★15−5★
『あははは!怖くて腰抜けちゃった?弱虫だなぁ』
「…どうやら、二人は妖術で合体しているようですね」
「降魔達の霊力も取り込んでるみたいです」
「らしいな…。――よし、マリアは遠隔射撃、カンナは羅刹の体勢を崩せ!」
「了解!――パールクヴィチノィ!!」
攻撃が当たるが、無傷で威嚇する羅刹。驚くマリア達。
「〜〜う、嘘でしょ、全然傷ついてないよ…!?」
『いっけー、羅刹!み〜んな殺しちゃえっ!!』
雄たけびをあげ、鉄球を振り回す羅刹。よける花組。道路と建物が破壊。
「〜〜このままじゃ街が…!」
「〜〜く…っ、総攻撃で奴の動きを封じるんだ!」
「お任せ下さいな!神崎風塵流・鳳凰の舞!!」
「四方功相君!!」
「破邪剣征・百花繚乱!!」
無傷で立っている羅刹。
『あははは!無駄無駄ぁ!!』
鉄球で吹き飛ばされるさくら達。
「きゃあああ…!!」
「皆…!〜〜もう許さないんだからぁっ!!」
黄の光で羅刹を押さえ込むアイリス。弾き返し、アイリスに鉄球を落とす羅刹。身構えるアイリス。大神が刀でかばう。
「お兄ちゃん…!!」
「く…っ!狼虎滅却・千変万化!!」
刃が羅刹を切り裂くが、無傷。翔鯨丸で青ざめるかえでと風組。
「無駄だって何度言えばわかるの?お兄さん達に勝ち目はないんだよ!!」
鉄球で吹き飛ばされる大神。
「うわああああ…!!」
「〜〜大神君…!!」
青ざめ、叫ぶかえで。ハッと顔を上げるあやめ。
(〜〜何なの、この胸騒ぎ…!?)
作戦指令室まで走るあやめ。モニターを見ている薔薇組。
「うわ〜ん!!どうしましょう、副司令〜!?」
「一郎ちゃん達が大ピンチなのよぉ!!」
モニターに羅刹に攻撃される花組。青ざめるあやめ。翔鯨丸。
「〜〜ちょっと、解析はまだなの!?」
「す、すみません!何か通信を障害するものが…」
機械から抜け出して顔を出す刹那。
「ばぁ!」
「きゃあああーっ!!」
機械から抜け出て、風組を攻撃する刹那。気絶する風組。
「かすみ!!由里!!椿!!」
「〜〜ど、どこから入りやがった…!?」
「あんな弱っちいバリアで防いだつもり?笑っちゃうなぁ」
「司令、お逃げ下さい!ここは私が…!!」
「待て、かえでく――!!」
扉を閉め、神剣を構えるかえで。
「雑魚に用はないんだけど?僕がやりたいのは、米田の抹殺とこの飛行船の陥落だからねー」
「ふっ、この私を雑魚ですって?そんな生意気な口きいたことを今、後悔させてやるわよ…!――はあああっ!!」
斬りかかるかえで。剣が刹那をすり抜ける。驚くかえで。
「ふふん、驚いた?」
何度も斬りかかるかえで。結果は同じ。衝撃波を撃つ刹那。倒れるかえで。
「きゃああっ!!」
「あはは!お姉さん、馬鹿?羅刹と合体した僕は霊体同然だもん。そんな攻撃効くはずないじゃん」
「〜〜く…っ、その減らず口、今きけないようにしてやるわよ…っ!!」
神剣に霊力を放出し、斬りかかるかえで。
★ ★
劇場。羅刹に攻撃される花組、刹那と戦うかえでが同時にモニターに。
「〜〜かえで…!!」
「ど、どうするのよ!?翔鯨丸が占領されちゃったら、勝ち目ないわよ!?」
「――僕達が行きます!」
戦闘服の新次郎とラチェットが来る。
「新ちゃん!ラチェット!」
「僕の力は、皆さんに比べたら劣るかもしれません。ですが、ただ指をくわえて見てるだけなんて、できませんから…!」
「…って大河君が言ってるから、ちょっくら行ってくるわね」
