★15−4★



天雲神社。門が開き、出迎え、ひざまずく神官。かえでに続いて入る大神。

「――失礼ですが…」

「…私の客よ?」

「し、しかし…」

「…私にたてつく気?」


妖しく笑うかえで。びびり、ひれ伏す神官達。中庭を歩く大神とかえで。

「〜〜さすがですね…」

「当然よ」


先巫女が現れる。

「丁度よかったわ。彼が話があるんですって」

「…かえでを残して立ち去れ。今回だけは見逃してやる」

「そうはいきません!最終降魔とは一体何なのか、あやめさんを救うにはどうしたらいいのか、色々お聞きしたいんです!」

「部外者に話すことはないと言っておるだろう?」

「俺はあやめさんと…、あなたのお孫さんとただ幸せに生きていきたいだけなんです!結婚して、子供を育てて…。そんな普通の家庭をあやめさんは築きたいだけなんです!せめて資料だけでも見せて頂けないでしょうか!?〜〜お願いします…!!」


土下座する大神を複雑に見つめるかえで。

「……別にいいじゃない、書庫貸してやるぐらい。…おばあ様も姉さんのこと、本当は心配なんでしょ?」

黙る先巫女。

★               ★


客間。正座して待つ大神とかえで。儀式で祝った日を思い出す大神。

(……ついこの間のことなのに、随分昔に感じるな…)

