バレンタイン記念・特別短編小説
「バレンタイン・デーの一日」〜大神×あやめ編〜その3
「――お待ちなさい!」
私達は一列に並び、決めポーズを取った。
「帝国華撃団・花組、参上!」
「姉さん…!皆…!」
「は…、花組ですってぇ!?」
「キ〜ッ!!何よ、生意気な…!!ふんずけてやるっ!!」
「〜〜何でこの人達、オカマなんデ〜スカ!?」
「〜〜後でゆっくり教えてあげるわ…」
ふふっ、なでしことひまわりを怖がらせた罪をたっぷり償ってもらうわよ…!!
「行くわよ、皆!」
「了解!」
「〜〜キ〜ッ!!憎たらしい女どもねっ!!」
兄貴分のオカマが発砲してきたが、私は神剣白羽鳥で銃弾を真二つに輪切りにした。
「〜〜ば…っ、化け物だわ…」
「ふふっ、もう終わり?なら、今度はこちらの番ね…!!」
「〜〜ぎゃあああ〜っ!!」
「あ〜ん、そこ、もっとぉ〜」
「〜〜気持ち悪いんですのよっ!!」
私と花組がオカマ2人を懲らしめている間、大神君とかえではなでしことひまわりを縛っていた縄をほどいて、2人を救出した。
「私も加勢するわ…!」
「えぇ、行くわよ、かえで!」
「――藤枝流奥義・白鳥散華斬!!」「――藤枝流奥義・白鳥散華斬!!」
私とかえでの2本の神剣白羽鳥の合体攻撃が誘拐犯2人に炸裂した!
「ぎゃあああああ〜っ!!」
「やったわ…!」
「ママ、格好良い〜!!」
ふふっ、娘達に尊敬されるって気持ちの良いものね…!
「今よ、大神君!」「今よ、大神君!」
「了解です!――狼虎滅却・天下無双!!」
大神君の真刀滅却の刃が誘拐犯2人組の服を切り裂いた。
「〜〜いや〜ん」
「〜〜まいっちんぐ〜」
「〜〜きゃああっ!!」
「あはははっ!変なの〜!!」
誘拐犯2人の裸になでしこは目を塞ぎ、ひまわりは爆笑した。
「ふふふっ、少しは反省しましたか?」
「〜〜く…っ、――こうなったら最後の手段よ!サブロー!!」
「わかったわ!兄貴!!」
子分のサブローがふんどしに隠し持っていたスイッチを押すと、倉庫に設置されていた爆弾が次々に爆発し始めた。
「きゃあああ〜っ!!」
「フフン、ざまぁみなさい!――さぁ〜、逃げるわよ――!!」
――ガラガラガラ…!ズドーン…!!
爆発の衝撃で積まれていた鉄材が崩れ、炎に包まれながら入口を塞いだ。
「〜〜兄貴〜、入口が塞がれちゃったわ〜!!」
「〜〜んも〜、役立たずっ!!あんたなんかふんずけてやるっ!!」
犯人が逃げられなくなったのはよかったけど、このままじゃ私達全員…。
「〜〜他に出口はないの…!?」
「〜〜あそこだけみたいだよ…」
「〜〜待ってろ…!今、あたいの怪力で…――ゲホッゴホッゴホッ…!!」
「〜〜ごほっごほっ、け…、煙が…」
「〜〜あかん…。意識が朦朧としてきたさかい…」
「〜〜スネグーラチカ!!」
マリアの放った氷の銃弾も猛火の前ではすぐに溶けてしまった。
「〜〜く…っ、万事休すね…」
「〜〜お母さ〜ん…」
「〜〜パパぁ、熱いよぉ〜」
「心配しなくても大丈夫よ」
「お前達はお父さん達が絶対に守るからな…!」
私と大神君はなでしことひまわりを火の手から守るよう、2人を強く抱きしめた。
「〜〜このまま丸焼きになって死ぬなんて嫌デ〜ス!!美しい氷の彫刻になる方がまだマシデ〜ス!!」
「〜〜暑苦しいイタリア人ですわねぇっ!!少し黙ってて頂けませんこと!?」
「〜〜すみれ君、織姫君、今は喧嘩している場合では――!」
その時、アイリスが顔を強張らせ、怯えるように小さくうずくまった。
「アイリス、どうしたの…!?」
「〜〜寒い…。すごく寒いよぉ…」
「え…?」
「〜〜この火の海の中にいて寒いなんて、どういうこ――!?」
