★18−2★
大帝国劇場・作戦指令室。会議している花組。
「――んで、トップスタァさんがお考えになる作戦ってのはどんなのなんだよ?あんだけ偉そうに啖呵を切ったんだから、すんげぇ作戦なんだろうなぁ?」
「〜〜そっ、それをこれから話し合うってわけでございましょう!?」
「なーんだ、まだ考えてなかったのかよ〜?感動して損したぜ〜…」
「〜〜キ〜ッ!!無駄話してないで会議を進めますわよっ!!」
「天海の時みたいに聖魔城を直接叩ければ時間も労力もかからずに済むんでしょうけど…」
「せやなぁ。降魔は魔界の瘴気を源に増え続ける一方やし…」
「でも、聖魔城ってどこから入ったらいいんでしょう…?月組が撮影した映像を見る限り、黒いバリアーで覆われていて入れそうにありませんし…」
「――それは今、月組が調べてくれてるよ」
作戦指令室に入ってくる大神とかえで。表情が華やぐ花組。
「大神さん…!かえでさん…!」
「きゃは!お兄ちゃん、お帰り〜♪」
「はは、ただいま、アイリス」
「儀式、成功したんだってな!すっげ〜よ!!これでサタンも怖かねぇよな」
「さすがは私達の隊長ですね」
「あぁ、これも皆とかえでさんのお陰だよ」
目が合い、大神に微笑むかえで。
「しっかし、よう帰ってこれたなぁ…!列車全部止まってるってラジオで言うてはったけど…?」
「ふふっ、それはヒ・ミ・ツ♪ね、大神君?」
「あ…、はは、そうですね」
「〜〜ムッ!かえでさんとの秘密って何なんですか!?」
「〜〜お兄ちゃ〜ん!?」
「〜〜いぃっ!?」
「ふふっ、ほらほら、お喋りは後にしてくれる?全員揃ったことだし、会議を再開するわよ」
「…フン。よくのこのこと戻ってこられたものですわね」
足を止め、黙ってすみれを睨むかえで。
「〜〜すみれ君!今は内輪もめしてる場合じゃないだろう?」
つんとするすみれ。大神と花組のキネマトロンに加山から通信。応答する大神と花組。
「――こちら、大神…!何かわかったか…!?」
『おう、バッチリな!叉丹は6時間ごとに魔界の裂け目から瘴気を放出して、降魔の大群を形成してるんだ。その時、かすかにだが、城を守っている闇のバリアーが脆弱になるんだ。そのタイミングを狙ってバリアーに霊力ミサイルでも撃ち込めば城内に突入できるかもしれないぞ…!』
「そうか…!その作戦でやってみるよ。助かったよ、加山…!」
「さすが月組さんですね!」
『ハッハッハ、これくらいお安い御用だとも♪かすみっち達風組にも伝えておくから、お前達は作戦決行まで体を休めておいてくれよな!』
「あぁ、ありがとな」
通信を切る大神達。
「これで突破口は開けましたね」
「あぁ、あとはどうやってあやめさんを救出するかだな!」
「もう一度『破邪の陣』をやってみるか…」
「破邪の陣て、神武が完成した時に一度試したあの陣形かいな…?」
「あぁ。あの時はまだ未完成だったが、今の君達の力と絆があればうまくいくはずだ…!」
「そうか…!それで殺女さんの中にいる魔を取り払えばいいんだな!」
「そしたら、あやめお姉ちゃんは元に戻れるの…!?」
「はっきりとは言えないが、可能性はゼロじゃない。やってみる価値はあるだろう?」
「ふふっ、双葉お義姉様の受け売りね?」
「はは…。えぇ、まぁ」
「〜〜あの…、中央は私じゃなくて、すみれさんやマリアさんの方が…。私みたいなドジがそんな大役を…」
「大丈夫さ。今の君なら絶対できる…!破邪の陣のセンターは花組隊員の中で破邪の力を持つ君しか立てないポジションなんだぞ?」
「〜〜でも…、またもし失敗したら…」
「〜〜キ〜ッ!! せっかくトップスタァの私がおいしい役割を譲って差し上げてますのに…!あなた、それでも花組でして!?」
「〜〜だ、だって…」
