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藤枝かえで誕生日記念・特別短編小説2013
「君想ふ花」その6



軍服から戦闘服に着替え直した私と花組を乗せた9体の光武は、あやめ姉さんと風組が操縦する翔鯨丸で迅速に浅草まで運ばれた。

「――こんばんは、アナウンサーの金子です。本日は『帝都ニュース23』の内容を変更致しまして、特別番組をお送り致します。こちら浅草では、先程からあの大人気女優・藤倉桃花さんが社長を務める芸能プロダクション『Momo』、またの名を『対降魔戦闘企業P.A.S.S.』に所属する人気タレント達が街に現れた降魔の集団から我々・帝都市民を守る為に戦っています…!!」

いつの間にか現場には、大手民放蒸気テレビ局の人気女子アナとカメラスタッフが駆けつけていて、P.A.S.S.の社員達の活躍を生中継でお茶の間に伝えていた。

〜〜どうせ彼らも今日の発表会見と同じで、桃花さんが宣伝の為に事前に呼んでおいたんでしょうけど…。

「一歩間違えれば、おぞましい化け物の餌となるにも関わらず、P.A.S.S.の隊員達は皆、藤倉社長の指示の下、命がけで任務にあたっております!まさに、帝都を守る為に社員一丸となっている模様です…!!」

「――帝都は僕ら、P.A.S.S.が守ってみせる…っ!!」

「はああああああああああっ!!」

「ギエエエエエ〜ッ!!」

「おぉ〜っと!イケメン俳優軍団がまたもや降魔に一太刀浴びせましたぁーっ!!」

「きゃああ〜!!格好良い〜っ♪」

「私の為に頑張って〜♪」


イケメン戦士のP−BOYSが降魔を倒す度、見学中の若い女性ファン達が黄色い悲鳴をあげる。

「おっと…!危ないから、あまり僕達に近づかないようにね?」

「君達の可愛い顔に傷でもついたら大変だからさ…♪」

「きゃああああ〜っ♪」

「ふぅ…♪」


白い歯をキラッと輝かせてウィンクするP−BOYSの面々に遂には失神者も出るほどだ。

「さすがアイドル俳優グループのP−BOYSですね!戦闘中もファンサービスを忘れないとは、なんというプロ意識の高さでしょう…!!」

今、帝都で最も旬なニュースの続報ということで、現場にいるアナウンサーも少々興奮気味に特ダネを取材中だ。

重いテレビカメラを担ぐカメラマンも、自分のテレビ局に少しでも良い画を届けようと奮闘しているのだろう、いつもより食い気味にP−BOYSをカメラに収め続ける!

「おーっほほほほ…!!いいわよ〜、君達!その調子でどんどんアピールしちゃって!今回の出撃分は、う〜んとボーナスを弾んであげちゃうっ♪」

「ありがとうございます、藤倉社長!」

「よ〜し、残りの降魔もさっさと片しちゃおうぜ!」


プロダクション『Momo』社長改め『P.A.S.S.』総司令の桃花さんは、隊員達と降魔の戦いを自社オリジナルの飛行型ロボットカメラで撮影し、その映像を自社の移動型作戦指令室となっている蒸気トラック内のモニターで鑑賞し、まるで敏腕プロデューサーの如く腕と足を組んで気取りながら満足そうに社員達の活躍を見学している。

「クスッ、テレビ局のあの食いつき様ときたら…!帝国華撃団が表舞台から消えるのも時間の問題かしらねぇ…♪」

「――お待ちなさいっ!!」

「〜〜えぇっ!?ちょ、ちょっと待って下さいよ、かえでさ〜ん…!!」


深緑色の自分の光武に搭乗した私は、いてもたってもいられずに花組より先に翔鯨丸から飛び降り、パラシュートを開いて浅草寺前に華麗に着地すると、桃花さんが乗っている、P.A.S.S.のロゴが入った派手なピンク色のトラックと対峙した。

