★18−9★



闇の霊力で黒い嵐を起こす叉丹。気を失っている殺女を抱き、守る大神。

「「ふはははは…!!感じる!感じるぞ!!これが地獄を統べるサタンの力か!!」」

「くっ、なんて力だ…!闇の霊力を体内にこれほど取り込んでいたとは…」

「サタンが山崎の体を支配しつつある証拠よ。…奴はもう人間じゃないわ」

「「くくくっ、遂に俺はこの世で最も強大な力を手に入れたのだ…!!手始めに日本列島…、いや、地球にある全大陸を沈めてやろう!!今まで我々がどれほど虐げられてきたかを味あわせてやるのだ…!!」」

「〜〜やめろ…!!そんなこと、亡くなった島の人達が望んでいるものか!!」

「「貴様に何がわかる…!?政府のくだらん名声の為に犠牲になった大和島民の怒り、嘆き、絶望…!!死んでもなお苦しみ続けるその声がお前には聞こえんだろう…!?」」

「〜〜それは――!」

『――苦しいよぉ、兄さん…』

『――助けてくれぇ…』

「…!これは…」


降魔になった母と妹、島民達の魂の叫びが城中に響くのが聞こえ、辺りを見回す大神とかえで。膝をつき、頭を押さえて闇のオーラを放出する叉丹。

「〜〜病弱な母と健気な妹…。俺が出世する度に家族同然に祝ってくれた島の者達…。優しかった人間の魂が何故、あんな化け物になった…?何故、政府は罪を隠蔽し、弱者を葬った!?〜〜そんな奴らが支配する帝都など滅んで当然ではないか…!!正義だの愛だの掲げ、うわべだけの平和を守るお前に何がわかる!?ただの自己満足ではないか…っ!!」」

「…確かに日本のトップにそういった奴らがいるのは事実かもしれない。お前の無念もよくわかる…。だが、帝都に住むほとんどの人間は大和島の兵器開発計画には関係ない…、その計画の存在すら知らない者ばかりだろう?お前が今までしてきたことは、政府がかつて大和島にしたことと同じことなんだぞ…!?」

「「だから何だ!?自分達の行いがどれほど愚かだったか奴らに思い知らせてやっているのではないか…!!これは復讐という名の浄化だ!!この世から腐った人間どもを抹殺し、代わりに降魔が支配する!アジア、欧州、米国、アフリカ…!全世界が私の手で生まれ変わるのだぁぁっ!!」」


闇の霊力を全身から放出する叉丹。殺女を抱きしめ、黒い嵐に耐える大神。

「〜〜叉丹…、…いや、山崎少佐!お前は間違ってる…!!どんな理由があっても、全ての人間の命を奪っていいわけがないんだ…!!悪人がいれば善人もいる!お前はその善人の命すらも奪うつもりか!?」

「「善人と悪人は紙一重だ。――これを見るがいい…!」」


光刀無形を掲げる叉丹。背後にそびえる巨大装置に黒い光が灯る。

「あれは…!?」

「〜〜機械なのに生き物みたいに蠢いてるわ…」

「「科学と魔力を融合させた大型殺戮兵器『破導砲』だ…!」」

「破導砲…!?」

「それで何をするつもりだ…!?」

「「フフ…、冥土の土産に教えてやろう。この破導砲から全世界に向けてエネルギーが放出される。そのエネルギーはこの世に存在する霊力を全て闇の霊力へと変換する作用があってな、1時間もすれば世界は暗黒に包まれる。やがて、充満した魔界の瘴気によって全ての動植物は滅び、天上界の神々すらも死に絶える。そして、闇の者が地上を支配するのだ…!神から嫌われ、人間に疎まれながら生き永らえてきた地獄と魔界の住人が暮らす新しき世界…!その頂点に私は君臨し、新世界の神となるのだぁっ!!ふははははは…!!」」

「〜〜何ですって…!?」

「今すぐ止めろ…っ!!」

「「無駄だ。もうすぐエネルギーは満タンになる!怒り、悲しみ、恐怖…。ここに到達するまでお前達が負の感情を抱き続けてくれたお陰でなぁ」」

「〜〜俺達の…?」

「「あぁ、そうだとも!善人を気取る貴様らの負の感情がこんなにも蓄積されたのだ!こんな醜い感情を溜め込んだ貴様らのどこが善人だ!?笑わせてくれるな…!!」」


蒸気を噴出し、闇の霊力を取り込みながら魔力を充填する破導砲。

「「…これでわかっただろう?本物の善人などいやしない…。世界が正されない限り、平和と名誉を誰かが勝ち取る裏で犠牲を強いられる者が必ず現れる…!お前達が望む平和は偽りの平和…!!全人類を滅ぼさない限り、その不条理は永久に正されないであろう!!」」

