★11−2★



お守り売り場。水晶のお守りを空にかざす大神。水晶が太陽の光で輝く。

「大神君は何を買ったの?」

「健康第一です。平和を守るにも切符をもぎるにも体が資本ですからね」

「ふふっ、確かにそうね」

「あやめさんのは何ですか?」


あやめの手に握られている恋愛成就のお守り。

「もう成就してるけどね。これからもずっと仲良くできますようにって!」

「あ、あやめさん…」

「――お〜いっ!」


手を振っているカンナ。椅子に座って団子を食べているさくら達。

「早く来いよ〜!全部食っちまうぞ〜!!」

「今行くよー!」


微笑み合い、手を繋いで走っていく大神とあやめ。団子をほおばるカンナ。

「う〜ん、うめぇ〜!――おっ、あんこのがあっちに売ってるぜ!?」

「まったく…、年々胃袋が広がってきてるんじゃなくて?」

「わぁい!アイリスも食べた〜いっ!!」

「だよな〜!行こうぜ、アイリス、すみれがおごってくれるってよ!」

「〜〜ちょ、ちょいと、カンナさんっ!?」

「きゃは!わ〜い、行こう、行こう!」


走っていくカンナとアイリスを追いかけるすみれ。笑うさくら達。

「あの子達、去年とちっとも変わってないわね」

「ま、あの二人の掛け合いはもうすっかり帝劇の名物やさかいな」


暗くため息つくさくら。

「どうしたんだい、さくら君?」

「〜〜もう今年は終わりましたぁ…」

「は…?」

「さくらはん、おみくじが大凶やったんよ。それをずっと気にしててん」

「そうなのか…。気にすることないよ、ただの占いじゃないか」

「そうよ。逆に大吉を引いたとしても必ず良いことがあるとは限らないわ」

「ほらぁ、お二人もそう言うてはるやろ?」

「〜〜三人とも大凶引いてないからですよぉ!私の気持ちなんて誰にもわかりません〜!!」


ふてくされ、茶を飲み干すさくら、熱くて舌をやけどする。

「〜〜あうぅ〜!!ほら、もう大凶の影響が出てますよぉ〜!!」

「あはは!も〜、アイリスより子供やなぁ」

「ふふふっ、ほら、大丈夫?」


あやめから渡された水を飲むさくら。団子を買って戻ってくるカンナ達。

「お〜い、買ってきたぞ〜!」

団子を仲良く食べるさくら達を見て、微笑む大神。平和な初詣をする人々。

(皆、とても楽しそうだ…。本当に平和になってよかった――)

降魔の雄たけびに振り返るさくら、大神、あやめ。楽しく歩く家族連れ。

「どうかしましたか?」

「〜〜あ…、いや…」

「何だか…すごい殺気が――」


震え、マリアにしがみつくアイリス。

「アイリス…?」

「〜〜怖い…!来るよぉ…!!〜〜こっちに来る…っ!!」


人々の悲鳴。降魔が人々を襲い、神社や露店を壊している。驚くあやめ。

「〜〜な、何だよ、ありゃ…!?」

「こ…っ、降魔…!?」

「知ってるんですか!?」

「帝国華撃団ができる前、私達が戦っていた異形の化け物よ…!〜〜でも、そんなはずないわ…!あの時、確かに大佐が…!!」


犠牲になる一馬を思い出し、悔しく荒鷹を抜いて構えるさくら。

「〜〜お父様の仇…!はあああああっ!!」

衝撃波が頭上から降り、吹き飛ばされるさくら。

「きゃああああっ!!」

「さくら…!!」

「――久し振りだな、帝国華撃団」


鳥居の上に立っている叉丹。

「〜〜あ…、葵叉丹…!?」

「何故ですの…!?先の戦いで死んだはずでは…!?」

「まぁ無理もない。貴様らは天海を葬るのに頭が一杯だったようだしな」

「どういう意味だ…!?」


指を鳴らす叉丹。ミロク、刹那、羅刹が出現。

「〜〜あ、あなた達は…!!」

「久しぶりだねぇ。束の間の平和は楽しかったかい?」

「僕達が甦ってるとも知らずに…、バッカみたい!」

「我々は叉丹殿の力で地獄の底から甦り、新たな力を授かったのだ!」

「あの死にぞこないの坊主を扇動するのも他愛無いことだった…。まぁ、存分に利用させてもらった後に後始末してもらったことは、礼を言おう」

「扇動て…!〜〜じゃあ、ほんまの黒幕は…!!」

「そう、この私だ。六破星降魔陣の発動により、帝都の地下に眠っていた降魔の封印は完全に解けた。そしてこの3ヶ月間、お前達が偽りの平和を堪能する中、帝都崩壊の準備を地下で極秘に進めていたというわけだ!」