手を叩き、アイゼンクライトが格納庫に。誘導し、カメラに合図する双葉。
「〜〜ふ、双葉ちゃん、いつの間に…!?」
「さ、乗りましょ、大河君」
「え…?あ、あれって一人乗りなんじゃ…ってああ〜っ!!」
抱き合いながら、乗り込むラチェットと新次郎。
「〜〜こぉら、ラチェットぉっ!!うちの新君にべたべたくっつくなぁっ!!」
「おほほほ!行って参りますわね、お義母様!」
発進するアイゼンクライト。追いかける双葉。
「〜〜待てぇっ、このメリケン色魔〜っ!!」
「…行っちゃったわ」
「大丈夫かしら?ラチェットがついてるとはいえ、新ちゃんは実戦経験ないのよね…?」
勲章を握り、不安にモニターを見つめるあやめ。
★ ★
築地。羅刹と戦う満身創痍の花組。
「〜〜どうしますの?このままでは全員…」
「くそ…、皆、諦めるな!必ず勝機は来る!」
「でも、アイリス、もうヘトヘトだよぉ…」
爆裂断破を受け、吹き飛ばされる花組。
「うわあああ…!!」
「きゃあああ…!!」
翔鯨丸。壁に叩きつけられるかえで。モニターで見る刹那。
「み〜んな弱っちいなぁ。僕らがちょっと本気出したら、全然手も足も出なくなっちゃってさ。超〜つまんないんだけど?」
「〜〜クソガキが…!」
かえでが傷だらけで斬りかかるが、刹那に神剣を爪で挟まれる。
「これが叉丹の欲しがってる神剣白羽鳥かぁ。先に僕がもらっちゃったら…、くくっ、あいつ、すんごく悔しがるだろうなぁ」
「な…っ!?〜〜きゃああっ!!」
爪が伸び、壁に刺さってかえでを捕える刹那。身動きできなくなるかえで。
「ねぇ、お姉さん、それ、僕に頂戴よ?」
「〜〜く…っ、やるわけないでしょうが!?」
「ふぅん…。僕に逆らうとどうなるか…、わかって言ってるのかなぁ?」
爪を振り下ろす刹那。かえでの軍服の胸元が少し切れる。
「〜〜こんのエロガキ…!」
「あははは!その顔いいねぇ!もっと僕を楽しませてよ!」
かえでの軍服が少しずつ切れていく。
「きゃ…っ!〜〜きゃあああーっ!!」
「かえで君…!?〜〜ここを開けろ、かえで君っ!!〜〜くそ…!」
扉を叩くが、走って秘密倉庫を開け、真刀滅却を取る米田。
「――三十郎、使わせてもらうぞ…!」
軍服が切れていくかえで。
「〜〜いやああっ!!やめなさいよぉっ!!」
「あははは!もっと怖がれよ!!泣いて僕に許しを請えっ!!」
かえでの肌を刹那の爪が食いこむ。少し切れるかえでの肌。
「この調子で体も切り刻んであげる。最高に苦しみながら死ねるようにさ」
手を振り上げる刹那。身構えるかえで。銃声。銃弾によろめく刹那。
「〜〜だ、誰だよっ!?」
加山が銃を向けて立っている。驚くかえで。
「子供ながら男の浪漫がわかってるねぇ、おちびちゃん」
加山の後ろから武装した月組が煙幕を投げる。
「うわあっ!?何だよぉっ!!げほげほ…!〜〜うわああ〜んっ!!」
壁を抜ける刹那。かえでを救出する月組隊員達。かすみを抱き起こす加山。
「大丈夫かい?」
「あ、ありがとうございました、加山さん…!」
「よかった…!」
真剣に加山に抱きしめられ、赤くなるかすみ。同様に赤くなる月組隊員達。
「〜〜ちょ…っ、加山さん!?皆、見てますよ…!?」
「ぶ〜、いいなぁ、かすみさん」
「一人だけズルいわよね〜?」
「――加山隊長、花組が…!」
モニターに羅刹に苦戦する花組。青ざめるかえで。
「〜〜くそっ!俺も神武に乗れたらなぁ――あ、代理…!」
体を隠しながら、急いで走って出ていくかえで。
(〜〜大神君…っ!)
