★18−6★



飛んでくる降魔を撃ち落としながら飛行するミカサ。聖魔城が見えてくる。

「前方200m先に目標地点を確認しましたぁ!」

「よし、徐々に高度を落としていけ!」

「了解!」「了解!」「了解!」


聖魔城に近づきながら降りていくミカサ。降魔達が守る正門に強力な結界。

「正門前に強力な妖力反応を発している結界の存在を確認しました…!」

「あれが例のか…。――時間の方はどうだ?」

「カウントダウン、開始してます!瘴気放出まで5、4、3、2、1…!!」


魔界の裂け目の空間が歪み、瘴気が大和島に放たれる。降魔の大群が発生し、結界が脆弱化する。

「今だ…!――霊力ミサイル、発射!!」

「了解!」「了解!」「了解!」


夢組の霊力の込もったミサイルが結界を正門ごと破壊する。

「すっご…!!予想以上の破壊力だわ…!」

「さっすが夢組さんの霊力ですねぇ〜!!」

「油断するなよ〜!大群のお出ましだ…!!」


発生したばかりの降魔の大群を撃ち落す風組。

「はぁ…、何とか撃退できましたね…」

「よぉし、ここまでは計画通りだ!――大神、聞こえるか?」

『はい!』

「正門前の雑魚どもは俺達が砲撃で一掃する。お前達は体力を温存しつつ、城内に潜入を開始しろ!健闘を祈るぞ!」

『了解!帝国華撃団・花組、これより聖魔城へ出撃します…!!』


ミカサからパラシュートで降り立つ大神と花組の神武。

「行っけぇぇぇっ!!」

ミカサの砲弾の援護で降魔達が吹き飛ぶ中を一気に駆け抜ける大神達。

「――クエエエエッ!!」

「な、何…!?」


鳴きながら上空を飛んでいるミロクの式神の怪鳥に驚く大神達。

「あれは一体…!?」

「わぁ〜、絵本に出てくる恐竜みた〜い…!」

「ほんまやね、プテラノドンみたいや…!」

「クエエエエッ!!」


鳴きながら大神達に向けて飛びかかってくる怪鳥。

「〜〜うわああっ!!危ねぇっ!!」

「〜〜恐竜さん、敵なの…?」

「えぇ、あれはおそらくミロクが操ってる式神ね」

「あのおば様のペットでしたのね…!?どおりで悪趣味だと思いましたわ」


ミカサを体当たりで襲う怪鳥。揺れる操縦席に必死につかまる風組。

「きゃあああっ!!」

「〜〜大変…!ミカサが…!!」

「――こっちよ、式神さん♪」


指笛を鳴らし、怪鳥の気を引くラチェット。気づき、ラチェットに狙いを定める怪鳥。

「ラチェットさん…!?」

「ここは私に任せて!神崎重工が手掛けたミカサの技術、アメリカにもひけをとらない技術だわ。墜落させちゃったら勿体ないでしょ?」

「フン、偉そうに…」

「あたいも一緒に戦うよ!一人じゃ無茶だぜ…!!」

「そうですよ!前だって力を合わせたから勝てたんじゃないですか…!」


ラチェットの投げたナイフが目に刺さり、苦しむ怪鳥。

「皆で仲良く足踏みしてる場合じゃないでしょ?フフ、大丈夫よ。元欧州星組隊長の実力を信じなさい♪」

「ラチェット…」

「…行こう。俺達の倒すべき敵は他にいるんだ…!」

「そうですね…」

「〜〜ラチェットさん、どうかご無事で…!」

「えぇ、あなた達もね…!」


城内に入る花組を見届け、怪鳥とナイフで戦うラチェット。口を開け、ラチェットに襲いかかる怪鳥。よけて怪鳥の背中に飛び乗り、ナイフを刺すラチェット。苦しみ、動きを止める怪鳥。ミカサから心配そうに見守る風組。

