藤枝かえで誕生日記念・特別短編小説2012
「仲直りの魔法〜大神編〜その7



「――はっぴばーすでぇ〜とぅ〜みぃ〜♪」

「〜〜かえでさん、子供達はもう寝てるんですから、静かに…!」

「うふふっ、一郎君のエプロン、フリフリでか〜わいい〜♪意外と少女趣味なのねぇ〜」

「〜〜こ、これは結婚祝いに双葉姉さんがくれたもので…。〜〜あ〜、ほら!部屋に着きましたよ?入りますからね!?」

「はぁ〜い♪」


俺はベッドにかえでさんを寝かせると、水が入ったコップと胃薬を手渡した。

「――はい。付き合いなのはわかりますが、ほどほどにして下さいよ?」

「いや〜ん、一郎君ったら良い奥様してる〜♪んふふふっ」

「〜〜ハァ…、長い一日だった…」


隊長室に入って鍵を閉めたら、急にしーんとなった。ベッドに座っているかえでさんも水を飲んで、少し酔いがさめたみたいだな…。

……そういえば昨日の今頃、俺達、喧嘩の真っ最中だったんだよな…。その後、まさかこんな展開になるとは予想だにしてなかったが…。

「……」「……」

〜〜うぅ…、この気まずい沈黙を何とか打破せねば…。

「――あの…!」「――ねぇ…!」

「〜〜あ…、一郎君からどうぞ?」

「〜〜いえいえ、かえでさんから…」


ハハ…、どうやら、かえでさんも俺と同じことを考えてたみたいだな。〜〜喧嘩中って、余計な気を遣い合ってしまうよな…。

「――その…俺達って、まだ…喧嘩中…なんですよね?」

「そ、そうなの…?もう神社でとっくに仲直りしたんじゃなかった?」

「そ、そうだったんですか?」

「す、少なくとも私はそう思ってたわ…!――けど…、ケーキとコロッケを作ってくれたことは、すごく嬉しかったわ…。あなたなりの仲直りの印だったんでしょ?」

「えぇ、まぁ…」

「ふふっ、一郎君の愛情がいっぱい詰まってて、本当に美味しかったわ!」

「はは…、喜んでもらえてよかったです。子供達と苦労して作った甲斐がありますよ。――仕事と子育ての両立って大変なんですね…。それが今日、よくわかりました」

「ふふっ、私も今日、司令業務の大変さを痛感したわ。けど、あなたと子供達が『おかえり』って迎えてくれて、私の為に料理を作ってくれたってわかって、すごく嬉しかったの。そしたら、不思議と疲れなんて吹き飛んで、明日も頑張ろうって思えたわ。ふふっ、こうして世のお父さん達は皆、家族の為に頑張れているのね」

「そうですよ。家族の愛があるから、俺も頑張れるんです。俺は今まで大黒柱の自分一人が家族を支えてるものだと思い込んでました…。けど、俺も同じように妻のあやめさんとかえでさんの…、そして、子供達の愛に日々支えられていたんですよね…」

「ふふっ、ようやく家族のありがたみがわかったみたいね?」

「はい、深く反省してます。これからは俺も積極的に子育てを手伝いますよ。――だから、これからも俺を温かい愛で支えてくれたら嬉しいなって…」

「ふふ、もちろんよ。――昨日は、ひどいこと言ってごめんなさいね…?」

「いえ…!――俺の方こそ、無神経ですみませんでした…」


俺とかえでさんはおでこをくっつけながらクスクス笑い合うと、瞳を閉じ、ゆっくり近づけ合った唇を重ねた。

「…ねぇ、一郎君。今夜はこのまましてみましょうか?」

「…俺も今、言おうと思ってました」

「なら、話が早いわね。――ふふっ、なんだかドキドキしちゃう…♪」


俺の体にいるかえでさんは照れ笑いしながら、かえでさんの体にいる俺をベッドにゆっくり倒し、髪を撫でながら首筋に舌を這わせてきた。

「ははっ、くすぐったいですよ、かえでさん…!」

「ふふっ、こぉら、じっとしてなさい!」


かえでさんは服を脱がせていく際、自身が昨日購入した勝負下着を俺がしているのを見て、頬を赤らめた。

「そ、その下着は…!」

「あ…、今夜の為にかえでさんが買ったものだろうから着けてやれって、あやめさんが…」

「ふふっ、わざわざ着けてくれたのね。――はぁはぁ…、思った通り、効果抜群だわ…!あぁん、興奮してきちゃう…♪」

「あっ、か、かえでさぁん…!んくぅ、うぅ…!」

「ふふっ、そうやって喘いでると本物の女の子みたいよ、一郎君♪」

「んああっ!やぁっ!そこ…らめぇ…!らめれすってぇ…!」


かえでさんは俺が勝負下着の存在に気づいたことを喜んでくれたみたいで、責めをさらに激しくしてきた…!

