藤枝かえで誕生日記念・特別短編小説2012
「仲直りの魔法〜大神編〜」その5
会議が始まるまで時間があるので、俺とあやめさんとかえでさんは天雲神社に向かった。
あやめさんとかえでさんがアモスを封じていた祠を調べている間、俺は書庫で調べ物をすることにした。隼人をはじめ、裏御三家の資料がこの神社の書庫にはたくさん保管されている。もしかしたら、悪い魔法使いの『彼』とアモスについて書かれた資料も見つかるかもしれない…!
……だが、調べ始めて1時間…。隼人に関する書物はあるものの、アモスについての文献はなかなか見つからない…。
――もうすぐ7時か…。そろそろ会議に行く支度をしないとな…。
俺は溜息をつきながら、窓に映る今の俺の体・かえでさんの髪を手櫛で整えてみる。〜〜本当に俺、かえでさんと入れ替わっちゃったんだな…。
他の文献にも人格が入れ替わった事例は残されてないし、アモスが見つからなかった場合の魂の戻し方もわからない…。〜〜これからどうすればいいんだ…?このまま一生、かえでさんと入れ替わったままで過ごさなければならなくなったら…。
俺が眉を八の字にすると、窓に映るかえでさんも同じ表情を浮かべる。……当たり前だ。今の俺は、かえでさんなんだから…。
――だけど、かえでさん、そんな顔をしないで下さいよ…。あなたの悲しそうな顔を見るだけで俺も辛くなってくるじゃありませんか……。……ハァ…、昨日の喧嘩の後、俺はかえでさんにずっとこんな顔をさせていたに違いないよな…。
若くして帝国華撃団の二代目司令に選ばれたからと、少し調子に乗っていたのかもしれない…。俺がここまで頑張ってこられたのは、かえでさんのお陰も大きいのに…。
あやめさんと一緒に俺の隣にいつもいてくれるかえでさん…。かえでさんは公私共に俺の大事なパートナーなのに…。〜〜『受けた恩は返すのが日本人の美学』なんて言っておきながら、一番大切な人に恩を返すのを忘れているじゃないか…。
俺が後悔に苛まれながら頬杖をついていると、本棚で一冊白く光っている本を窓越しに見つけた。不思議に思って振り返ると、その本は別に発光していなかった。
――見間違いか…?それとも光の加減だろうか…?だが、あの一冊だけどうして…?何打か気になったので、その本を手に取ってみた。
……随分、古い本だな…?破らないように慎重に捲らなくては…。タイトルはかすれているが、中身はいくつか読めそうな箇所があるぞ…!
「「『――薩摩より来たりし隼人一族、長旅を経て京に辿り着き、神の名の許に社を構えん。これが西國神社の始まりなり』…」」
これも隼人の文献なのか…!どこかにアモスの記述はないか…!?〜〜う〜ん…、しかし、かすれてて読みづらいなぁ…。
――ん…?この挿絵だけやけにはっきり描かれてるな。この般若の仮面を被った男は誰だろう…?
「「『――憎悪に身を焦がし、鬼となりし当主、魔の力で悪魔を封印す』…」」
――!?〜〜な、何だ…!?この絵を見た途端、急に頭痛が…!
『――私は憎しみを力に変える術を知った…!彼女を取り戻す為ならば、私は喜んで鬼となろう…!!』
〜〜映像が勝手に頭の中に流れ込んでくる…!黒い炎に身を包んだ男…。あれは…俺――!?