「〜〜ナイフじゃ致命傷までには至らないみたいね…」

「〜〜ラチェットさん、大丈夫でしょうかぁ…?」


背中につかまり、風組に通信するラチェット。

『――聞こえる?私が式神を押さえている間にミサイルで砲撃して…!』

「えっ!?〜〜それじゃあ、ラチェットさんまで…!!」

『〜〜手段を選んでいる暇はないわ!今は確実に倒せる方法を選ぶのがベストな選択でしょう!?』

「〜〜で、でもぉ…」

『早くしなさい!あなた達は生き残って、花組を迎えに行くんでしょう!?』

「〜〜馬鹿野郎!!お前さんだって花組だろう!?戦士は戦いで死ぬのが華とでも思ってるのか!?冗談じゃねぇ…!!誰も死なせやしねぇよ…っ!!」

『米田司令…』

「その馬鹿でかい鳥はこっちで何とかする…!お前さんも早く城へ潜入しろ…!!これは司令命令だぞ!?」


米田の言葉に微笑むラチェット。

「ふふっ、欧州星組にもあなた達のような人がいたら、私の人生も違ったものになったかもしれませんわね…」

手榴弾を構えているラチェットに驚く米田と風組。

「あなた達がやらないんなら、自分でやるわ…!!」

「〜〜ラチェットさん…!?」

「〜〜やめろ…!!いいからこっちへ戻ってこい…!!」

「そのお気持ちだけで十分ですわ。――いい?ワン、ツー、スリーで私めがけてミサイルを撃ち込むのよ…!?」

「〜〜ひっく…、そんなの嫌ですよぉ…!!」

「〜〜そんなことできるわけないじゃないですか…っ!」


涙を流す三人娘の肩に手を置く米田。

「司令…?」

「……あいつの瞳を見てみろ。これ以上説得しても決して意思を曲げねぇだろうよ…」

「〜〜そんなぁ…」

「〜〜ごめんね、大河君…。せっかく待ってるって言ってくれたのに……」


瞳を閉じ、涙を流しながら手榴弾のピンを抜くラチェット。

「行くわよ…!――ワン、ツー、スリー…!!」

涙を流しながら、怪鳥の背に乗るラチェットに向けてミサイルを発射する三人娘。怪鳥と周囲にいた降魔達と共に爆発に巻き込まれるラチェット。

「〜〜ラチェットさぁぁぁん…!!」

降魔達との戦いの最中にハッと顔を上げる新次郎。

「ラチェット…さん…?」

「どうした、新君…!?」

「〜〜今…、ラチェットさんが……」


察し、泣きそうになりながら震える手で刀を握る新次郎を抱き寄せる双葉。

「……今は泣くな…!戦いが終わったら、母の胸でうんと泣けばいい…」

「ラチェットさん…。〜〜う…っ、うわああああ…っ!!」


涙をこぼしながら降魔達に向かっていく新次郎。

★            ★


聖魔城に侵入する大神と花組。

「この城のどこかにあやめさんとかえでさんがいるんだな…」

襲ってくる降魔達を倒す花組。

「〜〜んも〜、邪魔しないでよぉ〜!」

「降魔とは怨霊が具現化した魔物…。でしたら、ここにいる降魔達は沈められた大和島の島民の怨霊ということですわね…」

「〜〜そう考えると戦いづらいけどよ…、倒さねぇと前には進めねぇしな…」

「そうね…。私達の手で汚れを払って、静かに眠らせてあげましょう…」


神武のモニターに警報音。ラチェットの霊力反応が消えたのがわかる。

「ラチェットはん…!?」

「ねーねー紅蘭、ラチェットのマークが消えちゃったよ?」

「故障か…?」

「〜〜いや…、ラチェットはんの霊力反応が完全に消えてしもうたんや…」

「え…っ!?〜〜それってまさか…!?」

「〜〜ラチェットお姉ちゃん…、死んじゃったってこと…!?」

「〜〜そういうことやろな…。人は死ぬと霊力値がゼロになるさかいに…」

「〜〜嘘よね、紅蘭…?まさか…ラチェットさんに限ってそんな…」


さくらの問いかけに黙ってうつむく紅蘭。

「〜〜ちきしょぉぉ…っ!!――やい、叉丹!!隠れてねぇで出てきやがれぇっ!!」

「〜〜落ち着け、カンナ…!」

「〜〜仲間が殺されたのに落ち着いてられるかよっ!?」

「俺達が取り乱したら、敵の思うツボだろう!?」

「〜〜けどよぉ…――!?」


猪(羅刹)が唸りながら歩いてくるのに気づく花組。

「お前か…?〜〜お前がラチェットを殺したのかぁぁぁっ!?」

「〜〜カンナ…!」

「うおりゃあああああっ!!」


猪に突進し、殴るカンナ。拳を受け止め、頭突きをする猪。