その時、天井に設置されていたスプリンクラーから突然水が放出された。
「こ、これは…!?」
「〜〜そんな馬鹿な…!?ここのスプリンクラー、壊れてるんじゃなかったの〜!?」
「〜〜そ、そんなこと、私に言われてもぉ〜ん」
スプリンクラーの水で鎮火されると同時に発生した水蒸気と煙に紛れて、かすみが青白い顔でこちらに向かって歩いてきた。
「かすみさん…?」
「〜〜違う…!その人、かすみお姉ちゃんじゃない…!!」
「え…っ!?」
かすみはなでしことひまわりの元へまっすぐ向かうと、2人の背丈に合わせて屈んで、にっこり微笑んだ。
「『――ねぇ、指輪を返してもらえるかな?』」
「え…?」
私は目を凝らして、よく見てみる。かすみの姿とダブって、違う女性の姿が見える…。全身びしょぬれで、青い瞳と金髪の外国人女性…。その幽霊がかすみに取り憑いているのだろう…。幽霊の割には表情が明るいように思えるけど…。
彼女の姿が霊力の高い花組の娘達にも見えたみたいだ。
「ど、どちら様なんでしょう…?」
「関係ありませんわ。取り憑いているのなら、追い払うまでです…!」
「〜〜ダメぇっ!!あの幽霊のお姉ちゃん、悪い幽霊じゃないよ…!」
「え…っ?」
かすみに取り憑いた幽霊がなでしことひまわりにも見えるのか、最初は怖がっていた2人だったが、ニコニコしている幽霊に次第に恐怖心が失くなっていったようで、不思議そうに顔を見合わせた。
「〜〜ひ、ひまわり…!」
「う、うん…!――指輪ってこれのこと…?」
「『そう、これよ…!やっと戻ってきたわ…。――どうもありがとう…』」
そう言い残し、かすみは気を失って倒れた。その直前に、かすみの体から幽霊が指輪を左手の薬指にはめ、嬉しそうな顔で出ていくのが見えた。
「〜〜い、一体なんだったの、兄貴…?」
「〜〜わ、わからないわ…。けど、邪魔されたことは確かなようね…!」
誘拐犯2人組は、気絶しているかすみを人質に取ると、ナイフを首に突きつけた。
「〜〜しまった…!」
「〜〜かすみさん…!!」
「動かないでっ!この女がどうなってもいいの…!?」
「〜〜卑怯な…っ」
「さぁ、早く逃げるわよ…!」
「OKよ!兄貴!!」
誘拐犯2人はかすみを人質に取ったまま、鎮火した鉄材の上をすばしっこく乗り越えて、倉庫の外に逃げ出した。
「〜〜船で逃げる気やで…!」
「させるかよ…!――行くぞ、皆!!」
「おーっ!」
「後は私達にお任せ下さい!」
「大神さん達はなでしこちゃんとひまわりちゃんを…!」
「わかった…!」
「頼んだわよ、皆!」
「気をつけてね…!」
「了解!」「了解!」
さくらとマリアは凛々しく敬礼すると、犯人達を追いかけていった。
それと入れ替わるように、誠一郎君が私達に駆け寄ってきた。
「〜〜なでしこ、ひまわり…!大丈夫…!?」
「誠一郎…!?」
「どうしてここに…!?劇場に帰りなさいって言ったでしょう!?」
「〜〜ご、ごめんなさぁい…。けど、かすみお姉ちゃんが連れていってくれるって…」
「かすみが…?」
「もしかして、さっきの幽霊が…」
「えぇ、なでしことひまわりが持っていた指輪を取り戻しに来たついでに、私達を助けてくれたのね」
ふふっ、まさか幽霊に助けられる日が来るなんて思ってもみなかったけど…。
「ありがとう、誠一郎君。スプリンクラーを動かしてくれたのも誠一郎君なんでしょう?」
「う、うん…。かすみお姉ちゃんに言われてね…」
「うそ〜っ!?すっご〜い、誠一郎!!」
「偉かったわよ、誠一郎!」
「お前がいなかったら父さん達、どうなってたことか…。ありがとな」
「誠一郎、だ〜い好き!」
「えへへ…」
ふふっ、誠一郎君ったら、皆に褒められて、とっても嬉しそう。よく頑張ったわね!