★ ★
築地。傷だらけで倒れる花組。雄たけびをあげ、港で暴れる羅刹。
「〜〜く…っ、築地が…」
「〜〜どうすりゃいいんだよ、隊長!?」
悔しく羅刹を睨む大神。胸をかきむしり、壁に頭を打ち続ける羅刹。
「ど、どうしたんだろ…?」
「いよいよおかしくなったのではありません?」
「〜〜ものすごい霊力です…。どんどん邪気が増してますよ…!」
「今の羅刹は刹那と合体して人格を失くしてるのよ。ただ本能だけで動いているわ…」
雄たけびをあげ、襲いかかる羅刹。よける花組。
「〜〜くそっ、このままじゃ、迂闊に手が出せないぜ…」
「――僕達が相手ですっ!!」
パラシュートで舞い降りるアイゼンクライト。
「新次郎…!?」
「遅れてすみません!ここは僕達に任せて、早く翔鯨丸に帰還を――」
恋愛のマニュアル本を読んでいるラチェット。こける新次郎。
「〜〜こ、こんな時に何やってるんですかぁっ!?」
「ちょっと待って、ここまで…。何々?愛しの彼と同じ部屋にいる時は…」
「〜〜ラチェットさぁん!!」
アイゼンクライトを見つけ、走ってくる羅刹。
「わひゃあ!!きっ、来ましたぁっ!!あ、あれ、どうやって動かすんだっけ…!?」
もたつく新次郎。拳を振り上げる羅刹。
「〜〜う、うわああ〜っ!!」
よけ、キックして羅刹を仰向けにし、ナイフを地面に刺して動きを封じるラチェット。呆然の花組と新次郎。
「人が読んでる時に邪魔すんなぁっ!!デカブツがぁっ!!」
「〜〜ぼ、僕、尊敬していいんだか、何なんだか…」
「――ん?そうだわ、これよ…!」
雄たけびをあげ、ナイフを引き抜き、突進してくる羅刹。
「よ、よぉし、僕だって…!新次郎、行きま…わひゃあ!?」
「いや〜ん、ラチェット、怖〜いっ」
新次郎に抱きつくラチェット。
「〜〜ちょ…っ、何してるんですか!?離れて下さいよぉ!!」
「あら?男の子って二人っきりで抱きつかれると、嬉しがるんじゃないの?むぅ…、この本、嘘書いてあるわね?」
「〜〜時と場合によるでしょう!?」
両手を振り上げ、アイゼンクライトを掴んで投げる羅刹。
「しまっ〜〜うわあああ〜っ!!」
「あ〜れぇ〜!!」
目を回し、気絶する新次郎とラチェット。
「〜〜え…?終わりかよ…!?」
「…少しでも期待した私が馬鹿でしたわ」
劇場の作戦司令室。モニターで見ている薔薇組と双葉。
「〜〜あ〜ん!!双葉さん、どうしましょ〜っ!?」
「〜〜あんの金髪女、完全に新君を落とす気だな!?〜〜許さん…!!」
「…ねぇ、誰かこいつら、つまみ出してくれない?」
「――ん?ねぇ、あれ…!」
翔鯨丸からかえでの神武が着地。
「かえでさん…!?」
「…勘違いしないで。生意気なエロガキに仕返しに来ただけよ」
大神の前に立ち、攻撃をかばうかえで。驚く大神と花組。
「何ぼさっとしてるの?反撃開始よ!」
「りょ…、了解!」
★ ★
「〜〜ちきしょう!何なんだよ、あいつ…!?」
甲板。逃げてくる刹那。真刀滅却を持ち、立ちはだかる米田。
「あれぇ?はは、なーんだ。わざわざやられに来たの?――ちょうどいいや!お前が死ねば、華撃団はおしまいだからな…!!」
爪と刀が打ち合い、火花が散る。
「わかってねぇな。俺が死んだとしても、あの子達は必ず帝都を守るさ!」
「随分自信たっぷりだねぇ。ま、いいや。お前から八つ裂きにしてやるよ!!」
爪を伸ばして攻撃する刹那。真刀から霊力放出。
「〜〜な、何…!?」
「――よく覚えとけ!!年寄り馬鹿にしたら、罰が当たるってなぁ!!」
米田の全身から強力な霊力が放出。刹那を飲み込む。
「〜〜う、うわああああ〜っ!!」
外で戦う花組と羅刹。
「藤枝流奥技・白鳥散華斬!!」
「破邪剣征・百花繚乱!!」
弾き返す羅刹。
「皆、諦めるな!俺達が諦めたら、帝都の未来は消えるんだぞ!?」
「そうだ!あたい達は帝都を守る帝国華撃団!」
「この世に悪がはびこる限り、戦い続けるのが私達の使命!」
「この私を本気にさせたこと、後悔させて差し上げますわ!」
「決してあなた達の思い通りにはさせませんからね!」
「イリス・ジャルダーン!!」
黄の光が降り注ぎ、傷が癒える大神達。
「アイリスも絶対、ぜ〜ったい負けないもん!」
「よし、皆行くぞ!!」
「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」
協力して戦う花組に驚くかえで。
(あれだけの傷でまだ戦えるって言うの…?)
