ふざけるなっ!!」
目を見開くすみれ。
「俺達が汗水たらして特訓している中、呑気に遊んでいただと!?努力なしではスタァの座が掴めないように、訓練なしでは決して勝利は掴めないんだぞ!?〜〜そんなこともわかっていなかったなんて、見損なったよ…」
「…フン、まぁ所詮は皆さん、生まれつき才能に恵まれた私とは違うのですから、努力するのは当たり前でしょうねぇ。お気に障ったようでしたら、謝りますわ。では、私はこれで失礼します。まぁ、連日徹夜で遊び耽っていましたから、寝不足のお肌をお手入れしなくては。お〜っほほほほ…!!」
明るく振る舞って歩いていくすみれ。気まずく顔を見合わせる三人娘。
「〜〜あの…、大神さん…?」
「何だい、由里君?」
「……私、小耳に挟んだんですけど、…すみれさん、新型霊子甲冑の開発費を出資してもらう為に、実家に頭を下げに行ったそうですよ…?」
「え…っ!?」
「それ、本当ですかぁ!?」
「えぇ、それに財界のパーティーに毎晩出席して、必死に出資を募っていたって…。すみれさん、ああいう風に素直じゃないでしょ?だから、自分が協力してるなんて照れ臭くて、表立っては言いにくいんだと思いますよ」
「すみれ君…」
顔を上げ、すみれを追いかけていく大神。
★ ★
すみれの部屋。ドレスをベッドに無造作に置き、ため息ついてベッドに座るすみれ。急いで入ってくる大神。
「〜〜きゃあっ!?ちょ、ちょいと…!いきなり入ってくるなんて失礼――」
頭を下げる大神に驚くすみれ。
「〜〜すまなかった…!!…由里君から聞いたよ、新型霊子甲冑の出資金を募っていてくれてたんだってね」
「〜〜な、何をおっしゃるかと思えば…。この私がそんな面倒なことするわけありませんでしょ?それに由里の情報網なんかあてになりませんわ」
「――そうか…。…ゴメン、理由が何にせよ、怒鳴るなんて最低だったな」
「…フン、もういいですわ。私、遊び疲れてクタクタですの。さっさと出ていって下さる?寝巻きに着替えるんですからっ!」
不機嫌に大神を追い出すすみれ。微笑み、ドア越しに話しかける大神。
「すみれ君…、――ありがとう」
あやめも大神の隣に来て微笑み、ドア越しに話しかける。
「すみれ、私からもお礼を言わせてもらえる?――本当にありがとう」
ドア越しで聞き、微笑むすみれ。
「…はいはい。そういうことにしておいて差し上げますわ」
「はは…、まったく、素直じゃないなぁ」
警報音に顔を上げる大神、あやめ、すみれ。眠るアイリスも目を覚ます。
「緊急警報、緊急警報!渋谷に降魔が出現!花組の皆さんは至急、作戦指令室に集合して下さい!」
「遂に来たか…。――よし皆、行くぞ!」
★ ★
ダストシュートに飛び込み、戦闘服になる大神、すみれ、アイリス。軍服になるあやめ。作戦指令室で横に並び、敬礼。
「花組、集合しました!」
「うむ、ご苦労。現在、渋谷で叉丹が降魔を放ち、市民を襲わせている。特に建造物破壊の被害が大きい。すぐに急行してくれ!」
「でも、アイリス達の光武、壊れちゃったよ?どうやって戦えばいいの?」
「――心配ご無用や!」
戦闘服の紅蘭がレンチを持って、格納庫から歩いてくる。
「紅蘭…、戻ってたんだな!」
「ついさっきな!うちについてきてくれるか?ええもん見せたるで〜!」
★ ★
格納庫。全員分の神武が収納されている。
「これは…、遂に完成したのね…!」
「あぁ、たった今、新型霊子甲冑の最終調整が完了したとこやさかい!光武を超える新型霊子甲冑、その名も『神武』や!!」
「うわぁ、格好良い〜っ!アイリスのもちゃんとある〜!」
「紅蘭は期間中、花やしき支部でずっと霊子水晶の出力改良実験に携わってくれたんだ。お陰で霊力の出力を大幅に増大できるようになったんだぜ」
「これもすみれはんが一生懸命お金を集めてくれたからや。神崎重工と花やしき支部が共同開発した『神武』。この最強装備なら絶対に負けへんで!!」
「えぇ、我が神崎重工の顔に泥を塗らぬ為にも必ず勝たせて頂きますわ!」
「あぁ、もちろんだ!二人とも、よくやってくれた!」
