★4−3★



(――ねぇ、知ってる?眠り姫は茨のお城の中で眠りながら、自分だけの王子様が来るのをずぅっと待ってたんだって)

フランスの城。茨の中で眠る眠り姫姿の大人のアイリス。王子姿の大神がアイリスにキス。目を覚ますアイリス。ぼやけていたが、だんだんはっきりと大神の姿が目に映る。微笑み、手を差し伸べる大神。

『美しい眠り姫、私と踊って頂けませんか?』

『えぇ、喜んで…!』


ワルツに乗って踊る大神とアイリス。城に張り巡らされた茨が消えていき、城の者達が目覚め、二人を囲んで歓声をあげる。

『姫、私と結婚してくれませんか?』

『王子様…、アイリス、とっても嬉しい…!』


ゆっくり唇を近づける二人。鳥の囀り。ハッと目を覚ますアイリス。

「――ゆ…め……?」

『眠り姫』の絵本を見つめて涙を流し、枕に顔をうずめるアイリス。

「〜〜アイリス、もうお城で一人ぼっちは嫌…。早くお兄ちゃんだけのお姫様になりたいよ…」

窓を突つく鳥。窓に歩み寄るアイリス、鳥の怪我に気づき、両掌で掬う。

「あぁ…っ!〜〜かわいそう…。痛い…?」

アイリスの手の中でぐったりする鳥。両手を掲げ、念じるアイリス。

「――どうか、鳥さんの怪我が良くなりますように…!」

手から黄の光が発し、鳥の怪我が治る。驚き、鳥を放すアイリス。元気に飛び去り、雛達の待つ巣に帰る鳥。不思議そうに見上げるアイリス、ドアをノックする音に振り返る。顔を出し、微笑む整備服の紅蘭。

「おはようさん。よう眠れたか?」

★            ★


格納庫。アイリスの光武を整備する紅蘭。気まずく入るアイリス。

「今、アイリスが入ってきた時な、この子の体、あったかくなったんやで?」

「え?」

「光武はな、見た目は同じでも一つ一つ違うんや、人間みたいにな。乗る人の分身になって、その人の力を最大限に高めてくれる…。せやから、微調整の時に乗り手はんは欠かせへんのやね!」

「…アイリスには無理だよ」

「へ?」

「アイリス…、〜〜光武に乗っても、強くなんてなれない…」

「あはは、だ〜い丈夫や!操縦かて何回か練習すれば、すぐ慣れる!」

「〜〜違うもん!!アイリス、子供だからお荷物なんだもん!!〜〜お兄ちゃんもさくらも皆、アイリスがいたら足手まとい、迷惑だって思ってるよ…」


泣くアイリス。微笑み、『えんかい君』を出す紅蘭。踊る『えんかい君』。

『フレーフレー、アイリス!ガンバレガンバレ、アイリス!』

驚き、吹き出して笑うアイリス。

「何も戦うだけが光武に乗ることやない。アイリスにはアイリスにしかでけへん戦い方があるはずや。うちかて他の皆みたいに霊力も高うないし、武道だってでけへん。けど、手の器用さなら誰にも負けへんよ!せやから、うちは発明品を作ったり、光武を整備したりしとるんや。この仕事はうちにしかでけへん思とる!うちの発明品で皆が笑顔になる…、それがうちの誇りになる…!せやから、うちも帝国華撃団の一員なんやて胸を張って言えるんや、うちはうちのやり方で帝撃を支えとるんやて…!」

「紅蘭にしか…できないこと…?」

「せや。うちと同じく、さくらはんにも大神はんにもできなくて、アイリスにしかでけへんことが必ずあるはずや。自信持ってそれを見つけていこ!うちも協力するで、な?」

「紅蘭…。――うんっ!」


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食堂。納豆を混ぜながら、眠りそうになるさくら。隣で食べるマリア。