神官を連れて入ってくる先巫女。一礼する大神。

「…待たせたな。ま、茶でも飲め」

茶を入れる神官。見つめる大神。

「…安心せい。毒など入っとらんわい」

「い、いえ、そんなつもりでは…」

「遠慮するな。熱いうちの方がうまいぞ」


飲めと目で促すかえで。茶を飲む大神。

「い、いただきます…。――この味…!」

「わし特製の梅茶じゃ。かえで、お前もよく飲んだじゃろう?」

「そうね…。お母様の味だわ」

「やっぱり…!あやめさん、よくこのお茶を入れてくれるんです。俺達が疲れてる時に決まってこの梅茶と羊羹を出してくれて…」

「……」

「梅茶を飲む度に心が温かくなるんです。皆、戦いや舞台前に緊張してても、いつの間にかリラックスできて…。やっぱり故郷の味だったんですね」

「…気に入ってくれて何よりじゃ」


神官を帰す先巫女。

「…あやめは家に戻さんぞ、最初に言っておくがな」

「〜〜何故です…!?」

「何度言えばわかるんじゃ?悪魔の子はこの家に災いを――」

「もみじさんだって…!!」


ハッとなる先巫女。

「〜〜もみじさんだって、あなたの大切な娘さんだったんじゃないんですか…!?なのに…、どうして悪魔の子だからと殺したりできたんです!?」

「…全て話したんじゃな?」

「…姉さんがね」

「俺を生きて帰したくなければ、殺せばいいです。監禁したって構いません!その代わり、あやめさんを藤枝の家に戻してあげて下さい…!」

「なるほど。交換条件というわけか?して、その秘密はあと誰に話した?」

「…帝劇の皆です」

「なら、そいつらも全員殺さねばならんな。秘密の漏洩は禁忌じゃからの」

「なら、俺達も正々堂々戦います!あやめさんは大切な仲間です!仲間を守る為なら皆、命すらかけられます!」

「…口先だけ格好つけてもいけ好かんぞ?」


指を鳴らす先巫女。武装した神官達が現れ、大神を取り囲む。

「今回は貴様一人じゃ。逃げられんぞ?」

「いいえ…、――二人よ!」


畳を叩き、飛び出てきた刀を取り、大神に一本パスするかえで。驚く大神。

「忍者屋敷みたいでしょ?このクソババアの趣味なの」

「ちっ、家の仕掛けまで教えおって…」

「俺は戦います!あなたがあやめさんをもう一度認めて下さるまで…!!」

「――かかれぇっ!!」


襲いかかる武装した神官達。全て倒す大神とかえで。

「ほぉ、少しお前さんらを見くびっておったようじゃな」

「あなただって、本当はまだあやめさんを愛しているのでしょう!?本当に悪魔の子として忌み嫌うなら、儀式の後、とっくに殺してたはずだ…!!」

「あやつはもみじと違うて武芸に秀でておる。下手に手出ししては、返り討ちにあうからな」

「〜〜何…!?」

「わしは実の娘さえ殺した女じゃ。冷酷だと罵られようが関係ない。じゃが、全ては藤枝の家と世界を守る為じゃ…!!」

「うわ…っ!!」

「大神君…!!」


霊力で大神を吹き飛ばす先巫女。体勢を整え、着地する大神。

「自分の娘を殺して世界を救う…!?〜〜大切な家族を犠牲にしてまで世界を守ろうだなんて、そんなの間違ってます!!」