「なら、皆が助け合えばいい!誰も不快な思いをしないよう、協力し合えばいい!今は理想論かもしれないが、誰かが唱え続ければいつかきっと誰もが笑って暮らせる真の平和が訪れるはずだ…!!」

「「フッ、つくづく愚かだな、大神一郎。貴様もわかっているはずだ。人間が滅びぬ限り、降魔は永久に滅びない…!お前達の努力は永久に報われないのだ…!!」」

「だったら、降魔が現れる度に俺達は何度でも戦い続ける!倒れて死ぬまで何度でも立ち上がる…!!帝都の平和、そこに住む人々の暮らしと笑顔…。それを守るのが俺達・帝国華撃団だからだ!!」

「「…ご立派な演説だな。剣の腕を見込んで側近にしてやろうと思ったが、謀反を企てられては敵わんからな…。――この場で処刑してくれよう…!!」」


闇の霊力を刀身に纏う光刀で斬りかかる叉丹。真刀で受け止めるも、魔力に圧倒されて吹き飛ばされる大神。

「うわああああ…!!」

「〜〜大神君っ!!」


加勢しようとするも、捕らわれていて、動けないかえで。刀身についた大神の血を舐め、笑う叉丹。

「「さすがは裏御三家の血だ…。クククッ、サタンの血がたぎる…!もっとだ…!もっと私の血を煮えたぎらせろぉぉ!!」」

目が赤くなり、牙が生える叉丹、さらに闇の霊力を出しながら斬りかかる。受け止め、よけ続ける大神。

「「〜〜おのれ、ちょこまかと…!その血と霊力を全てよこすがいいっ!!」」

刀を握る指先が灰になり、黒い風に飛んでいく山崎の体。

「「ちっ、魔力を全解放すれば肉体が崩壊しかねんな…。ククッ、まぁ、手負いの貴様を葬るには、この程度で十分だ…。――出でよ!闇神威…!!」」

指を組み、魔法陣を発動させるが、起動しない闇神威。代わりにかえでを捕えていた罠が解除され、解放されて着地するかえで。

「「〜〜何…っ!?」」

「かえでさん…!よかった…!」

「大神君…!」


駆け寄り、抱き合う大神とかえで。

「「〜〜あの眼鏡女か…。くだらん小細工をしおって…」」

さくらの手に握られていた神剣を持ち、大神と共に叉丹と対峙するかえで。

「好き勝手に甚振ってくれたお礼、きっちり返してあげるわ…!」

「葵叉丹!お前を倒し、皆の仇を取ってやる…!!」

「「フフフ、馬鹿め!あんなガラクタに頼らずとも私には魔力がある…!!」」


さらに黒いオーラを発する叉丹。吹き飛ばされそうになる大神とかえで。

「うわあああっ!!」

「きゃあああっ!!」


山崎の体が灰になっていくのを見て、不敵に笑う叉丹。

「「人間というのは実に脆い…。だが、この器は仮住まいに過ぎん。魔力が甦った今、もう用はない…!――消えろぉぉぉっ!!」」

「何だ…!?〜〜う…っ!」


黒い嵐が山崎を包み、サタンの姿になる。驚く大神とかえで。

「あれはまさか…!?」

「〜〜魔力を解放しすぎて、とうとうサタンに人格を支配されてしまったみたいね…」

「「――ふはははは…!!この力こそ、我の真の力なりぃぃ!!」」


サタンが高笑いするたびに黒い巨大な雷が大神とかえでの周囲に落ちる。

「きゃああ〜っ!!」

「〜〜くっ、これでは近づくことすら…」

「「ふははは…!!臆したか、人の子よ!?我を畏れ、ひざまずけ…!!我こそは地獄の帝王・サタンなり!!」」


地面に描かれた魔法陣から黒いオーラが溢れ、激しさを増す黒い嵐。

「きゃああああ…!!」

「かえでさん…っ!!」


飛ばされそうになったかえでを抱きしめ、守る大神。横たわっていた殺女も飛ばされそうになる。

「あやめさん…っ!!」

飛ばされた殺女の腕を掴み、かえでと一緒に抱きしめ、嵐に耐える大神。

「「まだ抗うつもりか?真宮寺の血が絶えた今、我を封印する手立てはないというのに…」」

「それでも俺達は諦めない!さくら君達の死を無駄にしてなるものか…!!」

「「クククッ、無理に虚勢を張らずともよいのだぞ?我も元は慈悲深い天使。おとなしく霊力を渡せば、楽に死なせてやろう。――もっとも、その女は我の下で永久に悪魔を産むことになるがなぁ」」

