バレンタイン記念・特別短編小説
「バレンタイン・デーの一日」加山×かすみ編〜その3



『――あっ、あの坊やから気配がするわ…!』

坊や…?――あっ、あの子は…!

「〜〜どうせ…僕は何にもできないさ…。だから、ひまわりからもいつも馬鹿にされて…。〜〜うっ、ひっく…」

(誠一郎君だわ…!こんな時間に何やってるのかしら…?)

『何だ、知り合いだったの?なら、話が早いわね〜!』

(〜〜えっ?あっ、ちょっと…!)

「――!かすみお姉ちゃん…?」


誠一郎君は私に気づくと、不思議そうな顔で見上げてきました。

「『君から指輪の気配がするわ…!私の指輪…、もしかして盗んだ?』」

「ゆ、指輪って…?〜〜うわああっ!?」


私に取り憑いた幽霊は誠一郎君のポケットを探ると、彼の子供用のキネマトロンを出しました。

「『そうか…!ここから指輪の気配がするんだわ…!!』」

「〜〜か、かすみお姉ちゃん、どうしたの…?何か怖いよぉ〜…」


〜〜あぁ…、ご、ごめんなさいね、誠一郎君…!泣かないで…!

「『君、私の指輪を盗んだ人と知り合いなのね…!さぁ、早くそいつに会わせて頂戴…!!』」

「〜〜そんなこと言われても、わからないってばぁ…!!」

「『〜〜う〜ん…、これは一体何なの…?どうやったら動くの?』」

「〜〜あ〜っ、壊さないでよぉ〜!ほら、ここのボタンを押して…」

「『OH〜!!ニッポンの技術って、やっぱりアッパレだわ〜!』」

「〜〜お、お姉ちゃん…?」


誠一郎君はキャラ崩壊している私に怯えてるみたいです…。

〜〜ごめんね…!?指輪を取り戻すまでの辛抱だから…。

「『――うん、間違いないわ…!この娘達から指輪の気配がする…!!』」

「え…?なでしことひまわりから…?」


そんなことはお構いなしとばかりに、幽霊は受信データに残っていたなでしこちゃんとひまわりちゃんの静止画を見て、さらにハイテンションになり、余計に誠一郎君を怯えさせました。

「『ねぇ、この娘達はどこにいるの?案内してくれるかしら?』」

「〜〜で、でも…、父さんと母さんが危ないから行っちゃダメだって…」

「『危ない…?』」

「〜〜なでしことひまわり…、悪い奴らにさらわれちゃったんだ…。僕も助けに行きたいって言ったけど、危ないからダメだって…。〜〜子供は子供らしく、守られてればいいんだってさ…」


誠一郎君…。〜〜こんなに小さい子だって大切な人の為に頑張って行動しようとしてるのに、私ときたら…。

「『ふ〜ん、それで?それくらいで君は諦めてしまうの?』」

(え…?)

「〜〜だって、しょうがないじゃないか…!僕、まだ5歳だし、戦い方だって身についてないし…」

「『だからって、大切なお友達を助けようとしないなんて、男としてふぬけてるわよ?』」

「〜〜お友達じゃないもん…。異母姉弟だもん…」

「『屁理屈言うんじゃないのっ!』」

「〜〜いてっ!」


私に取り憑いている幽霊は誠一郎君にゲンコツを食らわせました。

(〜〜ちょっと!小さい子に乱暴なことしちゃ駄目じゃないの…)

『かすみんはちょっと黙ってて!』


〜〜か、かすみんって…。しかも、いつの間に私の名前を…?

「『もし、2人が死んでしまったら、君は一生後悔するんじゃない?』」

「〜〜それは…」

「『〜〜死んだらおしまいなのよ…?報われない魂は浮幽霊となって、成仏できずにこの世をさまよい続けることになるわ…。2人がそうなってしまっても君はいいの?』」

(幽霊さん…)

「……」

「『ついてきて!お姉さんが気配を辿って、2人の元へ案内してあげるから…!』」


と、私の体を操っている幽霊さんは誠一郎君の手を握り、優しく微笑みました。

くすっ、幽霊さんったら、良い人なんですね。幽霊さんに説得されるうちに、誠一郎君もちょっと緊張が解れたのか、表情がちょっと和らいだみたいです。よかった…!私も幽霊さんの為に頑張って指輪捜索を手伝おうかしら。

