大神一郎誕生日記念・特別短編小説2013
「愛の魔法」その3



「…その後、何かわかったか?」

「新宿で蝶の怪人が残していったのと同じ闇の霊力反応をキャッチしたよ。多分『papillon』の商品と、それを買った人だと思うけどね」


宍戸は月組の副隊長。紐育にいる加山に代わり、帝国華撃団・司令の俺に月組で収集した情報を逐一報告してくれるんだ。

「そうか。まだ回収しきれてない商品があったとはな…」

「夢組の調査によると、ブツは有名な時計職人が作った柱時計みたいだねぇ〜。あ、それと購入者の写真もゲットしておいたよ♪」

「あぁ、助かるよ」


アモスが失踪して以来、銀座の街と人々の記憶から忽然と消えたアンティークショップ『papillon』…。今は『悪い魔法使い』に関与している可能性が高いその店の商品をしらみつぶしに回収し、破壊しているところだ。

何故なら、奴らはその店のアンティークを購入した者の霊力を商品を媒介に奪って『悪い魔法使い』の体内に取り込み、その霊力を魔術を使う際に必要な魔力に変換している。そして、十分に魔力を蓄えたところで、再び俺を狙ってくるつもりなんだろう…。

ヴァレリーの話によると、俺の体をある人物の『器』にしたいみたいだが、何故、俺の体でなければならないのか…、奴らの目的は行方不明のアモスに会えずじまいで未だ謎に包まれたままだ…。

「――よく調べてくれたな。ご苦労だった」

「お陰でこっちは正月休み返上よ〜。呑気に年賀状を送ってこられる、うちの隊長が羨ましくてねぇ〜。あの人、ちゃんと紐育で仕事してるのかねぇ〜?」

「ははは…、離れてるとやっぱり寂しいかい?」

「…まぁ、あのとぼけた声が隣で聞けないかと思うとね♪」

「一郎くーん、おせちまだー?」

「――あら…?」


俺を探しに玄関へ来たあやめさんとかえでさんは、俺と話す宍戸の姿を確認すると、真面目な顔で近づいてきた。

「…何かわかったのね?」

「えぇ、未回収の商品が新宿で見つかったそうです」

「これが購入者の雨宮子爵だ。今日はお屋敷で仮面舞踏会ならぬ仮面新年会をやるみたいだから、うまく潜り込めると思うよ」

「〜〜仮面新年会…ねぇ」

「雨宮子爵は西洋かぶれのアンティークコレクターで有名だからねぇ〜。これ、新年会の招待状(偽造品)。2人分用意できたから、あとはお三方で適当にやってくれたまえ♪」

「ありがとう、宍戸君」

「また何かわかったらよろしくな」

「うちの隊長から代わりに大神司令見習い殿を支えてやれって、耳にタコができるほど言われてるからねぇ〜。今度は違うコスプレで会いに来るとするよ。では、アディオ〜ス♪」


宍戸はキザにウィンクすると、人間離れした跳躍力で神社の石段を飛び降りていった。

「〜〜加山といい宍戸といい、顔バレしてるんだから普通の格好で来ればいいのに…」

「ふふっ、二人とも変装がクセになっちゃったんじゃない?」

「それより、新宿へ急ぎましょう。こうしてる間にも雨宮子爵が…!」

「そうですね…!〜〜すみません、あやめさん…。儀式が終わるまでに絶対帰ってきますから…!」

「えぇ…。気をつけて行ってくるのよ…?」


と、あやめさんは俺の額に優しいキスをしてくれた。

「ふふっ、無事に帰ってこられるおまじないね♪」

「あ、ありがとうございます、あやめさん…♪」

「〜〜さっさと行くわよ、一郎君っ!?」

「〜〜ぐえぇ…っ!?かえでさん、首!首締まってますからっ!!」

「ほほほ…!浮気性のワンちゃんを繋いでおくには丁度良い首輪ね〜♪」


俺とあやめさんの仲に嫉妬したかえでさんは、手綱で馬を引く要領で俺のネクタイを強引に引っ張りながら神社の石段を下りていく…!

