★4−4★
浅草郊外。鉄球を引きずりながら、アイリスを探す羅刹。
「くくく…、どこだぁ、おちびちゃん?隠れてないで出ておいで〜」
路地裏に隠れ、怯えるアイリス。発信機を見て駆けつける大神とさくら。
「この近くのはずなんだが…」
「〜〜アイリス、どこにいるのーっ!?いたら、返事をしてーっ!!」
気づくが、ふてくされて隠れたままでいるアイリス。
「どこ行っちゃったんでしょう…?〜〜まさか、敵に捕まったなんて…!?」
「〜〜く…っ、――アイリス、どこだーっ!?迎えに来たぞーっ!!」
光武の中でうずくまり、ふてくされるアイリス。
「…ふん。どうせアイリスのことなんて、本気で心配してないもん…!」
大神とさくらの前に現れる羅刹。
「くくく…、貴様らが帝国華撃団か?」
「〜〜お前も黒之巣会の一味か…!?」
「あぁ、そうとも。貴様らに殺された兄者の仇、ここで取らせてもらうぞ!!」
鉄球を回し、突進する羅刹。よける大神とさくら。地面が鉄球で陥没。
「〜〜な、なんて力だ…!」
「ちっ、外したか…。だが、逃がさぬぞ!この命に代えて、お前達を全員葬ってくれる…!!」
「来るぞ…!――さくら君、風林火山の火作戦で行くぞ!」
「了解です!」
羅刹と戦う大神とさくら。心配するアイリスだが、首を振ってつんとする。
「…お兄ちゃん達なんて、どうなったって知らないんだからぁ!」
おされ気味の大神とさくら。鉄球で巻かれ、飛ばされる大神。
「うわああああ…!!」
「大神さん…っ!!」
ハッとなるアイリス、ドラム缶に腕が当たり、音がする。気づく羅刹。
「ほほぉ…、――そこにいたか、ネズミぃっ!!」
鉄球で壁を壊す羅刹。アイリスを隠していた壁が壊れ、青ざめるアイリス。
「アイリス…!!」
「丁度いい。これで三人まとめて葬れるな」
「〜〜アイリスに手を出すな…!!」
「こざかしいわ!!大事な人を亡くす無念、貴様らにも味あわせてくれよう!!」
鉄球をアイリスに飛ばす羅刹。ビルの屋上にテレポートするアイリス。
「〜〜おのれ、ちょこまかと…!――皆の者、やってしまええいっ!!」
地中から出現し、アイリスを狙う脇侍達。逃げるアイリス。壊されていく浅草の建物。逃げる人々。黄の霊力を放出するアイリスに怯える人々。
「〜〜な、何だ、あれは…!?」
「〜〜うわああ〜っ!!来るな、化け物ぉっ!!」
目を見開き、ショックで逃げる速度を速めるアイリス。
「アイリス…!!〜〜このままじゃ浅草の街まで…!」
「――追おう!アイリスを絶対に助け出すんだ!!」
★ ★
逃げるアイリス、活動写真で人々から逃げるフランケンを回想し、泣く。
(おんなじだ…。この力…、〜〜やっぱり、アイリスは化け物なんだ…!)
前方から脇侍が飛び出し、囲まれるアイリス。歩み寄る羅刹。
「クククク…、鬼ごっこはこれで終わりだ」
「〜〜いやぁ…、来ないでよぉっ!!」
霊力で脇侍を弾き飛ばすアイリス。
「おぉ、なんと素晴らしい霊力なんだ…!これを奪えば、きっと天海様もお喜びになるに違いない!!小娘、我々の為に霊力を使わせてもらうぞ!」
「〜〜あんた達なんかにやんないもんっ!!」
「何故だ?その忌まわしい力…、それが人々の役に立つのだぞ?」
「え…っ?アイリスの力…が…?」
「あぁ、そうだとも!これほどの美しい輝き、見たことがない!お前は選ばれた人間…!この世界を滅ぼし、改める力を持っているのだ…!!」
「世界を…改める……」
「そうだ。世界が変われば、お前を化け物扱いする者は全ていなくなる…!お前の望んでいた世界が手に入るのだぞ?」
「本…当に……?」