「〜〜かえでさんに辛い思いをさせるなら、ここで心中した方がましだ!」

「…あら、無理心中なんてお断りよ?」

「え?」

「ふふっ、何を弱気になってるの、大神君?私はこの先もずっとあなたと、…そして、姉さんと一緒にこの帝都で生きていきたいもの。悪魔ごときに私達の未来を奪われてなるものですか…!」

「かえでさん…!」

「――う…ん…」


大神の腕の中で目を覚ます殺女。

「あやめさん…!」

「よかった、生きてたのね…!」

「私…は…」

「「チッ、しぶとい出来損ないだ…」」

「何だと…!?」

「「フフフ…、我はこの男の体を取り込み、完全なる復活を遂げた。…殺女、貴様はもう用済みだ」」

「え…?」

「「クク、その男を愛しているのだろう?仲良く地獄に逝かせてやるわ!!」」


サタンの両角から放たれた衝撃波に飛ばされる大神、殺女、かえで。

「うわああああっ!!」

「きゃああああっ!!」「きゃああああっ!!」


煙が晴れ、傷だらけで倒れている3人。

「〜〜う…ぅ…」

「「フッ、もう虫の息か…。生かさず殺さず…。今まで我が野望を阻んでくれた恨み、たっぷり晴らしてくれよう…!!」」

「ぐ…っ!!」

「あう…っ!!」

「「ククッ、人間相手に手加減は難しい。少し本気を出せばすぐ死んでしまうからなぁ」」


念力で大神とかえでを空中に浮かび上がらせ、投げ飛ばすサタン。

「うわあああああ…!!」

「きゃあああああ…!!」


柱に激突し、倒れる大神とかえで。柱が粉々になり、粉塵が舞う。

「「ふははは…!!力の差が歴然だな!どんなにあがいたとて、人間は悪魔に勝てやしないのだ…!!」」

「〜〜サ…タン…さ…ま…」

「「…触るな、虫けらが!」」

「きゃ…っ!」


すがろうとした殺女を踏みつけるサタン。

「「我の血を引く藤枝の女なら、最高の兵器になると期待していたが…。とんだ見込み違いだったな」」

「〜〜そんな…!?」

「「クククッ、そもそも下等な人間が崇高な悪魔になれるわけなかろうに…。もっとも、山崎の技術ではそれが限界か…。下界では優れた技術者だっただろうが、奴も所詮、人間だからなぁ。フハハハハ…!!」」

「〜〜く…っ、う…うぅぅ…」


サタンに踏まれ続け、悔しく歯を食いしばって耐える殺女。

「――やめろぉぉっ!!」

かえでと柱を持ち上げ、投げ飛ばして立つ傷だらけの大神。驚く殺女。

「「ほぉ、まだ生きておったか。頑丈な人間もいるものだな」」

「お前と山崎のせいであやめさんがどれだけ苦しんだと思ってるんだ…!?」

「何が地獄の帝王よ?いらなくなった女をポイ捨てなんて、やることが人間の男と同じじゃないの!」

「〜〜何だと…!?」


カッとなり、額の宝石から出した赤い光線をかえでに当てるサタン。

「きゃああああっ!!」

「かえでさん…!!」

「「私を本気で怒らせたな…!貴様もこやつの餌食にしてくれるわ…!!」」


負の感情を吸い続け、触手の動きが激しくなる破導砲。

「〜〜闇の霊力がどんどん高まっていくわ…」

「「ククク…、直に破導砲は発射される…!ここまで辿り着けた褒美だ。世界が滅ぶさまを見届け、絶望と恐怖に震えながら朽ち果てるがいい!!」」

「〜〜あれが発射されれば、全てが終わってしまうの…?」

「〜〜どうすればいいんだ…!?このままでは帝都も…地球の未来も全て…」

「「ふははは…!!そうだ!もっと絶望するがいい…!!貴様らが負の感情を抱けば抱くほど、破導砲の発射は早まるのだからな…!!」」

「〜〜不安と恐怖心が勝手に芽生えてくる…っ!これもサタンの力だというのか…?」

「〜〜あ…ああぁぁ…、怖い…!怖いわ、大神君…っ!!」

「かえでさん、心の闇に呑まれては駄目です…!」

「でも、怖くてたまらないの…!〜〜私…、まだ死にたくない…っ!!ねぇ、助けて!大神君…っ――!!」


かえでを強く抱きしめる大神。

「気を強く持って下さい…!帝都の未来は俺達にかかってるんですよ!?」

「大神君…」


かえでの手を強く握る大神。

「俺がついてます。最後まで諦めずに一緒に頑張りましょう…!」

「えぇ…!」


安堵した顔で、大神に寄り添うかえで。見つめ、胸を押さえる殺女。

(――これが人間の愛…。私がかつて持っていた温かい光…)

