★18−5★



神崎重工・地下研究所。降魔の大群が押し寄せてくる。逃げ惑う従業員達。花小路、忠義、重樹、雛子に襲いかかる降魔を鬼殺で斬っていく米田。

「〜〜早く上の階へ避難を…!」

飛び出し、ミカサを操縦する機械を守ろうとする重樹。

「〜〜あなた…!」

「〜〜ここまで来て、ミカサを台無しにされてたまるか…っ!」


重樹に狙いを定め、襲いかかる降魔達。

「〜〜く…っ!!」

「――神崎風塵流・胡蝶の舞!!」


すみれの長刀から放たれた炎に焼かれる降魔達。重樹をかばうすみれ。

「すみれ…!」

「…勘違いしないで下さいまし。私の実力を見せる前に死なれては不愉快だからですわ」


重樹に駆け寄り、すみれを心配そうに見る雛子。

「〜〜すみれさん、無茶をしないでね…」

「早くお父様を連れてお逃げ下さいまし…――!!」


鋭い爪ですみれに襲いかかる降魔。

「〜〜すみれさん…!!」

「〜〜しまった…!」


身構えるすみれを抱きしめてかばい、腕を爪で引っかかれる重樹。

「お父様…!?」

「フッ、考えるより先に行動してみるのも時には必要みたいだな…」

「〜〜いけませんわ…!出血がひどいんですから、動かないで下さいまし」

「フフ…、自分の気持ちを押し殺し、無我夢中で好きなことに打ち込むお前は私にそっくりだよ…」

「お父様…」


互いに微笑み合うすみれと重樹。すみれ達を取り囲み、近づいてくる降魔達。重樹を雛子に託し、凛々しく微笑んで立ち上がるすみれ。

「――まったく命知らずな化け物どもですこと…。神崎グループを敵に回すとどれほど恐ろしいか思い知らせてあげますわ…!」

長刀を振り回し、降魔達を倒していくすみれ。背後からすみれを襲った降魔をカンナがトンファーでやっつける。背中合わせになるすみれとカンナ。

「へへっ、応援が欲しいなら素直に呼べってーの!」

「あ〜ら、そうなったら私の見せ場が減ってしまうではありませんか」

「へっ、素直じゃねぇ奴」

「フフ、背中は預けましたわよ…!――きええええいっ!!」

「どりゃああああっ!!」


降魔達を倒していくすみれとカンナ。駆けつける大神、花組、ラチェット。

「すみれさん…!」

「フフ…、毎度の如くぞろぞろと…。あなた方の出番なんて残ってませんわよ?」

「えへへっ、それでも頑張ります!」

「目標・全ての降魔の討伐!」

「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」


降魔を各自で倒していく花組を避難しながら見守る忠義と花小路。

「ほぉ、神武に乗らずともあれだけの戦闘能力を備えておるとはのぉ…!」

「最初はてんでバラバラだったあの娘達がなぁ。よくあそこまで成長してくれたものだ」

「――最後の一匹、頼んだぜ!」

「お任せを!――きええええいっ!!」


最後の一匹の降魔を倒すすみれ。

「ふぅ〜、良い準備運動になったな!」

「ふふ、馬鹿力のお陰で助かりましたわ」


凛々しく微笑み合うすみれとカンナ。

「すみれさん、ありがとう。よく頑張りましたね」

「フフン、これが私の実力でしてよ♪」


腕を押さえる重樹に歩み寄り、レースのハンカチで手当てするすみれ。

「…仕事熱心なのも結構ですが、お体をご自愛下さいましね」

「それをそっくりそのままお前に返すよ。カンナ君達皆で必ず帰ってこい…!今まで散々私達に迷惑をかけてきたんだ。きちんと親孝行してもらわないと困るからな」

「ふふっ、言われなくてもわかってますわ」

「よかったですね、すみれさん♪」


すみれと重樹を見て微笑む雛子。再び警報音が鳴る。

「――大変よ…!また降魔の大群が侵入してきたわ…!!」

窓の外を見て、ハッとなるすみれ。川崎工場を取り囲んでいる降魔の大群。

「〜〜さっきより数が多そうだよぉ…!?」

「〜〜く…っ、これではきりがないぞ…」

「――なら、私達の出番だな♪」


双葉と新次郎が刀を持って駆けつける。

「双葉姉さん…!!」