「帝国華撃団、参上!!」

一人で名乗りを上げ、決めポーズを取った私の到着を確認すると、桃花さんはニヤリと不気味に口元を緩ませた。

「来たわね、かえでちゃん…♪フフフッ」

「〜〜かえでさ〜ん!一人だけ目立つなんてズルいデ〜ス!!」

「織姫さんの言う通りですわ!トップスタァの私をセンターに、もう一度名乗り直して下さいましっ!!」

「ふふっ、花組隊長代理の私が一人名乗れば十分でしょ?つべこべ言ってないで、早く討伐任務にかかりなさいっ!!」

「りょ、了解です…っ!」

「おぉっ!帝国華撃団も来たぞー!!」

「すごいじゃないか!新旧・正義の味方対決ってかい!?」

「ふふっ!帝都市民の皆さーん、ここは我々・帝国華撃団にお任せを…!!」


さくら達全員の光武とも合流できたし、勝負はここからよ、桃花さん!

ポッと出のパクリ組織に元祖の私達・帝国華撃団が後れをとってたまるものですか…っ!!

「皆、行くわよ!帝国華撃団・出撃!!」

「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」

「…て言われましてもやな、もう降魔はほとんど残っとらんみたいやで?」

「お、確かに。先に来たP.A.S.S.の兄ちゃん達が頑張ってくれたみてぇだな!」

「呑気なこと言ってる場合!?帝国華撃団のプライドに賭けて、残ってる降魔を全部!奪い取ってでも倒しなさいっ!!」

「〜〜う…、奪い取るって…」

「〜〜ですから、数を倒せば勝ちというものでも――!」

「――ちょっとー!そこのからくり軍団っ!!」

「…え?」


すると、P−BOYSのファンと思われる、応援の弾幕と団扇を持った和服の女子達が私達に向かって怒鳴ってきた。

「そこどいてよっ!!優君達が見えないじゃないのよー!?」

「……は?」

「P−BOYSが戦ってるんだから、あんた達はいらないじゃ〜ん!」

「そうよ、そうよ!邪魔しないでどっか行ってよ、おばさーんっ!!」

「――ひくっ!?〜〜お…、お…ば……?」

『しまった…!!〜〜か…っ、かえでさん!ここはグッと堪えて下さい…!!』


私の怒りのボルテージが高まっていくのを作戦指令室にいる一郎君もモニター越しに感じ取ったようだけど…、〜〜フフフッ!悪いけど、今の私は総司令の忠告を聞く気なんてサラサラないのよねぇ…♪

「――ふふ…ふふふふ…。おばさん……ねぇ…」

――ぐびっ、ぐびっ、ぐび…っ!

私は、さっきこっそり機内に持ち込んでおいた日本酒の一升瓶の蓋を開けて一気に飲み干すと、

――カンッ!!

と、据わった目つきの赤ら顔になり、空き瓶を操縦パネルにぶつけるように乱暴に置いた…!!

『〜〜いぃ…っ!?酒瓶なんていつの間に持ち込んだんです!?』

『かえでっ!!そこは怒っていいとこだけど、光武の飲酒運転はしちゃダメって、いつも姉さん言ってるでしょ!?』

『〜〜あ、あやめさん…』

「ふふふ…、二人はちょーっと黙っててもらえるかしらぁー?……ひっく…♪――運が悪いわねぇ、あんた達…。おばさんはねぇ…、そうじゃなくても今、と〜っても機嫌が悪いのよぉ…?」

「はぁ?だから何?」

「更年期だからでしょー?クスクスクスッ♪」

「…ひくっ!……危ないから逃げろって…、――何べん言やわかるんだぁぁぁ!?小娘どもがぁぁぁぁぁぁ――っ!!」


――ドゴーンッ!!

「〜〜ひぃ…っ!?」「〜〜ひぃ…っ!?」「〜〜ひぃ…っ!?」「〜〜ひぃ…っ!?」

「しかも、な〜にが更年期だぁ!私はまだ20代だぁぁぁぁぁぁ――っっっ!!」


怒りに任せて、私が光武に乗った時の武器として使っている長くて大きな日本刀を彼女達に向かって振り下ろして、すぐ目の前の地面に陥没させると、

「〜〜き…っ、きゃああああ〜っ!!」「〜〜き…っ、きゃああああ〜っ!!」「〜〜き…っ、きゃああああ〜っ!!」「〜〜き…っ、きゃああああ〜っ!!」

と、P−BOYSのファンの達は皆、マジ泣きして逃げていった…!