「〜〜一郎君…!?」
「「――ハ…ッ!?」」
気がつくと、あやめさんとかえでさんが心配そうに俺の体を揺すって、顔を覗き込んでいた。
「「〜〜頭を押さえてうずくまってたから心配したのよ…!?大丈夫なの?」」
「「〜〜すみません…。この挿絵を見ていたら、急に頭痛が…」」
「「挿絵なんてどこにあるの…?」」
「「あれ…?絵が消えてる…!?〜〜おかしいな…?確かに般若の面を被った男の絵があったはずなのに…」」
「――この書物から不思議な霊力を感じるわ…。一郎君の隼人の霊力と反応しているみたいね」
「「俺の霊力と…?」」
「「……挿絵…ねぇ。何だか気になるわね…」」
「時間はかかりそうだけど、復元して、月組に調べてもらいましょうか」
「「そうですね。――あやめさんとかえでさんの方はいかがでしたか?」」
「ごめんなさい。祠を調べてみたけど、アモスの行方は掴めなかったわ…」
「「おばあ様が言うには、この世界とは違う次元にすでに行ってしまったんだろうって。残念だけど、今日はこの状態でやり過ごすしかなさそうよ」」
「「じゃあ、会議にはかえでさんが出席するってことですか…!?」」
「「…まぁ、そうなるでしょうね」」
「「〜〜えぇっ!?司令の俺は本部で待機してろとおっしゃるんですか!?」」
「今の大神一郎総司令はかえでですもの。やりきれない気持ちはわかるけど、仕方ないわ。一郎君は私達が会議に出ている間、子供達の世話をお願いね?」
「「〜〜そ、そんなぁ…。がっくし……」」
「「…あら、気楽でいいじゃないの。あなたにとって、子育てなんて遊びのようなものなんでしょ?」」
〜〜かえでさん、昨日俺が言ったことまだ根に持ってるみたいだな…。
「「〜〜なら、せめて奏組の視察と舞台監督ぐらいはやらせて下さいよ!」」
「「何言ってるのよ!?最高責任者の私がいなきゃ変に思われるでしょう!?」」
「「〜〜司令も副司令も、やることはそう変わらないじゃないですか――!!」」
「――はいはい、そこまで!もう…、進歩がないわねぇ、あなた達は…。入れ替わったことで主張は逆になったけど、昨日と同じことで喧嘩してるって、わかってる?」
「「あ…、〜〜そういえば…」」
「「〜〜確かに…」」
「司令見習い君一人で大変なら、私達で分担すればいいでしょ?やっつけ仕事じゃないんだから、一つずつ丁寧にこなしていかなくてどうするの?」
「「〜〜そうね…」」
「「〜〜おっしゃる通りです…」」
「ふふっ、素直でよろしい♪――これでわかったでしょう、司令の負担を軽くして、サポートしてくれる副司令がいてくれることがどれだけありがたいか…?」
「「……はい…」」
純粋に手伝いたいだけだったのに、信頼されずに拒絶されるのがこんなに辛いとは思わなかった…。俺は昨日、かえでさんに同じようなことを言ってしまったんだよな…。
協力してやるって親切心で言われたのに、自分じゃ力不足だって決めつけられているみたいに聞こえて、それが悔しくて、子供みたいに意地になってただけなんだ…。
「…確かに司令にとって、今日の会議は一年で一番重要なお仕事よ。でも、変に肩肘を張る必要はないの。たとえうまくいかなくても、たった一回の会議で帝撃の基盤が揺らぐことなんてありえないでしょ?」
「「私達・帝国華撃団には今まで培ってきた信頼と実績があるもの。それをお偉いさん方もわかって下さってるから大丈夫よ」」
今まで培ってきた…か。
――そうだ…。帝撃がここまで頼りにされる組織になれたのは俺一人の頑張りじゃない…!あやめさんとかえでさん、花組の皆、米田さん、他の部隊の仲間達…、皆で築き上げてきたから、ここまで大きく成長できたんじゃないか…!
「「〜〜俺、何やってるんでしょうね…?米田さんから継いだ帝撃を潰さないように頑張らないと…、大黒柱として家族を守っていく為に頑張らないと…って必死に食らいつくうちに、気がつくと仕事のことで頭がいっぱいになってて…。しまいには頑張っている目的すら見失って、大切な人達を傷つけて…。〜〜本末転倒もいいところですよね…」」
「「ふふ、だからこそ、私と姉さんはあなたを放っとけないんじゃないの」」
「そんな不安定な気持ちでいたら、うまくいくものもいかなくなっちゃうわよ?仕事熱心なのは結構だけど、一人で抱え込んでたら駄目…!プライドがあって背伸びしたいのはわかるけど、花組隊長だった頃みたいに悩みや困ったことがあったら、まずは私達に相談して欲しいな」
「「私達は何の為の副司令?何の為の妻なの?協力し合い、支え合うのが仲間であり、家族ってものでしょう?」」
「「あやめさん、かえでさん…」」
不安な気持ちと弱音を吐露した俺を優しく抱きしめてくれたあやめさんとかえでさん。二人の温もりを感じると、不思議と胸につかえていた不安がスー…と消えていくような感じがした。
「――色々悩んで辛かったわね…。でも、あなたには私達・副司令姉妹がいるわ。今までもそうだったように、これからもずっとあなたの傍にいるから…」
「「一郎君の為に今日の会議は必ず成功させてみせるわ。だから、あなたももっと副司令の…妻の私達を信じて、頼りにして…ね?」」
「「ありがとうございます…」」
司令だから一人で何でも完ぺきにこなさなければいけないなんて誰が決めた?
