★18−8★
ミカサの操縦席。ラチェットの死に泣き崩れる椿。
「〜〜うっ、うぅ…、ラチェットさぁん…」
「椿…。〜〜泣いている暇なんてないのよ…!?式神はいなくなっても、降魔はまだあんなにいるんだから…!」
「どんなに辛くても、今はミカサを守ることに集中しなさい…!」
「由里さん、かすみさん…。〜〜す…、すみません…。ぐす…っ」
ミカサを攻撃する降魔の大群を撃ち落していくかすみと由里。
「〜〜駄目…!数が多すぎて撃ち落としきれないわ…!」
「〜〜諦めちゃ駄目…!ラチェットさんの死を無駄にしない為にも私達がここで頑張らないと…!!」
「〜〜ラチェットさんの仇ぃ〜っ!!」
降魔達を撃ち落していく三人娘だが、新しい大群が向かってくる。
「〜〜もう…いい加減にしてよぉ…っ」
「〜〜ハァハァ…、これじゃきりがないわ…」
大神達との通信を試みる米田。通信が繋がらず、エラーに。
「〜〜くそっ、通信ケーブルをやられたみてぇだな…」
降魔達の攻撃に揺れる船内。悲鳴をあげ、倒れそうになる三人娘。警報音。
「〜〜右舷のエンジン、損傷!防衛ラインの警報色が黄に変わりました!!」
「〜〜高射砲の弾数も残りわずかですぅ…!!」
「旋回して、川崎工場で修理を受けますか…!?」
「いや、そんな時間はねぇ。花組はそろそろ最深部に到着しているはずだ。あいつらの脱出経路を絶つわけにはいかんからな…」
「〜〜しかし、このままではミカサが――!」
警報音が鳴り、照明が赤く点滅し始める。
「〜〜防衛ライン、赤に変わりました!!これ以上は危険です…!!」
「〜〜仕方ねぇ…。お前達は非常口から脱出しろ…!」
「え…っ!?」
「――お前ら、こいつらを頼む…!」
「アイアイサ〜♪」
パラシュートを装着した加山と薔薇組が操縦室に入ってくる。
「加山さん…!」
「薔薇組さん…!」
「いつの間に船内へ…!?」
「あらん、発進の時からちゃ〜んといたわよ?ねぇ〜、菊ちゃん?」
「はい!降魔を倒しながら非常口に隠れて、脱出経路の確保に専念してました!」
「これでようやく汚名返上ができるというものだわ…!」
「よくやってくれたな!早くこいつらを連れて脱出しろ…!!」
「了解!」「了解!」「了解!」
「さぁ〜、かすみっち♪深夜の空中散歩と行こうじゃないか〜♪」
かすみをお姫様抱っこする加山。
「きゃあっ!ちょ、ちょっと加山さん…っ!?」
「…女とスカイダイビングなんて不本意だけど、文句言ってる場合じゃないものね」
「しっかりつかまってて下さいよね…!」
「え?え?」
パラシュートのベルトを由里と椿にそれぞれ装着する琴音と菊之丞。
「いや〜ん、私だけ一人なわけ〜ん?」
「仕方ないでしょ、斧彦?これに懲りたら、もうちょっとダイエットなさい」
「ああ〜ん、琴音のイジワル〜ん」
降魔達の攻撃で激しく揺れる船内。
「きゃああ〜ん!揺〜れ〜ま〜す〜!!」
「〜〜く…っ、操縦は自動に切り替えた!ここは俺に任せて早く行け…!!」
「〜〜そんな…!?司令もご一緒に…!」
「馬鹿野郎!俺は帝撃の司令であり、ミカサの艦長なんだぞ?艦長は戦艦と運命を共にするって昔から相場が決まってんだろうが…!」
「〜〜でも…」
「…お前達が死んじまったら、誰が花組を迎えに行くんだ?」
「米田司令…」
「ほれ、お涙頂戴はもう十分だろ?年寄りに構ってねぇで、さっさと行けってんだ」
「司令…、どうかご無事で…!」
「おう、お前らもな…!」
「〜〜米田司令ぃぃぃっ!!」
緊急脱出口を開放し、かすみを抱きしめてミカサから飛び降り、空に飛び出す加山。続けて飛び出す琴音と由里、菊之丞と椿、斧彦。
「〜〜ぐす…っ、米田司令…」
まっさかさまに落ちながら涙を流すかすみにキスする加山。
「か、加山さん…!?」