「――これで特訓の成果を十分に出し切れますね」
戦闘服で現れるマリアとカンナ。
「よ、ただいま!」
「マリアにカンナ…、帰ってきたんだな!」
「えぇ、カンナと玄関で話していたら警報が聞こえたので、急いで…」
「聞いてくれよ!あたい、親父しか成し遂げられなかった牛殺しをとうとうマスターできたんだぜ!!」
「特訓方法も野蛮でしたのねぇ。よくお似合いですわよぉ、カンナさんに」
「ケッ、お前には意見を求めてねぇよ。あたいは隊長に報告してるんだ!」
「私もエンフィールドを改造して、独自に特訓に励んで参りました。隊長の期待に応えられるよう、頑張ります」
「あぁ、期待してるよ、二人とも!」
「わ〜い!これで全員…じゃないね。――ねぇねぇ、さくらはぁ?」
「そういえば、姿が見当たらへんなぁ…?」
「ホホ…、帝都とは逆方向の列車に乗ってしまわれたのではありません?」
緊張して米田に近づくあやめ。黙り、首を横に振る米田。うつむくあやめ。
「――神武の輸送作業、完了しましたぁ!」
「…あなた達だけで先に出撃して。私達が後でさくらを合流させるわ」
「あやめさん…」
「…仕方ないわ、霊力がなければ神武は操縦できないもの。――ふふっ、皆、張り切りすぎて、無茶しないようにね!」
「へへっ、わかったぜ!」
「いよいよ特訓の成果が試される時ですね」
「ふふん、この神崎すみれの晴れ舞台、とくとご覧あそばせ!」
「アイリスも頑張るよ〜!エイエイオ〜ッ!!」
「花組は俺に任せて下さい。あなたとの特訓の成果、見てて下さいね…!」
「えぇ、私の分も頑張ってきてね!」
「では大神、出撃命令を頼む!」
「――帝国華撃団、出撃せよ!各自、特訓の成果を発揮するんだ!!」
「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」
神武に搭乗する花組。轟雷号発進の準備をする風組。
「目標、渋谷!竜の方角にセット、確認!」
「花組搭乗、確認!出力、全開!」
「――轟雷号、発車!!」
★ ★
渋谷。暴れる降魔から逃げる人々。燃えて崩れていく建物を見下ろす叉丹。
「いいぞ、降魔!人間どもを焼き払い、この邪悪な都を浄化するのだ…!!」
「――そこまでだ!!」
轟雷号から飛び出し、着地する大神達の神武。
「帝国華撃団、参上!!」
「ククッ、来たな、負け犬ども?…ほぉ、新しい霊子甲冑か。だが、所詮この降魔の前では無力だ!全員、焼き殺してくれる…!!」
飛び出してくる降魔達。
「各自、周囲の降魔の撃破に専念!今までの努力を信じて、頑張ろう!!」
「了解だぁ!特訓の成果、見せつけてやるぜ!!」
「よぉし、その意気だ!――行くぞ!狼虎滅却・一刀両断!!」
神武の二刀流の太刀で降魔を撃破する大神。
「体が軽い…!――これならいけるぞ…!!」
「おっ、やるねぇ、隊長!あたいも負けてられねぇぜ!――四方功相君!!」
カンナの神武の炎の拳が降魔を貫く。消滅する降魔。
「よっしゃあ!!へへっ、牛殺しより楽勝だぜ!」
「――パールクヴィチノィ!!」
神武の銃を連射し、降魔を倒していくマリア。
「今までの私達と思わないことね…!」
「ごちゃごちゃと邪魔ですわ!――神崎風塵流・鳳凰の舞!!」
すみれの神武の長刀が周囲の降魔を巨大な炎で包む。
「フン、ちょろいもんですわ」
「アイリスも負けないもんっ!――ええ〜いっ!!」
降魔を浮かばせ、飛ばすアイリス。
「きゃはは!アイリス、強いでしょ〜!?」
「皆はん、神武をもう自分の物にしとるとはさすがやね!うちも負けてられへんで!――行っけええっ、聖獣ロボーッ!!」
紅蘭の神武から四神ロボが飛び出し、降魔を次々撃破。
「へっへ〜ん、これが科学の力やで!」
轟雷号。モニターで花組の戦闘を見るあやめ、風組、米田。
「きゃあ〜!皆さん、格好良いですぅ!」
「神武全機、機体と霊力波の同調も完璧です!」
「この前の戦いが嘘みたいですね…!」
「あぁ。この3週間、皆よく頑張ってくれたからなぁ」
頑張る大神達を見て、頷くあやめ。
(――その調子よ、頑張って…!)