「もちろんだ。俺と一緒に来い。共にこの腐った世を改めようではないか」
羅刹の差し伸べた手をゆっくり掴もうとするアイリス。
「〜〜アイリス、駄目だ…!!」
ビルの屋上からアイリスの前に飛び降り、羅刹に構える大神とさくら。
「騙されちゃ駄目っ!!奴はあなたを殺して、霊力を奪おうとしているのよ!?」
「〜〜でも…っ、そしたら、アイリスのこと嫌う人達がいなくなるもん!」
「――俺達はアイリスを嫌ってなんかいない!!」
「え…っ?」
「子供でも大人でも、アイリスが私達の大事な仲間に変わりはないもの!」
「な…かま…?」
フランスでアイリスをスカウトするあやめの言葉を思い出すアイリス。
『――日本に来ない?あなたと同じ力を持った仲間達に会えるのよ』
「アイリス…、力を持っててもいいの…?〜〜化け物じゃないの…!?」
「もちろんさ!アイリスは化け物なんかじゃない!それは君にしかない特別な力じゃないか。それはアイリスの魅力の一つでもあるんだよ?」
「お兄ちゃん…」
「騙されるな!そいつらは、お前をただの戦力としてしか見ていない!!その霊力を帝都の平和を守るというくだらぬ使命に利用したいだけなのだ!!」
目を見開くアイリス。
「〜〜違うわ!!アイリス、私達を信じて…!!」
「〜〜アイリスは…物じゃない…」
「アイリス…!?」
「〜〜皆、アイリスの力が珍しいだけ!アイリスの力が欲しいだけ!!〜〜アイリス自身は必要とされてない…っ!!」
「〜〜アイリス、違う――!!」
「〜〜う…っ、うわああああ〜んっ!!」
泣き、霊力を暴走させるアイリス。大神とさくらの光武の蒸気が暴走。
「〜〜くっ、光武が…!」
「〜〜アイリス、やめて…!私達はアイリスのことが大好きなのよ!?」
「そうだ、アイリス…!俺達を信じてくれ…!!」
「〜〜嘘だもぉん!お兄ちゃんもさくら達もアイリスのことが嫌いだから、嘘ついた!アイリスのこと騙したじゃない…っ!!〜〜アイリスが子供だから、騙すのなんて簡単だって思ってるんでしょ!?アイリスはどうせ子供だもんっ!!子供だから、お兄ちゃんはアイリスのこと、嫌いで――!!」
「――いい加減にしないか、アイリス!!」
「…!!」
「確かに君はまだ子供だ。だが、それのどこがいけないんだ?子供の君にだって、大人にはない素晴らしいものをいっぱい持ってるじゃないか!霊力だけじゃない、素直な心、無邪気な笑顔、皆を元気にする明るさ…!俺達はアイリスの全てが大好きなんだ!」
「〜〜でも、お兄ちゃんは子供より大人の女の人が好きなんでしょ…?」
「そんなことないよ。俺にとってアイリスはあやめさんや皆と同じくらい大事な女の子だ。――君は、もう一人ぼっちじゃないんだ。俺達はずっとアイリスの傍にいるよ…!」
「お兄ちゃん…。――嘘…ついてない…!本当にアイリスのこと、大好きって思ってくれてる…!大事に思ってくれてる…!!」
「――そうよ、アイリス」
駆けつけ、アイリスをかばうすみれ、マリア、紅蘭、カンナ、あやめ。
「皆…!?」
「昨日はごめんな。けど、あたい達皆、アイリスのことが大好きなんだぜ!」
「せや!アイリスの子供らしいキュートな笑顔、うちも大好きなんや!」
「大人に比べて劣っている部分は、仲間の私達でカバーしてあげられるわ」
「…ま、あなたも子供なりに良い芝居をなさいますし、帝撃の一員として認めてあげなくもないですわよ?」
「ふふふっ、ほらね、もう一人ぼっちで泣く必要なんてないわ。帝撃には、あなたと同じ仲間達がいるって言ったでしょう?」
「あやめお姉ちゃん…。――うんっ!」