俺はあやめさんとかえでさん、そして仲間の皆の支えがあって、初めて指揮官として輝ける存在…。どんなに不甲斐なくても、昔みたいに仲間達と喜びを共有し、苦しみを分け合って頑張っていけばいいんだ。
はは、見習いを卒業するにはまだ時間がかかりそうだが、それはそれでいいのかもしれないな…。
「――じゃあ、一郎君は舞台準備の指揮と書類のハンコ押しをお願いね。劇場でできる業務だから、子供達の面倒を見ながらでもできるでしょう?」
「「はい、頑張ります!」」
「私は花やしき支部長として、風組の訓練に立ち会うわ。かえでは奏組の戦闘訓練を視察した後、私と合流して会議に向かう…。いいわね?」
「「わかったわ」」
「ふふ、二人ともいい顔になったわよ。この調子で今日も頑張りましょ!」
「「了解!」」「「了解!」」
――『ヒト』の感情を教えてくれたお礼に願いを叶えてやる…か。
もしかしたら、意地っ張り同士の俺とかえでさんが入れ替われば、全てが良い方に転がるとアモスは最初からわかってたのかもしれないな。
多分、かえでさんと入れ替わらなかったら、俺はこんな穏やかな気持ちも、仲間がいてくれるありがたみも感謝して感じることができなかったかもしれない…。
そう考えると、アモスは精霊というより、大天使ミカエルが遣わしてくれた幸福の天使なのかもしれないな…。
俺は帝劇に戻ると、支配人室で書類のハンコ押しに取り掛かった。
「「――よし、これで全部だ。お手伝いありがとな、誠一郎」」
「えへへっ!ぺったんぺったん押すの、楽しかったね〜!」
ここのところ会議の準備に取り掛かりで、すっかりたまってしまっていたが、誠一郎が渡す書類に俺がハンコを押していくというわんこそば方式を取れたので、予定していた時間より早く終わらせることができた。
――そろそろお昼か…。今頃、会議はどうなってるかな…?
…いや、ここは、あやめさんとかえでさんを信じて、吉報を待つとしよう…!俺は今、今の自分が帝撃の為にできることを精一杯しよう…!
「「なぁ、誠一郎。昼公演まで時間あるから、母さんにごちそうでも作ってやろうか?」」
「…?自分のお誕生日会なのに自分でごちそう作るの?」
「「え?」」
〜〜あ…、そうか。子供達は俺とかえでさんが入れ替わってるのを知らないんだよな…。正直に話したところで、混乱するだけだろうしな…。
いつ元に戻れるかはわからないが、とりあえず今は、かえでさんになりきっておくとするか…。
「「〜〜お…ほほほほ…!母さん、今とってもお料理したい気分なのよ!手伝ってくれるでしょう、誠一郎?」」
「もちろんだよ!えへへ、今日は母さんといっぱい過ごせて嬉しいな〜」
ははっ、誠一郎もやる気十分みたいだな!
よーし、かえでさんとの仲直りの印に、とびっきりのごちそうを作ってやるとしよう!
俺と誠一郎は食材を買いに銀座の商店街に出かけた。
「――今日はかすみお姉ちゃんとつぼみお姉ちゃん、いないの?」
「「そうよ。二人とも風組さんの訓練で花やしきへ行っているのよ」」
いつも誕生日会のご馳走は、主にかすみ君とつぼみちゃんが作ってくれているのだが、今回は俺達で一から作るしかない。
時間もないし、俺も誠一郎も料理に慣れてないから、二人みたいにあまり凝ったものは作れないだろうが、大事なのは祝いたいという気持ちだよな!