「ぐああっ!!」

「〜〜カンナさん…!!」

「猪…、叉丹…命令…、倒す…」

「〜〜ちきしょう…!絶対許さねぇぞ、黒之巣会…っ!!」


ハチマキが血で滲み、流血しながら猪と手を組み合って押し合うカンナ。

「皆は先に行ってくれ!ここはあたい一人で十分だ…!!」

「カンナ…!?」

「こんな所で足止め食らってる場合じゃねぇだろ?早くしねぇと犠牲者がもっと増えちまうんだぞ…!?」

「〜〜馬鹿なことをおっしゃらないで…!!そんなの自殺行為ですわ…!!」

「へへっ、サンキューな、すみれ…。安心しな、コイツの方がおめぇよりよっぽど扱いやすそうだしよ」

「〜〜フッ、こんな時にあなたって人は…」


猪が吠え、カンナを押す力が強くなる。歯を食いしばり、耐えるカンナ。

「〜〜頼むから早く行ってくれ…!これ以上もちそうにねぇんだよ…っ」

「……行きましょう、少尉」

「すみれ君…!?」

「〜〜いいから早く…っ!!」


涙目を伏せて走っていくすみれ。顔を見合わせ、うつむいて追うさくら達。

「〜〜カンナ、絶対に助けに戻るからな…!それまで必ず持ち堪えるんだぞ…!?」

「ありがとよ、隊長。すみれ達を頼んだぜ…!」

「〜〜きええええいっ!!」


長刀で岩を斬り、奥へと進んでいくすみれと大神達。

「――さぁて、これで思う存分暴れまくれるってもんだぜ…!」

「ウガアアアアアアッ!!」


猪に投げ飛ばされるカンナ。

「〜〜へへっ、なかなかやるじゃねぇか。久し振りに本気で手合わせできる奴が現れて嬉しいぜ…!」

カンナの肩を掴み、岩の壁に押しつける猪。壁にめり込むカンナの神武。

「〜〜くっそぉ…っ!こんな所でくたばってたまるかよ…っ!!」

カンナの神武に噛みつく猪。

「うわああああっ!!」

めり込んだカンナを拳で殴り続ける猪。

「〜〜ちきしょう…っ!ラチェット、仇は絶対に取ってやるからな…っ!!」

拳を受け止め、殴り返すカンナ。倒れる猪だが、平気で立ち上がる。

「〜〜ハァハァ…、化け物め…」

膝をつくカンナの首を絞め、持ち上げる猪。

「ぐあああ…っ!!ぐ…っうぅ…」

(〜〜くっそぉぉ…っ!!あたいに…この手にもっと力があれば…っ!)


温かい風が頬を撫でるのを感じるカンナ。

(――この風…、どこから吹いてきてるんだ…?)

父親のタクマの下で厳しい修行に励んだ子供時代を回想するカンナ。

(――あぁ、そうだ…。これは沖縄の熱い風…。辛い時にいつも励ましてくれたあの風だ…)

『――カンナ、お前の実力はそんなものではないだろう!?男を見せてみろ!!』

「へへっ、あたいは女だってーの…!」


震える手で猪の腕を掴み、へし折るカンナ。

「ぐおおおおお〜っ!!」

カンナを放し、折れた腕を痛がる猪。息を切らし、態勢を整えるカンナ。

(親父…、頼む…。――あたいに…最後の力を…っ!!)

「――桐島流奥義・四方功相君!!」


カンナの炎の拳が腹を貫通し、死んで倒れる猪。

「へへ…、ざまぁみろってんだ…。――待ってろよ、皆…。今…、あたいも…」

ふらつき、仰向けに倒れるカンナ。

「あれ…?はは…、おかしいな…。体が…動かねぇや……」

天井を見つめカンナ、幻で沖縄の太陽の光と波の音を感じる。

「はぁ…、今日も良い天気だぜ…。ハハ…、何だか…疲れちまったよ…。ちょっくら…休んでから…行く…か……」

ゆっくり瞳を閉じ、息を引き取るカンナ。

★            ★


ハッと振り返るすみれ。

「〜〜カンナ…さん…!?」

「どうしたんだい、すみれ君…?」

「〜〜いえ…、きっと気のせいですわ…」


警報音が鳴り、カンナの霊力反応が消える。

「〜〜嘘やろ…!?」

「〜〜いやああ〜っ!!カンナぁ〜っ!!」

「〜〜カンナさん…。ぐす…っ、カンナさぁぁん…」


泣くアイリスとさくらの頭を撫でるマリア。

「……先に進みましょう。カンナの死を無駄にしてはいけないわ…」

「〜〜でも…、ひっく……」


泣きじゃくるさくらの頬を叩くすみれ。

「しっかりなさい…!!それでも花組の隊員ですの!?どんなに辛くても、私達は使命を果たす為に前に進まなければなりませんの…!!〜〜カンナさんの死を無駄にしないで…っ!」

