バレンタイン記念・特別短編小説
「バレンタイン・デーの一日」〜なでしこ&ひまわり誠一郎編〜その2



「――きええええいっ!!」

「――チェストォォっ!!」


すみれお姉ちゃんとカンナお姉ちゃんが長刀と空手で手合わせしているみたいだね。

「うわぁ〜、格好良い〜!!」

「おっ、なでしことひまわりじゃねぇか!遊びに来てくれたのか?」

「うんっ!」

「近くに来たら危ないですわよ?今は真剣勝負の真っ最中なのですから」

「ごめんなさい、すみれお姉ちゃん。ちょっと聞きたいことがあって…」

「何だ?おっかねぇすみれおばちゃんなんか放っといて、優しいカンナ姉ちゃんに何でも言ってみろ!」

「〜〜今、何ておっしゃいまして…?」

「あのね、いらない物って何かある〜?」

「それを売って、お父さんに120銭のネクタイを買ってあげようと思って」

「〜〜ネクタイで120銭もするのかよ…っ!?」

「フフン、ブランド物ならそれくらいしますわよ。まぁ、安物しかお召しになったことのないカンナさんがおわかりにならないのも当然でしょうけれど」

「〜〜チッ、この嫌み女…!」

「おっほほほほ…!そんな手間をかけずとも、120銭くらいの物など、私が一括で払って差し上げますわ」

「本当…!?」

「でも、私達のお金じゃないと意味ないわ…。私達からお父さんにあげるプレゼントですもの…」

「〜〜そうだよね…。ひまわりとなでしこの心が込もってないことになっちゃうもん…」

「か〜っ、良い娘達を持てて、隊長は幸せ者だねぇ〜!!」

「フフ、そうですわね。――わかりましたわ。手合わせが終わったら、私の高価なアクセサリーを寄付致します。それを売れば、120銭くらいなどすぐに集まりますわ…!」

「本当!?」

「あたいも沖縄の郷土品をやるよ!ここらへんじゃ珍しいから、結構高く売れると思うぜ?」

「わぁ、ありがとうございます、すみれお姉ちゃん、カンナお姉ちゃん!」

「手合わせ終わったら、教えてね〜!」


最後に、なでしことひまわりは、舞台でお稽古中のアイリスお姉ちゃんとレニお姉ちゃんを訪ねた。

「――いらない物かぁ…。うん、いいよ〜!汚れちゃったぬいぐるみとか読み終わった絵本とかあるから、それあげるね〜!」

「わ〜い、ありがとう、アイリスお姉ちゃん!」

「いいんですか…?アイリスお姉ちゃんの大切にしてる物なんじゃ…?」

「いいの、いいの〜!アイリス、なでしことひまわりよりお姉さんだも〜ん!年下の面倒はちゃんとみてあげなくちゃいけないんだよ!えへへっ♪」

「ハハ…、年下ができてよかったね、アイリス」

「うんっ!お姉ちゃんって呼ばれるって最高だねっ♪」

「レニお姉ちゃんは何かある?」

「僕の部屋はほとんど物がないからな…。稽古が終わったら探しておくよ」

「ありがとうございます…!」


一通り花組のお姉ちゃん達に聞き終えると、なでしことひまわりは、隅田川の川原で自分達の部屋にあったいらなくなった物の整理をした。

「これ、首がもげてるけど、売れるかなぁ…?」

「う〜ん、ちょっと無理かもしれないわね…。――えっと、私達の売る物も入れてみると…。――うん、結構なお金になると思うわ…!」

「えへへっ、後はお姉ちゃん達が持ってきてくれるのを待つだけだね〜!」

「わぁ…!綺麗な夕日ねぇ…!!」

「本当だ…!夕日に向かって走ろう〜!!」

「〜〜あっ、ひまわり…!あんまりはしゃぐと転――!」

「〜〜きゃああっ!!」


なでしこが忠告し終わらないうちに、ひまわりは土手の草むらの石につまずいて転んだ。

「〜〜んもう…、だから言ってるのに…」

「えへへ〜、平気平気!」


