★11−1★



暗闇を歩くあやめ、我に返り、辺りを見回す。周りに無表情で歩く女性達。

『な、何なの…?〜〜ここは…どこなの…!?』

迫る漆黒の翼。背後から抱きつき、翼であやめを覆う殺女。

『――あなたもすぐ…殺してあげる』

「〜〜きゃああああっ!!」


飛び起きるあやめ。隣で寝ていた大神も驚いて起きる。大神の部屋。

「ど、どうしたんですか…!?」

「あ…、ごめんなさい、変な夢を見ちゃって…。〜〜汗、かいちゃった…。着替えてもいい?」


手ぬぐいで汗を拭い、着替えるあやめを心配に見る大神。

「怖い夢だったんですか?」

「少し…ね。でも、意味はないの。ホラーの活動写真、見たからかしらね?」

「あぁ…、確かに不気味でしたね、『切り裂きジャック』」


Tシャツを着るあやめを後ろから抱きしめる大神。

「ふふっ、騒いじゃってごめんなさい。子供みたいね、私」

「はは…、でも、ちょっと可愛かったですよ」

「まぁ、大神君ったら」


初日の出がカーテンから差し込む。カーテンを開ける大神。

「わぁ、初日の出だ…!」

「本当、綺麗ねぇ…!」

「――明けましておめでとうございます、あやめさん」

「おめでとう。今年もよろしくね、大神君」


★            ★


「明けましておめでとうございま〜す!」

楽屋。着物で乾杯する花組、大神、あやめ、三人娘、米田。

「わははは…!いやぁ、めでてぇ!正月は飲めぇ、飲むのに限るっ!」

「もう、大晦日にあんなに飲んだばっかりじゃないですかぁ」

「ふふっ、いいじゃないの、年末年始の時ぐらい」

「えっ!?何かマリアさんが優しすぎるんですけど〜!?」

「そんなに変?私だって昨晩はずっと飲んでたもの」

「え〜、そうなんですかぁ?お部屋に行けばよかったぁ…」

「〜〜つ、椿はお酒飲めないでしょ?」

「いいんですよぉ、私にはマリアさんがいて下さればそれでぇ…」


マリアを見つめ、体を近づけてくる椿。青ざめるマリア。

「…あら?ところで薔薇組さんは?」

「出張よ。巴里にも華撃団が設立されることになったから、その準備にね」


巴里の街中で双眼鏡でイケメンのフランス人を見つけ、はしゃぐ薔薇組。

「巴里ぃ!?わぁ、アイリスの国にも華撃団ができるんだ〜!」

「ということは、私達に後輩ができるんですね!こうして無事にお正月も迎えられましたし、今年は良いこと尽くしですね、あやめさん!」

「ふふっ、そうね。――あ、この煮物、おいしいわよ。取ってあげるわね」

「はい、ありがとうございます!」


仲良く喋るさくらとあやめを見て、こそこそ話す紅蘭、すみれ、カンナ。

「…いつの間に仲直りしたん、あの二人?」

「え?さくらとあやめお姉ちゃん、喧嘩してたの?」

「本当だ…!へぇ〜、あのやきもち妬きのさくらがなぁ」

「ね〜、何の話ぃ?」

「これで心置きなくいつでもどこでもイチャつけるっちゅーわけやな!」

「ま、副司令は女優ではありませんし、スキャンダルにはなりませんわね」

「あ〜、見ろよ、あの幸せそうな顔!後でからかってやろうぜ〜!」

「〜〜んも〜っ!アイリスだけ仲間外れにしないでよぉ〜!!」

「フフン、お子様にはまだわからない話でしてよ?」

「むぅ〜!アイリス、今年で11だもん!!もう子供じゃないもぉんっ!!」

「はいはい、そこまでにしとき。元旦からそないな顔しとると、一年が悪い年になってまうで?福を呼ぶには、まず笑うこと!――ってなわけで!大帝国劇場プレゼンツ・大はねつき大会〜っ!!」