「よぉ、おはようさん!」

さくらの肩を叩くカンナ。ハッと目が覚め、カンナの手首を捻るさくら。

「――はっ!く…、曲者ぉ〜っ!!」

「〜〜あいてててて…!!おいおい、ちょっとたんま!!あたいだよ、あたい!!」

「え…?あぁっ!!ご、ごめんなさい、カンナさん!!私ったら眠ってました…!?」

「しっかりな…。〜〜あー、びっくらこいた…」

「さくらが寝ぼけてるなんて、珍しいわね。夜更かしでもしてたの?」

「明け方まで祖母に借りた合気道の心得を読んでたんです。私の祖母、若い頃は合気道の達人って呼ばれてたんですよ!」

「へぇ、そりゃすごいな!んで、さくらも習うのか?」

「はい!今、あやめさんに伝授してもらってるところなんです!」

「それはいいわね。合気道は全ての武道の基本ともいうし」

「この前、手合わせしたけど、あやめさんって合気道の腕前も相当だったなぁ!あはは、あたいもつい本気になっちまったよ」

「そうなんですよ!めちゃくちゃ強いんですよねぇ!?」

「だろだろ?あれはもはや人間業じゃねぇよなぁ…!」

「そんなにすごいの?」

「はいっ!もう、すごいも何も――」


咳払いするすみれ。

「…ん?何だ、いたのか、おめぇ」

「〜〜ずっと前からいました!…まったく、庶民の方はお食事も静かにできませんのねぇ。私の朝のティータイムを邪魔しないで頂きたいですわ」


スコーンを食べ、紅茶を飲むすみれ。

「あっ!ま〜た一人だけそんな気取ったもん食いやがって…!」

「当然ですわ。庶民の食べ物など、私の口には合いませんもの」

「けっ、じゃあその高級なでんぷんを延々と食ってろ、イヤミ女っ!」

「〜〜これはスコーンですわっ!!まぁ、庶民の方は口にしたことすらないでしょうけどねぇ!」

「ケッ、そんなもん食わなくっても、十分生きていけますからね〜!」


喧嘩を始めるすみれとカンナ。

「…まったく、どちらが騒々しいのかわからないわね。さくらもそう――」

「――はっ!く…、曲者ぉ〜っ!!」


納豆を混ぜながら、眠りそうになるさくら、目を覚まし、マリアの手首を捻ろうとするが、よけられる。

「〜〜あぁっ!!ご、ごめんなさい、マリアさん!!私ったら眠ってました…!?」

「…時々、あなたが羨ましくなるわ」


★            ★


アイリスの部屋の前。ノックしようとするが、ためらう大神。

(子供扱いされるのが嫌い…。でも、アイリスはまだ子供だ。大人として扱うのもどうだろう…。――とにかく、もう一度話をしてみよう…!)

ノックするが、返事がない。再びノックするが、同じ。

「アイリス…?まだ寝てるのか――?」

ドアノブに手をかける大神。鍵がかかっておらず、開く。アイリス不在。

「いない…?どこ行ったんだ…?――失礼するよー?」

部屋に入り、探す大神。ベッドの上に『眠り姫』の絵本を見つけ、手に取る。机の上に手作りの七夕の飾り。『早く大きくなって、お兄ちゃんのお姫様になれますように。――アイリス』と書かれた短冊。