微笑み、力を抑えるアイリス。大神とさくら機の蒸気の暴走が止まる。
「お兄ちゃん、さくら、ごめんね…!〜〜アイリス…」
「いいや、こっちこそごめんな。帰ったら、デートのやり直しをしよう」
「うんっ!アイリス、頑張るからね〜っ!!」
「――これで全員か…。皆殺しにして、全員霊力を吸いつくしてやるわ!!」
鉄球を振り回し、構える羅刹。相対し、構える大神達。
「隊長、浅草寺周辺の脇侍は全て撃破しました!」
「よくやった!――今より目標を羅刹討伐に切り替える!行くぞ、皆!!」
「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」
「ふはははは…!!全員殴り殺してやる!!――そりゃあああああっ!!」
「スネグーラチカ!!」
鉄球をよけ、氷の精霊を放つマリア。鉄球を回し、氷を吹き飛ばす羅刹。
「ふははは!!その程度の攻撃など効かぬわ!!」
鉄球を叩きつける羅刹。吹き飛ばされるさくら達。
「きゃああああ…!!」
「皆…!!〜〜きゃああっ!?」
バリアに包まれて浮かび、羅刹の頭上に上げられるアイリス。
「貴様は天海様への手土産だ。後でじっくり可愛がってやるぞ…!」
「〜〜きゃああああああっ!!」
攻撃を受け続けて傷だらけになり、倒れていく大神達。
「〜〜くそ…っ、こいつ、強ぇぜ…!」
「ふははは!!兄者よ、見守っていてくれ!弟の俺が必ず仇を討つからな!」
「兄者…って、まさかこの間の刹那のことか!?」
「えっ!?あの子、この人のお兄さんだったんですか!?う〜ん、やっぱり見た目で人を判断しちゃいけないんですねぇ…」
「全然似てへんよなぁ?あ、実は異母兄弟とかとちゃう?」
「〜〜失敬なっ!!俺と兄者はちゃんと血の繋がった双子だ!!」
「双子なんですかぁ!?わぁ、じゃあ、何とかソーセージってやつですね!…あれ?どこ産のソーセージでしたっけ?」
「…まさか、二卵生双生児のことをおっしゃりたいんですの?」
「あー!それです、それ!あー、スッキリしました!」
「〜〜お前ら、完全に俺をおちょくってるだろうっ!?」
「〜〜ハァ…、皆、緊張感ないなぁ…」
「でも、おかげで相手は無防備状態よ。――大神君、私達で羅刹を惹きつけておくから、その隙にアイリスを…!」
「了解しました!――うおおおおおおっ…!!」
ダッシュし、飛び上がる大神。頭上を見上げ、慌てる羅刹。
「〜〜し、しまった…!!――させるかあああっ!!」
鉄球を受け止め、羅刹の体を斬るあやめ。
「させないわ…!――皆、援護して!!」
「了解!」
「――狼虎滅却・快刀乱麻!!」
バリアを斬るが、なかなか傷つかず。
「〜〜くそっ、固くて傷が…!」
「〜〜お兄ちゃん、無理しないで…!」
「大丈夫だよ、アイリス。アイリスは絶対に俺達が守るからな…!」
「お兄ちゃん…」
「〜〜きゃあああああっ!!」
ハッとなり、振り返る大神。吹き飛ばされたさくらの下敷きになる紅蘭。
「〜〜さくら君…!!紅蘭…!!」
あやめの刀を鉄球で巻き、あやめごと振り回す羅刹。
「きゃあああああーっ!!」
「あやめさん…っ!!〜〜やめろおおっ!!」
背中を斬りつけた大神を睨み、片手で大神の光武を締め上げる羅刹。
「うあ…っ!!〜〜ぐ…うう…っ!」
「ふはははは…!!俺達兄弟を侮辱したこと、地獄で後悔させてやるわ!!」
大神とあやめを地面に叩きつけ、鉄球を振り回し、攻撃を受け続ける大神、あやめ、さくら達。ショックで泣きそうになるアイリス。
(〜〜アイリスのせいだ…。どうしよう…!?〜〜このままじゃ皆――!)