「大河君…!よかった…!無事だったのね…!!」

「〜〜わひゃあ!?」


ラチェットに抱きつかれ、赤くなる新次郎。

「は…、はい。雪組さんの支援もあって、全員無事ですよ!今、薔薇組さんと加山さんで劇場を守って下さってますから…!」

「姉さん、無事なら何で連絡くれなかったんだよ…!?」

「いやぁ〜、悪い悪い!あの後、間違って荒鷹神社に行っちまってさ〜♪」

「〜〜いぃっ!?仙台から降魔だらけの道を通って戻ってきたのか…!?」

「あぁ、なかなか良い散歩コースだったぞ♪」

「〜〜散歩って…」


降魔達がバリアーを破って入ってきそうになる。

「ここは私と新君に任せて、あんた達は早く聖魔城へ向かいな!」

「向かいなって言われてもよぉ、翔鯨丸がねぇのにどうすりゃいいんだよ…!?」

「時間的には丁度良いが、轟雷号で本部に戻ったら瘴気放出のタイミングを逃すかもしれないしな…」

「それなら心配あらへんで!わざわざ翔鯨丸使わんでも、あんさん達の目の前に『足』があるやないか♪」

「足なんてどこにあるの…?」

「ふっふっふ〜、まぁわからなくとも無理ないか。ほんなら、うちについてきてぇな!ビックリさせたるで〜♪」

「どういうことなんでしょう…?」

「とにかく、紅蘭についていってみよう」


紅蘭を追う大神と花組。新次郎にキスするラチェット。ショックな双葉。

「よく頑張ったわね、大河君。やっぱり私の見込んだ通りだわ♪」

「ラチェットさん…」


頬を押さえ、照れる新次郎。わなわなして木刀を振り回す双葉。

「〜〜貴様もさっさと行かんか、メリケン女ぁっ!!」

「ほほほ…、行って参ります、お義母様♪」

「〜〜だから、お義母様って呼ぶなっつってるだろ〜がっ!!」


ラチェットにキスされた頬を押さえ、照れて喜ぶ新次郎。

★            ★


紅蘭に連れられ、ミカサの作戦指令室に入る大神と花組。

「ここは何だ、作戦指令室みたいな造りだが…?」

「――皆さん、こちらです…!」


操縦席から立ち上がり、敬礼するかすみ、由里、椿。

「帝劇三人娘、再集結で〜っす♪」

「かすみさん…!よかった〜、無事だったんですね!」

「はい、お陰様で。その…加山さんも必死に守って下さいましたし…ぽっ」

「ハハハ…、敵の本陣に向かうって時にノロケはやめてくれよ〜?」


軍服に軍帽姿の米田が奥から出てくる。

「米田司令…!」

「〜〜あ…、も、申し訳ございません…!」

「米田はん、神武全機の最終点検、バッチリ完了しましたさかい!」

「ご苦労だったな。いよいよ『空中戦艦ミカサ』の出番ってわけだ…!」

「くうちゅうせんかんみかさ…?」

「せや。帝撃ができた直後から神崎重工が極秘裏に開発していた帝撃の最終兵器やさかい!」

「噂では聞いたことがありましたが、まさかあんな大がかりな戦艦が本当に完成しましたの…!?」

「あぁ、そのまさかだ。――花小路さん、そっちはどうだい?」

「〜〜きゃ…っ!?」


揺れる作戦指令室内。従業員達にミカサの発進準備をさせる重樹。満足気に見守る忠義と雛子。米田と通信する花小路。

「こちらは準備万全だ!近辺の帝都市民の避難も完了したそうだよ」

「へへ、助かりましたぜ…!」


道路が割れ、ミカサが帝都の地下から出てくるのを見て、驚く避難中の帝都市民達、吠えて威嚇する降魔達。

「あれは何だ…!?」

「見ろ!帝国華撃団のマークだ!遂にあの城に乗り込むつもりらしいぞ」

「おぉ〜っ!頑張れ〜っ!!帝国華撃団〜っ!!」

「帝都の未来は託したからね〜っ!!」


ミカサの窓から覗き込むアイリス。

「きゃは♪皆、応援してくれてるよ!」

「皆さんの期待に応えられるよう、頑張りましょ!」

「このミカサがあれば百人力ね…!」

「これで聖魔城までひとっとびだな!へへっ、武者震いがしてきたぜ…!」


ミカサ内部で機械を操作し、飛行準備する風組。

「――神武、格納庫に全て搭乗確認!」

「全てのエンジン、正常に起動!」

