大神一郎誕生日記念・特別短編小説
「未来への絆〜21世紀の子供達へ〜」その4



かつて、黒鬼会の総帥だった京極の配下で、軍部拡大を謳った陸軍過激派の将校達を率いて、帝都中に大規模なクーデターを行った陸軍の少佐…。しかも、その亡霊だ…!

クーデター失敗で、獄中で自殺したと聞いていたが、〜〜まさか悪霊としてこの世に留まり続けていたとは…。

『――私を倒したところで何の意味もない。我が理想を継ぐ者が必ず現れるだろう…!』

〜〜悔しいが、京極の最期の言葉が現実のものとなってしまったようだ…。

「〜〜うおおおおっ!?」

「〜〜な、何ぞ〜っ!?」


天笠の亡霊を見て、さっきまで浮かれていた客達は慌てて逃げていった。

「〜〜てめぇがさつきとゆずきをさらったんだな…!?」

『お前が大神の子孫か…。ほぉ、さすがに素晴らしい霊力を持っているな』

「〜〜ふざけんなぁっ!!今すぐ二人を返しやがれ…!!」

『なら、代わりに貴様の霊力を頂くとしよう。それが交換条件だ』

「〜〜ふざけやがってぇ…っ」


敬一郎に気を取られていた天笠にあやめさんとかえでさんはそれぞれの神剣で同時に斬りかかった。だが、天笠は怪しく口元を緩ませると、素手で両方の神剣を受け止めた。

「〜〜な…っ!?」

『ククク…、――甘いわ…!!』


あやめさんとかえでさんは、天笠に軽々持ち上げられて逆さ状態にされ、そのままクロスするように床に叩きつけられた。

「きゃあああああっ!!」

「〜〜かはぁ…っ!!く…あああぁぁ…」

「〜〜あやめさん、かえでさん…!!」


背中を強打して悶えている二人に俺は駆け寄り、抱き起こした。

「〜〜く…っ、悪霊になって、力を増しているみたいね…」

「悪霊となった今でも帝都を滅ぼそうとしているなんて…。〜〜何てしつこい奴なの…!?」

『滅ぼすなどと、人聞きの悪い。私は京極様のご遺志を継ぎ、人間と魔の者が共存する社会を築き上げたいだけさ。――それまで、我が魂が朽ち果てるわけにはいかないのだぁっ!!』

「うわああああああっ!!」「きゃああああああっ!!」「きゃああああああっ!!」


天笠の放った衝撃波が命中し、俺達3人は店のガラスを突き破って、外の歩道に投げ出された。

異常な黒いオーラを纏った天笠の亡霊を見た通行人達は驚き、悲鳴をあげながら、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