「ハハッ、これでいつ死んでも悔いはないなぁ〜♪」
「〜〜んもう…!ふざけてないでパラシュート開いて下さいっ!」
「ハハ…、はいはい」
パラシュートを開く加山と共にゆっくり降り、燃える帝都を見るかすみ。
「〜〜まるで…この世の終わりみたい…」
「〜〜そうだな…。どこもひどい有様だ…」
「〜〜皆、必死で頑張ってるのに…私…、最後まで任務を全うできませんでした…」
「君達・風組の任務は花組を聖魔城まで送り届けることのはずだろ?なら、ちゃんと遂行できたじゃないか。あとは俺達・月組と一緒に、花組の無事と勝利を願って待とう」
「加山さん…」
顔を近づけて微笑む加山に赤くなるかすみ。
「おっと…!」
「きゃ…!?」
襲いかかってきた降魔を忍刀で斬り捨てる加山。
「花組はまだ頑張ってるんだ。俺達も早く戻って、避難誘導と消火活動を一緒に頑張ろう!」
「はい…!」
加山に寄り添うかすみを羨ましそうに別のパラシュートから見る由里と椿、同じく見ながら紅蘭のロケットランチャーで降魔達を撃破する薔薇組。
「…楽しそうでいいわねぇ、あのバカップルは」
「…ったく、時と場合をわきまえろってーの!」
「〜〜ぶ〜、な〜んで私と由里さんはオカマさんとなんでしょうねぇ…?」
「〜〜それはこっちの台詞ですよっ!」
「あ〜ん、私も彼氏欲しいわ〜ん…!」
無事に脱出したかすみ達を見届け、操縦席へ戻って座る米田。激しくなる降魔達の攻撃と警報。
「へっ、ようやく死に場所を見つけられたぜ…」
懐から対降魔部隊の写真を出し、見つめて口元を緩ます米田。
「最後に派手にぶちかましてやるとすっかぁ…!」
写真をしまい直し、凛々しく前を見て、操縦かんを握る米田。胸元につけた対降魔部隊の赤のお守りが揺れ、鈴が鳴る。ミカサのジェット噴射が激しくなり、巻き込まれて焼け落ちていく降魔達。
「――死にぞこないの軍人をなめるなよ…!!」
★ ★
聖魔城・最深部。大きな扉を見上げる大神とさくら。
「この先にサタンがいるんですね…」
「あぁ…。行こう、さくら君…!」
「はい…!」
扉を開く大神、黒い蔓に捕らわれているかえでが目に飛び込んでくる。
「かえでさん…!!」
「今、助けますね…!!」
「〜〜来ては駄目よ…っ!!」
「え…っ?」
かえでに駆け寄ろうとした大神とさくらの立っている地面に巨大な魔法陣が展開し、二人の神武が動かなくなる。
「〜〜しまった…!!」
「――あっははは…!!こんなに簡単に引っかかってくれるなんて、お姉さん、嬉しいわ♪」
高笑いしながら、ヒールを鳴らして歩いてくる殺女。
「〜〜く…っ」
殺女を悔しく睨み、真刀滅却を持って神武から降りる大神。
「大神さん…!?」
「君はそこにいろ…!あやめさんは俺の手で元に戻してみせる…!!」
「〜〜大神君、気をつけて…!」
「――了解しました。少し待ってて下さいね。必ず助けますから…!」
赤くなって微笑み、頷くかえで。
「えぇ、期待してるわ」
「フフッ、神武なしでどうやって私に勝つつもりかしら?」
「日本橋で戦った時もそうだったではありませんか…。俺とさくら君、そして、あやめさん…。光武なしでも…たった3人でも、俺達はあの時、葵叉丹に勝つことができた…!だから、今回だってきっと勝てます…!!」
「ふふ、なるほど。あやめの記憶でも確かにそうあるみたいねぇ。でも、その時に叉丹様をちゃんと始末していれば、私はずっと藤枝あやめでいることができたのに…。フフフ…、悔やまれるわねぇ?」
「〜〜それは…あなたの言う通りです…。けど、そのお陰で俺はかえでさんに出会うことができた…。守りたい大切な人をまた一人増やすことができましたから…」
「大神君…」
「〜〜フン、くだらないことを…。――フフフ…、すぐにまた私の虜にしてあげるわ…!」