私と幽霊さんは、誠一郎君と一緒に帝鉄に乗って、築地に向かうことにしました。

「『――ふ〜ん…。その娘達のこと、そんなに心配なのね…』」

「うん…。生まれた時からずっと3人一緒だったから…。今頃もう、父さんと母さん達が助け出してると思うけど…、〜〜それでも僕も、なでしことひまわりを助けに行きたくて…!」

「『いいわねぇ〜!そういう友情物語、私、だ〜い好きよ♪』」

「ぷっ、あははは…!」

「『何で笑うのよ〜?』」

「あはは…、ご、ごめんなさい…!今日のかすみお姉ちゃん、加山のお兄ちゃんに似てるなって」

「『加山のお兄ちゃん…?』」


そうだわ…!この幽霊さんのテンションと明るさ、誰かと思ったら、加山さんと似てるんですね。だから、幽霊さんといてもそんなに苦には…、むしろ心地良かったんですね…!

『あー、なるほど。あんたの彼氏か〜♪』

(〜〜ちょ…っ、また勝手に人の心を覗いたわね…!?)

『ふっふ〜ん♪無防備にしておくのが悪いのよ〜』

「かすみお姉ちゃん、どうしたの?」

「『ううん、何でもな〜い♪』」


〜〜ハァ…、このままだと私の記憶全部盗み見されてしまいます…。早く指輪を取り戻さなくては…!

すると、向かいに座っていたおばさんがニコニコしながら、誠一郎君に話しかけてきました。

「坊や、おとなしく座っていられて偉いわねぇ。お姉さんとお出かけ?」

「えっ?〜〜は…、はい…。つきじ…って所まで…」

「そうかい。楽しんでおいでよ」


知らない人に声をかけられ、誠一郎君は恥ずかしさで泣きそうになりながら私の裾をぎゅっと握りしめました。

そのおばさんの他にもお客さんはたくさんいて、人見知りの誠一郎君は、ちょっと緊張してるみたいです…。今はお父さんとお母さんがいないんですもの…。余計不安になるのも当たり前ですよね…。今は私が守ってあげないと…!

「――さっきの話の続きだけどね…」

「『ん?』」

「こんなこと思ったらいけないんだろうけど…、なでしことひまわりが死んじゃうのは嫌だけど、幽霊になって僕の傍にいてくれるんなら、それでもいいかなって…」

「『え…?』」

「だって、その方がずっと一緒にいられるだろ?生きてても死んでても、なでしことひまわりに変わりはないしさ…。そりゃ、できれば一緒に大人になりたいけど…。――かすみお姉ちゃんはもし、加山のお兄ちゃんが死んじゃって、幽霊になってずっと一緒にくれるようになったら、嬉しい?」


もし、加山さんが幽霊としてずっと一緒にいてくれたら…?でも、霊力がほとんどない私には、きっとその姿を見ることはできないでしょう…。けど、今の遠距離恋愛の状態よりいいのでしょうか…?姿は見えなくても、傍にいるって感じることができれば…。

私がそんなことを思っていると、中にいる幽霊さんが動揺し始めました。

「『〜〜そんなこと…、ありえないわ…。幽霊を見て怖がらない人なんていないに決まってるもの…』」

「かすみお姉ちゃん…?」


先程までの明るさはどこへ行ってしまったのか、幽霊さんは声を震わせ、静かに感情をぶつけました。

悲しみ、辛さ、後悔、もどかしさ、不安…。彼女の心にある負の感情が私の心に痛いほど突き刺さってきます…。同時に幽霊さんの記憶もかすかですが、伝わってきました。

金髪で青い瞳をしたアメリカ人の彼女・ナンシーは、日本人の菓子職人と結婚して、日本の彼の実家で幸せな毎日を送っていました。けれども、不慮の事故で隅田川で溺死してしまった彼女は、その時、指輪を失くしてしまいました…。それが心残りとなって、幽霊となって、この世に留まり続けているらしいのです…。

旦那さんに会いに行きたいけど、彼は幽霊やお化けが人一倍苦手だということ…。けど、誠一郎君に言われて、幽霊のナンシーさんは決意したみたいです、この指輪を手に入れたら、成仏する前に旦那さんに会いにいこうと…。