その後、オカマの誘拐犯2人組も花組によって無事に捕まり、逮捕された。同時にかすみも無事に保護された。
事件が無事に解決したので、私達は意気揚々と大帝国劇場に帰還した。
「――それで、落ちている指輪を勝手に売ろうとしたのね?」
「〜〜だって〜、パパにネクタイ買ってあげたかったんだも〜ん!!」
「チョコレートはお母さんと一緒に作ったものだから、どうしても私達だけでお父さんにプレゼントしたかったの…。私もなでしこも子供だけど、お母さんやかえでおばちゃんと同じくらいお父さんのことが大好きなんだもん…!!」
「なでしこ…、ひまわり…」
「ありがとな、なでしこ、ひまわり。気持ちはとても嬉しいよ。けど、そのせいでお前達が危険な目に遭うのは、お父さん…とっても悲しいな…」
「〜〜ごめんなさぁい…」「〜〜ごめんなさぁい…」
「落とし物をネコババしたり、知らない人の車に乗ったり…。そういうことはしちゃいけないって、前から約束してたわよね?」
「〜〜乗ったんじゃないもん!乗せられたんだも〜ん!」
「同じことです!お母さん達が助けに行けたからよかったけど、下手したら、死んじゃってたかもしれないのよ?」
「誠一郎もそうよ!危ないから行っちゃ駄目って母さん、言ったわよね?」
「〜〜ごめんなさぁい…」
「ぶ〜、でも、火が消えたのは誠一郎のお陰じゃん!」
「子供が口応えするんじゃありません!」
「まぁまぁ、あやめさんもかえでさんも…。3人とも反省しているみたいですし…。こうして皆、無事だったわけですから、いいじゃないですか」
「……まぁ…、それもそうね…」
「わ〜い!パパ、だ〜い好き!!」
「大好き〜!!」
「ありがとう、父さん!」
「ふふっ、まったく…、大神君は甘いんだから」
「ハハ、今日は3人ともよく頑張ったもんな…!」
「ふふっ、さぁ、もう遅いから寝なさい」
「あ〜ん、待って〜!チョコまだ渡してないよ〜!!」
「あら、そうだったわね。それじゃあ、3人で渡しましょうか」
「うんっ!――はい、お父さん!」
「ママとひまわりとなでしこで作ったんだよ〜!」
「おっ、すごいな…!とても上手に作れたな。どうもありがとう」
「えへへ〜!」
「ねぇねぇ、美味しい?」
「あぁ、とっても美味しいよ」
「やった〜!」「やった〜!」
アラザンとカラフルな砂糖でトッピングされ、『だいすき』とホワイトチョコのペンで書かれた大きなハートのチョコレート。
私達の想いが詰まったチョコを大神君が食べるのを見て、なでしことひまわりはとても喜んだ。ふふっ、よかったわね、なでしこ、ひまわり♪
私とかえでは、子供部屋である屋根歌部屋で子供達3人を寝かしつけた。
「――ふふっ、この子達も日に日に成長していってるのね。今日のことでよく思い知らされたわ…」
「…あとは私に任せて、大神君の部屋に行ってくれば?〜〜今晩は姉さんの番なんだし…」
「ふふっ、言葉とは裏腹に随分、不服そうな顔だけど?」
「〜〜当たり前でしょ…!?私のことなんて気にしないで…。……今日は色々、姉さんに申し訳ないことしちゃったし…ぶつぶつ…」
「ん?なぁに?」