大神の手を取り、翼で飛びながらダンスし始める殺女。
「さぁ、いらっしゃい、坊や…!今夜は二人きりの舞踏会。誰にも邪魔されることなくゆっくり楽しみましょう、シンデレラ♪」
「〜〜あやめさん…」
『――舞台に男も女も関係ないわ。役になりきって楽しめれば、それでいいと思わない?』
あやめの部屋でシンデレラと王子になりきって踊ったことを思い出し、下唇を噛む大神。
「〜〜俺の話を聞いて下さい…っ!!あなたは悪魔の子なんかじゃない…!葵叉丹に強制的に降魔に転化させられただけなんです…!!」
「…つまらない男ねぇ。――せっかく遊んであげようと思ったのに…!!」
「うわああああっ!!」
大神の腹に闇の衝撃波を撃ち込み、地面に叩き落とす殺女。
「〜〜大神くぅん…っ!!」
「あーっはははは…!!そんなに私と戦いたいなら、とことんまで付き合ってあげるわ…!!」
黒いオーラを放つ神剣白羽鳥で斬りかかる殺女。真刀で防御する大神。
「〜〜やめて下さい、あやめさん…!!俺はあなたとは戦いたくないんだ…!!」
「フフ、意気地なしなんだから。なら、嫌でも戦いたくさせてあげる…!!」
神剣の闇の霊力を増幅させ、大神を吹き飛ばす殺女。壁に背中を打つ大神。
「うわあああっ!!」
「〜〜大神さん…!!」
「〜〜く…っ、かは…っ」
「あらあら、苦しいの?フフフッ、背骨でも折れちゃったかしら?」
「ぐわあああっ!!」
大神の背中をヒールで踏みつける殺女。
「フフフッ、ゾクゾクするわ…!もっとあなたの声を聞かせて頂戴♪」
「う…っ、うああああっ!!」
「〜〜もういいから戦って下さい…!!このままじゃ…――!」
「来るな…!!――これは…俺とあやめさんの問題なんだ…」
「大神さん…」
「ハァハァ…、――あやめさん…、これを…」
殺女に婚約指輪の箱を差し出す大神。驚く殺女。
「ずっと渡しそびれたままでしたから…。今まで辛い思いをさせてすみませんでした…。これからは俺がずっと傍にいます。だから――!」
指輪の箱を踏みつぶす殺女。
「戦いの最中にプロポーズ?あはははっ!馬鹿も休み休み言いなさいな…!」
「〜〜お前に言ってるんじゃない…!俺はあやめさんに――!!」
「――もう遅いのよ。あの時見たでしょう、藤枝あやめの心と記憶が私によって完全に消滅するさまを?」
「〜〜それは…」
「あははははっ、残念だったわねぇ…!あやめの人格が少しでも残ってたら効果的な作戦になったかもしれないけど。フフッ、私はそんなもので心を動かされるほどヤワじゃないわよ?」
「嘘だ…。あやめさんは消えたりしていない!絶対にまだ生きている…!!」
「…本当、頑固な坊やだこと。いいから早く剣を抜きなさい。フフッ、またジワジワと甚振ってあげるわ!すぐに死なれちゃつまらないものねぇ」
「俺は死なない…!あなたとかえでさんを助け出すまで絶対に…っ!!」
真刀を地面に刺して力を振り絞り、傷だらけで立ち上がる大神。
「大神君…」
「驚いたわ、その傷でまだ立ち上がることができたなんて…。フフ、根性のある男は好きよ♪」
「あやめさん、お願いです…!正気に戻って下さい…!!あなたは叉丹に操られて、利用されているだけなんだ…!!」
「残念だけど、これが本当の私なの。藤枝あやめは私の中の偽りの存在…。フフ、そんなこともわからないようじゃ、あやめも悲しむわよ、大神君♪」
あやめと同じ様に大神の額を小突く殺女。眉を顰め、殺女を突き放す大神。
「〜〜思い出してくれ、あやめさん…!!俺とあなたの夢はこの帝都を守ること…!そして、俺達の明るい未来を築いていくこと…!!そう正月に誓い合って、一緒に修業しましたよね…!?その時にくれたあなたのお守り…。これがあったから、俺達は今まで頑張ってこられたんです…!」