闇神威を出現させ、搭乗する叉丹。
「…少しは成長したようだな。よかろう、私自ら相手になってやる…!」
「すごく嫌なオーラを感じる…。〜〜この前よりもっと強いよ…!」
「…やはり、敵も力を増幅させているみたいですね」
「フフフ…、臆したか、華撃団?安心しろ、痛みは一瞬で済む」
猛スピードで間合いを詰め、刀ですみれの長刀を払う叉丹。
「〜〜な、何て速さですの…!?」
マリア、アイリス、紅蘭、カンナ、大神の武器も一瞬で払われる。
「〜〜チッ、ちょこまかと動きやがって――!!」
全員の神武の機動が停止。
「あれ?〜〜う、動かなくなっちゃったよぉ!?」
「故障か…!?」
「そ、そんなことないはずや!霊力の伝導率もちゃんと――」
全員の霊子水晶が輝きを失い、黒くなっているのに気づく紅蘭。
「〜〜あかん、霊子水晶が反応しなくなっとる…!うちらの霊力を神武に伝導できんようにされてしもうたわ…!」
「何だって…!?」
「ふははは…!貴様らの努力も無駄骨で終わったようだな。残念だ」
「〜〜ちょいと紅蘭っ、何とかして下さいませんこと!?」
「わ、わかったわ…!――風組はん、聞こえまっか?」
『はぁい、今、復旧作業に取り掛かってまぁす!』
『時間はかかりますが、再伝導は可能のようです』
「〜〜何悠長なことをおっしゃってますの!?さっさと終わらせて――!!」
すみれに飛びかかり、斬る叉丹。
「きゃあああっ!!」
「〜〜すみれぇっ!!こんの野郎、汚ねぇぞぉっ!!」
「何とでも言うがいい。大事なのは勝利という結果だ、過程は関係ない」
機内の機械を動かし、復旧を手伝う紅蘭。
(こないに機械を自在に操れるなんて…。葵叉丹…、なんちゅー奴や…!?)
叉丹の剣圧に吹き飛ばされる大神と花組。
「うわああああ…!!」
「きゃああああ…!!」
轟雷号。モニターに映る叉丹を悔しく睨むあやめ。黙って見つめる米田。
「復旧率はどう…!?」
「58%です…!〜〜完全復旧まで少なくともあと20分は…」
「〜〜く…っ、――司令、私にも出撃命令を出して下さい…!!」
「馬鹿なことを言うな!!今度は霊力を奪われるだけじゃ済まされねぇかもしれねぇんだぞ!?」
「〜〜ですが…っ!」
「――うわあああああっ!!」
ハッとモニターを見るあやめ。大神が神武から投げ出され、倒れる。
「〜〜大神君…っ!!」
「落ち着け!無防備に飛び出して死んじまったら、何にもなんねぇだろ!?」
涙目で俯くあやめ。傷だらけで起きようとする大神に刀を突きつける叉丹。
「終わりだな。日本橋での恨み、ここで晴らしてくれよう…!」
「〜〜隊長…っ!!」
刀を振り上げる叉丹。身構える大神、刀と刀がぶつかる音にゆっくり目を開く。武装した加山の刀が叉丹の刀を押さえ、かばっている。
「か、加山…!?」
「久し振り…とでも言っておこうか。――月組・武装部隊、出撃!!」
「了解!」
加山の命令で闇神威に突進していく月組の武装部隊。
「つ、月組ですって…?」
「フッ、加山の奴、月組を武装させるたぁ、やってくれるじゃねぇか…!」
「――すみませ〜ん、遅くなりましたぁ!」
走ってくる気配に振り返り、表情が華やぐあやめと米田。
★ ★
煙幕を投げ、撹乱して忍刀や火縄銃で叉丹を攻撃する月組隊員。
「〜〜ちっ、米田め、まだ隠し玉を持っていたか…」
大神を抱き起こす加山。
「大丈夫か、大神!?」
「あぁ…。お前、どうしてここに?」
「フッフッフ、遂にお前にも俺の正体を明かす時が来たようだな。ある時は情報屋を兼ねたイケメン風鈴売り、ある時は光武を輸送するワイルドなトラック運転手、ある時は愛の奇跡を語る素晴らしき蕎麦屋の店主。しかしてその実態は、帝国華撃団・隠密諜報部隊・月組隊長・加山雄一さ!!」