立ち上がろうとしたひまわりは、目の前で光っている物を見つけた。

「ん…?これ、何だろう…?」

拾ってみたそれは、綺麗なガラス玉がついた指輪だった。

「綺麗だね〜!これも売っちゃおっか!?」

「ダメよ!落とし物は警察に届けないといけないってお母さんがいつも言ってるでしょ?」

「いいじゃ〜ん!指輪って高く売れるんだよ〜?」

「〜〜ダメよ、落とした人が探しているに違いないわ…!それにガラス玉だし、売ってもそんなに大したお金にはならないと思うわよ?」

「〜〜ぶ〜、売ってみないとわかんないじゃ〜ん!なでしこだってパパの喜ぶ顔、見たいでしょ〜!?」

「〜〜そ、それはそうだけど…」

「えへへっ、決っまり〜!まずはこれだけ売ってこよ〜!」

「〜〜もう…、ひまわり、待って…!ダメってばぁ…!!」


同じ頃、銀座のメイン通りを派手なシャツを着た小太りのおじさんとひょろひょろのっぽの人相の悪いお兄さんの2人組が歩いていた。

「へへっ、どこかに御曹司かご令嬢は歩いてねぇかな〜?」

「〜〜兄貴ぃ…、本当に誘拐なんてして大丈夫ですかね…?俺、臭い飯食いたくねぇッスよぉ〜…」

「馬鹿野郎、今さらビビってんじゃねぇよ!それに、逃走用の船はもう用意してあんだ。万が一失敗しても、外国に逃げられればこっちのもんさ!」

「さすがは兄貴!ワルの中のワルッスね〜!!」

「へへっ、あたぼうよ〜!」

「――あっ、見て下さい、兄貴…!前方に双子の美少女、発見っス!!」

「ん…?どこだ…!?」

「あそこですってば、あそこ…!」


のっぽのお兄さんが指差したのは、なでしことひまわりだった。ネクタイ屋さんにさっき拾ったガラス玉の指輪を売りに来たみたいだね。

「おじちゃん、これあげるから、あのネクタイちょ〜だい!」

「〜〜ごめんね、お嬢ちゃん達。うちの店は物々交換はやってないんだ」

「ぶつぶつこーかんって?」

「お金を使わないで、お互いの欲しい物同士を交換する方法よ。お金じゃないと売ってくれないんですって」

「だったら、お金に換えてよ〜!!そしたら、あのネクタイを買うからさ〜!!〜〜ほら、指輪、綺麗でしょ〜!?」

「〜〜た、確かに綺麗だけど…、それ、ガラス玉だしなぁ…」

「〜〜ひまわり、お店の人を困らせちゃダメよ。やっぱり、売るんなら質屋さんに行かなくちゃ」

「〜〜ちぇ〜。おじさんのケチんぼ〜!」

「〜〜ひまわりっ!……すみません、妹がご迷惑を…」

「〜〜いやいや…、こちらこそ力になれなくてごめんね…」

「子供にあんな物を売らしている親じゃ、大した身代金は取れそうにねぇな」

「けど、あの2人…、どこかで見たような…。――思い出しましたぜ!あの嬢ちゃん達、確か大帝国劇場の支配人と副支配人の双子の娘ですぜ…!!」

「何…っ!?それ、間違いねぇだろうな…!?」

「もちろんッス!俺、12歳以下の美少女は一度見たら、忘れない質ッスから!!」

「〜〜ケッ、ロリコン野郎め…。――けど、あのでっけぇ劇場のなぁ…。あいつらを誘拐して、身代金を要求すれば…。ヒッヒッヒ…!」

「ヒッヒッヒ…!運が向いてきましたねぇ〜、兄貴…!」


自分達が狙われているとも露知らず、なでしことひまわりは呑気に来た道を引き返していた。

「ねぇ、質屋さんってどこにあるの〜?」

「もっと裏の通りよ。でも、そろそろ日が暮れるし、今日は帰りましょう。ネクタイ買うのは明日でもいいじゃない」

「〜〜え〜っ!?それじゃ、バレンタインの意味ないじゃ〜ん!!」

「〜〜けど、遅くなったら、お父さん達が心配するし…」

「――さっきのネクタイが欲しいのかい?」

「え…?」「え…?」