「〜〜ぐ…っ、二人とも…、大丈夫ですか…!?」

「〜〜う…ぅぅ」


あやめさんとかえでさんは、攻撃を受けた衝撃で気を失ってしまった。

『ククッ、どうした、大神?京極様を倒した時のように私を倒してみろ?』

「〜〜くそ…っ」


天笠が追い打ちをかけようと構えた時、和葉さんが奴の首に木刀を突きつけた。

「和葉さん…!」

「私の店でこんなに暴れてくれちゃって。弁償して頂かないと困りますわ」


口調は穏やかだが、今の目の鋭さは双葉姉さんと瓜二つだ。

その独特な殺気に天笠も臆したのか、構えていた手を悔しそうに降ろした。

『〜〜ちっ、――まぁよい。こちらには、まだ切り札がある…!』

天笠が指を鳴らすと、店の床に大きな黒い渦ができて、そこから陸軍の軍人達の多くの霊魂達が出てきた。

「〜〜な…っ、何だよ、こいつら…!?」

『クーデター失敗により、無念のうちに獄死した我が部下達だ。――さぁ、お前達、今こそ復讐の時だ…!』

『〜〜テイコクカゲキダン、ニクイ…!』

『〜〜ウランデヤル…!コロシテヤルゥゥ…!!』

「うわあああっ!!」

「〜〜く…っ、あああああっ!!」


霊魂達は敬一郎と和葉さんに纏わりついて苦しめると、今度はあやめさんとかえでさんの体に纏わりつき、黒い霧状の物体となって、二人の口に侵入した。

「きゃああああああっ!!」

「いやああああああっ!!」

「〜〜あやめさん、かえでさん…!!」

『ククク…、――さぁ、目覚めよ…!我が部下達よ…!!』


あやめさんとかえでさんは天笠と同じような黒いオーラを纏いながら、目を見開くと、無表情で体を起こし、天笠にひざまずいた。

「『再び肉体を授けて下さり、ありがとうございます、天笠様』」

「『天笠様に忠誠を…!そして、共に京極様の悲願達成を…!』」

『フフフ…、期待しているぞ、お前達』

「〜〜二人に何をした…!?」

『安心しろ、少し体を借りただけだ。こいつらの意識は深くに眠らせてある。素晴らしい霊力を持つ巫女を殺すなど、勿体ないからなぁ』

「〜〜ふざけるな…!!二人を返――!?」


天笠に近づこうとした俺にあやめさんとかえでさんが神剣の剣先を向けた。

「『天笠様に近づくな…!』」

「〜〜二人とも元に戻ってくれ…!〜〜うわああっ!!」


かえでさんが俺に闇の衝撃波を叩きつけた。

「『天笠様の邪魔をする者は自分達が許さない…!』」

〜〜く…っ、悔しいが、今は何を言っても無駄みたいだ…。

『フフ、行くぞ、お前達。作戦の最終段階に取りかかろうとしよう』

「『かしこまりました、天笠様』」「『かしこまりました、天笠様』」

『こいつらを返してほしくば、我が拠点に来るといい。先程さらった女共もいるぞ?』

「〜〜何…!?」

『まぁ、貴様らに我が拠点の居場所がわかればの話だがな。頑張って探すといいさ。――ククッ、これで京極様の無念を晴らすことができる…!ククク…、ハーッハハハハ…!!』


天笠は高笑いしながら陸軍のマントを翻し、あやめさんとかえでさんと共に姿を消した。

「あやめさん、かえでさん…!!〜〜くそ…っ」

「〜〜マジかよ…。本当にこんなことが起きちまうなんて…」

「どういう意味だ…?まさか、こうなることがわかってたのか…!?」

「〜〜あんなの、ただのデタラメだと思ってたんだよ…!」


そう言い張って、敬一郎はポケットから鏡を出した。

一見、女性が普通に持ち歩いていそうな手鏡だ。しかし、その鏡面には黒い渦が巻いており、帝都が真っ暗な闇で覆い隠されようとする様子が映されていた。

「これは何なんだ…?」

「未来が占えるという、夢組隊長だったお母様の形見ね…?夢組隊員でも使うの難しいのに、敬一郎ちゃん、使えたの?」

「…別に使おうと思ったわけじゃねぇよ。大晦日に大掃除した時に、たまたま見つけたんだ…。そしたら、こんな映像が映っててよ…」

「〜〜どうしてそれを早く言わなかったんだ…!?」

「〜〜無茶言うなよ…!!今、姉貴が言うまでそんな鏡だったっていうのも知らなかったし…」


敬一郎が鏡を離すと、鏡に映った映像は消えて、元の普通の鏡に戻った。和葉さんが持っても、何も映らない…。

敬一郎は霊力が高いと聞いていたが、どうやら、想像以上の高さらしい。

「〜〜やっぱり、未来なんて変えられねぇんだよ…。俺がどんなに抗っても、頑張っても、帝撃と縁を絶てないように、この帝都も奴の手中に…」

「諦めるな…!鏡に映っていたことがまだ実際に起こったわけではないだろう…!?――さつきさんとゆずきさんを助けに行こう…!君の大切な人達なんだろう!?君の手で違う未来に変えるんだ…!!」

「〜〜俺には二人を救う力なんてねぇよ…、ましてや、帝都を守る力もな…!空手だって剣道だってからっきし駄目だし…、〜〜俺は帝都を何度も救ってきた英雄のあんたとは違うんだ…!!」

「俺だって、英雄なんて言われるほどすごい男じゃない…!お前と同じように悩み、苦しむ人間だ…!だが、俺は今までお前のように諦めたりなどしなかった…!何故かわかるか…!?俺の大切な人達を、この帝都を守りたいと思ったからだ…!さつきさんもゆずきさんも君の大切な人達なんだろう!?助け出したいんだろう!?彼女達もお前が助けに来るのを待ってるはずだ…!!なのに、どうして自分の気持ちに素直に従おうとしないんだ…!?」