「〜〜やっぱり今までのあれ…、全部お前だったんだな…」
「OH!!〜〜俺っちの完璧な変装を見抜いていたとは、さすがは大神だ…」
「〜〜いや、普通に顔出してたじゃないか…」
神武から降り、大神に駆け寄るマリア達。
「隊長、無事か〜っ!?」
「お初にお目にかかります、花組の麗しきレディ達。ここは俺達・月組にど〜んとお任せあれ!――行くぞ!とうっ!!」
張り切って飛び出していき、隊員達に指揮する加山。
「…お知り合いの方ですか?」
「あぁ、士官学校時代からの親友でね。はは…、あいつも変わってないな」
「〜〜おのれ…っ、私を見くびるなぁっ!!」
衝撃波を連発し、反撃する叉丹。苦戦し、倒れていく隊員達。
「くそ…っ、〜〜うわあああっ!!」
「〜〜加山…っ!!」
剣圧に飛ばされる加山。闇の霊力を手中に集める叉丹。悔しく睨む加山。
「貴様がこの部隊の隊長か。小娘達と共に葬ってくれる…!!」
「〜〜やめろおおおっ!!」
「――桜花放神!!」
桜吹雪が叉丹を包み、衝撃波が消える。
「この技は…!」
見上げる大神達。ビルの上で神武の上に立っている戦闘服のさくら。
「遅ればせながら、真宮寺さくら、見参!!」
「さくら…!!」
「わぁい、さくらが来てくれた〜っ!!」
「もう、遅くてよ!?どうせまた上野駅辺りで迷っていられたのでしょう?」
「すごい…!どうしてわかったんですか、すみれさん!?」
「〜〜当たっとるんかいなっ!」
全員のキネマトロンにあやめから通信。
「皆、霊子水晶の復旧が完了したわ。すぐに神武に搭乗して!」
「了解です!」
神武に搭乗し、横に一列に並ぶ花組。
「隊長、これで花組全員集合ですね」
「あぁ、――皆、それぞれの特訓の成果を見せてくれ!」
「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」
「治してあげるね〜!――イリス・ジャルダ〜ン!!」
黄の光を降り注ぐアイリス。大神達の神武、月組隊員達の傷が癒えていく。
「無駄なことを…。こいつらがいる以上、貴様らに勝ち目などないのだ…!!」
降魔を出現させ、襲わせる叉丹。突進し、降魔達を倒していく花組。
「帝都の平和、人々の笑顔、そして大切な仲間を守る為、私達は絶対に負けません!!――破邪剣征・百花繚乱!!」
桜吹雪に包まれ、消滅していく降魔達。風組の機械が降魔発生装置を発見。
「降魔発生装置の位置、確認できました!」
「よし、大神のモニターに転送してくれ!」
「了解しました!」
大神の機内のモニターに転送する風組。
『大神さぁん、降魔発生装置はB地点のコンクリート内ですよぉ!』
「ありがとう、椿ちゃん!――てやああああっ!!」
降魔を斬り終え、コンクリートを叩き割る大神、発生装置が飛び出す。
「マリア、頼む!」
「了解!」
宙を舞う装置を撃ち抜くマリア。爆発する装置。全ての降魔が消える。
「〜〜何…っ!?」
「――大神君、破邪の陣よ!」
機械で全員のモニターに破邪の陣形を転送するあやめ。
「皆、この通りに陣形を並び替えてくれ!」
「何ですか、これ?」
「伝説と言われる最強の破魔の陣形だ。まだ実験段階だが、成功すれば奴を倒せるはずだ!」
「おぉ〜っ、そいつぁすげぇや!――皆、やってみようぜ!!」
「フフッ、さぁて、お手並み拝見といこうか」
期待する米田。凛々しく頷くあやめ。破邪の陣形に並び替える花組。
「皆、自分達の力を信じるんだ!――行くぞ!破邪の陣!!」
「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」
それぞれの色の霊力の光を出し、陣形のまま飛び出していく花組。