『……人の心を覗くなんて、悪趣味ね〜』

(ご、ごめんなさい…!でも、あなたもさっき、同じことしたじゃない)

『くすっ、それもそうね。それじゃあ、これでおあいこね』

(えぇ、旦那さんに会えるといいわね…)

『あなたも、彼氏と仲直りできるといいわね…』


亡くなってからも10年間、ひたすら旦那様を想い続けた幽霊の恋…。形は違うけど、私と加山さんのより、もっと過酷な遠距離恋愛ですよね…。そう考えると、私達の遠距離恋愛なんて、可愛いものです…。

「『……もうすぐ乗り換えよ。降りましょう…』」

「あ…、うん…!」


幽霊のナンシーさんだって、好きな人のことを考えて、こんなに頑張っているのですから、私も加山さんの為に頑張らないと…!

そうこうしているうちに、築地の倉庫群に到着したみたいです。

「『――Wow!ここみたいねぇ〜!!』」

「〜〜えぇ〜っ!?」


私も誠一郎君と同様に驚愕しました…!だって、なでしこちゃんとひまわりちゃんがいるという倉庫が火の海に包まれていたのですから…!!

「〜〜かっ、火事…!?大変だ…!!父さん達、皆、中にいるんだよね…っ!?」

「『――指輪の気配…!やっぱり、あの娘達が持ってたのね…!!』」

(〜〜き、気持ちはわかるけど…、それより今は…!)

「〜〜今は指輪のことなんてどうだっていいだろう!?それより、早く火を消さないと――!!」

(そ、そうよね…!誠一郎君の言う通りだわ…!!)

「『〜〜どうでもよくないわよ…っ!!』」

(〜〜えぇっ!?)

「え…っ?うわあああああっ!?」


ナンシーさんは私の体を使って誠一郎君を抱えると、人間離れした跳躍力で倉庫の2階の窓を突き破って侵入しました。

〜〜こうなると、もう幽霊の力って何でもありなんですね…!

「〜〜な…っ、なななな…!?」

「『〜〜指輪が灰にでもなったら大変だわ…!早く消火しないと…!!』」


幸い、2階はまだ火の手は迫っていないようです。でも、ぐずぐずしていると、そのうちあっという間に燃え広がってしまうでしょう…!

ナンシーさんと私は切られているスプリンクラーのスイッチを入れようと手を伸ばしましたが、通路が狭くて、思うように届きません…。

「『〜〜んもぉ〜、肉体があるというのも不便なものね…』」

「え?」

「『子供の君なら押せるはずよ!早く入れてきてっ!!』」

「えぇっ!?ぼ、僕が…!?〜〜うわあああっ!!」


私…というより、ナンシーさんに背中を押され、誠一郎君は通路の奥まで転がっていってしまいました…。

(〜〜ちょ…、ちょっと…!怪我でもしたらどうするの…!?)

『他に方法がある?あなたがもう少しダイエットしていてくれたら、話は早かったんだけどね〜』

(〜〜そ、そんなに太ってないでしょう…っ!?)

「えっと…、ど、どのスイッチを押せばいいの…!?〜〜わああっ!!」


〜〜まずいわ…!2階にも火と煙が回ってきたみたいです…!

「〜〜けほっ、ごほっ…、む、無理だよぉ…!前が全然見えない…!!」

「『勇気を出して!このままだと君の大切な人達が皆、死んじゃうよ!?』」

「〜〜そ、それは…」

「『まぁ、私は幽霊仲間ができて嬉しいけどね〜♪』」

「〜〜なっ、何言ってるんだよぉ…!?〜〜けほっ、ごほっ…!」

(〜〜だから、怖いことを笑いながら言わないでってば…っ!!)

『あら、幽霊生活も結構悪くないわよ?成長止まるから、若いままでいられるし♪』

(〜〜そ、そういう問題じゃないと思うけど…)


けど、確かにナンシーさんの言う通りかもしれません…。誠一郎君、頑張って!今は君だけが頼りよ…!!

「〜〜僕は父さんの息子なんだ…!――勇気を出せばできるんだぁぁっ!!」

誠一郎君が燃え盛る火の中を突き進み、手探り状態でスイッチを入れると、スプリンクラーが作動する音が1階から聞こえてきました。

「や、やった…!」

「『――ハッ、指輪…!!』」

「〜〜えっ!?ちょ…っ、待って…!置いていかないでよぉ〜…!!」

(〜〜ま、待って…!誠一郎君を助けてやって…!!)