「すみれさん…。〜〜すみませんでした…」

「…わかればいいのです。さぁ、参りますわよ」


涙を見せないようにさくらから離れ、進み始めるすみれ。顔を見合わせ、続いていく花組。気配を感じ、立ち止まるすみれ。

「すみれさん…?どうかされたんですか?」

「――隠れてないで出てらっしゃいな…!」


笑いながら壁から通り抜けてくる蝶。

「すみれ…見つけた…。フフフフ…」

「ミロク…!?」

「…またあなたでしたの?熱心すぎるファンというのも困り者ですわね」

「ひひひひっ、カンナ、死んだ…!死んだぁ!!ひゃははははっ!!」

「〜〜お黙りなさいっ!」

「〜〜すみれ君、挑発に乗るな…!」

「フフ、あなたに言われなくともわかってますわ。けど、私は小馬鹿にされるのが大嫌いな性分ですの。腹の虫がおさまるまでこのおば様を痛めつけて差し上げますから、少尉達は先に行ってて下さいませんこと?」

「〜〜駄目だ…!!それじゃあ、ラチェットやカンナの二の舞に――!!」

「〜〜お黙りなさぁぁぁぁいっ!!」


長刀で蝶を斬りつけるすみれ。

「〜〜だったら何だと言うんです!?カンナさんは自分の命と引き替えにラチェットの仇を取ったのです…!私も同じようにして何が悪いんですの!?」

「少し落ち着け…!それでカンナが喜ぶと思ってるのか…!?」

「〜〜そんなの関係ありませんわっ!!」


長刀で柱を斬って崩すすみれ。すみれとさくら達の間に倒れ、壁になる柱。

「すみれさん…!?」

「私は私のやりたいようにやるだけです…。それが私らしくないどんなに馬鹿げた行為であろうとも…」

「すみれはん…」

「〜〜よくもカンナさんを…っ!!きええええいっ!!」


蝶を長刀で斬り続けるすみれ。斬られても平気で笑っている蝶。

「カンナ…お前の仲間…死んだ…!あはははははっ!!」

「〜〜口の減らないおば様ですわね…っ!」


すみれに加勢する為に柱をどけようとする大神だが、動かない。

「〜〜駄目か…」

「…ここはすみれに任せましょう。こうしている間にも帝都は…」

「〜〜くそ…っ」

「〜〜いやですよぉ…、すみれさぁん…」

「さくらさん、早くお行きなさい…!あなたにトップスタァの座を託しましたからね…!?」

「〜〜すみれさん…っ!すみれさぁぁぁん…!!」


さくらの腕を引っ張っていく大神と花組。見送り、長刀を構えるすみれ。

「トップスタァ・神崎すみれ、最後の晴れ舞台…。とくとご覧あそばせ…!」

「キエエエエエッ!!」

「たあああああっ!!」


衝撃波をかわし、突進して、蝶の腹に長刀を突き刺すすみれ。

「ふふふふ…、すみれ…殺すぅぅ…!!」

複数の式神がすみれの神武と長刀にまとわりつき、霊力を奪って動かなくさせる。長刀が蝶から引き抜けなくなる。

「〜〜く…っ、悪あがきを…」

「あははははっ!死ね!!死ねぇぇ!!」

「〜〜死ぬのはあなたでしてよ…っ!!」


力を振り絞って神武を動かして長刀を押し、崖まで蝶を追い詰めるすみれ。

「〜〜よ、よ…せぇ…!ふふふふ…このままいけば…お前も死ぬぞ…?」

「フッ、だから何ですの?カンナさん一人に良い格好させてたまるものですか…!――神崎風塵流・鳳凰の舞!!」


長刀から炎を発して、蝶と式神を焼くすみれ。

「ぎゃあああああ…!!」

炎がすみれの神武にも伝わってきて、燃える操縦席。

「〜〜さくらさん…、私達の悲願…、果たして下さいましね…」

蝶と共に崖下へ落ちていくすみれ。

★            ★


ハッとなり、顔を上げるさくら。

「どうしたの、さくらぁ…?」

「〜〜今…、すみれさんの声が聞こえたような…!?」


警報音が鳴り、すみれの霊力反応が消える。

「〜〜すみれはんが…」

「〜〜うわあああ〜ん…!!すみれぇ…!!ぐすっ、ひっく…うっ…うっ…」

「〜〜立ち止まるな!……先へ進もう。辛くても顔を上げるんだ…!」

「大神さん…。〜〜はい…っ!」


再び歩き始める花組。泣くアイリスの頭を撫でて励ますさくら、扉を見つける。

「ここは何の部屋かしら…?」

扉に触れようとしたさくらの下に黒い魔法陣が発生するのに気づく紅蘭。

「〜〜さくらはん、危ない…っ!!」

「きゃ…!?」


さくらを突き飛ばし、代わりに魔法陣の上に乗って瞬間移動する紅蘭。

「紅蘭…!?」


18−7へ

舞台(長編小説トップ)へ