踊るえんかいくんとクラッカーを割るばくちくくん。盛り上がる一同。

「勝負はトーナメント形式で行います〜!優勝者には何とうち特製金メダル型ロボット『きんたくん』と『アンヂェラス』お食事券をプレゼント!!」

お食事券を掲げる『きんたくん』。目を輝かすマリア。はしゃぐカンナ。

「おぉ〜っ!!でかした、紅蘭〜っ!!」

「この程度の品で喜ぶなんて…。今年こそダイエットなさったらいかが?」

「〜〜んだとぉっ!?てめぇこそ今年はその腐った根性を直しやがれぇっ!!」

「二人とも!正月から喧嘩なんてやめろよ!」

「〜〜少尉はお黙りになってて!!」

「〜〜隊長は引っこんでな!!」


突き飛ばされる大神。まだ喧嘩するすみれとカンナに銃を向けるマリア。

「…今年こそ成長しなさいね、あなた達?」

「〜〜ごめんなさい…」「〜〜ごめんなさい…」


青ざめ、頭を下げ合うすみれとカンナ。

「うふふっ、マリアさんもちっとも変わってませんね」

「周りがこれじゃね。…始めるわよ、1回戦・かすみ、アイリス、前へ!!」

「〜〜はっ、はい…っ!!」「〜〜はっ、はい…っ!!」


背筋を伸ばし、敬礼するかすみとアイリス。張り切って仕切るマリア。

「…マリアはんて興味深いわぁ。うちの出番なくなってしまいそうやね」

(――あんみつ…。アンヂェラスのあんみつ…)


羽つきするかすみとアイリスの審判をしながら、うっとりするマリア。はねつきする花組と三人娘。マリアに負け、墨を塗られる大神。墨を塗られたさくら達が楽しく笑う。見学する米田とあやめ。

「皆、楽しそうだなぁ」

「えぇ。皆で掴み取った平和ですし、感慨も一入でしょう」

「――あやめさん!」


顔にばってんが書かれた大神が羽子板を持って駆け寄ってくる。

「あら、大神君!うふふふっ、その顔…!」

「あはは、マリアにこてんぱんにされました。お二人もいかがですか?」

「私達はいいわ。見てるだけで十分よ」


楽しく笑う大神とあやめを見て微笑み、立ち上がる米田。

「どっこいしょっと…!ハハハ…、邪魔な年寄りは退散だな」

「あ、支配人…!」

「お前さん達の所は熱くってしょうがねぇや。ただでさえ、酒飲んで火照ってるっていうのによぉ」


顔を見合わせ、照れる大神とあやめ。

「あー、それからよ…、――『治にいて乱を忘れず』。平和な時こそ、しっかり気を引き締めていけよ?」

「了解です!」「了解です!」


凛々しく敬礼する大神とあやめ。

「うむ、結構!さぁて、酔い覚ましに寒空でも拝んでくるかぁ、はははは!」

笑いながら歩いていく米田。顔を見合わせ、吹き出す大神とあやめ。

★            ★


洗面台で顔を洗い、墨を落とす大神。

「ふぅ…。少し冷たいですけど、酒飲んだ後には丁度いいですね」

「ふふっ、そうね。――はい」


礼を言って手拭いを受け取り、顔を拭う大神。

「…悪いことしちゃいましたね、支配人にまで気を遣わせてしまって」

「良かれと思ってやって下さったのよ。やっと来た平和ですもの、今日ぐらい私達も楽しめって言いたいんじゃない?」

「そうか…。そうですね…!俺達で取り戻した平和…かぁ」


窓から青空を見上げる大神。微笑み、大神に寄り添うあやめ。

「私、今、すっごく幸せよ。あなたがいて、仲間が祝福してくれて…。軍人じゃない普通の女としての幸せを実感できる生活…、ずっと憧れてたの」

「あやめさん…」

「別に軍人が嫌なわけじゃないのよ?でも、やっぱり…」


あやめを壁際に寄せ、壁に手をついてキスする大神。

「俺も普通の男でいられるこの瞬間が嬉しいです。あなたを抱きしめていられる時間が何より好きだから…」

「大神君…」


再びキスする大神とあやめ。遠くから見て微笑み、踵を返す米田。

「やれやれ…。若いっちゅーんはいいなぁ」

(――このまま、ずっと何も起こらねぇといいがな…)