あやめのお守りを握り、殺女に見せる大神。
「そうですよ!バレンタインの時には大神さんに喜んでもらおうって、皆で一緒にチョコを作ったじゃありませんか…!!」
「姉さんが儀式に失敗しても…悪魔の子だとわかっても…、皆は変わらずに接してくれた…。姉さんが大神君達を愛したように、彼らもまた姉さんを愛していたから…。皆、あやめ姉さんに戻ってきてもらいたいのよ…!!」
「フフ、泣けるお話だこと。それであやめの人格を復活できると思った?」
「俺は信じてます…!あなたの中にまだあやめさんは生きてるって…!!」
「…話にならないわね。これじゃいつまでも平行線のままだわっ!!」
闇の衝撃波で大神を吹き飛ばす殺女。
「うわああああっ!!」
「〜〜大神くぅんっ!!」
「ふふっ、もういいから死んじゃいなさい。――かえで、愛しの彼が無様に死ぬところ、今見せてあげるわね♪」
「〜〜やめて…っ!!本当はそんなことしたくないんでしょう…!?降魔の人格に支配されてるだけなのよね…!?」
「〜〜ごちゃごちゃうるさい娘ねぇ…っ!!」
黒い蔓から電流が流れ、かえでの全身に走る。
「きゃあああああっ!!」
「〜〜かえでさん…!――!!」
神剣で大神に斬りかかる殺女。転がり、よける大神。
「お喋りはおしまいよ。全員、サタン様の生贄になりなさい…!!」
神剣を振り下ろす殺女。かえでの神剣で防御するさくら。
「さくら君…!」
「〜〜これ以上の説得は無意味だと思います…。破邪の陣に賭けてみましょう…!」
「……そうだな…。悔しいが、それしか方法はなさそうだ…」
「大神さん、発動命令をお願いします…!」
「よし…!――行くぞ!破邪の陣!!」
「了解!」
霊力を高め、真刀と神剣を構えながら白とピンクの霊力の光を出し、陣形のまま飛び出していく大神とさくら。二人の下に展開する魔法陣。
「フン、たった二人で何が…――!?」
斬りかかる殺女の隙を突き、かえでの神剣で突進するさくら。攻撃をかわされ、目を見開く殺女。
「〜〜そ、そんな馬鹿な…!?」
「これがあなたの目指した花組の力だ…!!――今だ、さくら君!」
「神剣よ、彼の者に憑く魔を取り払いたまえ…!――たああああああっ!!」
神剣からピンクの剣圧の衝撃波を放つさくら。
「きゃああああああっ!!」
殺女に直撃し、黒い翼がもがれ、羽根となって飛び散る。傷だらけで膝をつき、息を荒げる殺女。
「やりました…!」
「よくやったわ、さくら…!」
「あやめさん…!!」
駆け寄ろうとする大神を睨み、神剣を突きつける殺女。
「フ…フフフ…、残念だったわね。まだ私は生きてるわよ…?」
「〜〜そんな…!?」
「〜〜くっ、やはり俺達だけでは無理なのか…――!?」
ふらつき、その場に座り込む大神とさくら。
「大神君…!!さくら…!!」
「フフフ…、だいぶ霊力を消耗したみたいねぇ。回復する前に始末しておかないと♪」
大神の首に神剣を突きつける殺女。
「〜〜姉さん、やめて…!!」
「あーっはははは…!!無様に泣き叫ぶといいわ…!!――死ねぇぇぇぇっ!!」
大神に神剣を振り下ろす殺女。身構える大神。
「――大神さん…っ!!」
大神を突き飛ばし、さくらの胸に刺さる神剣。目を見開く大神とかえで。
「〜〜さくら君…っ!!」
「うふふっ、命を賭して隊長を守る…ねぇ。健気な隊員だこと♪」
さくらから神剣を引き抜く殺女。血を吐き、倒れるさくらに駆け寄る大神。
「〜〜さくら君…!しっかりしてくれ…!!」
「お…、大神…さ…ん…」
「無理に喋るな…!〜〜待ってろ、今、応急処置を…!」
「えへへ…、私…、もう…ダメみたいです…」
「〜〜そんなことあるものか…っ!気を強く持て…!!いつもみたいに呑気に笑っていれば大丈夫だ…!!」