『――あやめ、私を解放するのです…』

「…!この声は――!?」

「――きゃああああ〜っ!!」


ハッとなり、悲鳴が聞こえた大神とかえでの方を振り向く殺女。サタンの攻撃を受け、傷だらけで倒れている大神とかえで。

「「絶望の中、まだそれだけの強い心を持てていたとはな…。ククッ、だが、それだけでは帝都は救えんぞ?」」

「〜〜俺達は負けられないんだ…!死んでいった仲間、帰りを待っている仲間…、皆の想いを無駄にしてなるものかぁ…っ!!――うおおおおっ!!」


真刀を地面に刺し、黒い嵐に耐えて立ち上がり、叉丹に斬りかかる大神。

「愚かな…」

サタンを覆う闇の結界に弾かれる大神、結界に流れる黒い電流が真刀と全身に流れ、吹き飛ばされる。

「ぐああああああっ!!」

「〜〜大神君…っ!!」

「「ふはははは…!!そうだ!大事な仲間とやらを殺した我を憎むがいい!!戦いの最中で負の感情が芽生えぬはずがないのだからなぁ…!――我の勝ちだ!帝国華撃団!!」」


高笑いしながら、部屋中に闇の衝撃波のシャワーを撃ち落とす叉丹。

「うわああああ…!!」

「きゃああああ…!!」

「あぁ…っ!」


傷つき、倒れる大神とかえでを見て、ショックを受ける殺女。殺女の傍にあやめの神剣を突き刺すサタン。

「「――とどめはお前が刺すがいい。奴らの息の根を止めれば、また配下に置いてやろう。代わりにお前が悪魔の子を産み続けるのだ…!」」

「〜〜そ…、そん…な…」

「〜〜う…っ、あやめ…さん…っ」

「〜〜やめて、姉さん…っ!」

「「――死にぞこないは黙っておれ!!」」


強力な闇の衝撃波を大神とかえでに浴びせるサタン。

「うわあああああっ!!」

「きゃあああああっ!!」

「〜〜やめてぇっ!!」

「「天秤にかけるまでもなかろう?奴らはもう恋人でも妹でもない。敵だ!!」」

「うあああああっ!!」

「いやああああっ!!」


破導砲の触手に首を巻きつかれ、吊るされる大神とかえで。

「〜〜あ…あぁぁ…」

「「さっさと殺せ…!お前もああなりたいか?」」


呼吸を乱しながら神剣を握り、大神に剣先を向ける殺女。

「〜〜姉さん、駄目よ…!!やめてぇぇ!!」

涙を流しながら大神を見つめ、剣を握る手を震わせる殺女に微笑む大神。

「〜〜何を笑ってるの…?あなたはこれから死ぬというのに…」

「あやめさんが俺の為に泣いてくれたことが嬉しくて…。俺を殺すこと、悲しいと思ってくれるんですね…。やっぱり、あなたはあやめさんだ…」

「大神…君…」

「また…名前で呼んでくれましたね…。そうやってあなたに呼ばれるの、大好きです…」


目を見開いて神剣を落とし、大神にキスする殺女。驚くサタン。

「〜〜馬鹿…。あなたって人はどうしてこんな時に…」

「愛してます、あやめさん…。あなたが帰ってくるって信じてますから…」

「大神君…」


大神と額と額をくっつけ合い、泣きながら微笑むあやめ。

(――思い出なんか忘れたはずなのに…。もう…全部失くしたと思ってたのに…)