真面目な顔で歩いていく米田とすれ違い、はしゃいで来るマリアとカンナ。

「隊長、やりました!私、優勝――あ…」

慌てて離れる大神とあやめ。赤くなり、動揺するマリア。

「ヒュ〜!やるねぇ、お二人さん!新春ベイビー、楽しみにしてるぜ」

「〜〜カ、カンナっ!!」

「〜〜ゆ…優勝したんだって…?おめでとう、マリア」

「はい。これで念願のあんみ…いえ、アンヂェラスに行けます」

「あたいも一緒に行く約束したんだ〜!へへっ、いいだろ〜?」

「そう。楽しんできてね」

「おうよ!じゃ、あたい達は行くか。何だかお邪魔みたいだしな〜」

「くすっ、そうね。――では、失礼します」


上機嫌で去っていくマリアとカンナ。

「〜〜マ、マリアのことだから、説教かと思いましたけど…」

「ふふっ、アンヂェラスに感謝ね」

「ははは、そうですね。――あ、雪だ…!」


雪が降る窓を見る大神に寄り添うあやめ。

「新春ベイビー…か。…悪くないわね」

「えっ!?」

「そういえば、このところ気持ち悪くって、食欲ないのよね…。お正月過ぎたら、病院に行こうと思うの。――もしかしたら、できちゃったかも…」

「〜〜えええええっ!?ほ、本当ですか…!?」

「わからないわ。…ねぇ、もしそうだったら、責任取ってくれる?」

「も、もちろんです!えっと、結納と結婚式はお腹が大きくなる前に――」

「うふふふっ、もう、冗談よ!」

「え?〜〜な、なんだぁ…」

「ふふっ、ごめんなさい。どういう反応するか、試しちゃった」

「茶化さないで下さいよぉ…。〜〜ハァ…、心臓止まるかと思いました…」

「ごめんね。でも、嬉しいな、私とのこと真剣に考えてくれてるのね」

「当然じゃないですか。正月中に俺の姉に紹介しようと思ってるんです」

「ご両親は?」

「父も母も俺が小さい頃、亡くなりました」

「そう…。私の両親も亡くなったわ。でも、代わりに鬼のようなおばあ様がいるけどね。男友達を連れてきただけで、刀持ってくるような人よ?」

「いいっ!?〜〜ど、どうしよう…!?」

「ふふっ、大丈夫、私の選んだ男の子ですもの。きっと認めて下さるわ。――いざとなったら駆け落ちしちゃえばいいんだし」


トレンチコートを着て駆け落ちする映画のワンシーンを想像する大神。

「ふふふっ、もう、冗談だってば!本当、可愛いんだからぁ〜」

「…もしかして、酔ってます?」

「かもね〜。でも、これは本心だも〜ん」


大神に抱きつき、首にぶら下がるあやめ。

「〜〜ぜ、絶対酔ってますって…!!」

「うふふっ、ねぇ〜、お部屋行きましょうよぉ〜」

「で…っ、でも、皆で初詣にって――」

「――大神さぁん!初詣行きましょ〜!!」


やってくるさくらとアイリス。硬直するさくら。真っ赤になる大神。

「何やってるのぉ?それ、新しい遊び?」

「ふふふ〜、アイリスもやりたい〜?」

「うんっ!やりたい、やりた〜い!!」

「〜〜あやめさんっ!!早くお水飲みましょう!!すまない、先行っててくれ!」


千鳥足のあやめの手を引っ張っていく大神。

「いや〜ん、積極的〜!」

「〜〜もう、飲みすぎですよっ!!」

「…行っちゃった。あやめお姉ちゃん、顔、真っ赤っ赤だったね?」

頬を膨らませ、大股で歩いていくさくら。

「〜〜ふーんだ!私は女優です、恋人なんていらないんです〜!!」

「あ…、待ってよぉ〜!!やっぱり平気じゃないんじゃ〜ん!!」


★            ★