「――ム…、どこ行くんじゃ?もう儀式が始まるぞい」

「…仕事よ。夕方までには帰るから、子供達のことよろしくねー!?」

「〜〜あ…、お邪魔しましたー…!」

「…まったく、正月じゃというのに、落ち着きのない夫婦じゃのぅ」

「…仕方ないわよ。正義の味方にお正月も何もないわ」


先巫女様は俺とかえでさんを鴬張りの廊下から見送ると、梅茶が入った急須とおせちを運びながら、あやめさんと共に子供達のいる居間へ戻った。

「あれ…?父さんと母さんは?」

「正義の味方で出動中よ」

「え〜っ!?」

「〜〜せっかくカルタ一緒にやろうと思ったのに…」

「ふふっ、すぐに帰ってくるわよ。ママも儀式の準備をしてくるから、おばあちゃまと良い子で遊んでるのよ?」

「〜〜はぁい…」

「仕方ないわよね、帝都の未来がかかっている大事なお仕事ですもの…」

「ほっほっほ、聞き分けの良い子達じゃのぅ。ご褒美に『カルタ女王』と呼ばれたわしが相手してやるわい!」

「わ〜い!やろやろ、おばあちゃん!――」


先巫女様と楽しくカルタ遊びをする子供達にあやめさんは優しく微笑みかけると、静かに居間を後にした。

だが、あやめさんが出て行ってすぐに先巫女様は顔を上げると、あやめさんが閉めていったふすまを睨みつけた。

(――気のせいじゃろうか…?あやめからあの頃と同じ…最終降魔に似た禍々しい霊力を感じたような…)

「…おばあちゃま、どうしたの?」

「…いんや。カルタが終わったら、母さんの儀式を見学しに行こうなぁ?」

「はーい!」「はーい!」「はーい!」

(フッ、霊力の区別もつかんようになってきたとは、いよいよボケが始まったかのぅ…。――何も心配はいらないんじゃ。あの時、確かにあやめの体から殺女は消えたんじゃからな…)




支度が終わると、あやめさんは頬杖をつきながら舞台の階段に座って参拝者達を眺めていた。

「――朱里さんは何をお願いしたんだい?」

「ふふっ、一敏さんとずっと一緒にいられますようにって…♪」

「はは、奇遇だな。僕も君と全く同じことを神様にお願いしたよ――」


あやめさんは幸せそうなカップルを俺と自分に重ね合わせて微笑むと、首から下げたネックレスを巫女装束の上に出して見つめた。

交際を始めてすぐに俺が初めてプレゼントした真珠のネックレス。あやめさん、まだ大事にしてくれてたんだな…♪

『――それが『彼』からもらった宝物なのね…?』

自分と似た声が聞こえてきて、あやめさんはハッと隣を見た。

同じ巫女装束を着て、階段のすぐ隣に座り、ネックレスの代わりに西洋風の髪留めを眺めている自分そっくりの女性…、俺の夢にも出てきた『彼女』がそこにいた。

「わ…たし…?」

『私の姿が見えるのね…?ふふ、舞踊場で交わって、霊力が高まったお陰かしら』

「〜〜あなたは誰なの…?私がおかしな幻覚を見るのも、あなたの仕業ね――!?」


あやめさんは扇子で『彼女』を払おうとしたが、『彼女』はあやめさんの背後の階段に素早く瞬間移動した。

『あなたが見たのは幻覚じゃないわ。私が経験した過去が魂の記憶となって見えただけよ…』

「魂の記憶…?もしかして、あなたは…!」

『――そう、私は藤堂美貴…。あなたが生まれ変わる前の姿よ。そして、あなたのご主人・大神一郎も私の主人・隼人冬牙の魂が生まれ変わった姿…』

「〜〜私と大神君が藤堂美貴と隼人冬牙の生まれ変わりですって…!?」

『霊力が低くならないうちに伝えておくわ。『彼』…、冬牙様を極楽へ導けるように力を貸してもらいたいの』

「『彼』…?ヴァレリーと組んでいる『悪い魔法使い』って隼人冬牙なの!?」


あやめさんの問いかけに美貴さんは静かに頷いた。

『冬牙様は私のせいで悪霊になってしまわれた…。〜〜その時は刻一刻と近づいているわ…。あなたと大神さんが私達の『器』になってしまえば、この帝都はもちろん、異国の巴里までも闇に飲まれてしまうでしょう…』

「どういうこと…?〜〜詳しく説明して頂戴…!」


美貴さんは眉を顰めると、持っていた髪留めをあやめさんの髪につけてやった。美貴さんと冬牙が生きていた当時の日本では珍しかったであろう、その西洋の髪飾りは大和撫子のあやめさんに異国情緒の華を添えた。