殺女の涙から光の霊力が発し、苦しむ破導砲、大神とかえでを解放する。

「「〜〜馬鹿な…!?光の霊力を降魔が宿せるはず…――!?」」

大神の持っていたあやめのペンダントと、かえでが首から下げているかえでのペンダントが殺女の光に共鳴し、同じ光を発し始める。

「さっきの光だわ…!」

『――今のうちにサタンを引きずり出すのです…!』

「えっ?」

「「〜〜ぐああああああっ!!体が…体が焼けるぅぅ…!!」」


目を眩ませ、苦しむ叉丹。衝撃波の連波がやみ、黒い嵐がやむ。

「嵐がやんだわ…!」

「好機だわ…!一気にカタをつけましょう!」


大神とかえでに微笑み、凛々しくサタンと対峙する殺女。

「あやめさん…?」

「「〜〜おのれぇ…!降魔の分際で我に逆らおうなど――!!」」


神剣を振り下ろし、白い羽根が舞う攻撃波を放つ殺女に驚く叉丹。

「〜〜ぐあああああっ!!これは…光の霊…力…!?」

「ふふっ、光の霊力は地獄の住人にとって猛毒ですものね?」

「「〜〜まさか…、あやめ…なのか…!?」」

「ご明察よ。ようやく邪魔されることなく表の人格に出てこられるようになったわ。もう一人の私があなたに愛想を尽かしたお陰でね…!」

「あやめさん…!正気を取り戻したんですね―ー!!」

「――来ないで…!!」


ハッとなる大神とかえで。あやめの体が溶けて崩壊しそうになっている。

「〜〜人格は戻っても、体は降魔のままだもの…。光の霊力で構成された魂の器には向かないみたいね…」

「〜〜そんな…、あやめさん…――!」


大神に抱きつき、涙を流しながらキスして、微笑むあやめ。

「大好きよ、大神君…。私の分まで、かえでを幸せにしてあげてね…」

「あやめさん…!〜〜駄目だ…!待ってくれ…!!」

「――はあああああああっ!!」


光で焼かれた両手で神剣を握りながら間合いを詰め、サタンを斬るあやめ。

「「ぐわああああああああっ!!」」

「大神君…っ!」


サタンから霊剣荒鷹を奪い返し、大神にパスするあやめ。

「く…っ、あと一本…っ!」

「「〜〜させるかぁぁぁっ!!」」

「きゃああああああああっ!!」


光刀を奪おうと柄を握ったあやめの全身から霊力を奪う叉丹。

「〜〜姉さん、戻って…!!そんな体じゃ無茶だわ…!!」

「〜〜まだよ…っ!刺し違えてでも二剣二刀は取り戻すわ…!!」

「「〜〜悪あがきを…っ!!」」


あやめから霊力を奪う力を強くしようとするサタン。あやめをかばい、代わりに霊力を奪われる大神。

「うわああああああっ!!〜〜ぐ…っ、うぅ…」

「〜〜大神君…っ!!いけないわ…!下がりなさい…っ!!」

「――約束したでしょう、あなたは俺が一生守るって…」

「大神君…。ちゃんと覚えててくれてるのね…」


神剣の柄をあやめと一緒に握る大神。

「もう一人で抱え込むのはやめて下さい。俺がいつでも力になりますから…!」

「そうね。あなたと一緒ならどこまでも強くなれる気がするわ…!――行くわよ…!!」

「了解!――裏御三家の力、とくと味わえぇっ!!」

「――藤枝流奥義・白鳥愛光斬!!」「――藤枝流奥義・白鳥愛光斬!!」

「「〜〜な…っ、何だ、この光は…!?」」

「思い知るがいいわ!これが人間の愛の力よ…!!」

「「ぐわあああああああああっ!!」」


神剣白羽鳥の光の霊力が取り込まれ、苦しむサタン。闇の結界が消える。

「――これで終わりよ…!藤枝流奥義・白鳥咲華斬!!」

自分の神剣でサタンの左胸を突き刺すかえで。

「「ぐわあああああああ…!!」」

光刀無形を奪い、バックステップで離れるかえで。山崎の肉体が滅び、抜け出てくる霊体の黒い霧状のサタン。

『――許さんぞ、人間…!!全員、地獄の番犬の餌にしてくれるわぁっ!!』

「はぁはぁ…、早く封印しないと…!」

「〜〜しかし、さくら君が…!」

「大丈夫よ。サタンの本体が現れれば、私の体から彼女を解放できるわ…!」

「彼女って――!?」


白く光輝く神剣を自分の胸に刺す殺女に目を見開く大神とかえで。

「〜〜あやめさん…っ!?」

「待って…!あれは…!!」


殺女の黒い翼が白く輝き、白い羽根が舞う中、ミカエルに変身するあやめ。

「あやめ…さん…?」

「いいえ…、彼女はまさか…!」

「「――私は大天使ミカエル…。さぁ、最後の審判の時間です」」


大神とかえでに優しく微笑むミカエル。


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