「ふふふっ♪まーったく、今の若い娘っていうのは礼儀がなってないんだから…。…ひっく!フフン、大体、平和な帝都でいつも呑気にあの若造集団を応援できてんのは誰のお陰だと思ってんのよー!?まったく…ぶつぶつぶつ…――」

「〜〜きょ…、今日のかえでお姉ちゃん、なんか怖いよぉ〜…」

「〜〜嫉妬と怒りに狂うあまり、自分のキャラを見失っているようね…」

「うふふっ!――皆ぁ〜♪邪魔者は消えたことだし〜、今日は思う存〜分、降魔を狩っちゃってねぇ〜♪」

「〜〜りょ、了解です…」

「…降魔、残り16体だよ、かえでさん」

「ひっく…!フフン…、了解よ、レニ。――フフフッ、こ〜なったら、どんなことをしてでもP.A.S.S.より目立ってやるわ…っ!!――はああああああああああああっ!!」

「〜〜ギエッ!?」

「〜〜うわっ!?な、何だぁ!?」

「そこをどきなさいっ!!でないと、お姉さんが降魔と一緒に叩き斬っちゃうわよぉぉ――っ!?」


――ザシュッ!!ズシュッ!!ドスッ!!デュクシ…ッ!!

「〜〜うわああああ〜っ!?」「〜〜ギエエエエ〜ッ!?」

まるでスプラッター活動写真のような奇行とも取れる、私が太刀を所構わず振り回す様に命の危険を感じたP−BOYSは慌てて撤退していき、怖れをなした降魔共は逃走を試みるも次々に私の刀の錆になって露と消えていく…!!

「おーっほほほほほほほ…♪無様に逃げ惑うがいいわ、下衆共がぁぁっ!!」

「〜〜ま、まるで酔拳ですね…」

「〜〜あの中に入ってくんは、シラフのうちらには至難の業やなぁ…」




現場にいるさくら達や野次馬同様、作戦指令室にいる一郎君とあやめ姉さん、そして風組もモニターに映る壊れかけの私に唖然としている…。

「〜〜んもう、かえでったら…。あなたまで殺女化してどうするのよ…?」

「〜〜ははは…。腐れ縁とはいえ、桃花社長に負けるのがよっぽど嫌みたいですね…」



「――藤枝流奥義・白鳥散華斬っ!!」


――ザンッ!!

「ギエエエエエエ…!!」

「ふぅ…。――ま、私が本気を出せば、こんなとこかしらね〜♪ふふふっ!」

「す、すごいです…!帝国華撃団のリーダーとみられる機体がたった一機で残りの降魔を全て倒してしまいました…っ!!」

「おぉ〜っ!!」

「さすがだぞ〜!帝国華撃団の姉さ〜ん!!」

「あ、あら。おほほほ…♪」


興奮した女子アナの実況と野次馬の歓声を耳にした私はすっかり気分が良くなり、テレビカメラを意識しながら刀身についた降魔の黒い血を払い、鞘に戻した。

それに、体を動かして汗をかいたお陰で酔いも醒めたみたいだし、ウフフッ!気分最高〜♪

「格好良かったよ〜、かえでお姉ちゃん!えへへっ♪」

「さすがだったぜ、かえでさん!」

「〜〜まぁ、戦闘中に酒飲むっちゅーんはどないやと思うけどなぁ…」

「フフ、まったく…。少しは私の出番も残しておいて頂かないと困りますわ」

「ふふっ、そうだったわね。ごめんなさい」

『――さすがは帝国華撃団ね。私達のライバルなだけはあるわ』

「…!」


桃花さんの声が聞こえてきた方へ視線を向けると、桃花さんが乗っているトラックの側面に大型モニターが搭載されていて、そこに薄ら笑いを浮かべた憎たらしい桃花司令の顔がアップで映し出された。