「諦めない心、立ち向かう勇気、――それが俺達、帝国華撃団だああっ!!」
羅刹の腹に刀を刺す大神。倒れる羅刹。
「やったか…?」
腹を押さえて起き上がり、雄たけびをあげる羅刹。
「〜〜な…、何て奴だ…!?」
鉄球を大神に振り上げようとする羅刹。
「大神さん…!!」
「〜〜しまった…!!」
鉄球を振り下ろす直前、頭を押さえ、苦しむ羅刹。甲板から霊力の発光。
「な、何だ…!?」
「この霊力は…、米田司令…!?」
翔鯨丸。刹那に霊力を叩きつける米田。
「あいつらは俺の大切な子供達だ!お前らのようなクソ野郎のせいで、華撃団を終わりにしてたまるかあああっ!!」
「ぎゃああああ〜っ!!」
外に弾き出され、消える刹那の霊体。本体の刹那が羅刹の体内から弾き出される。元の姿に戻り、うつ伏せに倒れる羅刹。
「くそぉ…!〜〜羅刹、早くとどめを刺せ!!」
動かない羅刹。イラつき、羅刹を蹴り続ける刹那。
「羅刹!!――おい、動けよ!!お前は僕の下僕なんだぞ!?」
反応しない羅刹。
「…僕の言うことが聞けないのか?〜〜生意気なんだよ、お前なんて僕がいないと何にもできないくせに!!」
「〜〜ひどい…!羅刹はお兄さんの為に犠牲になったのに…」
蹴り続ける刹那に神剣を突きつけるかえで。驚く大神と花組。
「…兄弟喧嘩ならよそでやってくれる?ヘドが出るんだけど」
「ふん、またやられに来たの?しつこい――!?」
かえでの全身から大量に霊力が放出。驚く刹那とあやめ。
「…双子の弟なんでしょ?何でそんな目でしか見られないわけ?」
「かえでさん…」
「弟ぉ?あはは!そんなの血の繋がりだけさ。こいつは僕の操り人形。僕の言うことなら何でも聞くんだ。だからね、逆らうなんて許さないんだよ!!」
さらに蹴る刹那。もみじとぼたんの最期を回想し、拳を握るかえで。
「使えない奴だなぁ。あいつら殺してお前も死んじゃえ!あははは…!!」
神剣を薙ぎ払うかえで。斬られ、腹を押さえる刹那。
「――なら一緒に殺してやるわよ。あんた見てると超イラつくし」
「〜〜ひ…、ひいいっ!!」
逃げようとする刹那。剣で行く手を遮るかえで。
「いつも一緒の時間を過ごした兄弟のありがたみがわからないあんたなんて、生きてる価値ないものね…」
「かえで…」
「〜〜く…、くそぉ…!この僕が雑魚なんかにやられてたまるかよっ!!」
羅刹に霊力を注ぐ刹那。黒く光り、起き上がる羅刹。
「羅刹!こいつらと一緒に自爆しろ!!」
「何ですって…!?」
「全員急いで退避だ!!」
「了解…!」「了解…!」「了解…!」「了解…!」「了解…!」「了解…!」
黒い楔で大神達を閉じ込める刹那。ショックなあやめと薔薇組。
「逃がすもんか!お前達は今日、ここで羅刹と一緒に死ぬんだ!!」
「〜〜くそ…!何て硬さだ…」
楔を攻撃する花組。びくともせず。
「あはははっ!僕の可愛い羅刹、最期に手柄をやる兄さんに感謝しろよな!!」
瞬間移動しようとする刹那を朦朧と抱きしめる羅刹。
「兄……者……、一…緒……に……」
「〜〜な…、何すんだ!?離せよぉっ!!」
「自分…は……ずっと……兄者…の…そ…ば…に……」
「離せ…!!やめろ!!〜〜離せええっ!!」
翔鯨丸が砲撃し、黒い楔が爆発。