鳥の囀りに顔を上げるアイリス。巣から思い切って飛び立っていく雛鳥が見える。親鳥の傷を癒す自分を回想するアイリス。
『――アイリスには、アイリスにしかでけへん戦い方があるはずや』
凛々しく前を見るアイリス。頬を伝う涙が黄に光り出す。
「これ以上、皆が傷つくのなんて嫌だ…!〜〜嫌だもぉぉんっ!!」
黄の霊力を全身から放出して爆発させ、バリアを破るアイリス。驚く羅刹。
「イリス・マリオネーット!!」
ジャンポールのナース達が大神達の光武の周囲で踊り、傷を癒す。
「これが…、アイリスの力…?」
「何て温かい光なの…!」
「アイリスだって、花組の隊員だもん!アイリスはアイリスの霊力…、皆の為に使うよ!!――これがアイリスの戦い方だよ、お兄ちゃん!」
「あぁ、よくやった!偉いぞ、アイリス!」
「えへへっ、アイリスもお兄ちゃん達のこと、だ〜い好きだもんっ!」
「〜〜おのれぇ…!まさかこれほどの力とは…」
立ち上がり、アイリスを中心にして構える大神達。
「大神君、これでようやく花組、全員集合ね!」
「はい!――アイリス、俺達と一緒に頑張ろうな!」
「うんっ!アイリス、お兄ちゃんやさくら達と戦えて、すっごく嬉しい!」
「ありがとう。私もアイリスと一緒に戦えて、とっても嬉しいわ!」
「よぉし、アイリスのおかげでカンナちゃん、大復活だぜ!!」
「羅刹とやら、よくも私の美しい光武に傷をつけて下さいましたわね!?」
「うちらが力を合わせたら、もう怖いものなんてないで!?」
「隊長、改めて出撃命令をお願いします!」
「よし、帝国華撃団、出撃せよ!皆で力を合わせて、羅刹を撃破するんだ!!」
「了解!」
「ふん、力を合わせるなどと馬鹿げた真似を…。一人ガキが増えたところで何ができるものか!――全員、捻り殺してくれるわああっ!!」
鉄球を飛ばす羅刹。跳んでよけ、鉄球の上を走り、羅刹の顔を蹴るカンナ。
「紅蘭!」
「よっしゃあ!――ちびロボ軍団、発射ぁっ!!」
羅刹の周囲を動き回り、撹乱させるちびロボ達。
「〜〜ぐぬっ、ええい、邪魔をするなぁ…っ!!――はっ!」
「スネグーラチカ!!」
羅刹の足元を凍らせるマリア。頭上から長刀を振り下ろし、動けなくなった羅刹の肩を斬り裂くすみれ。
「きええええええいっ!!」
「〜〜ぐぎゃああああっ!!」
「副司令!」
「任せて!――はあああああっ!!」
「〜〜ぎゃあああああっ!!」
素早く羅刹を斬るあやめ。
「今よ、さくら!」
「はいっ!――たああああああっ!!」
「〜〜ぐううっ、させるかあああっ!!」
鉄球でさくらの刀を巻き、振り回して取り上げる羅刹。
「〜〜しまった…!」
「ククク…、死ねええいっ!!」
アイリスに向かって鉄球に巻かれたさくらの刀を振り下ろす羅刹。
「そうだ…!――さくら君、合気道だ!!」
「――は…っ!了解ですっ!!」
合気道でアイリスをかばって攻撃を防ぎ、羅刹を蹴り上げるさくら。
「たああああああっ!!」
「ぐおおっ!?」
後ろに倒れ、鉄球を離す羅刹。
「さくら…!よくやったわ!」
「すごいぞ、さくら君!」
「えへへ…!特訓の成果が出せました!」
「ありがとう、さくら!アイリスも頑張らなくっちゃ!え〜いっ!!」
羅刹にジャンポールがいっぱいの夢の世界を見させるアイリス。
「〜〜な、何だ、これは…!?〜〜た、確かにさっきまで浅草に…」
「羅刹の動きが止まっているわ…!今よ!!」
「わかりました!――アイリス、援護してくれ!!」
「りょーかいっ!」
大神の全身を黄の光で包むアイリス。間合いを詰め、羅刹を斬る大神。
「――狼虎滅却・千変万化!!」
「な…っ、何…!?〜〜ぐああああああああ…!!」
倒れ、体が気体状の闇になって消えていく羅刹。
「〜〜す…、すまない、兄者…。か…っ、仇を…取れ…な…んだ……」
力尽き、消滅する羅刹。アイリスの光が消え、刀を鞘に収める大神。
「兄の仇か…。〜〜気持ちを考えたら、何だか哀れだな…」
「許せねぇのは黒之巣会だぜ!純粋な弟の復讐心を利用したなんてよ…」
「そうね…。――偉かったわよ、アイリス。よく頑張ったわね」
「うんっ!だってアイリスには、お兄ちゃん達がついてるも〜ん!」
大神に抱きつくアイリス。
「あはは…、アイリスは甘えん坊だな」
「あ〜っ、ま〜た子供扱いしたでしょ〜っ!?」
「あ…、ハハハ、ごめんごめん」
「えへへっ、でも、いいも〜んっ!子供だから、こうやってお兄ちゃんに甘えてられるんだもんね〜っ!」