「アイリス…」

パンフレットの段ボールを持って廊下を歩く椿と由里、大神を発見。

「あれぇ?何してるんですか、大神さん?」

「え…?いや、アイリスのこと探しててさ…」

「え〜?大神さんってばロリコンだったんですかぁ〜?」

「きゃ〜!部屋なんか入っちゃって…!何か犯罪の匂〜い!」

「〜〜ち…っ、違うって!……昨日、せっかくの誕生日を台無しにしちゃったからさ…。その埋め合わせをしようと思って…」

「そういうことですか。でも、アイリスちゃんなら格納庫にいましたよ?」

「本当かい…!?ありがとう、二人とも!」


走っていく大神。

「はー、隊長さんも大変なんですねぇ…」

「大神さんのタイプかぁ…。――調べて、かすみに教えてあげよっと!」


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格納庫。慌てて入っていく大神。

「〜〜紅蘭っ!アイリス、見なかったかい!?」

「アイリスなら食堂に行きましたわ。コーンスープ飲むんや言うて…」

「そ、そうか…!ありがとう!!」


再び走り出す大神。食堂。後片付けをするかすみ、大神の使った箸を見つめ、赤くなる。

(お、大神さんのお箸…!〜〜や、やだ…!何考えてるの、私ってば…!?)