「はぁはぁ…、すごく…気持ちいいです…!かえでさん…っ」

「ふふっ、いつもあなたが私とあやめ姉さんにしてくれてることよ♪――可愛いから、もっともっとイジメてあ・げ・る♪」


自分に抱かれるなんて変な気分だが、かえでさんの女性らしい繊細で優しい愛撫が気持ちいい…。女の体って、男を迎え入れる為に男より気持ちよくつくられてるんだな…。

「はぁはぁ…、入れるわよ、一郎君…?力抜いててね…?」

「わ、わかりました…」

「ん…っ!――は…あああああああ〜んっ!!」

「うあ…っ!うわあああああああああ〜っ!!」


目を見開き、シーツを握りしめてブリッジした処女同然の俺の腰をかえでさんは喘ぎながら抱きしめた。

「あんっ、あっ、あっ…!ふふふっ、あやめ姉さんと払いの儀を成功させたテクニック、見せてあげるわね…♪」

「か、かえでさぁん…!もっと…ゆっくりお願いします…っ!はっ、はっ、はぁ…っ!!」

「あん、可愛いわ、一郎君♪私にエッチなことされて感じてるのね?」

「うわあああ!!そこで乳首、吸われたら…!んはああああぁっ!!」


ダメだ…。気持ち良すぎて何も考えられない…。まるで全身が性感帯になったみたいだ…。顔も体も心も皆…、とろけてしまう…。

「はぁはぁ…、かえでさん、気持ちいいですか…!?あっ、あぁ、イク…!!こっ、腰を動かすのサポートしますね…っ!!」

「ひいいっ!吸い込まれるぅ…!!あぁ〜ん!一郎君、上手よぉぉっ!!私もイク〜!!もうイッちゃうぅ〜!!一郎君っ、私の愛を受け止めてぇ〜っ!!」

「う…っ、了解!俺の中に…はぁはぁ…全部出してくださいね…っ!!」

「ふあああ…!ぐ…っ!で、出てるぅぅぅっ!!んあ…っ、ああああああああああああ〜っっ!!」

「うあああっ!入って…きたぁ…!!ああああっ!気持ちいい…!!あああああああああ〜っっ!!」


俺はかえでさんとキスしながら、迸った精を胎内で受け止めた。

「あ…あああああああぁぁぁ…」

「ふぁ…あは…ああぁぁぁん…」


体の奥が熱い…。あそこが痺れる…。頭が真っ白になって…いく……。



「――う…ん……」

昨日と同じように、俺は鳥のさえずりに目を覚ました。カーテンの外はもう明るくなっていた。

逆転セックスの後、俺は気を失うように眠ってしまったみたいだ…。

「――う…ん……」

隣で寝ていたかえでさんも目を覚ましたみたいだな。

「おはようございます、かえでさん。――…!」

裸のまま起きてきたかえでさんの姿に俺は息を呑んだ…!

キスマークがたくさんついた白い肌に豊満な胸、細い手足にくびれた腰、女性らしい丸みを帯びた体…。まるで絵画から飛び出してきたヴィーナスのような美しい裸体のかえでさんが俺の目の前に横たわっていたのだ…!

「え…?一郎君…!?」

目の前で座っている俺にかえでさんも同じように目を丸くした…!

「体が元に戻ってますよ…!」

「きゃあ!やったわ〜っ!!」


かえでさんに抱きつかれてベッドに押し倒され、俺達は歓喜のキスをしまくった!

「一日経てば、自然と戻る仕掛けだったんでしょうか?」

「あら、私達の愛の力も関係してるわよ。…やっぱり、寝る前のアレがよかったんじゃないかしら♪」

「はは、かもしれませんね。――そういえば、子供から大人に戻った時も、あやめさんとキスしたっけ…♪」

「〜〜んもう、一郎君!?目の前の妹を放って、姉さんの話をするつもり?」

「あはは、すみません。愛の力は無敵だって言いたかったんですよ…!」


黒幕の正体はまだわからないが、悩みが一つ解決してよかったな。

「――ねぇ、一郎君。ハッピーエンドの記念に…♪」

「そうですね。今日は夜公演まで暇ですし…♪」

「うふふふっ♪」


俺は昨晩とは反対にかえでさんをベッドに横たわらせると、笑って抱き合いながらシーツを被って、性交渉に励んだ。

昨日のお詫びに今日は時間の許す限り、たくさんかえでさんを愛してやろう…!