「……怖いんだよ…。〜〜さっきのあいつの力、見ただろ…!?英雄と呼ばれたあんたらだって敵わなかったじゃねぇか…!〜〜なのに、俺に倒せるわけねぇじゃねぇかよ…!!」

「…誰がお前一人で戦えなんて言った?」

「え…?」

「お馬鹿さんね〜。何の為におじいちゃまがご先祖様を呼んだと思ってるの?」

「それに、花組の皆も、かりん君達風組も、そして、司令と副司令の誠一郎となでしこも、きっと君に協力してくれるはずだ。皆、同じ帝撃の仲間だからな…!」

「〜〜今さら俺を助けてくれるもんか。散々悪態突いてきた俺なんかに…」

「そんなの、やってみないとわからないだろ?――キネマトロンみたいな通信機はあるかな?」

「う〜ん、携帯電話ならあるけど〜?」

「なら、それで誠一郎達に連絡しておいてくれるか?」

「りょ〜か〜い!」

「あとは敵の本拠地がわかればいいんだけどな…。さつきさんとゆずきさんの襟に発信機みたいなのはつけてないのか?」

「発信機〜?そんなものなくても、携帯のGPS機能使えばいいじゃないの〜」

「じーぴーえす…?」

「い〜い?こうやって、さつきちゃんとゆずきちゃんの携帯の位置を割り出せば〜――」


和葉さんが慣れた手つきで携帯を操作すると、点滅した赤い印が画面の地図上に表示された。どうやら、天笠は王子にいるみたいだな。

「で〜きた!簡単でしょ〜?」

「す、すごいんだな、携帯って…。何でもできるんだな…」

「うふふっ、敵さんも太正時代の人だから、携帯の最新機能まではわからなかったみたいね〜」

「ありがとうございました、和葉さん!――さぁ、助けに行こう!」

「……」

「…さつきさんとゆずきさんを助けられるのはお前しかいないんだぞ?」

「ちっ、わーったよ!危なくなったら、俺は逃げるからな!?」

「〜〜まったく…、子孫とはいえ、情けない奴だな…」


和葉さんがメールという携帯の機能で帝撃本部に連絡してくれたので、俺と敬一郎と和葉さんは一足先に、本拠地のある王子に向かった。

――どうか無事でいてくれ、4人とも…!!

携帯を頼りに歩いていくと、マンホールの上で俺達の現在位置と目的地と重なった。どうやら、地下にアジトがあるみたいだな…。

俺達はマンホールを降りて、奥まで続く下水道を通っていくと、岩でできた洞窟に差し掛かった。見張りと思われる降魔達がうじゃうじゃいる。どうやら、ここが本拠地で間違いなさそうだ…!

「敵が多いな…。正面突破は厳しそうだ…」

「…やっぱ、帰るか?」

「んもう、敬一郎ちゃ〜ん?」

「――お困りのようだなぁ〜、敬一郎…!」


高笑いをしながら、上空から一人の男が俺達の元に降り立った。

「か、加山…!?」

「かりんちゃんのいとこの加山雄四郎ちゃんよ〜。ひいおじいちゃまと同じ、月組の隊長さんなの〜」


ってことは、彼も加山とかすみ君のひ孫ってことか…!

