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バレンタイン記念・特別短編小説
「バレンタイン・デーの一日」新次郎×ラチェット編〜その1



明日は2月14日。

女が一年で最も男に尽くしたくなる日。そして、大好きな彼を独占したくなる日…。

「――お疲れ〜、新次郎!」

「お疲れ、ジェミニ!サジータさん達もお疲れ様です!」

「おう、お疲れ〜!明日はいよいよ本番だし、気合い入れていかないとな」

「そうですね!明日はバレンタインデー一夜限りの特別公演ですしね!」


明日は聖バレンタイン・デー。アメリカはバレンタインの文化が早く伝わったこともあり、毎年力を入れている。この紐育も街中バレンタイン一色に賑わい、夫婦もカップルも片思い中のニューヨーカーも皆浮かれ、明日のバレンタインデーを心待ちにしている。

もちろん、私・ラチェット・アルタイルも例外ではない。

「明日の成功を祈って、チャイナタウンに皆で夕飯食べに行きませんか?」

「ごっはんだ、ごっはん〜!!リカ、行く〜っ!!なぁ、ダイアナも行くだろ!?」

「え?〜〜えっと、その…私は…」

「何か用事でもあるんですか?」

「あの…、はい…。大河さんからのお誘いをお断りするなんて、本当に心苦しいのですが…」

「…僕も今日は疲れた。帰って休むことにする」

「えぇ〜っ!?昴さんまで…」

「二人とも付き合い悪いよ〜!――ね〜、サジータさん?」

「え?〜〜私も今夜はその…――そう!ケンタウルスの臨時集会があってさ…!」

「〜〜え〜っ!?サジータもなのか〜!?」

「そんなこと言って、ジェミニもリカも準備があるんじゃないのか?」

「…なんといっても、明日はバレンタインだからな」

「準備…?――あっ、そうか…!〜〜ごめんね、新次郎!ボクも今日はパスするよ!」

「えぇっ!?〜〜そんなぁ…」

「いしししっ!安心しろ!北京ダックも天津飯もリカとしんじろーがぜ〜んぶ食ってやるからなっ!!」

「うふふ…、抜け駆けは許しませんよ〜、リカ」

「〜〜にぎゃああ〜っ!!怖いぞ、ダイアナ〜っ!!」

「――というわけで新次郎、ボク達、もう行くから…!」

「〜〜うわ〜ん、チャーハン、ラーメン〜…!」

「あ…、うん…。お疲れ様…」


大河君は、我先にと急いで帰っていくジェミニ達星組を見送ると、しゅんと肩を落とした。

「〜〜ハァ…、僕、皆を怒らせるようなこと…、したかな…?」

「――ハ〜イ、タイガー♪」


そこへ、ドリンク・バーと売店の後片づけを終えたプラムと杏里が近づいてきた。

「プラムさん、杏里君…!」

「あら〜ん、浮かない顔してどうしたのん?せっかくのプリティーフェイスが台無しよ〜ん?」

「〜〜わひゃあ!?や、やめて下さいって、プラムさぁん…!」

「フンだ!大河さんなんか放っといて、さっさと帰ろ、プラム!」

「うふふん、はいはい、これからタイガーの為にとびっきりのチョコを作るんですものね〜ん♪」

「え?」

「〜〜ちょ…っ、プラム…!?」

「あ〜、ゴメンゴメン!これは明日までヒ・ミ・ツだったわね〜ん♪」

「〜〜かっ、勘違いしないでよね!?義理チョコだから…っ!!絶対絶対、本命チョコなんかじゃないんだからっ!!」

「は、はぁ…?」

「うふふん、素直じゃないわね〜。――それじゃあね、タイガー。暗くならないうちに帰るのよ〜ん?」

「ふ〜んだ!大河さんなんか『川底ナンシー』にさらわれちゃえ〜!」

「〜〜か…、かわぞこなんしぃ…?」

「――ご説明致しましょう」

「〜〜わひゃあ!?お、王先生…!?」

「『川底ナンシー』とは、毎年バレンタインデーにハドソン川付近に女性の幽霊が現れるという都市伝説です。10年以上前、ナンシー・キャデラックというアメリカ人女性の遺体が日本の隅田川に捨てられるという事件が発生致しました。その被害者こそ、『川底ナンシー』と呼ばれる所以なのでございます…」