「なら、お前さんはどうなのじゃ?帝都を守る為に戦っておるのじゃろ?」

「俺達は誰かを犠牲にして勝とうだなんて思いません!!俺達一人一人は弱い!だが、弱いからこそ支え合い、協力して勝利を勝ちとってきたんです!!」

「…お前もそうなのか?」

「私は…、協力なんて馬鹿らしいと思ってるわ」

「〜〜かえでさん…!」

「でも、この子達を見ていると、何だか不思議な気持ちになるのよ…。馬鹿みたいにお互いを思いやって、誰かが傷つくならば、私達上の命令なんて絶対聞かない…。でも多分、それは愛する人がいる世界を守る為…!」

「そうです!たとえ世界が平和になったとしても、愛する人のいない世界なんて意味がないんです!〜〜そんなの俺は耐えられない…!!」


衝撃波を撃つ先巫女。耐える大神とかえで。

「さぁ、早く斬りかかって来い。わしを殺せば、あやめは家に戻れるぞ?」

「あなたを殺しても意味ありません!!俺はわかってもらいたいんです!!世界を守るよりもっと大切なこと、それは苦しむ愛する人を救うことです!!」


霊力を発し、衝撃波を打ち砕いていく大神。驚く先巫女。

(〜〜こ、この霊力はまさか…!!)

口元を緩め、手を下ろす先巫女。息荒く膝をつく大神とかえで。

「世界よりも大切なこと…か。ふっ、なかなか面白いことを言うな」

「それじゃあ…!」

「昔はわしもそうじゃった。もみじを殺されたと思い込み、まるで抜け殻のような毎日じゃった。どんなに恐ろしい力を持っていても、ただ生きていてほしい、何故あの時阻止できなかったのかと、よく自分を責め続けたものじゃよ。じゃが、あの子は生きていた。どれだけ嬉しかったことか…」

「先巫女様…」

「…じゃがなぁ、やはりあいつは悪魔の子じゃった。わしが何も思わずにもみじを殺したと思うか?」

「いいえ…。一番辛かったのはあなただと思います…」

「…もし、わしがあの時、あの子を殺してなかったら、今頃帝都は壊滅しておったじゃろう。お前さんとあやめも出会えなかったかもしれぬぞ?」

「〜〜それは…」

「誰が喜んで自分の子を殺すか…。じゃが、全ては運命なのじゃ。藤枝の一族…、藤の名を連ねる一族の宿命なのじゃよ」

「藤の名…?」

「…屋敷なり書庫なり好きに調べるがいい。言っても無駄みたいじゃからな」

「ありがとうございます…!」


大神を案内する神官達。呼び止められるかえで。目で合図する先巫女。

★               ★


廃屋。神剣白羽鳥の鞘を抜いて見る先巫女。見つめるかえで。卓袱台に苺の乗った皿。神剣で素振りする先巫女。剣圧で古い竹の柵が切れる。

「ふっ、ちっとも切れ味は鈍っておらんようじゃな。…どうじゃ、ここに来るのも久しぶりじゃろ?」

「…あの頃は小さかったから、何も考えてなかったけど、…ひどい所ね」

「…わしを恨んでおるか?……もみじを殺さなければ、ぼたんもあんな目にあわなかったかもしれん…」

「〜〜っ…!」

「…それに、わしが身を潜めなければ、ぼたんを救えたかもしれんしのぅ。じゃが、巫女を次代に渡すまで、わしは死ぬわけにはいかんのじゃよ…。ぼたんが死んだ今、藤枝の巫女は不在のままじゃしな