「敬一郎、今日も俺はお前のことをずっと見守っていたぞ!」

「〜〜んなことしてねぇで、仕事しろよっ!」

「OH!つれないなぁ〜、ハニー!そのお陰で、前もってこの洞窟の隠し通路を調べてきたんだぜ〜?」

「ほ、本当か…!?」

「おうとも!この加山雄四郎、愛する敬一郎の為なら、命がけで情報を集めるぜ!!」

「〜〜気持ち悪ぃなぁ…!放せよ、この野郎っ!!」

「Hahaha!照れちゃって〜。可愛いなぁ、敬一郎は〜」


〜〜な、何だか俺の時代の加山と少しイメージが違うような…。

「うふふっ、雄四郎ちゃんはね〜、ちょ〜っとBL入ってるのよね〜」

「び、びぃえる…?」

「ボーイズラブよ〜!うふふっ、雄四郎ちゃんはね、女の子よりも男の子の敬一郎ちゃんのことを愛してるのよね〜」

「〜〜いぃっ!?あ…、愛してるって…」

「敬一郎〜、任務成功したら、ハグしてくれるか〜?」

「〜〜するかっ!!」


〜〜俺の時代の加山は女の子が好きだったが…、まさか世代を隔てて、遺伝子がパワーアップしていたとはな…。

すると、騒ぎを聞きつけたのか、降魔達が舞い降りてきて、威嚇しながら俺達を取り囲んだ。

「あらあら、気づかれちゃったみたいね〜」

「〜〜てめぇのせいだからな…!?」

「安心しろ、敬一郎!奴らは俺達の仲に嫉妬しているのさ〜♪」


〜〜非常時に能天気さを忘れないところも加山にそっくりだな…。

「俺と敬一郎の仲を邪魔する奴は容赦しないぜ…!――とうっ!!」

「私も加勢するわ〜。雄四郎ちゃんだけじゃ可哀相ですものね〜」

「あ…、おい、姉貴…!」

「敬一郎ちゃん達は先に行って。この子達を倒したら、私達もすぐ行くわ」

「〜〜け、けど…、こんな数、二人だけで――」


和葉さんが刀を一閃すると、降魔達がまとめて10匹ほど黒い血を全身から吹き出し、倒れた。

「ふふっ、これでも心配?」

「〜〜い、いや…」


〜〜さすがは双葉姉さんの遺伝子を濃く受け継いだだけはあるな…。

「――敬一郎ちゃん、自分の力を信じるのよ。あなたは、やればできる子なんだから〜」

「姉貴…。――死んだら承知しねぇからな…?」

「ふふふっ、ありがと〜」

「敬一郎〜、生きて会えたら、チュ〜してくれよなぁ〜♪」

「〜〜お前は頼むから死んでくれっ!!」


フッ、敬一郎も少しは仲間の大切さをわかってくれたかな。

和葉さんと雄四郎さんにその場を任せ、俺と敬一郎は洞窟の奥に進んだ。

待ち受ける降魔達を斬り伏せていく俺とは対照的に、敬一郎はへっぴり腰で逃げてばかりいる。

「これぐらいの雑魚が倒せないと、二人を助けることなんてできないぞ?」

「〜〜んなこと言ったって、急に剣が扱えるようになるかよ…!?…ゲームなら簡単にボコれるんだけどな――」

「――きゃああああーっ!!」「――きゃああああーっ!!」

「――!!〜〜さつき…、ゆずき…!!」


さつきさんとゆずきさんの悲鳴が聞こえてきて、敬一郎は先程までの弱腰が嘘のように、俺より前に出て、先を進み始めた。

フッ、なんだかんだいって、やっぱり二人が心配なんじゃないか。

「この部屋みたいだな…。〜〜く…っ!」

敬一郎は急いで扉を押すが、重厚な扉なので、なかなか開かない。なので、俺も加勢して、一緒に扉を押し始める。

「ちっ、余計な真似しやがって…」

「ハハ…、二人なら、力も倍になるだろ?」

「…フン、うぜぇ奴」

「うざくて結構。――行くぞ…!せぇの…っ!!」


俺達が息を合わせて押すと、少しずつ扉が開いた。

目に飛び込んできたのは、巫女の服を着て、手首を縛られて吊るされている、さつきさんとゆずきさんだった。

「〜〜さつき、ゆずき…!!」

「……来てくれたのね、敬一郎君…」

「待ってろ…!今――!?」


同じ巫女の服を着たあやめさんとかえでさんが俺達に向かって、頭上から神剣を振り下ろしてきた。

「あやめさん、かえでさん…!」

「〜〜あっぶねぇな、この野郎…!!」

『――ククク…、意外に早いご到着だな』