「に、日本でそんな事件が…?」

「はい…。『川底ナンシー』こと、ナンシーさんは菓子職人の日本人男性と結婚し、日本の彼の実家で暮らすことになったそうです。ですが、彼の両親や近所の者は異国の者である彼女を疎んじておりました…。当時、日本は日露戦争をしておりました故、金髪碧眼というロシア人によく似た風貌のナンシーさんは忌み嫌われ、ひどい嫌がらせを受けておったそうです…。夫はアメリカに移り住もうと必死に働いたそうですが、彼の思いとは裏腹に嫌がらせはだんだんエスカレートし、遂にナンシーさんは頭を殴打され、殺されてしまったのです…。ナンシーさんの遺体は石をくくりつけられ、見つからぬようにと隅田川の底に沈められたそうです…。事件が発覚し、殺害に関与した者は全員逮捕されたそうですが、ナンシーさんの恨みと無念は晴らされぬまま…。なんでも、ナンシーさんが殺された日は2月14日…。その事件以来、毎年バレンタインデーになると、ナンシーさんの幽霊が隅田川からハドソン川まで渡ってきて、故郷である紐育の幸せそうなカップルを見つけては嫉妬し、殺害や誘拐を繰り返しているらしいのです。実際、何年か前にハドソン川付近で謎のカップル失踪事件がありまして…――」

「〜〜もう結構です〜!!そんな話聞いたら、帰れなくなっちゃうじゃないですか〜!!」

「ふぉふぉふぉ…、まぁ、あくまで都市伝説ですから。ですが、注意するに越したことはありませんぞ?――ラチェット様とお帰りになる際は、くれぐれもご注意を…」

「〜〜ひいいっ!!」


王先生が行ってしまい、シアターロビーは急にしーんとなった。一人残された大河君は、すっかり怯えてしまってるみたい…。

「〜〜だ、大丈夫だ…!ぼ、僕は一郎叔父と同じニッポンのサムライなんだ!幽霊の一人や二人くらい――!!」

「――ナンシーを殺した犯人と同じ日本人だと、余計に狙われるかもなぁ〜♪」

「〜〜うわあああん〜っ!!ラチェットさぁぁ〜ん…!!」


耳元で囁いてきたのが加山君だとも気づかず、大河君はお化け屋敷で騒ぐ子供のように泣き叫びながら走っていった。

「ありゃ…。ハハハ…、新次郎の奴、相当ビビってんな〜。ま、いいか。――それより、かすみっちからチョコは届いたかな〜♪にひひひ…!」

その頃、私は秘書室で明日の大河君とのバレンタインデートのプランを練っていた。ふふっ、普段のデートは大河君が考えてくれるから、こういうのって何だか新鮮だわ♪

「――う〜ん、バレンタイン・ディナーねぇ…」

「何だい、ラチェット?ハハ〜ン♪さては、明日のバレンタインは僕とどう過ごそうか悩んでるんだろう?」

「サニー、これ、持っててくれる?」

「〜〜うおっ!?ど、どんだけ雑誌を買い込んできたんだい…!?」


今は、書店で買った雑誌に載っているバレンタイン関連の記事やオススメデートスポットをチェックしているところ。やっぱり、知識を得るのには本が一番よね!

「う〜ん、ディゴバのチョコもお洒落だけど、やっぱり手作りの方が愛が込もってていいかしら?」

「ラチェット〜、僕にはチョコくれないのかな〜?」

「あら、そんなに欲しいならあげましょうか?義理チョコでいいならね♪」

「〜〜グサッ!!ハァ…、君といい星組といい、部下に全く慕われない僕って…」


あら、サニーったら傷心したまま帰ってしまったみたいね。まぁ、いいわ。彼がいない方が静かで、良いプランを練られそうだし♪〜〜う〜ん…、でも私、料理苦手なのよね…。

――そういえば、同じ悩みを抱える彼女はどうしてるかしら…?えっと…、確か日本と紐育の時差って14時間よね。今、紐育は13日の夜中だから、日本はもう14日の朝ってことね。キャメラトロンで連絡してみましょっと…!