和光の時計台に立ち、帝都に降る雪を見上げる叉丹。

「――雪…か…。確かあの日もそうでしたね、真宮寺大佐?」

魔神器を使う一馬を回想する叉丹、手の上に降りた雪を握り潰す。

「甦らせてあげますよ、あなたが命がけで葬ったおぞましき魔の者共をね」

地下で蠢く降魔達。銀座の街中で胸を押さえ、うずくまるあやめ。

「大丈夫ですか…!?」

「え、えぇ…。少し飲みすぎちゃったみたい…」

「――大神さぁん!あやめさぁん!」


帝鉄の中から呼ぶさくら達。

「何してんねや?もう出てまうでぇ!?」

「〜〜うわ、しまった…!」


大神の手を引っ張り、走り出すあやめ。

「ふふふっ、離しちゃ駄目よ!」

急いで電車を追うあやめ。明るい笑顔のあやめに微笑む大神。

「お兄ちゃあん、早く早くぅ!」

大神が手すりを掴もうとするが、失敗。手を伸ばすカンナ。

「隊長!」

「任せた…っ!」


大神とあやめを引っ張るカンナ。乗り込む大神とあやめ。拍手する客達。

「いや〜、さすがはカンナはん!あっぱれや!!」

「フン、馬鹿力は今年も健在ですわね」

「あははははっ!そんな褒めんなよ、照れるじゃねーか!」

「…褒めてませんっ!」

「はぁはぁ…、はぁ〜、間に合った…」

「そうね。はぁはぁ…、あ〜、楽しかった…!」


笑顔で息を切らし、微笑み合う大神とあやめ。

★            ★


多くの人で賑う明冶神宮。

「うわぁ、想像以上だな…」

「すごい人ですねぇ…。きっと1億人ぐらいいますね!」

「…帝都の人口超えとるがな!」


さくらにツッコむ紅蘭。階段を駆け上がるカンナ。

「こいつぁいい鍛錬になるぜ!先行くからな〜!!」

「〜〜もう、こんな所で走らないの!――先に行ってますね…!」


カンナを追いかけていくマリア。

「マリアも大変だなぁ…」

「ねぇねぇ、あのおっきいおうちが神社?」

「そうだよ。じゃ、俺達も行こうか。はぐれないように手繋いで行こう」

「きゃは、わ〜い、わ〜い!」

「私もお願いします!」

「〜〜あ、あぁ…。……絶対に離すなよ…?」

「あはは、さくらはんはアイリス以上に気ぃつけてやらんとなぁ」


大神を真ん中にしてスキップしていくさくらとアイリス。

「ほら、お兄ちゃんもスキップ、スキップ〜!」

「〜〜は、恥ずかしいよぉ…」

「大神はんは、今年も大人気やなぁ。…心配でっか?」

「本音を言えば…ね。でも、信じてるの、彼は絶対私を裏切らないって」

「ほほぉ〜!運命の赤い糸はちょっとやそっとじゃ切れまへんってか?」

「ふふふっ、もう、大人をからかうんじゃないの!」


笑うあやめと紅蘭。騒ぎ、道を開ける人々。すみれを乗せた神輿を担いだボディーガード達が階段を上がっていく。

「まったく、この神社の設計者は何を考えているのかしら?このような急斜面を上ったら、私の細くて美しい足が折れてしまうではありませんか」

「おぉっ!!帝国歌劇団の神崎すみれさんだ…!!」

「すみれ様〜っ!!サインして下さ〜いっ!!」

「握手して〜!!」

「まぁ!やはり私のようなトップスタァは、黙っていてもスタァのオーラが出てしまいますのねぇ。人気者って罪ですわぁ!お〜っほほほほ…!!」


神輿に群がる人。扇子を仰ぎ、高笑いするすみれ。苦笑する紅蘭とあやめ。

「…あんなん乗ってたら、嫌でも気づくっちゅーねん」

★            ★


射撃の露店。全ての商品を倒すマリア。笑顔を引きつらせ、リヤカーに商品を積んでいく店主。