『もう火は消えたんだし、あの坊やなら大丈夫よ!』


〜〜ナンシーさんったら、指輪のことで頭がいっぱいみたいね…。

『悪かったわね〜。自己チュー女で』

(〜〜き、聞こえてました…?)

『フフン、バッチリ♪でも、いいも〜ん。自分の気持ちに素直に行動すれば、相手に伝わりやすいでしょ?下手に気持ちを押し殺して誤解されるより、よっぽどマシだと思うけど?』

(自分の気持ちに素直に…)

『そ!これはあなたに言ってるのよ?相手に気を遣う割には、変に気持ちを捻じ曲げて彼氏と喧嘩しちゃったり…。それもこれも無理して自分の気持ちを抑えようとしているからでしょ?言いたいことははっきり言う!やりたいことはやればいい!かすみんみたいなタイプは少しくらいワガママになっても誰にも責められはしないって!幸せは待ってるだけじゃ掴めない。自分の力で手に入れるものでしょ?』


私はそれ以上何も言えませんでした…。悔しいけど、ナンシーさんの言う通りだと思いましたから…。

『さぁ、早く指輪を取り返しに行きましょ!』

(〜〜なでしこちゃんとひまわりちゃんに危害を加えないでね…!?)

『わかってるって!子供を甚振るほど、私は極悪幽霊じゃないから♪』


くすっ、もうナンシーさんったら…。

私はナンシーさんに憑依されたまま1階に降りると、スプリンクラーの水で発生した水蒸気と煙に紛れながら、皆さんの前に姿を見せました。

「かすみさん…?」

「〜〜違う…!その人、かすみお姉ちゃんじゃない…!!」

「え…っ!?」


霊力の高いアイリスちゃんは、ナンシーさんの存在に気づいているみたいです…。幽霊のナンシーさんに操られた私は、なでしこちゃんとひまわりちゃんの元へ向かうと、2人の背丈に合わせて屈み、にっこり微笑んだ。

「『――ねぇ、指輪を返してもらえるかな?』」

「え…?」

「〜〜ひ、ひまわり…!」

「う、うん…!――指輪ってこれのこと…?」


ひまわりちゃんが差し出したガラス玉の指輪を受け取って、ナンシーさんの心がとても穏やかに、温かくなりました。

「『そう、これよ…!やっと戻ってきたわ…』」

ふふっ、ナンシーさん、本当に嬉しそうです。よかった…!

『これもかすみんのお陰よ。どうもありがとう』

(いいえ。旦那様と会えるといいわね)