なでしことひまわりは声をかけられて、同時に振り返った。目の前には、見知らぬ2人組のおじさんが立っていた。

「おじさん達、だぁれ?」

「あ〜、決して怪しい者ではないさ。そのネクタイ、おじさん達が買ってあげるから、車に乗って店に戻らないかい?」

「本当〜!?」

「〜〜ダメよ…!知らない人の車に乗っちゃいけないって、いつも言われてるでしょう?」

「そっか…。それに、ひまわり達のお金で買わないと意味ないもんね…」

「〜〜ちっ、一人しっかりしたガキがいるな…」

「優等生タイプと元気印少女かぁ。性格が正反対な双子、可愛いなぁ〜!」

「〜〜お前…、誘拐する前に警察捕まるぞ…?」

「ゆーかい?」

「…ハッ!〜〜な、何のことかな〜?」

「すみません…。親切にして下さるのはありがたいのですが、結構ですから…。――行こう、ひまわり…!」

「あ、うん…っ!」

「〜〜逃げられちゃいますぜ、兄貴…!?」

「〜〜チッ、手間取らせやがって…!――つべこべ言ってねぇで、さっさと乗れぇっ!!」

「きゃああ〜っ!!」「きゃああ〜っ!!」


子供のなでしことひまわりはひょいと持ち上げられ、車に連れ込まれてしまった…!

「フッ、俺が本気を出せば、こんなもんよ!」

「さすがですねぇ〜、兄貴〜!」

「〜〜騙したな〜っ!?ウソツキ〜!!」

「ケッ、騙される方が悪ぃんだよ!」

「へへ、君達のパパとママ、大帝国劇場の支配人と副支配人なんだって?」

「そうよ!えっへん!すごいでしょ〜!?」

「フッ、やっぱり俺の目に狂いはありませんでしたね…!」

「でかしたぞ、サブロー!すぐに築地に用意した船に食料を詰んで、身代金要求の電話をしてこい!」

「へいっ、兄貴!」

「〜〜ど、どうしよう、なでしこ〜…?」

「〜〜キネマトロンで誠一郎に連絡してみましょ…!」


ひまわりは犯人のおじさん達に気づかれないように、子供用キネマトロンに登録していた僕のキネマトロンに連絡を寄こした。

「――あっ、ひまわり?どこにいるんだよ〜?僕だけ仲間はずれにして遊んでるなんてずるいじゃないか〜!」

『〜〜誠一郎、助けて…!ひまわりとなでしこ、悪い人達に捕まっちゃったの〜!』

「〜〜え…っ!?ど、どういうこと…!?」

『よく聞いて…!多分、これから築地って所に連れて行かれるんだと思うの。すぐにお父さん達に連絡してくれる…!?』

「〜〜でも、父さんも母さんもあやめおばちゃんも皆、今出かけてて…」

『〜〜え〜っ!?何でぇ〜!?』

「――お前ら、何してやがる…!?」

「〜〜きゃ…っ!」


ひまわりのキネマトロンが犯人に奪われちゃった…!

「へへっ、面白ぇおもちゃ持ってるじゃねぇか。離れた相手と会話できるみてぇだぜ?」

「おっ、この子も同じやつを持ってるみたいですぜ」

「〜〜いやああ〜っ!!」


なでしこものっぽの犯人にポケットを探られて、キネマトロンを奪われてしまった。

「へぇ〜、最近のおもちゃは手が込んでますねぇ〜」

『――いいか、坊主?おまわりにこのことを話してみろ?この嬢ちゃん達とは二度と会えなくなるからなぁ?』

「〜〜そ、そんな…」

『〜〜うわ〜ん!助けて、誠一郎〜!!』

『〜〜誠一郎ぉ〜っ!!』


通信が切られて、なでしことひまわりの泣き声がプツリと途絶えた。

〜〜ど、どうしよう…!?早く父さんと母さん達に知らせなくちゃ…!!けど、今はどこにいるんだろう…!?〜〜あ〜、そんなことしている間になでしことひまわりが…!!――そうだ、花組のお姉ちゃん達に…!〜〜けど、余計な事をしたのがバレて、2人が殺されちゃったらどうしよう…!?

――こ、怖いけど…、僕が助けに行かなくちゃ!なでしことひまわりは僕が守るんだ…!!