「〜〜こざかしいわ…っ!!」
「――今だ!はあああああああっ!!」
刀で防御する叉丹の力と花組の霊力がぶつかり合い、花組の力が勝つ。
「馬鹿な…!?〜〜うわああああああっ!!」
爆発する闇神威。
「やった…のか…?」
傷だらけで足を引きずって歩いてくる叉丹。銃を構えるマリア。
「〜〜まだ生きてます…!」
「ククク…、それが伝説の破邪の陣か…。だが、その程度とはな…」
闇の光を放出し、叉丹の傷が癒えていく。驚く花組。
「今日はこれぐらいにしておいてやる。次は帝都もろとも貴様らを葬ってやるわ…!フフフ…、フハハハハハ…!!」
瞬間移動し、消える叉丹。
「〜〜あいつも、怪我が治せるの…?」
「あれは人型蒸気の力を変換させたんや。医療ポッドみたいなもんやで」
「破邪の陣…でしたっけ?すっごく格好良いですね〜!」
「さくらさんではなく、この私が中心でしたら、奴を葬れていましたのに」
「〜〜やはり、まだ未完成か。これから皆でもっと訓練していかないとな」
「おう、もちろんだぜ!それより久々にいつものアレ、やろうぜ!」
「ふふっ、何だか久し振りね。――今回は隊長、代表してお願いします」
「よし、それじゃあ行くぞ!せーの…、――勝利のポーズ、決めっ!」
決めポーズする花組。轟雷号で喜び合う風組。安堵するあやめと米田。花組と喜び合う大神を見て、微笑む加山。
★ ★
銀座の街が多くの人で賑い、活気に満ちている。大帝国劇場・楽屋。
「かんぱ〜い!」
グラスを鳴らす大神、あやめ、花組、三人娘、加山。垂れ幕に『お帰りなさい&勝利を祝う会』。新聞記事の『帝国華撃団、大勝利!』を読む米田。
「ハハハ…!ったく、記者ってーのは本当にゲンキンだな」
「うっひょ〜っ!!ごちそうだぁ〜っ!!」
「皆さんが帰ってくるということで、腕によりをかけて作ったんです」
「たっくさん食べて下さいね〜!」
「マリアさぁん、これ、私が作ったんですぅ。食べてくれませんかぁ?」
「〜〜あ…、ありがとう…」
皿を持って寄ってくる椿に青ざめるマリア。『カラオケくん』を調整する紅蘭。マイクを奪い合うすみれ、カンナ、アイリス。さくらにジュースを差すあやめ。加山の隣で話す大神。
「帝撃はいいなぁ〜。俺はこんな素晴らしい部隊に配属が決まって、幸せだなぁ〜」
「あぁ、俺もそう思うよ。――今日はありがとな、お前が来てくれなかったら、どうなってたか…」
「水臭いな、大神!親友の危機に命を賭して駆けつけるのが男ってもんさ」
「ハハハ…、そうだな。――これからもよろしくな、月組隊長!」
「おうよ、花組隊長!」
ハイタッチし合う大神と加山、グラスが割れ、倒れる音に振り返る。
「きゃああっ!!〜〜あやめさん、大丈夫ですかぁっ!?」
息を荒くし、倒れているあやめを抱き起こす大神。騒然となるさくら達。
★ ★
医務室のベッドでゆっくり目を覚ますあやめ。あやめの手を握ったまま椅子に座って眠る大神に気づき、微笑む。窓から見える夜空の三日月。
「〜〜また…倒れちゃったのね…」
演算室。霊力値を測定するあやめ、プリントアウトされた数値を見るが、下がったままの霊力値に絶望。懸命に特訓に励む花組を回想し、決心。
★ ★
天雲神社。神官に連れられて廊下を歩く和服のあやめ。襖を開ける神官。神棚の前でお祈りする先巫女。部屋に入り、正座して頭を下げるあやめ。
「失礼致します」
お祈りをやめ、あやめの方を向く先巫女。
「おぉ、よく来たのぉ、あやめ」
「お久しぶりです、おばあ様。お元気そうで安心しました」
「ほほ、まだまだくたばるわけにはいかんよ、可愛いお前に巫女の座を譲るまではなぁ。さぁ、外は寒かったじゃろう。梅茶でも飲んで温まれ」