『――ラチェット、どうしたの?』

「Hi、かえで、バレンタインの調子はいかがです?」

『〜〜わざわざ嫌味言う為にかけてきたわけかしら?』

「ふふっ、そんなことだろうと思ってましたわ。今年のチョコは手作りに挑戦するおつもりかしら?」

『そういうラチェットこそ、今年こそは手作りなんでしょ?』

「……」

『……』

「〜〜同志ですわね…!!」

『えぇ、同志ね、私達!!』


あぁ、よかった…!私に負けず劣らず料理が苦手なかえでがいて、ちょっとホッとしたわ…!!

「それで、かえでは何かオプションはお付けになるのかしら?私は大河君と高級ホテルで一流ディナーをしようと思いますの」

『フッ、金持ちはいいわね〜』

「あら、あなただって東洋一の劇場の副支配人代理ですもの。そこそこ稼いではいらっしゃるのでしょう?」

『〜〜あんた、やっぱり嫌み言う為にかけてきたんでしょう?』

「ふふっ、sorry、そう聞こえたのなら謝りますわ。手作りじゃないということは、高級チョコでも買うおつもりかしら?」

『えぇ、銀座にある『タカナシ』って洋菓子店のチョコを買おうと思って。ふふっ、オプションを付けるとしたら、私自身かしら♪』

「〜〜ぷ…っ」

『〜〜んな…っ!?笑ったわねぇっ!?言っておくけど、私は大神君と結婚して子供もいるんですからね!?未婚のあんたよりは格が上なのよ!?』

「ふふっ、はいはい。でも、大神隊長はやっぱり、あやめの手作りチョコの方がお喜びになるんじゃないかしら?男の子は女の手料理に弱いですもの」

『〜〜そういうあんただって、料理下手なくせに』

「〜〜だから何かしら?私は誰かさんと違って、逃げずにちゃんと手作りチョコをプレゼントしますもの」

『ふふっ、毒入りのチョコなんて食べさせたら、双葉お義姉様が黙っちゃいないわよ〜?』

「〜〜毒なんて入れませんわよっ!!」

『ふふっ、あんたが作る場合、入れなくても同じ味がするのよ』

「〜〜あなただって、他人のこと言えないでしょう!?」

「『――う〜ら〜め〜し〜やぁ〜…』」


その時、突然、キネマトロンにノイズが走った。不気味な女性の声のような音が聞こえてきたのである。

『な、何…?今の…』

「さぁ?浮幽霊でも通ったんじゃないかしら?キネマトロンとキャメラトロンは蒸気で霊力を探知する機械ですもの。幽霊の声が入っても、別に不思議ではないと思いますが?」

『〜〜そ、そういうものなのかしら…?』

「――あっ、大河君、いいところに来たわ〜!」


大河君が秘書室に来てくれたので、私はかえでとの通信を切った。

「ラチェットさん…!はぁ、よかった…!まだいらっしゃったんですね」

「えぇ、明日の特別公演の最終チェックを少しね。ふふっ、それから、公演後はあなたと何して過ごそうかなって考えてたら、遅くなっちゃって…。ふふっ、だって、バレンタインはカップル達の為の行事ですものね?」

「ラチェットさん…」


ふふっ、照れてる、照れてる!大河君って本当、可愛いんだから♪

「でも、早く帰られた方がいいですよ?〜〜ほら、バレンタインの夜は…」

「あぁ、『川底ナンシー』のこと?ふふっ、大河君ったら、あんな都市伝説信じてるの?」

「〜〜だって、実際に行方不明になったカップルだっているんでしょう!?」

「それはきっと、ナンシーの都市伝説を面白がって犯行に及んだ奴の仕業よ。ナンシーがカップルを殺すというのも、どうせ誰かが付け加えたデマでしょうし…。それに、ナンシーという女性が本当にいたのかすらもわからないじゃない?『血まみれメアリー』と同じ、ただの都市伝説よ」

「〜〜け…、けど、用心に越したことはありませんよ!早く帰りましょう…!あっ、安心して下さい!道中は僕が守りますから…!!」

「ふふっ、怖いのに無理しちゃって…。大丈夫、ナンシーが出るとされてるのは、明日の夜よ。だから、今日はもう少し遅くなっても大丈夫♪」


ふふっ、せっかく二人きりになれたチャンスを逃してなるものですか!!

「ほら、大河君、もっとこっちにいらっしゃい…」

「〜〜わひゃあ!?だ、駄目ですって、ラチェットさん…!!そんなことしてると、ナンシーが――!!」


――バン…!!