「えへへ…、すみま…せ…ん……。あやめ…さんを…救ってあげて…下…さい…ね……。かな…ら…ず…で…す……よ……」
涙を流しながら大神の手を握って微笑み、息を引き取るさくら。
「駄目だ、さくら君…!まだ…まだ逝っては…!!〜〜目を開けてくれぇ…!!」
「フフッ、これで真宮寺の娘はいなくなったわ…!これでサタン様を封印することはできなくなったわねぇ――」
『――おね〜えちゃん♪』
「…!?」
対降魔部隊時のあやめと嬉しそうに遊ぶ子供のさくらが幻で見える殺女。
「こ、これは…!?〜〜まだ藤枝あやめの記憶が残ってるというの…!?」
かえでには幻が見えず、殺女が一人で苦しんでいるようにしか見えない。
「姉さん…?まだ生きてるのよね…!?〜〜お願い!返事をして…っ!!」
『――さくら、大きくなったら、お姉ちゃんみたいになりたいなぁ…!』
『ふふっ、なら、剣のお稽古、いっぱい頑張らないとね』
『うんっ!さくら、頑張る〜!』
「〜〜さ…くら…」
殺女の頬に涙が伝う。驚くかえで。
「涙…ですって…?〜〜馬鹿な…!?降魔に…人間の感情などあるはずが…。〜〜あ…、あぁぁ…。もう…やめろ…!〜〜これ以上、見せるなぁぁぁっ!!」
動揺し、震えながら頭を押さえ、うずくまる殺女。
「……これで満足ですか、あやめさん…?」
ハッとなり、涙を流す顔を上げる殺女。さくらを横たわらせ、立つ大神。
「〜〜あなたを慕う仲間の命を奪っても…、何とも思わないんですか…!?」
「〜〜黙れっ!!私は叉丹様に仕える降魔なのよ…!?小娘一人殺したぐらいで――!」
「――あなたは、あやめさんです…!!俺にはわかります…、あなたの心が痛み、泣いているのを…。その涙が立派な証拠だ…!」
「〜〜あ…、あぁ…私…はぁ…」
涙を流し続け、力が抜け、神剣を落とす殺女。
「さくら君だけじゃない…。ここまで来るのに皆、死んでいきました…。ラチェットも…カンナも…すみれ君も…紅蘭も…マリアも…アイリスも…皆…、〜〜皆…っ」
「〜〜そんな…」
涙を流し、うつむくかえで。
「〜〜答えて下さい、あやめさんっ!!皆が殺されて…、俺達と戦うことになって…、本当は辛いんでしょう…!?もしも本当に何の痛みも感じていないなら、俺がこの場であなたを斬り捨てます…!!」
涙を流しながら真刀を握りしめ、構える大神。
「答えて下さい!!俺達の…俺との絆はその程度のものだったんですか…!?」
「〜〜わ…たし…は…――っ!!」
胸が苦しくなり、うずくまる殺女、あやめの姿と二重に見える。
『――おとなしく闇に還りなさい…!!』
「あやめ姉さんだわ…!」
「あやめさん…!」
「〜〜馬鹿な…!?あの時…、完全に消滅したはず――!」
殺女を強く抱きしめる大神。驚く殺女。
「――あなたはあやめさんです。降魔なんかじゃない…。俺の一番大切な藤枝あやめ副司令です…!」
「…!!――大神…く…ん…?」
あやめの表情で大神を見上げる殺女。
「あやめさん…!!あやめさんなんですね…!?」
叉丹の衝撃波が飛んできて背中で受け、気を失って倒れる殺女。
「〜〜あやめさん…!!」
「「――茶番はそこまでにしてもらおうか」」
サタンに支配され、サタンと二重の声になった叉丹が光刀無形を携えて奥から歩いてくる。
「葵叉丹…!」
「「本当に使えぬ道具だ…。まぁ、真宮寺の娘を亡き者にしたことは褒めてつかわそう」」
「〜〜山崎少佐、こんなことはもうやめて下さい…!!」
「「山崎だと?ククク…、我は叉丹…!その名はとうの昔に捨てたわ…!!」」
サタンの闇の霊力を完全に解放し、全身に纏う闇のオーラを爆発させる叉丹。
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