あやめさんとかえでさんの立っている向こうから天笠が歩いてきた。

「〜〜さつきとゆずきに何するつもりだ…!?」

『大事な生贄だ。すぐには殺しはしない。――霊力を奪うだけだ…!』


天笠が立っている地面に突如、魔法陣が発生し、そこから巨大な赤い球体が出現した。

「あれは…!」

『大神一郎、貴様はわかるだろう?武蔵の最終兵器・新皇の核だ…!』

「〜〜まさか、もう一度武蔵を復活させるつもりなのか…!?」

『当たり前だ。〜〜クーデター失敗を無念に思い、100年もの間、地下で怨霊として力を蓄えてきた苦しみがお前らにわかるか!?だが、遂に時は来たのだ!お前達に復讐できる日を心待ちにしていたぞ…!今こそ、武蔵を復活させ、京極様が望まれた人と魔の者が共存する世界を築き上げるのだ…!!』


新皇の核は黒紫の触手を無数に出すと、さつきさんとゆずきさんの体にその触手を巻きつけ、霊力を奪い始めた。

「いやああああああっ!!」

「やめてえええええっ!!」

「〜〜やめろおおっ!!」


さつきさんとゆずきさんに駆け寄ろうとした俺達を、あやめさんとかえでさんが遮るように斬りかかってきた。

「『天笠様の邪魔はさせぬ…!』」

「〜〜二人とも、正気に戻ってくれ…!!」

『ふはははは…!まさか、私の出世の邪魔立てをした憎き姉妹を支配下における日が来るとはなぁ…。くくくっ、こんなに愉快なことはない…!』

「〜〜卑怯な真似を…っ!」

「け…、敬一郎…君…」

「た…すけ…て…〜〜あああああああっ!!」


核の触手がさつきさんとゆずきさんの女穴を貫いた。

『クククッ、男女の交わいは霊力を最大にまで引き上げるからな…。さぁ、もっと奪って、力を蓄えるがいい…!』

「〜〜んはぁっ、あっ、あぁっ、いやああああああっ!!」

「〜〜い…、痛ぁぁいっ!動かないでぇっ!!お願い…っ!!」

『ほぉ、二人とも処女だったとはな…。敬一郎、お前に捧げるつもりでいたんじゃないのか?』

「そ、そんな…。〜〜馬鹿だよ、お前ら…!だから昨日、俺に抱かれてりゃ…」

「……それって、遊びででしょう…?そんなんじゃなくて、ちゃんと真剣に私達を愛してくれる時が来たら、あなたに捧げようって決めてたんだもの…」

「〜〜ごめんね、敬一郎君…。あなたが私達をいとことしてだけじゃなく、恋人として見てくれる時が来るまでって…、ずっと守ってきたのに…」

「何謝ってるんだよ…?〜〜何で俺なんかの為に…っ、本当お前ら、馬鹿だよ…っ!」

『フフフ…、残念だったな。お前達は愛する男と結ばれることなく、霊力を吸い尽くされながら死んでいくのだ…!』

「う…っ、〜〜きゃあああああああっ!!」

「ああああっ!!〜〜あああああ〜っ!!ダメぇぇ〜っ!!」


触手に犯される度にさつきさんとゆずきさんの霊力が新皇の核に流れ込んでいく。

赤黒かった核の色が鮮血の様な明度の高い赤に変わってきた。

『いいぞぉ…!ククク…、やはり裏御三家の二つが入り混じった血を継ぐことだけはある…!――さぁ、新皇よ!そして、武蔵よ…!再び京極様の為に復活するのだ…!!』

「〜〜やめろぉぉっ!!」


敬一郎はあやめさんとかえでさんの神剣に遮られながら、涙を流して膝をついた。

「〜〜もう…やめてくれ…。俺はどうなってもいい…。けど、さつきとゆずきだけは助けてやってくれ…!」

『ほぉ、…では、取引に応じると?』

「あぁ、俺ので構わないなら、霊力でも何でもくれてやる…!〜〜だから、そいつらはもう解放してやってくれ…!」

「〜〜敬一郎君、駄目よ――!」

「――黙れ、下衆が…!!」

「きゃああああああっ!!」「きゃああああああっ!!」

『お前らは大人しく、新皇と武蔵復活の為に死ねばよいのだ…!』

「〜〜やめろぉぉぉぉぉっ!!」


敬一郎からすさまじい霊力が放たれて暴走し、洞窟が大きく揺れ始めた。


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