すると突然、秘書室のドアが開き、女性の不気味な影が浮かび上がった。

「〜〜うわあああああ〜っ!!出たぁぁぁぁ〜っ!!」

「あ〜ん、そんなに抱きついてきて♪大河君ってば日本人の割に積極的なんだから」

「〜〜くぅぉらあああっ!!新君から離れろぉっ、メリケン女ぁっ!!」


秘書室に入ってきたのはナンシーではなく、双葉お義母様だったみたい。〜〜私的には、ナンシーの方が何倍もマシだったんだけど…。

「へ…?か、母さん…?」

「いつまでも帰ってこないから、母は心配していたのだぞ?〜〜結婚前の男女がこんな個室で抱き合っているとは、何て破廉恥な…っ!!くっそぉっ!子供の新君に変なこと教え込みやがってぇっ!!」

「〜〜ぼ、僕はもう子供じゃありませんってば〜!」

「うふふっ、いいや、新君はいつまでも私の可愛い子供だ〜♪――ここからは親子水入らずの時間だ!大河家の人間でない者は早急に立ち去れい!!」


〜〜くっ、またお義母様に邪魔されたわ…。しかも、ここは私の仕事場なのに…。

「…あの、お義母様――」

「〜〜だから、お義母様と呼ぶなっ!!」

「…失礼ですが、日本へはいつお戻りに?」

「う〜む、帰国の予定はしばらくないな〜。――新君が年増の金髪女におもちゃにされぬか心配なものでなぁ〜♪ハッハッハ!」

「〜〜もう、母さん!ラチェットさんはそんな人じゃありませんって…!」

「いいや、母の目はごまかせんぞ!この泥棒猫め…!!悔しかったら、明日、新君とラブラブバレンタインを過ごしてみるがいい!!まぁ、この母がいる限り無理な話だがなぁ!ふははは〜!!」


く…っ、大河君とのラブラブバレンタインを過ごす為にも、この難関を突破しないと…!〜〜ハァ…、新たな課題が増えてしまったわ…。

けど、負けないわ!料理下手という同じ悩みを抱えるかえでも頑張ってるみたいだし、私も頑張らないとね…!

ふふっ、私とのバレンタイン、大河君、喜んでくれるかしら…?



――翌朝、バレンタイン当日。

「〜〜ラ、ラチェット…!?どうしたんだ…!?」

「し、心配しないで…。徹夜したお陰で、舞台の準備(と大河君とのデートプラン)は完璧だから…!」

「おっ、さすがラチェットだな!助かるよ…!」

「〜〜でも、目が充血しているうえに、くまができていますよ…?」

「くまくま〜!にゃはははははっ!」

「くまがあって、くまったな〜。なんちてなんちて〜!」

「〜〜誰かジェミニとリカを黙らせて…。頭にガンガン響くわ…」

「…少し休んできたらどうだ?そんな姿を見せたら、大河が幻滅するぞ?」

「〜〜ひいいっ!!それは大変だわ…!秘書室で仮眠取るから、夕方の5時に起こして頂戴!〜〜いいわね!?時間、絶っ対に間違えないでねっ!?」


そのまま私は秘書室に籠り、ソファーで爆睡した。

「〜〜5時って…、公演が始まるのは6時だぞ?」

「〜〜ラチェットさん、完全にキャラ崩壊しちゃってるよぉ…」

「――おはようございまーす!」

「あっ!しんじろーだ〜!!」


私が寝てるのをいいことに、昴以外の星組は争うように大河君にチョコレートを渡した。

「新次郎!はい、チョコレート…!!」

「礼はいらないよ。あんたと私の仲だからね」

「しんじろー、リカと一緒にチョコ食お〜!」

「あ、あの…、お口に合うかわかりませんが…」

「わぁ…!ありがとうございます…!!」

「あれ?昴さんはあげないんですか?」

「ここに用意はしてある。だが、チョコレートは高カロリーかつ栄養価の低い食べ物だ。大河のことだから無理して全部平らげてくれるだろうが、栄養面が偏らないか気がかりでね…」