「〜〜あ…、あた〜り〜…」

「きゃ〜っ!さすがはマリアさぁ〜ん!!」

「素敵〜っ!」


マリアに群がる女性達。

「商品は、全てこちらの方達に差し上げて下さい」

マリアの持つ人形を見ている女の子。気づいて微笑み、人形を渡すマリア。

「わぁ!ありがとう、お姉ちゃん!」

「どういたしまして」


微笑み、女の子の頭をなでるマリア。

★            ★


「お〜っほほほほ…!!カンナさん、もっと早く!もっと早くですわ〜!!」

すみれが乗った人力車を引っ張るカンナ、イラつき、離す。

「〜〜あ〜、くそっ!!何であたいがおめぇなんかを引っ張んなきゃならねぇんだ!?しかもまた人力車かよっ!!」

「あらぁ、輪投げの露店で私にこてんぱんにされたのをもうお忘れ?」


すみれを守るようにして、カンナの前で構えるボディーガード達。

「〜〜てめぇがそいつら使ってズルしたからだろうがっ!!」

カンナ一人に対し、すみれは複数のボディーガードを率いて輪投げ。

「大声でうるさい方ですわねぇ…。あなたは力しか取り柄がないのですから、黙って引けばよろしいのです。ほら、さっさと持ち上げなさいな」

「〜〜この野郎…っ、絶対後で仕返ししてやる…!」


露店の食べ物を差し出すすみれのボディーガード達。

「お嬢様、お待たせ致しました」

「んもう、遅くてよ。私が飢え死にしたら、どう責任取るつもりでしたの?」

「おっ、うまそうな焼きそば〜!」


カンナに見せつけるように食べるが、ボディーガードに突き返すすみれ。

「…味が薄いですわ。庶民の料理は私の口に合いません。捨ててきて頂戴」

「〜〜てんめぇっ!!食い物粗末にしたら、罰当たるぞ!?――よこせっ、あたいが全部食ってやるっ!!」


焼きそばを食べるカンナに露店の料理を次々差し出すボディガード達。

「う〜ん、うめぇ〜っ!こんなにうめぇのにもったいねぇこと…あ?」

「まぁ、この料理達も捨てられるよりはカンナさんに食べられた方がまだマシだと思いますし、特別に全部召し上がってもよろしいですわよ?」

「これ…、秋祭の時と同じ料理じゃねぇか…。お前、もしかして――!」

「〜〜いっ、いいですこと!?これでちゃんと借りは返しましたからねっ!?」

「…へへっ、わかったよ。サンキューな、すみれ」

「フン!…もう少しお上品に召し上がれませんの?一緒にいる私まで笑われてしまうではありませんか」

「あはははっ!いちいちうるせぇお嬢様だなぁ」


ボディーガード達に守られ、一緒に焼きそばを食べるすみれとカンナ。

★            ★


おみくじを引くさくら、アイリス、紅蘭。青ざめるさくら。

「やったぁ、中吉や〜!」

「ねぇねぇ、これ、何て書いてあるの?」

「どれどれ…、おっ、すごいやないか、アイリス!大吉やで!!」

「だいきちって?」

「おみくじん中で一番ええくじや!こりゃお互い、ええ年になるでぇ!」

「わ〜い!!――ねぇねぇ、さくらはぁ?」

「〜〜うぅ…、大凶ですぅ…」

「あっちゃ〜…、そりゃ災難やなぁ…」

「だいきょう…?」

「一番悪いくじのことや。せやけど、こんなのただの占いみたいなもんやし、そんな気にすることないで、な!」


ものすごく落ち込んでいるさくら。苦笑し、困るアイリスと紅蘭。


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