大神にベタベタするアイリスにムッとするさくら。
「〜〜んもぉ…、私も子供ならよかったなぁ…」
「ふふふっ、――それじゃあ皆、いつものアレ、やりましょうか!」
「あっ、今日はアイリスが言う〜!アイリス、ず〜っと憧れてたんだぁ!」
「ほんならアイリス、頼んだで!」
「うんっ、それじゃあいくよ〜!――勝利のポーズ…決めっ!」
決めポーズを取り、はしゃぐ花組を建物の屋上から見下ろす叉丹とミロク。
「あーあ、結局羅刹も犬死にしちまったねぇ…」
「フン、使えぬ兄弟だったな」
「フフ、まぁいいさ。次はこの私が存分に可愛がってやるからねぇ…!」
花組を見下ろし、笑うミロク。不気味に笑い、瞬間移動する叉丹。
★ ★
大帝国劇場。あやめに手を引かれ、舞台に連れてこられるアイリス。
「どうしたの、あやめお姉ちゃん?」
「ふふっ、行ってみればわかるわよ」
真っ暗な中、舞台に足を踏み入れるアイリス。スポットライトがアイリスを照らし、大神達がクラッカーを鳴らす。
「――アイリス、お誕生日おめでと〜っ!!」
「え…っ?」
「アイリスには内緒で準備したんだ。まだ、ちゃんと皆でお祝いしてやれてなかったからね」
「もう誕生日は過ぎちゃったけど、大事なのは皆がアイリスを祝ってあげたいっていう気持ちですものね?」
「皆…!ありがとう!!アイリス、こんな嬉しい誕生日、生まれて初めて…!」
ジャンポールを抱きしめ、涙を袖で拭うアイリス。
「あはははっ、こっち来いよ。主役はやっぱ真ん中じゃねぇとな!」
アイリスをお姫様だっこし、椅子に座らせるカンナ。それぞれプレゼントを渡すさくら達。
「はい、お誕生日おめでとう、アイリス!」
「ま、早くこの私のような素敵なレディになれるよう、精進なさいましね」
「うわぁ、ありがとう、皆ぁ!」
プレゼントを荷台で運んでくる紅蘭。
「見てみぃ!アイリスのファンの人達もみ〜んな、お祝いしてくれはってるで!」
「きゃは!すっご〜い!これ、ぜ〜んぶアイリスに!?」
「せや、すごいやろ〜?」
「ふふっ、よかったわね。――それじゃあ皆、さっき練習したとおりにね」
「よし、じゃあ行くぞ、――せーの!」
ピアノを弾くマリア。伴奏に乗せて誕生日の歌を歌う大神、あやめ、さくら達。ろうそくを消し、拍手する大神達に笑顔を振りまくアイリス。袖から見つめ、拍手する米田と三人娘。
「花組さん達、うまくまとまってきたわね…!」
「えぇ、チームワークも格段に良くなってきたし…!」
「う〜、楽しそう…!――私達も混ぜて下さぁ〜いっ!」
駆け寄り、加わる三人娘。楽しむ大神達を見て、優しく微笑む米田。ケーキをつまみ食いしたアイリスの鼻についたクリームを取ってやる大神。
「えへへっ、お兄ちゃん、パーティーが終わったら、デートのやり直ししてくれる?」
「あぁ、いいよ。約束したもんな」
「やったぁ〜っ!――それからねぇ、もう一つお願い聞いてくれる?」
「ん?何だい?」
「――アイリスがもう少し大きくなったら、結婚してくれる?だって、お兄ちゃんは、アイリスだけの王子様だも〜んっ!」
「ははは…!はいはい、わかったよ」
「〜〜ちょ…っ、大神さぁん!?」
「うわぁ!?〜〜さ、さくら君、危ないじゃないか…っ!!」
荒鷹を抜き、大神に向けるさくら。笑う一同。
「べ〜だっ!さくらなんかに絶対渡さないもんね〜!!」
「〜〜んも〜っ!!大神さんがはっきりしないから、いけないんですよぉ!!」
「〜〜お、俺のせいかぁ!?」
「えへへ〜っ!お兄ちゃ〜ん、アイリスが大きくなるまで待っててね!それまで、浮気しちゃ…駄目よ!」
蝶のブローチをつけ、大神にウインクするアイリス。大帝国劇場の玄関に飾ってある七夕の笹にアイリスの願い事『ず〜っと皆と一緒にいられますように』と書かれた短冊が風鈴の音と共に揺れる。
第4話、終わり
次回予告
おっほほほほ…!!ファンの皆様、お待たせ致しました!
次回から『サクラ大戦』の主役は、この神崎すみれに変更だそうですわ!
おいおい、何勝手なこと言ってんだぁ?
世の中、何でもてめぇの思い通りになると思ったら、大間違いだぞ!?
おーっほほほほ…!!それでは皆様、乞うご期待ですことよ!!
…って、ちっとも聞いてねぇし!!
次回、サクラ大戦『花と咲かせよ、乙女の意地で!』!太正桜に浪漫の嵐!
……お金より大事な物って、あるんでしょうか…?
第5話へ
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