「目的地、大和島に設定完了!――発進準備、完了しました!」

「これより本艦は大和島及び聖魔城へ向かい、最終作戦を決行する!――お前達、準備はいいな!?」

「はい!」

「へへ、待ってろよ、山崎…!――空中戦艦ミカサ、発進!!」

「了解!」「了解!」「了解!」


風組の操縦で飛行し始めるミカサ。角度が傾き、慌てて柱につかまる花組。

「〜〜きゃああっ!!落ちるぅ〜っ!!」

「〜〜シートベルトってもんはねぇのかよ〜!?」

「高度を一気に上げとるんや。安定するまで辛抱しいや」

「きゃははは!滑り台みた〜い♪」

「…アイリスは喜んでるみたいね」

「〜〜子供は呑気でいいですこと…」

「高度が安定したら、俺達も神武に搭乗しよう!」

「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」


★            ★


聖魔城。ミカサが飛んでくるのを黒い炎で映し、不気味に笑う叉丹と殺女。

「フッ、馬鹿め。そんなもので我々に対抗できるとでも思っているのか?」

「ふふっ、あんなデカブツ、すぐに叩き落としてご覧にいれますわ。――頼んだわよ、蝶」

「かしこまりました…」


ひざまずき、巨大な怪鳥型の式神を魔法陣で召喚し、向かわせる蝶。

「ククク…、我が野望を阻む者は容赦せぬ…!」

部屋を移動する叉丹と殺女。黒いゲルに巻かれ、気を失っているかえでの頬を撫で、妖しく笑う叉丹。

「藤堂の血を継ぐ妹巫女か…。極上の霊力を感じるぞ…!」

目を開き、叉丹につばを吐くかえで。余裕で笑う叉丹。

「〜〜叉丹様に何てことを…っ!?」

「〜〜んあああ…っ!」


殺女に鞭で打たれ、苦痛に顔を歪めながら睨むかえで。

「ククッ、私をコケにした罰だ。しばらく可愛がってやるといい」

「かしこまりました」


つばを指で拭い、笑って出ていく叉丹。かえでを鞭で打ち続ける殺女。

「きゃああっ!!ああっ!!くはあっ!!や…っ!ああああああ〜っ!!」

「ふふふっ、痛いでしょう?悪い娘にはおしおきが必要ですものねぇ」

「〜〜く…っ、姉さんの体を返しなさい…っ!!」

「まぁ、まだ反抗するつもり?フフフ…、でも、そうでなくっちゃつまらないものねぇ…。だったら、もっともっと可愛がってあげるわ…」


かえでの頬にキスをし、いやらしく体を触り始める殺女。

「〜〜いやああ…っ!!な、何してるのよ…!?」

「ふふっ、近親相姦ってゾクゾクするでしょ?優等生ぶって…、本当はあなたも期待してたんじゃないの?」

「あっ、や…っ、やぁぁ…っ!!やめてぇっ!!ああんっ!」

「フフ…、そんな破廉恥な娘にいつからなってしまったの?姉さん、悲しいわ」

「くぅ…んっ、――ふふ、そうねぇ…。強いて言うなら大神君に抱かれたからかしら?」

「〜〜あの坊やとまだ関係を持っているというの…!?」


かえでの肩をわなわな掴み、かえでの肌に爪を食い込ませる殺女。動揺する殺女に口元を緩ませるかえで。

「あら、気になる?姉さんがいなくなってから私達、ずっと同じ部屋で寝泊まりしてるんだから。さっきだって直前まで部屋で愛し合ってて――」

イライラして、かえでの頬を爪で切る殺女。頬に3本の赤い筋が垂れるかえで。

「〜〜黙りなさい…!今度はその減らず口を引き裂いてやるわよ…っ!?」

「へぇ、降魔にも嫉妬なんて感情があったなんてね…。――でも、もう遅いわ。彼、姉さんがいなくなったせいで私にすっかり心変わりしそうだもの。せっかく記憶を取り戻したのに、本当に残念だわ」

「〜〜黙れって言ってるのがわからないのっ!?」


悔しくかえでを睨み、首を絞める殺女。

「〜〜う…っ!あ…ああぁ…」

「ふふっ、あんたなんかその気になればす〜ぐ殺せるのよ?でも、あなたにはやってもらうことがあるからすぐには殺さないわ。優しい姉さんに感謝しなさい?」


殺女の表情を見て、口元を緩ませるかえで。

(――間違いないわ…。まだ…殺女の中で姉さんは生きてる…!)