「……桃花さん」

『クスクスッ、副司令のあなたがわざわざ出向いてくれるなんて嬉しいわ』

「……あなたの挑発があまりにもあからさまだから、乗ってあげただけよ。…それより、その悪趣味なトラックからさっさと出てきたらどう?」

『まぁ、敵意剥き出しねぇ?それ以上、上官のあなたが醜態をさらせば帝国華撃団の名を貶めることになるのではなくて?あなたのお下品で粗暴な態度がさっきから全国のお茶の間に届いてるるってこと、…お忘れかしら?』

「そう言うあなたの挑発的で、性根が腐ってるのが丸わかりな態度も一緒にお茶の間に届いてるってことも忘れない方がいいんじゃない?」

『…フッ、そうやって必死に食い下がってくるところも変わらないわね』

「…そっちこそ、その負けず嫌いな性格は全世界共通なのね?どの世界から来た桃花さんかは知らないけど、お姉さんの次は妹のあなたが刺客で来たってわけ?」

『フフッ、さすがに察しが早いわねぇ。でも、ちょ〜っと気づくのが遅かったんじゃないかしら?』

「〜〜なっ、何やら不穏な言葉が飛び交っておりますが…、どうやら、お二人の間には因縁めいた絆があるようですね…!」


張りつめた空気の中、無言で火花を散らし合う私と桃花さんに野次馬も女子アナも息を呑み、カメラマンはそんな私達を映し続けている。

「〜〜あの…、私達、完全に話の軸から置いてかれているような気がするんですけど…」

「…?つまり、どういうことー?」

「つまり、かえでさんと藤倉社長は旧知の仲…というわけですね?」

「……とりあえず、『一郎君を巡ってのわけありの仲』…ってことにしといてくれる?」

『フフフッ、そのわけありの仲も今日で終止符を打つとしましょうよ…!』

「――ギエエエエエエッ!!」

「え…っ!?」


桃花さんが呟いた直後、新手の降魔達が私達のいる浅草寺に向かって集団で近づいてきて、ネオン輝く浅草の明るい夜空を旋回し始めた…!

「〜〜そんな…!?また降魔の群れが…!?」

「しかも、さっきよりたくさんデ〜ス!!」

「なんということでしょう…!!偶然とはいえ、なんというタイミング…!!神も帝国華撃団とP.A.S.S.の対決を心待ちにしているとでもいうのでしょうか…っ!?まさに、勝負の行方は『神のみぞ知る』ですね…!!」

「…本当にね。まるで番組のいきすぎた演出だわ」

『フフフフ…♪』


降魔・第二波の襲来に野次馬とマスコミが盛り上がっている様子をトラックの中の作戦指令室で、桃花さんは子犬の召喚獣を太ももに乗せながら、したり顔でモニターを見ている。

「〜〜ハァハァハァハァ…」

降魔を使役する力を何度も強制的に使わされ、苦しく座り込んでいる娘の胡桃ちゃんを桃花さんは、まるで女児が人形にするかのように優しく撫でて愛でた。

「それでこそママの娘ね♪もうすぐ出番だから、スタンバイしときなさい?」

「……はい、お母さん」


すると、この現場を中継している『帝都ニュース23』のプロデューサーから桃花さんの蒸気携帯電話に電話が入った。

『反響がすごいですよ、藤倉社長!視聴率が秒単位で右肩上がりです!!この調子なら、ゴールデンタイムの看板番組も狙えるかもしれませんね…!!』

「フフフッ、投資先を帝撃から私に変えてよかったでしょ?これから帝国華撃団を公開処刑してやりますから、視聴率40%期待してて下さいね…♪」

『あなたはうちのテレビ局の救世主だ…!!一生ついていきますよ、女神様!!』


受話器越しに桃花さんがドヤ顔で笑ったと同時に、浅草の空を飛んでいた降魔共が私達・花組の光武に向かって急降下してきた…!!

「きゃああ…っ!!」

「〜〜は、速い…!?」


大きな翼で体をドリルのように横に回転させ、空中から真っ直ぐ滑降してきた降魔達は、勢いとスピードを生かした鋭利な爪攻撃で私達の機体を次から次に傷つけていくと、仲見世に逃げ込もうとした野次馬達にターゲットを切り替え、奇声を発しながら襲いかかった…!!

「うわああああ〜っ!!」「いやああああ〜っ!!」

降魔の大量発生に今まで散々居座っていた野次馬達もようやく事の重大さがわかったようで、慌てて逃げていく…!!