「これは…?」

『お守りよ…。何百年も昔の精身体を――この世に具現化するのも――これが――限界…。手遅れに――ならないうちに――『彼』――を――…』

「美貴さん…!?〜〜あ…っ!」


美貴さんは蒸気テレビジョンにノイズが入るように姿と音声を乱しながら、あやめさんの前から消えてしまった。

「消…えた……?」

「――あやめさーん!」


すると、入れ替わるように花組が舞台の階段を上り、あやめの元へ駆け寄ってきた。

「あなた達…!どうしてここに?」

「かすみ達に無理言って、リハーサルの時間を少しずらしてもらったんだ」

「あやめさんの晴れ舞台ですし、皆で見に行こうってことになりまして!」

「稽古の都合で最後までは見られんかもしれんけど、見てるうちいっぱいは精一杯応援させてもらいますわ!」

「私達にとっても日本の伝統文化に触れられる良い機会ですからね」

「ムビョーソクサイの舞!楽しみデ〜ス♪」

「アイリス、お兄ちゃんとかえでお姉ちゃんの分まで応援するからね!」

「楽しみにしてるからな!頑張って、今年一年のあたい達の災厄を払ってくれよ〜♪」

「舞台に立つ副司令のお手並み、拝見させて頂きますわ」

「ふふっ、ありがとう、皆…!」


花組の声援に後押しされて、あやめさんはゆっくり階段を上っていくと、『幸舞の儀』の舞台に足を踏み入れた。

(――美貴さんには悪いけど、今は儀式に集中しないと…!一郎君と高めた霊力が効力を発揮している間に帝都の邪気を払わなくっちゃ…!!)

参拝者達の盛大な拍手を受け、『幸舞の儀』を舞い始めたあやめさん。



――そんな彼女を黒い炎に映し、『papillon』の地下から見ていたのは『悪い魔法使い』ことフランスと日本のハーフの美青年・純と蝶の怪人・ヴァレリーだった。

「フフ、帝都の災厄を防ごうと躍起になってる本人が災いをもたらすことになるなんて皮肉だよねぇ〜♪」

「〜〜純っ!さっさと冬牙様を出しなさいよっ!!出撃前に愛の言葉を頂いて、気持ちを鼓舞させるんだから〜ん!!」

「冬牙はオカマ嫌いのロリコンだから、あんたとは話したくないって〜♪」

「〜〜んな…っ!?それはあんたのことでしょうがっ!!」

「あはははっ!――『その辺にしておけ、純』」

「は…っ!?〜〜と、冬牙様…!!」


会話の途中で冬牙に人格が替わり、冬牙の『器』である純が口調と表情を一変させると、ヴァレリーは慌てて片膝をついてひざまずいた。

『部下に男も女も関係あるまい。私は忠義を立ててくれた全ての者を愛でるとしよう』

「冬牙様…♪あなた様の為にこのヴァレリー、必ずや大神一郎の肉体を手に入れて参りますわ…!!」

『フフ…、期待しているぞ、我が愛しのヴァレリーよ』

「きゃあん♪ウフフッ、ダーリン行ってきま〜す♪ん〜チュッ♪」


上機嫌に出撃していったヴァレリーを見送ると、純の人格がまた表に出てきて、ニヤニヤしながら同じ体にいる冬牙の魂に話しかけた。

「――悪いんだ〜♪美貴さんが戻ったら、ポイ捨てするつもりのくせに」

『…部下とは主人の為に命を投げ出すもの。主人の為に死ねるなら、あやつも本望だろう』


そう言うと、冬牙は黒い炎に映るあやめさんを目を細めながら見つめた。

『――藤枝あやめか…。その舞う姿、我が妻に瓜二つだ…』

「さすが美貴さんの生まれ変わりだよね〜!僕も美貴さん復活に協力するからさ〜、――その見返りに…♪」

『フッ、よかろう。――その暁には純・ピエール・島本、貴様の望みを叶えてやる。お前を苦しめた巴里の街を共に破壊しようではないか…!』

「フフッ、話の分かる上司って、だから好きだよ♪」


冬牙はほくそ笑むと、あやめさんを映していた黒い炎を掌で握り潰すのだった…!



一方、あやめさんの『幸舞の儀』を見ている子供達はというと…?