「ねー母さん、何食べたい?母さんの誕生日会なんだから、好きな物、何でも言ってみてよ!」
「「ふふ、そうねぇ…」」
かえでさんは洋食が好きだから、ハンバーグとかビーフシチューなんかがいいかな?あ、お義母様の思い出の味のコロッケなんかもいいかも…。
「――あら、副支配人の奥様!どうぞ、うちの店に寄って行って下さいな!」
「――坊主、母ちゃんと買い物かい?ほれ、これ持っていきな!」
「わぁ、ソーセージだ!ありがとう、お肉屋のおじさん!」
「――今回の舞台も最高だったわ〜!じゃがいも、もう一個サービスしとくわね!」
はは…、相変わらず商店街の皆さんは人情に厚い方ばかりだな。こういう人達と触れ合っていると、帝都を守りたいという意欲がますます湧いてくるよ…。
「えへへっ、いっぱいもらっちゃったね〜!」
「「これだけ食材があれば。私達でもなんとかなりそうね」」
「うんっ!〜〜くしゅんっ!」
「「〜〜だ、大丈夫、誠一郎…!?」」
「へへっ、へーきへーき!コートも着てるしね」
厚着させたつもりだが、やっぱりまだ風邪が完治してないんだろうな…。
「「――ほら、母さんの背中におぶさって。おうちに着くまで休んでなさい」」
「〜〜でも、荷物もあるのに…」
「「ふふ、平気平気!母さん、力持ちだから」」
「母さん…」
俺におんぶされた誠一郎は少し恥ずかしそうに笑った。
「えへへ…、ありがとう、母さん。昨日もこうやっておんぶしてくれたよね?」
「「そ、そうだったかしら?」」
「忘れちゃったの?おばあちゃん家で僕が倒れてさぁ…」
「「あ…。――ふふっ、そうだったわね…」」
かえでさんも昨日、俺と同じことを誠一郎にしてくれてたのか…。はは、奥さんと子育ての意見が合うってなんだか嬉しいな…♪
「――母さんの背中、あったかいや…。でも、不思議だな…。なんだか花やしきの帰りに父さんにおんぶされた時に似てるんだ…」
「「そ、そう…?」」
「うん。――昨日ね、父さんの夢を見たんだ…。よく覚えてないけど、とっても怖い夢だった気がする…。父さんが危ない目に遭ってて助けなきゃって思っても、僕じゃどうにもできなくて、すごく辛かった…。でも、朝起きたら、父さんは元気に笑ってて…。本当に夢でよかったよ…。へへっ、きっと熱があったから、そんなおっかない夢見たんだろうけどね」
「「……そうね…」」
誠一郎、悪い魔法使いの殺気を感じ取ったのを覚えてないみたいだな…。
子供達にも俺とかえでさんがアモスの精霊術で入れ替わったこと、話しておいた方がいいんだろうか…?
「「――なぁ、誠一郎。実は俺…、母さんじゃなくてだな――…」」
「――すぅすぅ…」
……誠一郎、寝ちゃったのか…。きっと風邪薬のせいだな…。
フフ、随分重くなって…。子供って成長するのが早いよな…。
――だが、まだこの子達を危険な戦いに巻き込みたくない…。できるなら普通の家庭の子と同じ普通の子供として育っていってほしいものだ…。だが、帝都に巣食う魔が魔を呼び続ける限り、無理なんだろうな…。
せめて子供の時ぐらいは、普通の子と同じように親との思い出をたくさん作ってやりたいものだ…。
「「――母さんも連れて、また花やしきに行こうな…」」
そう誠一郎につぶやき、信号が青になるのを待つ。
昨日、車の中で見た景色と今見ている景色がとても新鮮に見える…。イチョウの色づきも行き交う人々の秋らしい服装もこんなに情緒あるものだったんだ…。
そんなことすら、昨日までの俺は気にかけなかった。いや、気にかける余裕なんてなかったんだ…。――これも、あやめさん達家族のお陰だな…。
「――わぁ、母さん上手〜!ね〜ね〜、僕にもやらせて〜!」
「「いいわよ。じゃあ、母さんはつぶしたおじゃがと味付けしたお肉を混ぜるから、それを丸めてくれる?」」
「丸めるってこう?」
「「そうそう、上手よ。熱いから気をつけてね?」」
「はーい!」
帝劇の食堂でコロッケ作りに奮闘する俺と誠一郎。あやめさん直伝のレシピを頼りに一つ一つ心を込めて作ってみる。