「〜〜何故、そこまで帝都を憎むの!?崩壊させて自分が支配するつもり!?」

「支配?そんな生易しいものではない。私の目的は日本…いや、全世界の地上を降魔で満たし、邪悪な人間共を葬ることだ!!――我・葵叉丹はここに新たな黒之巣会を立ち上げ、再び帝都を廃墟と化すことを宣言しよう!!」

「そんなことさせるか…!!帝都はこの俺達が必ず守ってみせる!!」

「あははっ、何も知らないくせにバッカじゃないの?」

「丸腰のお前らに我らが直接手を下す必要はないわ!」

「じゃ、後は頼んだよ。あ〜、久々に肉体を動かして疲れたよ」


瞬間移動するミロク、刹那、羅刹。

「クククッ、――行け、帝都の地下に巣くう物の怪・降魔よ…!!」

地下から次々現れる降魔達。

「〜〜な…、なんて醜い…!」

「〜〜怖いよぉ…!!」


大神に抱きつくアイリス。襲いかかる降魔達。マリアに撃たれるが、平気で突進する降魔。驚くマリア。爪を振り上げる降魔。身構える花組。太腿に隠しておいた短刀を出し、斬るあやめ。倒れ、消滅する降魔。

「こいつらに普通の攻撃は効かないわ。――早く本部に連絡を!!」

「はい…っ!」


降魔の攻撃をよけながらキネマトロンを出し、連絡する大神。

「こちら、大神!明冶神宮に黒之巣会が現れました!!」

『〜〜な…っ、何だと…!?』

「詳しいことは後でお話しします!!至急、翔鯨丸を…!!」

『わかった、すぐ向かわせる!それまでくたばるんじゃねぇぞ!!』

「了解です…!」


通信を切る大神。荒鷹で降魔を斬るさくら。ダメージを受けない降魔。

「〜〜な、なんて奴らなの…!?」

囲まれ、背中合わせになる花組。

「あ〜ん、囲まれちゃったよぉ〜」

降魔達を斬っていくあやめ。背後から爪を振り下ろす降魔を棒で防ぐ大神。

「大丈夫ですか…!?」

「ありがとう…!――皆、翔鯨丸が来るまでの辛抱よ。無茶しないで…!」

「はいっ!」


戦うあやめに笑みを浮かべる叉丹。降魔に弾き飛ばされる大神。

「うわ…っ!!」

「大神君…!!」


次々弾き飛ばされる花組。

「きゃああああ…!!」

「フフフ…、どうした?もう降参か?」

「〜〜く…っ、負けるものかぁっ!!はあああああっ!!」


戦う大神に衝撃波を放つ叉丹。かばい、短刀で弾き返すあやめ。

「大丈夫!?」

「ありがとうございます…!」

「ほぉ、さすがはあやめだ。――その力、やはり素晴らしい…!」


増援される降魔。息を切らし、追いつめられる大神達。

「〜〜くそっ、何て数だ…!」

「それにこの力…。〜〜脇侍とは比べ物になりません…!」

「ハハハハ…!!安心しろ、全員一緒に地獄に送ってやるからな…!」


襲いかかる降魔。身構える大神達。翔鯨丸の砲撃で消滅する降魔達。

「翔鯨丸や…!」

『皆さぁん、早く光武に搭乗して下さぁい!』

「〜〜ちっ、そうはさせるか…!!」


衝撃波を撃つ叉丹。よけながら駆け抜け、翔鯨丸に飛び乗る大神達。

「見ていろ、叉丹!勝負はこれからだ…!!」

ダストシュートに飛び込み、戦闘服になって光武に搭乗する大神達。

「帝国華撃団、出撃!!目標・叉丹及び降魔の討伐!!」

「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」
翔鯨丸の発砲。消えていくが、次々現れる降魔達。青ざめる風組。