「だってもへちまもありませんわっ!これは舞台の主役に抜擢されたのと同じことです…!思い出してごらんなさい、さくらさん。あなたが帝劇へ来たばかりの頃、私の代わりに『愛ゆえに』の舞台に立ったではありませんか…!都会生活に慣れてきたせいで図々しい田舎者の根性をお忘れになったのかしら?」
「すみれさん…」
「舞台の主役は自分で掴むもの…。自分の未来は自分で切り開くもの…。戦闘も同じよ。さくら、あなたは失敗を恐れて逃げ出すような弱い人間じゃないでしょう?」
「マリアさん…」
「そうだよ!さくらは一人じゃない。アイリス達がついてるでしょ?」
「そうそう、サポートはあたい達に任せろって!万が一失敗したら、すみれが新しい作戦を考えてくれるってさ♪」
「〜〜ちょいと、カンナさん…っ!?」
「あれ〜?トップスタァさんの脳みそはあたいらと違って優秀なんじゃなかったっけ〜?」
「〜〜キ〜ッ!!どいつもこいつもまったく…!」
「あははは…!せやで、さくらはん。それにうちらだけやのうて、神武もついとるさかい。さくらはんの神武はさくらはんのことが大好きなんや!力を貸してくれるで♪」
「皆…」
「皆、君を信じてる。真宮寺の当主となった君なら絶対できるはずだ…!」
「大神さん…。――ありがとうございます…!私、やってみますね…!!」
「その意気だ、さくら君!君達花組が最大限に力を発揮できるよう、俺とかえでさんでサポートするからな!」
「…あら、私みたいな裏切り者を作戦に加えていいのかしら?」
「あ〜ら、ご自分でよくわかってらっしゃるではありませんか」
「〜〜すみれ君っ、いい加減にしないか…!」
「別に私は構わないわよ?罵りたければ好きなだけ罵ってもらって結構よ。……私が今までしてきたことを考えれば当然の報いでしょうから…」
「かえでさん…」
「フン、珍しくしおらしいですわね」
「何故、あなたが記憶喪失の隊長を利用し、あやめさんを陥れたかは大体うかがいました…。しかし、どんな理由があったにせよ、私達は今まであなたのしてきた行いを決して許しませんから」
「〜〜そうでしょうね…。正しい判断だわ。でも、私は今、罪滅ぼしとか関係なく、あなた達帝撃に精一杯尽くしたいと考えてるの。心からは信じてくれなくてもいい…。けど、この戦いが終わるまでは私を仲間として信頼して、頼りにしてほしいの…!」
「かえでさん…」
「……かえではんはほんまは悪いお人やないんやと思う。それはうちにもわかるさかい…。せやけど、今回は作戦から外した方がええんとちゃう?うちらのチームワークに影響が出たら困るやろ…?」
「…確かにそうかもしれない。けど、俺はもう一度かえでさんを信じて、この最終作戦のメンバーとしてに加えてみようと思う…!」
「大神はん…」
「〜〜本気でおっしゃってますの…!?」
「あぁ。かえでさんは儀式の時、あやめさんの襲撃を双葉姉さんと一緒に一生懸命食い止めてくれた…。その行動はかえでさんの正直な気持ちだと俺は信じたい…。だから、君達も一度だけでいい…!かえでさんを仲間として信じてみてくれないか…!?」
「大神君…」
「私も信じます…!だって、同じ帝国華撃団の仲間じゃありませんか!」
「あたいも信じるよ…!そりゃ一緒にいて腹の立つことも多いけどよ、あやめさんが信頼して連れてきてくれたんだろ?いくら妹でも本当にろくでもねぇ奴なら、あやめさんだってここに来るように頼まなかったんじゃねぇのかな…?」
「アイリスもかえでお姉ちゃんを信じてみる…!せっかくおんなじおうちで暮らすお友達なのに、いつまでも喧嘩してるなんて嫌だもん…」
「皆、ありがとう…」
「えへへ…♪」
複雑そうに顔を見合わせるすみれとマリア。時計が鳴る。