黙って苺を食べるかえで。微笑む先巫女。

「〜〜何笑ってんのよ?」

「いや…、お前さん、苺が好きだったのか?」

「…文句ある?」

「孫の好きな食べ物も知らないとは、ひどいババアじゃと思ってな…。昔からあやめにかまってばかりで、お前さんには本当にひどいことをした…」

「…今さら謝ってもらっても意味ないわ」


フォークで苺をつつくかえで。

「…巫女は継がないわよ?姉さんが駄目なら私なんて考え、逆に腹立つわ」

「そう言うと思ったわい。…お前さん、大神一郎に惚れておるじゃろう?」


苺がのどに詰まってむせるかえで。

「ゲホゲホ…ッ!!〜〜な…っ、何言って…!?」

「やはりな…。お前さんはあやめと違って、わかりやすいからのぅ」

「〜〜いい加減にしないと怒るわ――!?」


かえでに神剣を突きつける先巫女。

「お前が巫女を継げば、大神を婿にしてやろう…と言えば、継ぐか?」

「〜〜な…!?」

「感じたのじゃよ。あの大神という男の霊力…、普通の人間とは少し違う。あやつはもしや…」


黙って見つめ合う先巫女とかえで。

★               ★


大帝国劇場・格納庫。飛行装置をつくる花組。デザインを考えるマリア。材料を運ぶカンナ。組み立てるさくらと紅蘭。ペンキで塗るアイリス。

「ふふっ、たまには共同作業もいいものね」

「役者・照明・大道具・黒子…。ぜ〜んぶうちら花組の力だけで『つばさ』を公演しようなんて、さくらはんも粋なこと考えますなぁ〜!」

「えへへっ!さくら、やるぅ〜♪」

「えへへ…、私達が少しでも成長した姿を見せたら、あやめさん、喜んで元気になって下さるんじゃないかなって…」

「あははっ、さくらも良いこと言うようになったよなぁ〜!ま、演出だけは江戸川先生に任せてあげようぜ!戻ってきて早々、可哀想だからよ」

「うふふっ、は〜い!」

「〜〜それにしても、本当にこんな大がかりなセット、私達だけでつくれますの?」

「最初から諦めてたら駄目ですよ、すみれさん。何事も努力と根性です!」

「まったく、庶民の浅はかな考えに付き合わせないで下さいまし…」

「…とか言って、お前が一番やる気まんまんじゃねぇか」


特注の整備服を着たすみれ。

「〜〜ち、違いますわ!!これは、ただ服が汚れるのが嫌なだけで…!!」

「へ〜え、それでわざわざ整備服を特注したってわけか」

「〜〜お黙りなさいっ!!」

「――あ、ボルトが終わってもうた…。ちょっと取ってくるわ」

「あ、ついでに食いもん持ってきてくれねぇ?」

「ははは!しゃあないなぁ。椿はんに言うて、お煎餅もらってくるわ」

「おぉ〜っ!ありがとよ、紅蘭〜!!」


出て、事務室に入って探す紅蘭。段ボールからはみ出すアルバムを発見。

「えぇと、確かここら辺に…。――ん?何やろ…?かすみはん、まだ整理しとらんかったんかいなぁ?」

捲ると、『大和』と山崎についての記事。

「え…?山崎はん…!?うひょお!こりゃええもの見つけたで〜!こっちは光武開発の…!こっちは設計図の記事や!こりゃすごいで〜!!」

指を止め、驚く。山崎の写真。山崎と叉丹が重なり、アルバムを落とす。

「〜〜こ、この人が山崎はん…?〜〜な、何でや…?そんな馬鹿な…!?山崎はんが…、あの山崎はんが…!〜〜葵叉丹…!?」

★               ★


夜。天雲神社・書庫。資料を見る大神をちら見しながら調べるかえで。

「……ねぇ、どうしてそこまで頑張れるの?」

調べ続ける大神。

「〜〜ねぇってば!」

「――え…?あ、すみません。何ですか?」

「…もういい」


懸命に調べる大神の背中を見つめるかえで。廃屋での回想。

『――あいつが隼人の子孫…!?』

『何じゃ、お前さん、気づいとらんかったんか?』

『〜〜な、何よ、それ!?冗談だったら殴るわよ!?』

『おっかない孫じゃの。ま、お前さんじゃ霊力の区別がつかぬのも当然か』

『〜〜何よ…!姉さんだって、全然そんなこと言ってなかったわよ!?』

『わしを若いのと一緒にするな。あやつも同じ霊力波長のはずじゃ。お前さんみたく簡単には気づかんじゃろう。…もちろん、あの男自身もな』

『……本当…なの…?』

『我が藤枝家は、藤堂の子孫…ということは知っておるか?』

『…この間、姉さん達が話してるのを聞いたわ』

『あやめも知っとったか。じゃが、あやつはもうこの家の者ではないしの』

『……』

『裏御三家同士、縁を結んで子が授かれば、互いの家はますます繁栄する。そして、お前も好きな男と結ばれる。…どうじゃ、悪い話ではなかろう?』


黙るかえで。回想終え、ため息ついて、やる気なく本を捲るかえで。

「――あぁっ!!」

「ひ…っ!!〜〜な、何よ…!?びっくりするじゃない!」

「〜〜す、すみません…。何でもないんです…」


隠れて見る大神。裏御三家についての資料。

(ここにこんな資料があったとは…!後であやめさんに見せよう…)

「――裏御三家…!?」


覗きこむかえでにビビる大神。

「うわあっ!!〜〜か、勝手に見ないで下さいよぉ…!」

「ちょっと貸して!!」

「〜〜だ、だめですよ!!これは俺とあやめさんの…わ…っ!!」


大神と取り合い、途中で手を離すかえで。勢いで倒れそうになる大神。

「……俺と姉さんの…何?」

「〜〜い、いえ、それは…」

「…何こそこそしてんの?それは最終降魔と関係ないはずでしょ?」

「い、いえ…、何か載ってるかもしれないし、一応調べておこうかと…」

「…あんた、姉さんと何調べてるわけ?裏御三家…、もしかして、そいつらの子孫を探してるとか?」


動揺する大神。緊張した顔を緩めるかえで。

「…なーんだ。やっぱり知らないんだ」

「え?」

「…この戦いが終わったら、姉さんと結婚するって言ったわよね?……もし、私が巫女を継いだら…、婿を取ることになるわ」

「はぁ…?」

「もし…、もしよ?おばあ様があなたに婿に来てもらいたいって言ったら…、私と結婚する?」

「え…?」

「〜〜か、勘違いしないでよ!?あのクソババア、何かあんたのことが気に入ったみたいだし、そういう話もありえるかもってだけで、〜〜けっ、決して私から婿に来てくれだなんてことは――!!」