「大変だわ…!あの人数で狭い仲見世に逃げ込んだりしたら…!!」

「〜〜くそぉっ!!待ちやがれぇーっ!!」


――ガキィン…ッ!!

「か、硬い…だと…!?」

普段は降魔の体を一撃で貫通するカンナの拳だが、攻撃を受けても降魔の体は少しへこんだだけで、大した傷はつかなかった。

「駄目です…!こちらの降魔も武器での攻撃が通じません…っ!!」

「〜〜く…っ、私の刀も急に切れ味が悪くなったわ…!一体どうなってるの…!?」

『待って下さい!今、かすみ君達が解析を――!あ、解析結果出ました!!』

『どの降魔の霊力反応も異常は見当たらないわね…。霊力値も種類も特に変わった様子はないし、新種というわけでもなさそうだわ』

「うちらの光武にも異常は見当たらんで?霊子水晶が霊力を受け付けなくなったってわけでもなさそうやな…」


そんな…!?〜〜じゃあ、私達が9人全員で同時にスランプに陥ったとでもいうの…!?

「――あぁ…っ!!あっちから、また降魔が来るよ!?」

「こんな短い間に第三波が…!?」

「……降魔は群れを成すのも稀なはずなのに…、不自然だ…」

「〜〜早く止めなくちゃ…!――えぇ〜いっ!!」

「キエエエエエエッ!!」


――ザクッ!!

「きゃあああっ!!」

「〜〜アイリス…!!」

「大丈夫デスカー!?」

「う、うん…。〜〜おかしいなぁ…?いつもなら簡単にやっつけられるのに…」

「…それに、奴らの飛ぶスピードも異常な速さですわ。まるでカマイタチのような…」

「〜〜ハァハァ…。こんなに強い降魔、初めてです…!」


それに、この生体反応の尋常じゃない数は何なの…!?

ざっと数えるだけでも百…、いえ千近くの降魔がこの近辺にいるってことになるわ!

〜〜こんなの私達9人だけじゃ、とても…!!

「――あらあら、大丈夫?お手伝いしましょうか、かえでさん?」

……くっ、何なの?あのわざとらしい笑みは…!?

〜〜まさか、これも私達がいかに無能かを世間に知らしめる為に桃花さんが仕組んだ罠じゃないでしょうね…!?

「…チッ、銃も効き目がないみたいね」

『――マリア!遠距離攻撃が得意な君と紅蘭と織姫君で陣を組み、これ以上降魔が合流してこないよう食い止めてくれ!』

「了解!」

『かえでさんは残りの隊員と市民の護衛に全力であたって下さい!アイリスは皆の回復に専念してくれるか!?』

「了解よ!」「りょ〜かぁい!」

『準備が出来次第、こちらも翔鯨丸の砲撃で加勢するわ!それまで何とか持ち堪えてね…!?』

「〜〜情けないけど、頼むわね…!――皆、行くわよ!!」

「了解!!」



「…?先程とは打って変わって、苦戦しているみたいですねぇ、帝国華撃団。一体どうしたのでしょう…?」

「〜〜ちょ、ちょいと…!しっかりしとくれよぉ、帝撃さぁん…!!」

「そうだぜ!ちゃんと俺達を守ってくれよぉ〜!!」

「こちとら、明日から花組さんの新しい舞台が始まるってーんで上京してきたばかりなんだ!〜〜憧れの花組さんに会うまで、俺ぁ死ねねぇんだよぉ〜…!!」

「す、すみません…」

「〜〜うぅ…、どうしてこんなことに…。……せめて坊やだけでも…」

「…っ、なるべく固まって…!私達から離れないように!よろしいですね…!?」

(――フフッ、多勢に無勢じゃこんなものね)


批判され、降魔の大群相手に苦戦する私達を桃花さんは心の中で笑っているようだ。

『――市民の皆さんとテレビ局の関係者は、我がP.A.S.S.が用意した避難所へご案内致します。こんなこともあろうかと特殊な結界を施しておきましたので、決して降魔は近寄れないはずです!』