「わぁ、揚げるのも上手だね〜!昨日まではお粥に卵落とすのだってやっとだったのに、いつの間に上達したのさ?」
「「〜〜いぃっ!?や、やぁねぇ。私が本気を出せばこんなものよ…!ほほほほ…っ!」」
〜〜はは…、普段のかえでさんは、あやめさんと違って料理が下手だからな…。誠一郎が驚くのも無理ないだろう…。
「――わぁ〜、良い匂〜い♪」
「――あっ、コロッケだ〜!」
そこへ、なでしことひまわりがコロッケの香ばしい匂いにつられて、食堂に入ってきた。
「あっ、なでしことひまわりだ!おはよ〜!」
「おっはよ〜!!」
「おはようございま〜す」
「「おはよう、二人とも。今、お誕生日会に出すコロッケを揚げてるんだけど、よかったら味見してくれる?」」
「はーい!」
「わ〜い!今日はお昼もお夕飯もコロッケだ〜♪」
「「〜〜あっ、コラ!ちゃんとフォークで食べなさい!」」
「〜〜ちぇ〜…」
「ひまわり、お皿とナプキン並べましょう」
「僕も手伝うー!」
「「ふふっ、食べる前にちゃんと手洗うのよー?」」
「はーい!」「はーい!」「はーい!」
――懐かしいな…。こういう仕事、よく花組隊長時代にやってたっけ…。
今の支配人業務と比べたら雑務に過ぎないんだろうが、たまにはこういう仕事も初心に返れていいもんだよな…。
「もぐもぐもぐ…」「もぐもぐもぐ…」「もぐもぐもぐ…」
「「ドキドキドキ…。〜〜ど、どうかな…?」」
「――美味し〜いっ!!」
「うんっ!すっごく美味しいね!」
「お母さんが作ったのと同じくらい美味しいです!」
「「ホッ、よかったぁ…」」
一応、俺も味見しておくか…。
――うん、見た目もこんがりキツネ色だし、中身もじゃがいもの食感を殺すことなくホクホクサクサクだ!初めて作った割には上出来だな♪
「でも、不思議〜。かえでおばちゃんが作ったものなのにね〜?」
「きっと、お父さんに食べてもらいたいって愛情いっぱい込めたからよ」
「えへへっ、父さんと母さんはラブラブだもんね〜!」
「きゃ〜!ラブラブだって〜♪エッチぃの〜!!」
「「コラッ!食事中はちゃんと座って食べなさい!!椅子が倒れるわよ…!?」」
「平気だも〜ん♪」
――グラ…ッ!……ガターンッ!!
「「〜〜うわああっ!!ひまわり、大丈夫か!?」」
「〜〜うわああ〜ん…!!テーブルに頭ぶつけた〜っ!!」
「〜〜きゃ〜!ひまわりが倒れた弾みでお水がこぼれちゃった〜!!」
「「〜〜ハァ…、勘弁してくれよ…」」
「〜〜あっつ〜い!舌やけどしちゃったよぉ〜!!」
「「〜〜うわっ!誠一郎まで…!?ちょ、ちょっと待ってくれ〜!!」」
「〜〜うわあああ〜ん…!!痛いよぉ〜!!」
「〜〜お気に入りのお洋服がぁ…。うわああ〜ん…!!」
〜〜1人で子供3人の面倒見るのって大変なんだな…。かえでさんの苦労もわかるよ…。子育ても支配人業務と同じくらい大変な仕事なんだな…。
「――ぐすん…。ひどい目に遭ったよぉ…」
「「…これに懲りたら、もう食事中にふざけちゃ駄目よ?」」
「〜〜はぁい…」「〜〜はぁい…」「〜〜はぁい…」
〜〜ハァ…、3人とも何とか泣き止んで、よかった…。
「――ね〜ね〜、ひまわり達もお手伝いしていい〜?」
「もちろん!なでしこもひまわりも一緒にご馳走作ろうよ!」
「じゃあ私、お母さんから教わったハンバーグを作るわね!」
「わ〜い!ハンバーグ、ハンバーグ〜!!」「わ〜い!ハンバーグ、ハンバーグ〜!!」
――だが、この子達の天使のような笑顔を見るだけで、疲れなんて一気に吹き飛んでしまう…!苦労もあるが、それだけ報酬も大きい、やり甲斐のある仕事なんだよな!
「「――よ〜し、もう一息だ!皆でお誕生日会の準備、頑張るわよ〜!」」
「お〜っ!」「お〜っ!」「お〜っ!」
忙しくなる昼公演まであと少し…!それまでにかえでさんが喜ぶような料理を子供達と作ってみせるぞ!
「仲直りの魔法〜大神編〜」その6へ
作戦指令室へ