「そんなこと考えてくれてたんですか?大丈夫ですよ!昴さんのその気持ちだけで僕、とっても嬉しいですから!」

「フッ、まったく君という奴は…。――仕方ない。では、くれてやろう」

「ありがとうございます!あれ…?ところで、ラチェットさんは…?」

「〜〜大変だ、しんじろ〜!ラチェット、くまさんになっちゃったんだぞ!!」

「〜〜は…?」

「徹夜で準備されていたそうで、今、仮眠を取られています」

「そうなんですか…」

「フフッ、大河。君はつくづく罪作りな男だな。夜更かしさせた責任、今日はきちんと取ってやるといい」

「え?」

「〜〜ダメ〜ッ!!公演が終わったら、新次郎はボクと過ごすの〜っ!!せっかく昨日、早く帰って準備したのに〜!!」

「何言ってんだ!?新次郎と過ごすのは、この私だ!もうケンタウルスの奴らに準備させといたんだからな!」

「わ、私だって昨日、頑張ってプランを練ったんですよ!?」

「〜〜み、皆さん、落ち着いて…!」

「フフッ、つくづく罪作りな男だな、君は」

「しんじろー、早くチョコ…――うにゃ?」

「はいは〜い、これで君達のチョコは全部だな〜?」

「し、新次郎ママ…!?」

「〜〜か、母さん、返して下さいよぉ…っ!」

「安心しろ。今日もらうチョコレートは、この母が全て管理してやるぞ!」

「えぇ〜っ!?」

「ぶ〜っ、ずるいぞ〜!!一人で全部食っちゃう気だな〜!?」

「フッ、だったらどうする?大事な息子に悪い虫がつかぬよう心配する母親の何が悪い?」

「〜〜だからって、過保護すぎるだろっ!?」

「〜〜ええ〜い、うるさ〜いっ!!文句のある奴はかかってこい!!この母を倒した者を新君の嫁として認めてやろう!!」

「へっへ〜ん!その言葉、忘れないでよねっ!?」

「戦う研修医をナメたら、あかんぜよ〜っ!!」

「〜〜うわ〜っ!?ちょっと、皆〜っ!?」

「…まったく」


〜〜人が寝ているというのに、ジェミニ達と双葉お義母様は廊下で激戦を繰り広げ始めたわ…。

その頃、売店でプチミントの新作ブロマイドを物色中の加山君は…。

「――おっ、この騒ぎはもしや双葉さんが来ているのか…?フッフッフ…、どうやら、お姉様もこの俺にチョコを渡しに来て下さったみたいだなぁ…!いやぁ、モテる男は辛いなぁ〜!ハッハッハ〜♪」

「〜〜またそんなこと言ってぇ…。せっかく帝都にいるかすみさんから本命チョコ届いたのに…。プチミントさんとのこと、バラしちゃいますよ?」

「〜〜OH!!そ、それは勘弁してくれよ、杏里君…!――あぁ〜、でも、プチミントさんもチョコくれるかな〜♪ぬふふふ…」

「〜〜全然、堪えてな〜い…」

「フフン、仕方ないわね〜ん。――ハ〜イ、ミスター・加山!私達からもチョコ、あげるわね〜ん♪」

「…一応、私からも。言っておきますけど、義理チョコですからね!?」

「フフン、わかってるわよ。本命はタイガーにあげるんですものね〜♪」

「〜〜プッ、プラム!違うってば〜!!」

「OH〜!サンキュー・ベリーマッチ、虹組の諸君!!虹組…って風組と響き、似てるよなぁ…。――かすみっち、元気にしてるかなぁ…?」

「フフン、本当に忙しい人ねん」

「くすっ、なんだかんだ言っても、やっぱり彼女さんのことが一番みたいですね!」

「みたいねん♪――暗いため息は、あなたには似合わないわよん?」

「フッ、俺だって悩む時くらいあるさ…」

「そんなに彼女に会いたいなら、会いに行けばいいじゃないの〜ん!」

「〜〜そうしたいのは山々だが、船じゃ1ヶ月はかかるしなぁ…」

「サニーサイド様のプライベート・ジェットなら、一日もかからずに日本へ行けると思いますよ?」

「ほっ、本当かい、杏里君…!?」

「は、はい…。まぁ、サニーサイド様が貸してくれたらの話ですけどね」

「OH〜!素敵な情報、ありがとう、杏里君!チュッ♪」

「きゃっ!?」


加山君は杏里の頬にキスすると、足取り軽く支配人室に向かっていった。

「あら〜ん、杏里ったらモテモテじゃないの〜ん♪」

「〜〜んも〜っ、信じらんないっ!!べ〜っだ!!」


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