「ふふっ、姉さんが戻ってこないなら私、大神君と結婚しちゃおうかな?」

「〜〜何ですって…!?」

「今頃、大神君ったら姉さんより私を助けることで頭がいっぱいだと思うわ。彼ったら、ますます私に夢中になっちゃいそう♪ふふっ、まぁ、あなたはもう姉さんじゃないんですものね。関係ないか…」

「〜〜くっ、ふふ…、えぇ、そうよ…。私はもうあやめじゃないもの…!フフ、あんな坊やよりこんなにいやらしい体してるあなたの方がよっぽど興味深いわ」

「あん…っ!」


かえでの敏感な部分をつねり、指から黒い電流を流す殺女。

「ああああああ〜っ!!」

「フフフ…、さぁ、もっと姉さんと楽しみましょう!後で彼にもたっぷり可愛がってもらうといいわ」

「ふっ、姉さんの元彼となんてお断りよ…!」

「あら、誰が叉丹様なんて言ったかしら?」

「え…?〜〜ま、まさか…!?」


妖しく微笑み、かえでの顎を押し上げ、耳元で囁く殺女。

「藤堂神貴の悲劇を再現してあげるわ。あなたはこれから一生ここでサタン様と交わい、悪魔の子を産み続けるの。新世界の住人・最終降魔をあなたが創造するのよ」

「〜〜ひ…っ!?」

「うふふふ、その恐怖に臆する顔、素敵だわ…!!写真に撮って、額に入れて飾っておきたいくらいよ…!」

「「――フフフ…、遂に母胎を手に入れたか…」


サタンと二重の声になって近づいてくる夜叉丹。

「〜〜ひ…っ!?」

「サタン様、どうぞこちらへ…」

「いやああっ!!来ないでぇっ!!」

「「ククク…、威勢の良いおなごじゃ…」」

(〜〜あ、葵叉丹じゃない…!?)

「この男の肉体はもうほとんどサタン様に侵食されてるの。だから、葵叉丹としての人格を保っていられる時間も残り少ないのよねぇ」

「〜〜そ、そんな…!?ひぃっ…!!」

「「さぁ、我の手に堕ちるがいい…!」」


涙目で身構えるかえで。かえでの首から下げていた、ぼたんの形見の十字架のペンダントが光り、苦しむサタンと殺女。

「「ぐあああっ!!」」

「きゃあああっ!!」

『――サタン、この娘達には指一本触れさせません…!』

(こ、この声は…!)


羅刹の爆発に巻き込まれ、大神と大和島に漂流した時に聞いた声を回想するかえで。

「「〜〜ぐ…っ、ミカエルめ…!またしても我の邪魔を…っ」」

腕で顔を隠し、光から逃げるように去るサタン。

「〜〜まさか大天使を味方につけていたとはね…。――フフ…、いいわ。今は見逃しといてあげる。その代わり、坊や達が来たらめちゃめちゃにしてあげるから…!ふふふ…、あーっはははは…!!」

高笑いしながら去る殺女。光が消えるペンダントを不思議そうに見つめるかえで。

「大天使…ミカエル…?」

★            ★


ミカサ。神武が積んである格納庫。円になり、あやめのくれたおそろいのお守りを握る大神と花組。

「もらったんはほんの3ヶ月前やのに、えらく懐かしく感じるさかいな…」

「このお守りは私達とあやめさんを繋ぐ絆みたいなものですものね」

「帰ったら、あやめお姉ちゃんに『つばさ』を観てもらおうね!」

「そうね。私達の絆を信じて頑張りましょう…!」

「準備はいいな?最終目標は破邪の陣で葵叉丹を倒し、その体から出てきたサタンを二剣二刀で封印すること…!」

「その為にはまず、あやめさんとかえでさんを取り戻さないと…だな!」

「この戦いで世界の命運が決まると言っても過言ではありませんものねぇ」


団結する花組を見て、微笑みながら入ってくるラチェット。ラチェットに気づき、笑顔で駆け寄り、手を握るさくら。

「ラチェットさんも一緒に頑張りましょうね!」

「えぇ。ラチェット・アルタイル、精一杯頑張らせて頂くわ!皆、よろしくね♪」

「ラチェットがいてくれれば心強いわね」

「えへへっ、皆一緒に頑張ろ〜♪」

「やはり、グランドフィナーレは派手にいきませんとねぇ!」

「Wサタンをけちょんけちょんにしてやろうぜ!」

「神武の整備もバッチリや!壊さん程度に思い切り暴れてくれなはれや」

「『破邪の陣』、必ず成功させましょう!」


凛々しく頷き合い、手を重ね合わせる花組。

「これが最後の戦いだ…!行くぞ!!」

「おーっ!」「おーっ!」「おーっ!」「おーっ!」「おーっ!」「おーっ!」「おーっ!」


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