「〜〜かすみくぅんっ!!」


駆け寄ってきて、突然アップになる大神。真っ赤になるかすみ。

「きゃああ〜っ!!〜〜ご、ごめんなさい!!私、ただお箸を見てただけなんです〜!!それ以上変な妄想とかは決して――!!」

「アイリス、見なかったかい!?」

「え…?〜〜ア…、アイリスちゃんなら、ひなたぼっこするって中庭へ…」

「ありがとう…!」


かすみの両手を握り、歯を光らせて微笑んで走っていく大神。真っ赤になり、箸を持ちながら、失神するかすみ。中庭。空手の特訓をするカンナ。

「――ん?アイリスなら、屋根裏部屋に行くって言ってたぜ?」

屋根裏部屋。エンフィールドの手入れをするマリア。

「――アイリスなら、地下のプールに行くと…」

「〜〜あぁ〜れぇ〜…!!」


プール。溺れているすみれを助け、プールサイドに上げてやる大神。

「〜〜で…、アイリスは…?」

「ゲホッ、ゴホ…ッ!〜〜あ…、あやめさんと三越にお買い物へ…」


疲れが出て、もぎり服を着たままプールに沈む大神。

「〜〜しょ…、少尉〜っ!?」

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三越。あやめと手を繋ぎ、店を回るアイリス。

「素敵なお洋服がいっぱいねぇ。どれが欲しい?1日過ぎちゃったけど、お誕生日プレゼントよ」

「本当!?えっとねぇ…!」


喜んで洋服を選ぶアイリス、父親と母親に洋服を選んでもらう女の子を見つけ、寂しく見つめる。察し、頭をなでてやるあやめ。

「…フランスが恋しい?」

「ううん…。だっておうちの皆、アイリスのこと嫌いだもん…」

「……今は…、寂しくなんかないわよね?帝劇の皆がいるものね?」


黙り、あやめの和服の裾をぎゅっと握るアイリス。

「……ねぇ、あやめお姉ちゃんはアイリスのこと…、好き?」

「当たり前じゃない。私はアイリスのこと、だ〜い好きよ?」

「お兄ちゃんも…?」

「もちろん…!大神君だけじゃないわ。さくらもマリアもみ〜んな、アイリスのことが大好きよ」

「あやめお姉ちゃん…。――本当だ…!お姉ちゃん、嘘ついてない…!アイリスのこと、本当に大好きって思ってくれてる…!」


涙を流し、抱きつくアイリス。抱きしめ、フランスを回想するあやめ。

『――あの子を日本へ?』

『はい。アイリスちゃんの霊力は我々の部隊にとって必要不可欠ですから』

『どうします、お父さん…?』

『化け物には化け物の巣がお似合いだ。どこへでも連れて行くがいい!』


回想終了。眉を顰め、アイリスを強く抱きしめるあやめ。

★            ★


あやめの合気道の訓練を受けるさくら。

「――もっと上!そこ、左!!〜〜違う!もう一回!!」

「〜〜はああっ!!たああああ〜っ!!」


板を足で割るさくら、息を荒くし、座り込む。

「昨日よりだいぶ型ができてきたわ。あとは平常心を保つことね」

「あ、それって剣と同じですね…!」

「えぇ。あなたの場合、焦ると周りが見えなくなりがちよ。それを克服できれば、今度の訓練では皆との差が縮まるんじゃないかしら」

「本当ですか?――よぉし、平常心、平常心…!」


頑張るさくらを見て微笑む大神。

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舞台。稽古する花組を二階席から見学する大神とあやめ。

「アイリス、やっぱり来てませんね…」

微笑み、大神に目で合図するあやめ。入口で稽古を隠れて見るアイリス。

「ああやって素直になれないところが可愛いわね。でも、その子供らしさがアイリスの魅力よね?」

「子供らしさ…、それがアイリスの魅力かぁ…。確かにそうですね!」

「ふふっ、特訓の後、部屋に行ってあげたら?」

「はい、そうしてみます!」


喧嘩するすみれとカンナに銃を向けて仲裁に入るマリア。頭を下げ合うすみれとカンナ。くすくす笑うアイリスを見つけ、微笑んで手を振るさくら。ハッとなり、出ていくアイリス。瞬きするさくら。

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中庭。ベンチに座り、ジャンポールを見るアイリス。大神の笑顔を回想。

「ねぇジャンポール、さくら達、まだ怒ってるかな?…お兄ちゃんもアイリスのこと嫌いになっちゃったかな?――うん、そんなことないよね?だってお兄ちゃんはアイリスの恋人だもん!嫌いになるわけないよね〜!」

ジャンポールの両手を握り、くるくる回るアイリス、廊下を走る。

(――ちゃんとごめんなさいって謝ろう…!そんで、もう一回デートのやり直しをするんだっ!)

★            ★


鍛練室・柔道場。柔道着であやめと戦う大神。

「――どうしたの!?もっと積極的に来なさい!!」

「〜〜く…っ、はあああっ!!」


中段突きを受け止め、ひざ蹴りするあやめ。よけ、足払いする大神。少しバランスを崩すあやめにチョップする大神。受け止め、捻って倒すあやめ。

「〜〜うわ…っ!?」

手をつき、体勢を変えてあやめの胸ぐらをつかみ、地獄車しようとする大神。足を挟み、大神の首を絞めるあやめ。

(〜〜く…っ、さすがあやめさんだ…!どんな攻撃も全て返される…)

苦しみながら抜け出した大神の手があやめの胸に。

「きゃ…っ!?」

「わ…っ!!〜〜す、すみません…っ!!」


真っ赤であやめの手を振りほどくが、足を滑らせ、馬乗りの形であやめとキスする大神。走ってきて、その現場を見てショックを受けるアイリス。

「え…?〜〜わ…っ!!俺、何てことを…っ!?〜〜す、すみませんでした…!!」

土下座する大神。唇を押さえながら座り、赤くなるあやめ。ショックで目を見開くアイリス。大神とあやめの心の声が聞こえてくる。

『大神君も男の子…なのよね、今まであまり意識したことなかったけど…』

『〜〜こ、これは事故だ…!でも、あやめさんの唇、柔らかかったな…』

(〜〜お兄ちゃんは…、あやめお姉ちゃんのこと――!!)