そう思い立って、思い切って銀座の街に出てきたのはいいけど、『つきじ』って所にはどうやったら行けるんだろう…?そこって帝都なのかな…?それとも、もっと遠く…?大人に聞いてみたら、わかるかな…?

「あ、あの…」

「ん…?どうかしたのか、坊主?」


〜〜し、知らない人とお話するのって緊張しちゃうよ…。うぅ〜…。

「〜〜なっ、何でもありませんっ!!」

「え?あ…!」


〜〜うわ〜ん、僕のバカバカ〜!!せっかくチャンスだったのに…。

〜〜あれ…?夢中で走っている間に全然知らない道に出ちゃった…。と、とにかく戻らなくっちゃ――!

「――どうしんだい、坊や?」

泣きそうな僕に優しそうなおじいさんが声をかけてきてくれた。

「パパとママはどうしたんだい?迷子になってしまったのかな?」

〜〜ど、どうしよう…?このおじいさん、とっても優しそうな人だけど、もしかしたらこの人も違う誘拐犯かもしれないし…、僕まで誘拐されたりしたら、大変だよ…!〜〜あうぅ…、それに僕、人見知りだし…。

「どうしたんだい?おじさんに話してごらん?」

〜〜もう…、どうしたらいいのかわかんないよぉ…!!

「〜〜うえ〜ん、父さ〜ん、母さ〜ん…!!」

僕が泣き出してしまったので、おじいさんは困ってしまったみたいだ。

「〜〜困ったな…。せめてお名前だけでも教えてもらえないかな?」

「〜〜そんなこと言って、僕を誘拐する気だろう!?騙されないぞ…!!」

「〜〜参ったな…」

「誠一郎…!?」


――えっ?この声は…!!

「こんな所で何やってるの…!?」

「父さん、母さん…!〜〜うわ〜ん…!!」


張り詰めていた緊張から解放され、僕は泣きながら母さんに抱きついた。

「〜〜すみません…。うちの息子がご迷惑をおかけして…」

「ハハ…、いやいや。こんな時間に一人でいたので、迷子かと思ってね…。――坊や、ご両親が見つかってよかったね」


頭を撫でてくれたおじいさんに僕は怯えてしまい、母さんにぎゅっとしがみついた。

「…『さようなら』は?」

「〜〜さようなら」

「ハハ…、さようなら。――では、私はこれで…」


おじいさんは帽子を取ってお辞儀すると、ニコニコしながら歩いていった。

「駄目だろう?あんな優しいおじいさんに失礼な態度を取ったら…」

「〜〜それに、こんな時間に一人で出かけるなんて…。悪い人に連れていかれでもしたら、どうするの!?」

「〜〜うぅ…、だって僕…なでしことひまわりを助けたくて…」

「なでしことひまわりがどうかしたのか?」

「ぐすん…、あのね、なでしことひまわりが悪い人にさらわれたんだ…」

「〜〜何ですって…!?それ、本当なの…!?」

「うん…。僕のキネマトロンで連絡してきたから…」

「どこに連れて行かれたか言ってたか…!?」

「えっとね…、確かなでしこが『つきじ』って…」

「築地か…。〜〜一口に言っても、広いからな…」

「ねぇ、誠一郎のキネマトロンの受信データを逆探知してみたら、どうかしら…!?」

「そうですね…!――誠一郎、キネマトロン、貸してくれるか?」

「うん…!」


母さんは僕のキネマトロンで難しいことをスラスラとやってのけた。

「うわ〜、母さん、すっご〜い!」

「さすがかえでさんですね…!」

「ふふっ、これくらい任せなさいって」


しばらくして、母さんの指が止まった。なでしことひまわりがいる場所がわかったみたいだ…!

「南の方にある第二倉庫みたいね…」

「あやめさん達にも転送して、知らせておきましょうか…!」

「それがいいわね…!」

「ぼ、僕も助けに行くよ…!」

「駄目だ。お前にはまだ危険すぎる。怖い奴らに殺されるかもしれないんだぞ?」

「〜〜で、でも…」

「駄目よ。良い子だから、かすみお姉ちゃん達とおとなしく待ってなさい」


〜〜どうして…?僕だって、なでしこやひまわりを大切に思う気持ちは同じなのに…。

「〜〜それは…、僕が子供だからってこと…?」

「そういうこと。子供は子供らしく、大人に守られていればいいの。今、椿お姉ちゃんに迎えに来てもらうよう頼むから――」

「〜〜そんなことしなくても、一人で帰れるもん…っ!!」

「あっ、誠一郎…!」


僕は泣きながらそのまま走っていった。

〜〜父さんと母さんはいつもそうだ…!僕が子供だから、何にもできないって思って…。確かに僕は無力だよ…。〜〜けど、僕も父さんと母さんみたいになでしことひまわりを助けに行きたいのに、どうして最初から無理って決めつけるのさ…!?