★            ★


「〜〜これじゃきりがないわ…」

「無駄な事を。米田、降魔の生命力は貴様もよく知っているだろう?」

「〜〜く…っ、山崎め…」


翔鯨丸から飛び出し、着地する大神達。

「叉丹、これ以上貴様の好きにはさせないぞ!!」

「フン、それで同じ土俵に立てたつもりか?」

「何…!?〜〜うわ…っ!!」


大きな地震によろける大神達。さらに現れる降魔達。

「ククク…、早くせねば、地上がこいつらで溢れ返るぞ?」

「大神君、脇侍の時と同じく発生装置を見つけるのよ!破壊できれば、降魔の出現を抑えられるはずだわ!」

「了解しました!――風組、発生装置の探索を頼む!」

『了解!』『了解!』『了解!』

「俺達はそれまで、今いる降魔を倒すんだ!」

「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」

『気をつけろ。降魔は脇侍と違って霊力体だ。一匹ずつ確実に倒していけ』

「了解しました!」

「フフッ、面白い。――降魔よ、存分に可愛がってやるがいい…!」


雄たけびをあげ、突進する降魔を長刀で斬るすみれ。傷つかず。

「な、何ですの…、〜〜この硬さは…っ!?」

「破邪剣征・桜花放神!!」


傷つかない降魔達にショックなさくら。銃を連射するマリア。マリアの上に飛び乗る降魔。額を撃つが、傷口が塞がる降魔。降魔の溶解液で溶けるマリアの光武の肩部分。爆弾を発射するが、翼で叩き飛ばされる紅蘭。