爆発音に振り返る大神とあやめ。アイリスが霊力を発し、怒っている。

「ア、アイリス…!?」

「お兄ちゃんなんて…、お兄ちゃんなんて…〜〜もう知らないもんっ!!」


泣きながら霊力を解放し、テレポートするアイリス。追いかける大神。

「ア…、アイリス…!!〜〜すみません…!」

「あ、大神君…っ!」


★            ★


中庭の廊下を走るアイリスに追いつき、腕を掴む大神。

「〜〜アイリス、待ってくれ!昨日のこと、謝りたいんだ…!!」

「〜〜いやあっ!!離してよぉっ!!」

「ごめん!!せっかくの誕生日だったのに、台無しにしちゃって…!」


アイリスの回想。眠り姫を助けに来た絵本の王子に憧れるアイリス。

「……お兄ちゃんはアイリスだけの王子様だもん…」

「え…?」

「〜〜お兄ちゃんはアイリスだけの恋人だもんっ!!なのに、あやめお姉ちゃんとキスしてた!!〜〜浮気してた〜っ!!」

「〜〜う、浮気って…」

「やっぱり、お兄ちゃんはあやめお姉ちゃんみたいな大人が好きなんだ…。〜〜アイリスは子供だから、好きになってくれないんだ…!」

「それは違う!俺はアイリスのことが大好きだよ!?」

「じゃあ、キスしてよ!!アイリスのことが本当に好きなら、簡単でしょう!?」

「〜〜そ、それは…」

「――!!〜〜やっぱり、アイリスのこと嫌いなんだ…、アイリスが子供だから…。……お兄ちゃん、あやめお姉ちゃんにはキスしてたのに、アイリスにはしてくれない…。〜〜したいとも思ってない…っ!!」


さらに霊力を解放するアイリス。吹き飛ばされそうになる大神。

「〜〜ま、待て、アイリス!落ち着いて――!!」

「お兄ちゃんの……〜〜バカぁぁぁ〜っっ!!」


強力な霊力を発し、テレポートするアイリス。地震が起き、よろめく大神。アイリスの光武を整備中、突然格納庫が揺れ、驚く紅蘭。格納庫にテレポートしたアイリスの霊力に反応し、ひとりでに動き出すアイリスの光武。