「…そうなったら、お断りします」

「――!!」

「たとえ先巫女様のお願いであっても、俺は一生あやめさんと生きていくって決めましたから。自分の気持ちには、正直に生きていくつもりです」


うつむき、スカートを握るかえで。雨が降り始める。

「かえでさん…?」

「…今日はここまでにしましょ。私達の仕事はこれだけじゃないのよ?」

「あ、かえでさん…!どうしたんですか…!?」


足早に雨の外に出ていくかえでの腕を掴む大神、涙ぐむかえでに驚く。

「〜〜見ないで!!あっち行ってよ!!」

大神を叩き、胸に顔をうずめるかえで。雨に打たれる二人。

「かえで…さん…?」

「……違うわよ…。〜〜違うんだから……」


二人のキネマトロンが同時に鳴る。ハッとなる大神とかえで。

『すぐに戻ってこい!築地に奴らが現れた!』

『刹那と羅刹が同時に攻撃を仕掛けてきたんですぅ!!』

「了解!すぐに向かいます!――行きましょう、かえでさん!」

「…先行ってて。おばあ様に神剣預けてあるの」

「あ…、わかりました…!」


走って行く大神の背中を見つめ、雨に打たれるかえで。見つめる先巫女。

★               ★


ダストシュートに飛び込み、戦闘服になって敬礼する大神と花組。

「大神少尉以下花組、全員到着――」

「あら…?大神さん、紅蘭がいません…!」

「何…!?」

「まったく、どこほっつき歩いてますの、この非常時に!?」

「椿ちゃん、知らないかい?」

「いえ、私、見てませんけど…?」

「そういや、煎餅も持って帰ってこなかったしなぁ…」

「私達で見つけ次第、轟雷号でお送りします!大神さん達は早く築地へ!」

「あぁ、ありがとう、かすみ君!」

「よし、先程も忠告したが、今回は刹那と羅刹、二人が降魔を指揮している。油断は禁物だ。気を引き締めて向かえ!」

「了解!帝国華撃団・花組、出撃します!」


光武に乗り込む花組を見つめる和服のあやめ。軍服のかえでが入ってくる。

「…おとなしく待ってなさいよね?また暴走されても困るんだから」

うつむくあやめ。飛び立つ翔鯨丸。勲章を見つめるあやめ。来る双葉。

「…あんたは行かないのかい?」

「……」

「そんなに死にたいんなら、敵の目の前に飛び込めばいいじゃないか。……もしかして、『もう華撃団とは関係ない』…とか言いたいのかい?」

「〜〜そんなことは…!」

「じゃあ、何でさ?」

「今の私じゃ戦力にはなれませんし、何よりかえでが代行してくれます」

「あのいけずの妹か…。はん、勝気なところがそっくりだしねぇ」

「〜〜あなたに何がわかるんですか!?」

「わからないよ。でも、今のあんたの心は丸わかりさ。『本当は一緒に戦いたい。そして、皆と…、一郎と一緒に生きていきたい』…だろ?」

「……」

「…ま、私は諭しに来たんじゃないしね。好きに悲劇のヒロイン気取りしてるといいさ」


去る双葉。うつむくあやめ。揺れる神武の中で気合いを入れる大神。

「――よし、行くぞ!」

発射して飛び降り、着地する大神達の神武。

「帝国華撃団、参上!」

「おぉっ、帝国華撃団が来てくれたぞ!」

「頑張れーっ!!」

「皆さんは早く安全な場所へ!――月組、頼んだぞ!」

「了解だぁ!」


避難させる加山達月組。降魔を倒していく花組。

「くそ…!刹那と羅刹はどこだ…!?」

「――お兄ちゃん、後ろ!!」


気配を察するアイリス。鉄球をよける大神。羅刹の肩に乗った刹那出現。

「ちぇー、よけるなんてずるいよ」

「何度襲撃しても無駄よ。いい加減負けを認めなさい!」

「ムカつく言い方だなぁ。そんなこと言ってると、本気で怒っちゃうよ?」

「今まではあと一歩のところで敗退してきたが、今回は違うぞ?」

「どういうことだ…!?」

「ふっふーん、驚くなよぉ?――行くぞ、羅刹!」

「承知だ、兄者!」


刹那と羅刹の腕の印が重なり、周囲の降魔達を巻き込んで、黒く光る。

「〜〜く…っ、な、何ですの…!?」

「皆さん、気をつけて下さい!ものすごい霊力を感じます…!」


光が消え、刹那の髪の色で人造人間化した羅刹が雄たけびあげて現れる。

「な、何だよ、あれ…!?あたい、見たことあるぞ!えっと確か…」

「フランケンシュタイン…。西洋の博士が造り出した人造人間よ」

「心がない…。〜〜まるで獣だよ…」


翔鯨丸。機械を操作する風組。

「まったく、ゾンビの次はフランケンかよ…」

「〜〜解析はまだ?」

「時間はかかりますが、可能のようです」

「はぁ?何ちんたらやってんのよっ!」


椿をどけようとするかえで。阻止する椿。

「あ〜っ!!触らないで下さいよ、また壊れたら大変じゃないですかぁ!」

むっとなるかえで。戻ってくるかすみ。

「紅蘭はいたか?」

「それが劇場のどこにも…。キネマトロンにも応答がありませんし…」

「何ぃ?一体どうしちまったってんだ…?」


観覧車に座り、設計図を抱きしめ、復興に励む花やしきを見つめる紅蘭。


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