「――21時…。次の瘴気放出まであと6時間か…」
「深夜に出撃か…!今のうちに飯いっぱい食っておかねぇとな♪」
「あの…、米田司令は今どこに…?」
「米田司令は神崎重工の川崎工場にいらっしゃるみたいよ」
「どうして川崎に…?私、何も聞かされてませんわよ?」
「俺も詳しくは知らなくてさ…。作戦決行まで花組には内密にしておくようにとの命令が各組に伝達されてるみたいで、誰も教えてくれないんだよ」
「…ということは、風組や月組の皆さんは知ってるってことですよね?」
「ふっふっふ〜、由里はんに聞いたら、教えてくれるんとちゃう♪」
「〜〜やめときなさい!」
『――ふふふ…、どうせ無駄なあがきだというのに…』
あやめの声が聞こえ、ハッと顔を上げるかえで。
「どうかしましたか…?」
「〜〜今…、姉さんの声が…――!」
「〜〜う…うぅ…」
苦しそうにうずくまり、息を荒げながら倒れるアイリス。
「〜〜アイリス…!?どうしたの…!?」
「〜〜体が…熱いの…。頭がズキズキして…気持ち悪いよぉ…」
「〜〜すごい熱だわ…!医務室で休ませましょう」
「私も行きます…!」
アイリスを抱え、作戦指令室を出ていくかえでを驚いて見つめるすみれとマリア。
★ ★
神崎重工・川崎工場。ミカサの最終点検を行う従業員達を見守る米田。
「何とか間に合ってくれそうだな…」
「――調子はどうかね?」
米田に歩み寄ってくる花小路、忠義、重樹。
「万全ですよ。あとは発進まで敵がおとなしくしてるのを祈るだけでしょうな」
「ふぉふぉふぉ…、遂に我が神崎重工の英知の結晶が日の目を見る時が来たようじゃのぅ」
「えぇ。本当は発進させる事態には陥らないでほしかったんですがね…。今回ばかりはやむをえません…」
「確かに…。今はあの娘達を信じる他はなさそうですね」
「えぇ、『空中戦艦ミカサ』…。必ずやあの娘達の力になってくれることでしょう。向こうも切り札を出してきたんです。こちらも惜しみなく使わせてもらいますよ…!」
ミカサを凛々しく見上げる米田。
★ ★
花やしき支部と連携し、ミカサに神武と物資を輸送する手続きを行う風組。
「はぁ〜、出撃まであと少しですねぇ〜!帰ってきたマリアさんにマッサージしてあげよ〜っと!きゃ♪」
「はいはい、妄想はあとあと。ここが私達風組の腕の見せ所なんだから♪」
「そうね。帝劇三人娘の実力、しかと見せつけてやりましょ!」
「了解!」「了解!」
夜の見回りで格納庫に来る大神。
「張り切ってるみたいだね」
「あっ、大神さん、お帰りなさ〜い!」
「見回りですか?お疲れのところ申し訳ありません…」
「これも仕事のうちだからね。それに今はいつも以上に警備を強化しておかないとな…」
「〜〜降魔のこともあるけど、避難者が増えたのをいいことに空き巣も急増してるみたいだから…」
「ほんっとロクでもない人も世の中、多いですよねぇ〜!」
「そうだな…。…ところで、アイリスの具合はどうだい?」
「今は部屋で落ち着いて眠ってます。おそらく、聖魔城から溢れてくる闇の霊力に拒絶反応を起こしてしまったのかと…」
「そうか…。アイリスの霊力は人一倍強くて敏感だからな…」
「今は代理とさくらさんが看病されてるみたいよ。後で様子を見に行ってあげたら?」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
花やしき支部から連絡が入り、風組隊員がモニターに映る。
『――資材の確保及び積載が完了した!そちらはどうだ?』
「こちらももう少しで完了です!終了次第、月組と合流し、避難の誘導と物資支援にあたらせて頂きます!」
『了解!引き続き頼むぞ』
「了解!」「了解!」「了解!」
三人娘が敬礼し、通信が切れて画面も消える。