「な…っ!?光武が勝手に…!?〜〜アイリス、ちょい待――!!」

光武に搭乗してテレポートするアイリス。収まる地震。

「〜〜こ、こりゃえらいこっちゃやで…!」

★            ★


作戦指令室。普段着のまま座っている花組。

「――アイリスが出て行ったぁ!?」

「初めてやのにもう光武を自在に動かしとった…!せやけど、まだ微調整中や。このままアイリスの力が暴走したら、光武もろとも爆発してまうで!?」

「〜〜マ、マジかよ…!?おい、アイリスはどこにいるんだ!?」


機械で調査する三人娘。

「浅草に強力な霊力反応を感知しました!おそらく、アイリスちゃんかと」

「〜〜浅草…か…」


アイリスとのデートを回想し、うつむく大神。

「私達も早く向かいましょう!」

「そうね…!このままじゃ街にも被害が及ぶかもしれないわ…」

「よし、各自戦闘服に着替え、光武に搭乗しろ!風組は轟雷号の準備を!」

「了解!」


準備しようと立ち上がる一同。警報音。機械を操作し、青ざめるあやめ。

「〜〜司令、浅草に黒之巣会が現れたもようです…!」

「な、何だと…!?」


モニターに浅草寺で暴れる脇侍達と逃げる人々の映像。

「〜〜どういうことだ…!?この前で用は済んだはずじゃあ…!?」

「え…?どういう意味ですか…!?」

「…いや、こっちの話だ。――とにかく、場所が同じだけでもよかった。花組はアイリスの保護、同時進行で黒之巣会の討伐に向かえ!」

「了解しました!――帝国華撃団、出撃!!アイリスを必ず救出するぞ!!」

「了解!」


★            ★


浅草・花やしき。両親と楽しく遊ぶ子供を見つめ、夕日に照らされるアイリス。路地裏に瞬間移動し、光武の腕に座ってなで、泣くアイリス。

「〜〜皆…、大っ嫌い…」

背後に気配がし、振り返るアイリス。羅刹が立ち、不気味に笑っている。

「ククク…、やっと見つけたぞ、小娘…!まさか同じ浅草にいたとはな」

怯えて後ずさり、光武に乗ってテレポートするアイリス。

「ほぉ、テレポートとは…!ククッ、霊力の奪いがいがあるというものよ!!」

★            ★


浅草寺。駆けつけ、破壊する脇侍達と逃げる人々を見つける花組。

「〜〜路地の狭さから、避難が遅れていますね…」

翔鯨丸から通信。

『市民の避難は俺達に任せろ!お前らは脇侍の撃破とアイリスの捜索に専念するんだ』

「了解しました!」

「隊長、ここは脇侍を撃破する班とアイリスを捜索する班の二つに分かれた方がよろしいかと」

「フン、あんなワガママな小娘、お夕飯時になれば帰ってきますわよ」

「だったらおめぇは待ってろよ。あたいはアイリスを探しに行くぜ!」

「せやけど、これだけの脇侍相手に半分の人数じゃきついで…?」

「なら、俺が探しに行く。君達は全員ここで脇侍を倒していてくれ」

「私も行きます…!昨日、アイリスにひどいことしちゃったし…、どうしても謝りたいんです…!!」

「わかった。――マリアはここで指揮を頼む。見つけ次第、合流するよ」

「わかりました。お気をつけて…!」

「あ、せや!――大神はん、右上の画面に点滅したんが複数あるやろ?」

「あぁ。これは?」

「今、うちらがどこにいるかを示したものなんや。前回の教訓で全機に発信機をつけといたさかい。アイリスは黄色の点滅した所におるで!」

「あぁ、わかったよ。ありがとう、紅蘭!」

「行きましょう、大神さん!アイリス一人じゃ危険です…!」

「あぁ!――皆、ここは頼んだぞ!」


走っていく大神とさくら。

「まったく…、熱血漢で暑苦しいコンビですこと」

「――そこが二人のいいところじゃない」


光武に乗ってやってくるあやめ。

「あやめさん…!」

「大神君やさくら、それにあなた達一人一人が違うように、人間は皆それぞれ違う魅力を持っているものよ。アイリスだって、大人にはない子供ならではの魅力を持っているんじゃない?」

「子供ならではの魅力かぁ…。確かにそうだな…!」

「そうよ。だから、他の人を羨ましがったり、妬んだりする必要はないの。『皆違って、皆良い』…。自分の長所は自分で見つけなくっちゃ、ね?」

「…無駄話をしている暇はありまして?――先に参りますわよ!」


不機嫌で先陣を切るすみれ。

「あ、おい!一人じゃ危ねぇぞ!?…ったく、協調性の欠片もねぇ女だなぁ」

「ふふっ、私も助太刀するわ。花やしき支部長だし、浅草には詳しいの」

「ありがとうございます…!あやめさんがいて下されば、心強いです」

「よっしゃあ!ほんなら、早う倒して、アイリスを見つけまひょ!」

「おーっほほほほほ…!!何をボサッとしてますの?私が一人で全て倒してしまいますわよ!? ――神崎風塵流・胡蝶の舞!!」


燃えていく脇侍達。突進し、戦闘に加わって倒していくカンナ。

「てめぇだけにいいとこ奪われてたまるかよっ!――そりゃあああっ!!」

「なかなかやりますわねぇ…!けれど、私の華麗さには敵いませんわ!!」


競うように次々倒していくすみれとカンナ。露店まで被害が及ぶ。

「〜〜二人とも!公共物まで破壊しないで頂戴!!」

「おっと、すまねぇな…!一百林牌っ!!」


すみれの分の脇侍も倒すカンナ。

「〜〜ちょいと、カンナさんっ!?人の獲物まで横取りしないで頂けます!?」

「へへっ、無駄話してる暇はないんじゃなかったっけ〜?」

「〜〜き〜っ!!あなたなんかに絶対負けませんわよっ!?」


出番がなく、立ち尽くすマリア、紅蘭、あやめ。

「…本来の目的を完璧に忘れてるわね、あの子達」

「あはは、うちらの出番、なくなってしまいそうやね〜」

「ふふっ、私達も負けてられないわね。――行くわよ、二人とも!」

「了解!」「了解や!」


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