「おぉ、助かるぜ…!」

「あ…っ!〜〜ちょ、ちょっと…!?」


日頃からこういった事態を想定して訓練しているのか、桃花司令の指示を受けたP.A.S.S.の非戦闘員達は用意しておいた別のトラックの中へ報道陣と一般人達を迅速に避難させた。

「ふぃー、助かったぜぇ…」

「さすがP.A.S.S.!もしもの時の避難所まで準備してあるなんて用意周到ですね!我々もここからなら安心して中継を続行できそうです!!」

『フフフッ、それは何よりですわ♪車内には水と食料とお手洗いもありますから、戦いが落ち着くまで、しばらく待機していて下さいね』

「おぉ〜!至れり尽くせりだな」

「お母さん、このお椅子、フカフカだね!」

「そうね。車の周りも社員の皆さんが護衛して下さっていることだし、安心して待っていられるわ」

「なんという配慮でしょう!藤倉社長の人徳がうかがえますねぇ!」


く…っ、また向こうがさりげなくアピールタイムにもっていったわ…!

〜〜やっぱり、このハプニングも前もって番組の演出として決まっていたと捉えて間違いなさそうね…。

「――桃花社長!すぐに降魔を撤退させなさい!!胡桃ちゃんを使って、また自分達の都合が良いように降魔を呼び寄せたんでしょう…!?」

「フフッ、一体何のこと?天下の帝国華撃団が言いがかりと八つ当たりなんてみっともないわよ?それに、降魔を倒せないのは私達のせいじゃなくて、あなた達の力不足が原因だと思うけど?」


〜〜ぐ…っ!……腹が立つけど、確かに証拠もないし、正論だわ…。

「これから先、あなた達・帝国華撃団と私達・P.A.S.S.のどちらが帝都の平和維持に貢献できそうな組織か、この番組をご覧になっている視聴者の皆さんには、よくおわかり頂けるんじゃないかしら?――そうだわ!せっかくだから、番組宛にどちらの組織を支持したいか、視聴者の皆さんに投票してもらうというのはどう?」

「こんな時に何を言ってるのよ!?」

「…あら、ひょっとして私達に負けるのが怖いの?」

「〜〜う…」

「……かえでさん、挑発に乗ったら向こうの思うツボだよ…?」

「…そうね」

「喋ってる暇があるなら、おめぇらも加勢したらどうなんだよっ!?」

「あなた達がいいなら、いくらでも手伝ってあげるけどー?でも、それは自分達の負けを認めるようなものだけど、いいのかしら?」

「…フン、いちいちカンに障る女ですこと」

「藤倉社長、今は勝ち負けや番組にこだわってる場合じゃないと思います!お互いに協力し合って、降魔の大群を撃退する方法を何とか考えないと…!!」

「悪いけど、こちらはもう打開策の目処はついてるの。だから、別にあなた達の助けを借りる必要なんてないのよねぇ」

「でしたら、その打開策とやらを早く見せてご覧なさいなっ!!」

「フフ、いいわよ?ただし、あなた達が素直にギブアップしてくれたらね…♪」

「〜〜く…っ、降魔との戦いはゲームじゃないのよ…っ!?」

「――この感じ…何だろう…?」

「アイリス…?」

「降魔じゃない…、もっと怖い力がお空からやって来るの…!〜〜怖い…!怖いよ、かえでお姉ちゃあん…!!」


お空から…ですって…?

「だ、大丈夫よ、アイリス!皆、ついてるでしょ…!?ね?」

「〜〜う…っ、ひっく…ひっく…」

「――フフフッ、どうやら、この非常事態に帝国華撃団は手も足も出ないようねぇ…♪」


トラックに避難した人達からの信頼を失った視線が痛い…。

ニュース番組のカメラマン達は、万策尽きて桃花さんに言われっぱなしの私達を何台ものカメラで撮影している…。

まるでカメラの向こうからも、この番組を見ている帝都市民達の冷ややかな眼差しが体中に突き刺さるかのような錯覚を覚え、アイリスを抱きしめている私も自然と体が不安と恐怖で震えてくる…。

〜〜くっ、一郎君、あやめ姉さん…!翔鯨丸の砲撃はまだなの…!?


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