「ありがとうございます。おばあ様の淹れた梅茶、飲みたかったんです」
神官達を下げ、梅茶を淹れる先巫女、近くであやめを見て、ハッとなる。
「お前、霊力が枯渇しておるのか?顔色も優れんようじゃ!何があった!?」
「〜〜えぇ、実は…」
「わかった。何も言うな…」
目を閉じ、神棚に祈りを捧げる先巫女の頭の中に映像。
「――なるほど…。大変な正月だったようじゃの」
「はい、私の力が至らなかったばかりに…。〜〜お願いです、失った霊力を元に戻す方法を教えて頂けませんか…!?藤枝家のような巫女の家系は昔から儀式で己の霊力を高めていたと聞いております。私も奪われた分…、いえ、それ以上の霊力を体内に宿し、帝都の平和の為に使いたいのです…!!」
「……光と闇は対であり、紙一重じゃ。光の霊力を闇に、逆に闇の霊力を光にするのは可能じゃ。お前達の戦う相手も、元は光の霊力を持つ者…。じゃが、奴は己の光を全て闇にしおった…」
「…はい。奪われた霊力を取り戻すなら、彼を倒さなければなりません。しかし、その為の霊力が今、必要なのです…!〜〜仲間に頼っているばかりではいられません…。――私も彼らと共にもう一度戦いたいのです…!!」
「そうか。…前回お前と会ったのはもう7年も前か。確かお前が対降魔部隊に所属が決まった頃じゃったのぅ。あの時のキラキラした瞳は今もわしの目に焼きついておる。じゃが、今はその輝きがより増したみたいじゃの」
「えぇ、あの頃に比べて今は、大切なものがたくさん増えました」
微笑み、あやめの頭に自分のかんざしをつけてやる先巫女。
「おばあ様、まさか…!」
「ふふっ、わしももう年じゃ。丁度隠居を考えとったところじゃよ。――藤枝の巫女を継いでくれるな?」
「おばあ様…!」
「心配せずともお前なら大丈夫じゃ。巫女を継ぐ儀式を行えば、霊力も今まで以上に復活するじゃろう。丁度婿にしたい男も見つけたようじゃしな」
「え…っ!?な、何故それを…!?」
「ほっほっほ、神はな〜んでもわしに教えてくれるからのぅ!――さぁて、早速準備をせねばのぅ!ぬふふっ、忙しくなりそうじゃ〜!」
張り切る先巫女。微笑んで梅茶を飲むあやめ、飾ってあるかえでのお手玉が目に入る。幼い頃の無邪気なかえでを思い出し、うつむくあやめ。
★ ★
陸軍省。颯爽と歩くかえでを見て驚き、ひそひそ話す軍人達。
「藤枝中尉だ…。星組解散させられて、謹慎処分受けたって聞いてたが…」
「戻ってきてたんだな…。幼児や年寄りも平気で殺す女みたいだぜ…?」
「おっかねぇ〜…。姉さんとはえらい違いだよなぁ」
悪口を言う軍人達を睨みながら、前を通るかえで。ビビる軍人達。
「…なんだよ、あの態度!女のくせに偉そうに…」
軍人達の嘲笑を聞きながらうつむき、歩く足を速め、車に乗り込むかえで。
★ ★
花小路伯爵邸に到着し、車から降りて邸宅を見るかえで。待っている執事。
「ようこそいらっしゃいました。どうぞこちらへ」
花小路の執事に連れられ、部屋に入るかえで。部屋にいる花小路とあやめ。椅子から立ち、かえでに微笑むあやめ。
「…久し振りね、かえで」
あやめを見て、眉を顰めるかえで。あやめとかえでを真剣に見る花小路。
第11話、終わり
次回予告
新しい霊子甲冑・神武を手に入れて、ますます絆が深まった私達。
そんな中、新たに帝撃に配属が決まった方が今度いらっしゃるんですって。
その人の名は…、〜〜えぇっ!?
あやめさんの妹さんなんですかぁっ!?
次回、サクラ大戦『巷に雪の降るごとく』!太正桜に浪漫の嵐!
何だか…またまた嵐の予感……。
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