『今だ!!早く逃げろ!!』
「米田司令…!助かりました!」
『爆発の予測は半径300m以内です!早く翔鯨丸へ…!!』
「わかった!すぐ行く!!」
退避する大神、花組、かえで。伸びた刹那の爪がかえでの神武を捕える。
「待てぇ…!〜〜ただ無駄死にしてなるもんかああっ…!!」
「〜〜く…っ、離しなさいよぉっ!!」
「かえでさん…!!」
爪に操縦席と体を縛られるかえで。駆け寄り、爪を斬ろうとする大神。
「大神さん…!!」
「〜〜駄目です、隊長!逃げて下さい!!」
「君達は先に行け!!俺は隊長だ!大切な仲間を見殺しにしてなるものか!!」
「大神君…」
「〜〜マリアさん、私達も…!」
『駄目だ!お前らだけでも逃げろ!!』
「し、しかし…!――あ…!!」
花組の神武を収納する翔鯨丸。向かうあやめを止める加山と薔薇組。
「〜〜離して!!早くしないと二人が…!!」
「落ち着いて下さい、副司令…!!」
「〜〜離してえええっ!!」
「くくくっ、これでお前らも道連れだ…!」
より伸びる刹那の爪、大神の神武にも巻きつく。
「〜〜しまった…!!」
「あははははっ!――地獄で会おうね、隊長さん…」
自爆する羅刹。爆発に巻き込まれる刹那、大神、かえで。青ざめる一同。
「〜〜大神さああああん!!」
大神とかえでの神武がバラバラになり、海へ落ちる。
「〜〜嘘…でしょ…?」
「お……がみ…く……」
「副司令…!!」
気を失うあやめを支える加山。呆然の新次郎、ラチェット、双葉。
★ ★
光のカーテンに包まれて眠るかえで。ミカエルが呼びかける。
(この声…、遠い昔に聞いたことあるような…。何だか懐かしい……)
目を覚ますかえで。孤島に流れ着いている。
「生きてる…?〜〜あんな爆発に巻き込まれたのに…」
隣でうなされる大神。出血がひどい。
「大神君…!?〜〜しっかりしなさい!大丈夫!?」
自分の戦闘服を破り、大神に止血するかえで。手当てしてやる手を止める。
(――何…やってるのかしら、私…?部下の命がどうなろうが、全然関係ないはずなのに…)
穏やかに眠る大神の寝顔に微笑むかえで。
「…私にもあんたのお人好しがうつっちゃったのかしらね?」
ゆっくり目を開ける大神。かえでがぼやけて、だんだんはっきり見える。
「大神君…!?〜〜や、やっと目覚ましたわね?まったく、上官に余計な手間かけさせるんじゃないわよ!」
「……あの…」
「とにかく、何とかして連絡取らないとね…。〜〜ここどこよ…?あぁ、キネマトロンも壊れてるし…。――あんたのはどう?」
「あの……?」
「何よ?ボケッとしてる暇があったら、食糧探してきなさ――」
「――あなた…、誰ですか…?」
目を見開くかえで。
「俺は……、俺は…誰でしたっけ……?」
掌を見つめ、頭を押さえる大神を見つめるかえで。
第15話、終わり
次回予告
愛しいあやめ、遂にこの時が来た…。
赤き血が月を染める時、お前は私のものとなるのだ。
さぁ、甦れ、最強の降魔よ…!!
次回、サクラ大戦『現れた最終兵器』!太正桜に浪漫の嵐!
さよなら…、大神君…
第16話へ
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