「うわあああっ!?」

「紅蘭…!!〜〜きゃあああっ!!」


アイリスにかみつく降魔を殴打するカンナ。

「〜〜くそっ、アイリスを放せぇっ!!」

翼で叩き飛ばされるカンナ。

「うわあああ…っ!!」

「カンナ…!!〜〜くそぉっ!!はあああああっ!!」


刀を弾かれ、爪で引っ掻かれる大神。

「ぐあ…っ!!〜〜く…っ、何て強さだ…!?」

「皆、自分の武器に霊力を込めて!力任せじゃ勝てないわ!!」

「え?そ、それってどうや…きゃああっ!!」

「〜〜そんな訓練なんてしてないよぉ!?」

「自分の力を信じて!でないと、全員ここで死ぬことになるわ…!!」

「しかし、霊力を集中させる間が…うあ…っ!!」

「マリア…!!」


紅蘭の機内の霊力値測定機が全隊員の霊力値の急降下を示す。

「〜〜あかん、皆の霊力値が…!」

「ふはははは!どうした、華撃団!?貴様らの実力はその程度か…!!」

「きゃああああ…!!」


衝撃波を連射する叉丹。傷だらけで倒れていく花組。刀で体を支える大神。

「〜〜く…っ、以前にも増して強くなっている…」

「…我ながら情けないな、こんな雑魚どもに負けていたとは」


花組の前に立つ叉丹。にじり寄る降魔達。

「今まで私の邪魔をしてきた罰だ。楽には殺すな…!!」

花組を攻撃し続ける降魔達。耐える花組。

「〜〜く…っ、皆、山作戦に切り替えるんだ!!」

翔鯨丸。モニターのピンチの花組を見て、青ざめる風組。

「〜〜司令…っ!」

「〜〜翔鯨丸で奴らを砲撃する!各自、着弾地点から避難しろ!!」

「〜〜でも、囲まれちゃって動けません…っ!」

「諦めるんじゃねぇ!!全員、隙をついて鳥居まで避難しろ!!いいな!?」

「了解しました!――やあああああっ!!」


霊力を放出した刀を振り回し、周囲の降魔を吹き飛ばすあやめ。

「今のうちに…!」

「はい…っ!」

「――砲撃の準備、整いました!」

「よし!撃てえええいっ!!」


翔鯨丸の砲撃に傷を負う降魔達。爆発を避けながら、避難する花組。

「〜〜く…っ、皆、頑張れ、あと少しだ…!」

爆発で吹き飛び、着地する大神達。煙が晴れ、傷ついた降魔達が見える。

「〜〜あれだけ砲撃されても、まだ生きてるなんて…」

「だが、これでだいぶ有利になった。一気に仕留めるぞ!」

「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」


飛び出し、攻撃するさくら達。吠え、威嚇する降魔に怯えるさくら。

「恐がっちゃダメ!!負の感情は、そいつらの力を高めてしまうわ!!」

「〜〜はっ、はい…っ!――たあああああっ!!」


降魔を斬るさくら。花組に倒され、全て倒れる降魔達。

「〜〜はぁはぁ…、何とか…倒せたか…」

「皆、大丈夫?」

「えぇ、何とか…、〜〜う…っ!」

「〜〜マリア、すごい怪我…!今、治してあげるね――!」

「〜〜アイリス、無茶すんな…!そんな怪我でやったら死んじまうよ…!」


傷だらけの光武の機体と機内を見渡し、眉を顰める紅蘭。

「降魔…、なんちゅう強さや…。〜〜光武でさえ歯が立たんかった…」

傷だらけで落ち込むさくら達を見つめる大神。うつむくあやめの機内に侵入し、あやめを羽交い絞めにする叉丹。

「――!?〜〜きゃああああっ!!」

「あやめさん…っ!?」


あやめを光武から降ろし、喉元に刀を突きつける叉丹。

「フフフ…、すっかり降魔に気を取られていたようだな」

「〜〜彼女を放しなさいっ!!」


銃口を叉丹に向けるマリア。

「ほぉ、撃つのは構わないが、この女がどうなるか…わかるだろう?」

「〜〜てんめぇ…、どこまで根性が腐ってやがるっ!?」

「ふははは…!おとなしくしていた方が得策だぞ。この首が斬り落とされるのを見たくないならなぁ!」

「〜〜早く撃ちなさい、私は大丈夫だから…!」

「〜〜し、しかし…!」

「これは命令よ!〜〜マリアっ!!」


引き金を引くのをためらうマリアに囁き、頷くさくら。頷き、撃つマリア。弾を弾き返そうとする叉丹との間合いを詰め、斬るさくら。刀を受け止めた叉丹の手首に弾が当たり、刀を落とす叉丹。その隙に逃げるあやめ。

「〜〜ちっ、無駄なあがきを…!」

あやめに刀を振り下ろす叉丹。かんざしを切られ、髪がほどけるあやめを抱きとめ、刀で応戦する大神。飛びかかり、長刀と空手で叉丹を攻撃するすみれとカンナ。

「フフッ、さすがに素晴らしいチームワークだ、褒めてやろう…!」

呪術であやめ以外の周りに黒いバリアを発生し、大神達を閉じ込める叉丹。

「な、何ですの、これは…!?」

「私からのお年玉だ。存分にくれてやる…!!」


バリア内に黒い電流が流れる。

「きゃああああーっ!!」

「皆ぁ…っ!!〜〜んううう…っ!?」


あやめにキスし、種を呑み込ませる叉丹。叉丹の頬を叩き、咳込むあやめ。

「貴様には特別ボーナスだ、再会の記念にな」

「〜〜貴様ぁっ!!」


バリアを斬ろうする大神とさくらだが、壊れず。

「〜〜はぁはぁ…、駄目です…、ビクともしません…!」

「〜〜な、何だか…頭がクラクラしてきたぜ…」

「〜〜あかん…!空気…が…」

「〜〜く…っ、苦しい…よぉ…」


バリアが小さくなっていき、酸欠で倒れていく花組。

「〜〜早く皆を出してっ!!」

「くくっ、その顔だ…!絶望と恐怖に満ちたお前の顔こそ私が求めていたもの…!!さぁ、もっとその顔で私を見つめろ…!!」

「〜〜ふざけないでっ!!」


叉丹に斬りかかるあやめ。後ろに飛んでよける叉丹。

「ククク…、幸せボケで鍛錬を怠っていたか?」

「きゃあああああっ!!」


衝撃波に倒れるあやめ。バリアにしがみつき、叉丹を睨む大神。

「〜〜や…めろぉ…っ!!」

「フフッ、苦しいか、小僧?今、楽にしてやる…!」


花組に狙いを定め、手中に巨大な衝撃波を作る叉丹。

「新年早々残念だが、ここで死んでもらおうか…!!」

衝撃波を飛ばす叉丹。身構えるはなぐみをかばうあやめ。

「きゃああああああああっ!!」

「〜〜あやめさん…っ!!」

「…その性格は変わってないな。くくっ、おかげで手間が省けたぞ」


倒れるあやめを支え、霊力を奪う叉丹。

「あ…あああああああああああっ!!」

「〜〜あやめさああんっ!!」

「ふはははは…!正義を気取る愚か者の末路がどうなるか教えてやる!!」


よろけながらあやめに近づき、手を伸ばす大神。

「〜〜くぅ…っ、あ…やめ…さ…ん…っ!」

「お…大神…く…〜〜いやあああああああああっ!!」

「ふははは…!!予想通り、素晴らしい霊力だ!最高級品は奪いがいがある」


目を見開くあやめ、殺女が心の中で迫ってくる。

「〜〜させるかああああああっ!!」

バリアを突破し、叉丹に斬りかかってあやめを奪い返す大神。あやめの霊力が白い羽になって飛び散る。大神の胸に倒れ込み、気を失うあやめ。

「〜〜ちっ、…まぁいい。米田に伝えろ、あやめの霊力は全て頂いた。これから最高のショウが始まるとな…!」

笑い、去る叉丹。青白い顔で眠るあやめ。光武から降り、駆け寄る花組。

「あやめさんは…!?」

「……脈が弱くなっている…。〜〜早く医療ポッドへ…!」


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