僕はいつの間にか隅田川の川原までやってきていた。走るのも疲れたので、土手に座って、しばらく川を眺めることにした。

「〜〜どうせ…僕は何にもできないさ…。だから、ひまわりからもいつも馬鹿にされて…。〜〜うっ、ひっく…」

〜〜悔しいけど、このまま黙って皆が帰ってくるのを待つしかできないのかな…?……これじゃあ、いつもと同じだよ…。子供だからって、守られてばっかりで…。〜〜僕だって、父さんと同じ男なのに…。

すると、誰かが近づいてくる気配を感じたので、僕は泣き顔を上げた。

「かすみお姉ちゃん…?」

母さんに頼まれて、迎えに来てくれたのかな…?

それにしても、月の光の加減かな?かすみお姉ちゃんのお顔がいつもより青白い気が…。

「『――君から指輪の気配がするわ…!私の指輪…、もしかして盗んだ?』」

「ゆ、指輪って…?〜〜うわああっ!?」


かすみお姉ちゃんは僕のポケットを探ると、キネマトロンを出した。

「『そうか…!ここから指輪の気配がするんだわ…!!』」

「〜〜か、かすみお姉ちゃん、どうしたの…?何か怖いよぉ〜…」

「『君、私の指輪を盗んだ人と知り合いなのね…!さぁ、早くそいつに会わせて頂戴…!!』」

「〜〜そんなこと言われても、わからないってばぁ…!!」

「『〜〜う〜ん…、これは一体何なの…?どうやったら動くの?』」

「〜〜あ〜っ、壊さないでよぉ〜!ほら、ここのボタンを押して…」

「『OH〜!!ニッポンの技術って、やっぱりアッパレだわ〜!』」

「〜〜な、何言ってるんだよぉ…?」


僕が受信データのボタンを押してやると、かすみお姉ちゃんは感激しながら、しばらく画面をじっと見つめた。

「〜〜お、お姉ちゃん…?」

「『――うん、間違いないわ…!この娘達から指輪の気配がする…!!』」

「え…?なでしことひまわりから…?」

「『ねぇ、この娘達はどこにいるの?案内してくれるかしら?』」

「〜〜で、でも…、父さんと母さんが危ないから行っちゃダメだって…」

「『危ない…?』」

「〜〜なでしことひまわり…、悪い奴らにさらわれちゃったんだ…。僕も助けに行きたいって言ったけど、危ないからダメだって…。〜〜子供は子供らしく、守られてればいいんだってさ…」

「『ふ〜ん、それで?それくらいで君は諦めてしまうの?』」

「〜〜だって、しょうがないじゃないか…!僕、まだ5歳だし、戦い方だって身についてないし…」

「『だからって、大切なお友達を助けようとしないなんて、男としてふぬけてるわよ?』」

「〜〜お友達じゃないもん…。異母姉弟だもん…」

「『屁理屈言うんじゃないのっ!』」

「〜〜いてっ!」


かすみお姉ちゃんは僕にゲンコツを食らわせた。

「『もし、2人が死んでしまったら、君は一生後悔するんじゃない?』」

「〜〜それは…」

「『〜〜死んだらおしまいなのよ…?報われない魂は幽霊となって、成仏できずにこの世をさまようことになるわ…。2人がそうなってしまっても君はいいの?』」

「……」

「『ついてきて!お姉さんが気配を辿って、2人の元へ案内してあげるから…!』」


と、かすみお姉ちゃんは僕の手を握り、優しく微笑んでくれた。

――どうしてかな…?いつものかすみお姉ちゃんの雰囲気とは違うはずなのに、ちょっとホッとするっていうか…。心を許せちゃうんだよね…。


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