「〜〜何でもないわよっ!ほら、さっさと行ったら?」
くすっ、かえでったら、子供達と同じくらい手がかかるんだから…。
「いいわよ。じゃあ、今夜は一緒に行きましょうか?」
「え…?ど、どうして…」
「ふふっ、だって今夜は3人で楽しみたい気分なんですもの♪」
「〜〜な…っ!?何言ってるのよ…!?」
「こぉら、大きな声出さないの!まぁ、あなたが断るなら仕方ないけど…」
「〜〜こっ、断るなんて言ってないでしょ…!?――私も一緒に行きたい…」
「ふふっ、良い子ね〜♪さぁ、早く行きましょ!」
「〜〜んもう、絶対からかってるでしょ…!?」
私は子供達を起こさないように静かにドアを閉めた。
「ほら、早く行きましょ…!」
「〜〜同情なんかいらないわよ?」
「ふふっ、素直にありがとうって言いなさいな♪」
私は妹であり、ライバルでもあるかえでと手を繋ぎ、一緒に隣の隊長室に向かった。
子供達が寝た後は大人のお楽しみタイムですものね♪
――コンコン!
「大神く〜ん、起きてる?」
「あれ?今日はご一緒にどうされたんですか?」
「ふふっ、今日はバレンタインですもの。姉妹仲良く幸せを共有しようと思ってね!」
「私もかえでもあなたへの愛は同じくらい大きなものですもの。今夜は私達2人の愛、同時に受け止めてくれるわよね?」
「だから、今夜は3人で…ね♪」
「あやめさん、かえでさん…。〜〜ごくっ…。――うおおお〜っ!!」
「きゃ…っ!」「きゃ…っ!」
大神君は私とかえでを両腕で抱えると、そのままベッドにダイブした。
「あやめさん、かえでさん、チョコのお礼、受け取って下さいね…!」
「ふふっ、今夜のあなたもとっても素敵よ、大神君!」
「今夜もうんと愛してね、大神君!」
ふふっ、大変なこともあったけど、今年は最高のバレンタインになったわ…!
来年もまた大神君とかえでと子供達と一緒に素敵なバレンタインを迎えられますように…!
大神×あやめ編、終わり
あとがき
バレンタイン特別短編小説・全5編のうちの第1弾!「大神×あやめ」編です!!
娘達と一緒にチョコを作るあやめさんの優しいお母さんぶりを描いてみました!
これだけしか読まないと、何が何だか話がわからないと思います。
実は今回のバレンタインの短編は「大神×あやめ」編、「大神×かえで」編、「なでしこ&ひまわり&誠一郎」編、「加山×かすみ」編、「新次郎×ラチェット」編の全5編を読めば、全ての謎が解き明かされるという仕組みになっております!
同じバレンタイン・デーに起こった出来事を5人の主人公である、あやめ・かえで・誠一郎・かすみ・ラチェットのそれぞれの物語を1編ずつ読んでいけば、全て話が繋がる…!!はずです(笑)
次回、第2弾「大神×かえで」編では、同じバレンタインの日をかえでさん目線でお送りします!
あやめさんがチョコを作っている間、かえでさんは一体何をしていたのか…!?どうぞお楽しみに…!!
「バレンタイン・デーの一日」〜大神×かえで編〜その1へ
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