『えぇ。あなたも彼氏と仲直りできますように…!――ありがとう…』


そう言い残して、ナンシーさんは私の体から出ていきました。同時に私は意識が混濁して、その場に倒れてしまいました。

「〜〜い、一体なんだったの、兄貴…?」

「〜〜わ、わからないわ…。けど、邪魔されたことは確かなようね…!」


誘拐犯2人組は、私を人質に取ると、ナイフを首に突きつけました。

「〜〜しまった…!」

「〜〜かすみさん…!!」

「動かないでっ!この女がどうなってもいいの…!?」

「〜〜卑怯な…っ」

「さぁ、早く逃げるわよ…!」

「OKよ!兄貴!!」


誘拐犯2人組は私を人質に取ったまま、火が消えた鉄材の上を乗り越えて、倉庫の外に逃げ出しました。

「させるかよ…!――行くぞ、皆!!」

「おーっ!」


誘拐犯2人組は急いで港に向かうと、用意してあったモーターボートに私を連れたまま飛び乗りました。おそらく、このまま国外にでも逃亡する気なのでしょう。

「早く出しなさい…っ!」

「了解よ、兄貴!」

「――お待ちなさい…っ!!」


そこへ、花組の皆さんも追ってきました。

「かすみさんを放しなさい…!!」

「スト〜ップ!うふふん、この女の喉が掻っ切られてもいいのかしら?」


私が人質にされている為、花組さんも思うように手出しできないみたいです…。〜〜ごめんなさい、皆さん…。

「〜〜く…っ、最低なオカマですわね…!」

「男なら正々堂々勝負するといいデ〜ス!!」

「残念でした〜!私達はもう男じゃないもの〜」

「悔しかったら泳いできなさいよね〜!きょほほほほ〜!!」

「〜〜上等じゃねぇかぁっ!!」


犯人達のモーターボートを追いかけようと海に飛び込もうとしたカンナさんを、さくらさんとマリアさんが慌てて止めました。

「〜〜駄目ですよ、カンナさん!心臓麻痺起こしちゃいますって…!!」

「それに、エンジン付きのボートに追いつくなんて、いくらあなたでも無理だわ…」

「〜〜じゃあ、どうすんだよ!?このままかすみを見捨てろって言うのか!?」


意識はかすかにあるけど、憑依されていた影響からか、体に力が入らなくて抵抗できません…。私、このまま犯人達に殺されてしまうのでしょうか…?それとも、外国で売り飛ばされてしまうのでしょうか…?

〜〜仕方ないですよね…。これはきっと、加山さんを傷つけてしまった罰…。ごめんなさい、加山さん…。せめてもう一度会って、ちゃんと謝りたかった――。

「――かすみっち〜…!!」

「え…っ?」


――こ、この声は…!!

重いまぶたをゆっくり開けてみると、向こうの空から星条旗のついたプライベート・ジェット機が飛んでくるのが見えました…!

「〜〜な、何よ、あれ〜っ!?」

「〜〜きゃ〜ん!!ボートが揺れるわ〜っ!!」


ジェット機の風でボートが大きく揺れたので、慌てた犯人達は私を羽交い絞めにするのと操縦をやめ、海に振り落とされないように必死にボートにしがみつきました。

「――目標地点に到着しました!」

「ミスター加山、今よ!」

「サンキュー、プラム君、杏里君!――とうっ!!」


加山さんはハングライダーを装着してジェット機から飛び降りると、私達が乗っているモーターボートに着陸しました。

「加山さん…!」

「遅れてごめんな!俺が来たからにはもう大丈夫だぜ!!」


加山さんはアメコミのヒーローみたく親指を立てて、白い歯を輝かせると、私を抱きしめて、ハングライダーで再び夜空に飛び立ちました。

「〜〜な、何だったの…?」

「でも、素敵な殿方でしたね〜、兄貴!」

「――待ちやがれぇぇっ!!」

「〜〜ゲッ!?」「〜〜ゲッ!?」


加山さんに気を取られていた犯人達は、振り向いて青ざめました。カンナさんが極寒の海を泳ぎながら、猛追してきたのです…!

「〜〜2月の海を泳ぐとは…、化け物ですわ…」

「きゃははは!カンナ、頑張れ〜!!」

「〜〜ま、まずいわ、兄貴…!!」

「〜〜早く出すのよ〜っ!!」

「させへんで〜!――『ぶっとびくん3号』〜っ!!」


紅蘭さんの発明したロケットランチャーの弾がモーターボートに直撃し、ボートは爆発しました。

「ぎゃあああ〜っ!!」「ぎゃあああ〜っ!!」

「いやぁ〜、人質がいないと思い切りぶっ放せますわぁ〜」

「わぁ〜!さっすが紅蘭〜!」

「〜〜あれ…、死んでないわよね…?」


すると、爆発の衝撃でふんどし一枚で極寒の海に投げ出された犯人2人組が、ぎゃあぎゃあ喚きながら水中から浮かんできました。

「〜〜ひ〜っ!!づめだいですわ〜ん、兄貴〜!!」

「〜〜助けて〜ん!!」

「あ、浮いてきた」

「チッ、運の良い奴らやな〜」

「…本当にね」

「〜〜マリアさんも紅蘭も怖いデ〜ス…!!」


その隙に泳いで追いついたカンナさんが2人を捕まえました。

「おっしゃあ!もう逃げられねぇぞ〜!!」

「〜〜し、しまったわ…!!」

「――スネグーラチカ!!」


とどめとばかりに、マリアさんが氷の銃弾で、犯人2人組とカンナさんを東京湾ごと凍らせました。

「フッ、念には念をね」

「〜〜あ、あたいもいるのに…ひどい…」


花組さんと加山さんの活躍により、犯人2人組は無事に警察に逮捕されました。


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