「ここは大丈夫だから、他の場所の見回りをお願いね!」
「あぁ、わかった。大変だろうけど、頑張ってくれよな」
「は〜い!」
地下からの階段を上り、1階に出て廊下を歩く大神。
「さすがいつも三人一緒だけあって、チームワークがすごいな。俺達も見習わないと…!」
「――いやぁ〜、女子は皆、張り切ってるよなぁ〜♪」
ギターを鳴らして天井からぶら下がっている加山。
「〜〜かっ、加山…!どんな登場の仕方してるんだよ…っ!?」
「いやぁ〜、やっぱ最終回はどんなことも派手にいきたいものだろ?」
「〜〜まぁ…お前らしいけどさ…。――それより、さっきは情報ありがとな」
「おう!お役に立てて何よりだ♪そんじゃ、月組も風組の援護といきますかねぇ」
「あぁ、そうしてもらえると助かるよ。かすみ君も月組と合流するの楽しみにしてるみたいだったぞ」
「OH!そうかそうか〜♪んも〜、公私混同させちゃいけないと言ったのにしょうがないなぁ〜♪今行くからなぁ〜、ハニ〜♪」
「〜〜ハハ…、――良いとこ見せようとして空回りしないようにな〜!」
「おう!お前も甥っ子君にいいとこ見せてあげたまえよ〜♪」
大神にウインクしながら敬礼し、窓から飛び降りる加山。
「〜〜か、加山…!?」
驚き、身を乗り出して窓を覗き込む大神。加山の姿はない。
「〜〜ハァ…、いくら忍者部隊といえども心臓に悪いって…。――ん…?」
暗い中、中庭で懸命に木刀で素振りする新次郎を応援するラチェット。
「新次郎…。はは、確かに俺も叔父として良いとこ見せてやらないとな」
「――それから、男として副司令と代理に良いとこ見せつけてやれよな」
屋根からぶら下がって覗き込んできた加山の顔がアップになり、驚く大神。
「うわあっ!?〜〜だから、それをやめろってば…」
「ハッハッハ…!お前の驚いた顔見るの昔から好きなんだよな〜♪」
「〜〜悪趣味め…」
「――あっ、一郎叔父〜!加山さ〜ん!」
汗をかき、中庭から笑顔で元気に手を振る新次郎。微笑み、手を振り返す大神と加山。
「皆、それぞれ自分のできることを懸命にやってるんだ。俺達も負けてられないよな!」
「あぁ、お互い、最後まで頑張ろう!」
「おうよ!」
凛々しい笑顔でハイタッチし合う大神と加山。
★ ★
アイリスの部屋。苦しそうに眠るアイリスを看病するさくらとかえで。
「〜〜熱が下がらないわね…」
「アイリス…。〜〜まだこんなに小さいのに、危険な戦いに赴くことになるなんて…」
「さくら…」
「同年代の子は皆、学校に行ったり、お友達と楽しく遊んだりしてるのに…、人とは違う力を持ってるっていうだけで捨てられるようにここに来て、厳しいお稽古と訓練の毎日で…。〜〜霊力さえ高くなかったら、普通の女の子として暮らせていたはずなのに…」
「…それをアイリス本人が聞いたら、間違いなく怒るでしょうね」
「え…?」
「もし、アイリスが普通の子として生まれてきたら、あなた達とは出会えなかったわけでしょう?何が可哀想なんて単純に決められるものじゃないわ。少なくとも、私の瞳に映るアイリスはあなた達と一緒にいられて、とても幸せそうだけど?」
「かえでさん…」
「……あなたはここに来たのは間違いだったって思ったこと…ある?」
「そんなことあるわけないじゃありませんか…!最初のうちは皆さんと馴染めなくて悩んだりもしました…。でも、今はこの帝撃が私のいるべき場所なんだって、今では当たり前のように思えるようになって…!」
「そう思えるようになって幸せ?」
「もちろんです!」
「なら、アイリスもきっと同じ気持ちなんじゃないかしら?あなた達だけじゃなく、他の花組の娘達も同じ気持ちだと思うわよ。もちろん、あやめ姉さんと私も…ね」