「ふふっ、愛してるわ、一郎君。もう離さないでね…」

「愛してます…。これからも俺の隣にいて下さいね、かえでさん」


――仲直りの魔法…。

きっと、一層深まった俺とかえでさんの愛の魔法が精霊の力をも上回る奇跡を起こしたに違いないよな…♪



「――いらっしゃいませ〜!」「――いらっしゃいませ〜!」

「――大帝国劇場へようこそ〜!」


昨日に引き続き、今日の夜公演もなでしこ、ひまわり、誠一郎が椿ちゃん達と一緒にスタッフ業務をお手伝いしてくれることになった。

「あの子達ももう立派な帝劇スタッフですね」

「ふふっ、すっかり人気者になっちゃって…。私達も負けてられないわね、一郎君♪」

「はは、そうですね。――あ…、そろそろ開場前挨拶を始める時間だな。かえでさん、手伝って頂けますか?」

「…あら、支配人業務を副支配人の私が手伝ってもいいのかしら?」

「はい。かえでさんが手伝って下されば百人力ですから♪」

「ふふっ、そこまで言うなら仕方ないわね。――今日はいっぱい愛してくれたから、フルパワーで働けそうよ♪」

「今晩の分はちゃんと残しといて下さいよ?」

「ふふっ、一郎君のエッチ♪」

「ははは…!」

「――大神大尉〜、見つけたわ〜!」


そこへ、バッチリ化粧と服装を決め、いつもアップにしている髪をおろした中年女性が手を振って、俺のいるロビーに駆け込んできた!

「〜〜いぃっ!?や、山本文部大臣…!?」

「昨日のあなた、シビレたわぁ〜!これから劇場には毎日通うから、私の愛を受け止めて頂戴ね〜ん♪」

「〜〜か…っ、かえでさんっ!?これは一体…!?」

「〜〜ほほほほ…、詳しくは姉さんにでも聞いて頂戴。大臣のお気に入りになれたんだから、よかったじゃないの♪」

「〜〜ちっともよくな〜いっ!!」

「――や、山本文部大臣…!?」

「あっ!あやめさん、いいところに…!!」

「あ〜ん、ダーリンったら、よそ見しちゃダ・メ・よ〜ん♪」

「〜〜うわああっ!?何とかして下さいよ…!!大臣に何があったんですか…っ!?」

「〜〜詳しくは『かえで編』でね…。山本大臣はピュアな方なのに、かえでが思わせぶりな態度取ったりするから…」

「〜〜わ…、私はそんなつもりなかったわ!一郎君のモテ体質が悪いのよっ!!」

「〜〜いぃっ!?何で俺のせいなんですか…!?」

「一郎さ〜ん、マイダ〜リン♪」


言い寄ってくる山本大臣から俺を助けようと奮闘するあやめさんとかえでさん。そんな俺達3人を売店から静かに見つめる男がいた。

「――はい、大神支配人とあやめ副支配人とかえで副支配人代理のブロマイドセット、お待たせ致しました〜!」

「ありがとうございました〜!」「毎度あり〜!」

「やぁ、どうもありがとう」


ディープブルーの冷たい瞳で微笑まれ、売店を手伝っていたなでしことひまわりはゾクッと背筋が凍った…!

「…?なでしこちゃん、ひまわりちゃん、どうかした?」

「〜〜い、いえ…」

「〜〜今の感じ…、何だったのかな…?」

(『――フフ…、自身の誕生日が命日になるとも知らず…、哀れな男よ』)


アンティークショップ『papillon』の店長は劇場を後にすると、路地裏へ入り、購入した俺とあやめさんとかえでさんのブロマイドを手中から出した炎であぶって焼き始めた…。

「乾燥してるから、よく燃えること〜♪冬なら本物も骨まであぶり尽くせるだろうね〜」

「『――純、くれぐれも器には傷をつけてくれるなよ?』」

「…はいはい。冬牙は怒りんぼうだなぁ〜」


灰になった俺達のブロマイドを、フランスと日本のハーフのイケメン店長はほくそ笑みながらブーツで踏みつぶした…!

(『――クククッ、大神一郎。残り少ない人生を我が妻達とせいぜい謳歌しているがよい…!』)

えっ?何だ、この終わり方!?まさか俺の誕生日記念小説に続くのか…!?



大神編、終わり


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