「え…?」
「ふふっ、自分でも驚いちゃうわ。姉さんから副司令の座を奪って出世の糧にしてやろうなんて考えてた時期もあったけど、今は名声とか名誉とか…どうでもよくなっちゃった。今はただ、この帝撃であなた達と姉さんとずっと一緒に帝都を守っていけたら、それだけで何もいらないかもって…」
「かえでさん…。――ふふっ、やっぱり私が思った通りの方でした…!」
「え?」
「あなたの優しさをすみれさん達もわかってくれる時が来ますよ。少し時間はかかっても、いつかきっと…」
「さくら…。ふふっ、あなたって本当お人好しよね…」
「えへへ、よく言われます♪」
微笑むさくらに微笑み返すかえで。
「〜〜う…うぅ…っ!」
「アイリス…!?」
「〜〜どうしたの、アイリス…!?苦しいの…!?」
苦しんでうなされながら、さくらの手を強く握り返すアイリス。
「〜〜いやああ…!来ないで…っ!来ないでよぉぉ…っ!!」
「大丈夫よ、アイリス!私達がついてるわ!怖くないでしょ!?ね…!?」
「〜〜闇の霊力を吸収し続けてるみたいね…。このままじゃ負荷がかかりすぎて――」
「『――かえで…』」
「――!?姉さん…!?」
「かえでさん…?〜〜きゃあああっ!!」
アイリスから出る闇のオーラに飛ばされ、壁に激突し、気絶するさくら。
「〜〜さくら…っ!」
「『――かえで…、姉さんよ、わかる…?』」
「え…っ!?」
アイリスの声があやめの声と二重に聞こえ、振り返るかえで。アイリスが闇のオーラを発しながら体を起こし、虚ろな瞳でかえでを見つめている。
「あ…、あやめ姉さん…なの…?」
「『えぇ、そうよ。殺女の人格に支配されて体の自由はきかなくなったけど、私自身の人格はまだ心の奥底に残ってるわ。〜〜アイリスとさくらを傷つけるつもりはなかったんだけど、今の私ではこの方法でしかメッセージを伝えることができないから…』」
「メッセージって…?」
「『今は何とか殺女の人格を抑えられているけど、長くはもちそうにないわ…。だから、今夜の酉の刻、私が藤枝あやめでいられる間に叉丹が奪った魔神器と荒鷹、私の神剣白羽鳥の全てを劇場の中庭まで持っていくわ。それを受け取ってもらいたいの、あなた一人で…』」
「わ、私一人で…?」
「『えぇ。このことは誰にも言っちゃ駄目よ?万が一、叉丹に感づかれてしまったらおしまいですもの…』」
「……そうね…。――わかったわ。酉の刻に中庭ね…?」
「『えぇ、頼んだわよ、かえで…――』」
瞳を閉じ、闇のオーラが消えて、ゆっくり瞳を開けるアイリス。
「――あれぇ…?ここ…、アイリスのお部屋…?」
「ア…、アイリス…なのね…?」
「うん。かえでお姉ちゃん、どうしたの…?〜〜顔色悪いよ…?」
「う、ううん、何でもないのよ…。――熱は…下がったみたいね…」
アイリスの額に手を置き、自分の額の熱と比較するかえで。
「きゃは♪本当だ!もう全然苦しくないよ〜♪」
「う…ん…、――あれ…?私、一体…?」
「んもぉ〜、さくらぁ!そんな所で寝たら風邪引いちゃうよ〜?」
「ア、アイリス…!もう起きて大丈夫なの…!?」
「うん、もうすっかり治っちゃった!えへへ、これで皆と一緒に行けるね!」
「…まだ無理したら駄目よ?出撃要請があるまでおとなしく寝てなさい」
「え〜?アイリス、もう元気だよ〜!?」
「かえでさんの言う通りよ?これから嫌ってほど体動かすんだから、今のうちに休んでおかなくちゃ!ね?」
「〜〜は〜い…」
アイリスに布団をかけてやるさくら。あやめに操られるアイリスを回想し、眉を顰めるかえで。
『――頼んだわよ、かえで…』
(〜〜姉さん…)
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