「――ふわあああ…。……今、何ば〜ん…?」

「…まだ四番よ。終わるまであと十六番」

「〜〜え〜?ひまわり、そんなに起きてられないよぉ〜…」

「ダメよ!ついていく代わりに儀式を最後まで見るって、お約束したじゃない」

「そ、そうだよね…!――あぁ…、でも、笛の音を聞くと…勝手にまぶた…が…」

「〜〜んも〜…、二人がそんなこと言うから…私も眠くなってきたじゃな〜い…」

「…ね〜?今からこっそり抜け出さない?」

「ダメだよぉ…。父さんと母さんとの約束を破ることになるじゃないか」

「邪魔しなければへーきだよ♪街へ行って、パパへのお誕生日プレゼントでも買ってこよ!ね!?」

「でも、出かけるなら、おばあちゃんに言ってこないと…」

「そうよ。急にいなくなったら心配するわ…」

「二十番になるまでに帰ってくれば大丈夫だって!――ほら、早く行こ!」

「あっ、待ってよ、ひまわり〜!」

「〜〜ハァ…、結局こうなるんだからぁ…」




こうして、なでしこ、ひまわり、誠一郎は天雲神社から抜け出し、銀座の街にやって来た。

「わぁ…!お正月だから、どこも混んでるわねぇ…」

「それで、どこへ行くのさ?」

「この前、織姫お姉ちゃんが教えてくれたジェラート屋さんに行ってみようよ♪」

「〜〜お父さんのお誕生日プレゼント買うんじゃなかったの?」

「〜〜しかも、冬にアイスは寒いんじゃないかな…?」

「誠一郎にひまわりの意見を拒否る権利はありません〜!」

「〜〜いてててっ!ほっぺたつねんないでってばぁ〜!!」

「――あら…?」


何気なく中央通りを歩いていると、なでしこがある店を見上げて立ち止まった。

「アンティークショップ『papillon』…?こんなお店、昨日まであったかしら…?」

「う〜ん…、確か由里お姉ちゃんと椿お姉ちゃんが格好良い店長さんがいるって騒いでたような…?」

「可愛いお人形〜!ね〜ね〜、入ってみようよ!」

「あっ、ひまわり…!」


ドアについていたベルがカランカランと軽快な音で鳴って、小さなお客様達を迎えてくれた。

「わぁ〜、外国のお店みたいだね!」

「お洒落な内装ねぇ。商品も素敵な物ばかりだし…!」

「――ね〜ね〜!この子、リコちゃんのお友達にピッタリだよね〜!?」

「それを言うなら、こっちのクマさんも可愛いわよ♪」

「見て見てー!こっちに戦闘機のプラモデルもあるよー!」

「本当ね〜!」「格好良い〜!」

「――いらっしゃいませ。何かお探しかな?」


はしゃいでいる子供達に店長の名札をつけた美青年がニコニコ顔で話しかけてきた。

「〜〜わあっ!?が、外人さんだ…」

「〜〜なでしこ!通訳して、通訳〜っ!!」

「えっ!?えっと…」

「はは、その必要はないよ。僕は店長の純・ピエール・島本。フランスと日本のハーフだけど、ずっと日本暮らしだから日本語はペラペラなんだ」

「そ、そうなんですか…」

「ホッ、よかったぁ…」

「今日はおつかい?小さいのに偉いねー」

「あ…、そんなんじゃないんです!素敵なお店なので、どんな商品があるのか見たかっただけで…」

「見るだけじゃなくて触ってごらんよ。女の子なら、これなんてどうかな?ブルボン王朝のお姫様がしていて流行したブローチなんだけど」

「まぁ、素敵〜!」「わぁ、可愛い〜っ!」

「君は男の子だから、こういうのがいいかな?」

「わぁ、兵隊さんの人形だ!格好良い〜!」


なでしことひまわりと誠一郎が『papillon』の商品に触れると、それぞれの商品に霊力が吸収され、純の頭の中で解析された。

(――ふ〜ん、この子達が例の…ねぇ♪)

純はなでしこ達を見ながら妖しい笑みを浮かべ、舌なめずりをした。

「ひまわり、このお人形とブローチ、買っていこ〜っと♪」

「おばあちゃんからお年玉い〜っぱいもらったもんね!」

「いっぺんに使ったら、あっという間になくなっちゃうわよ?」

「へーきだも〜ん!」

「欲しい物何でも買っていいって、おばあちゃん言ってたもんね〜?」

「んも〜、お父さんのお誕生日プレゼント買いに来たんじゃなかったの!?」

「――パパへの誕生日プレゼントか…。それなら、倉庫に良い商品があるんだ。見ていかない?」

「はいっ、是非!」

「今のひまわり達はお金持ちだから、な〜んでも買えるもんねっ♪」

「〜〜早く帰らないとお母さんの儀式が終わっちゃうのに…。ぶつぶつぶつ…」




店長の純に連れられて、子供達は地下にある倉庫までやって来た。

「わぁ〜、珍しい物がいっぱいだね〜!」

「これ、全部売り物なんですか?」

「売れ残りがほとんどだけどね。在庫を処分しないといけないから、安くしておくよ」

「ありがとうございます!」

「いえいえ♪他にもあるから持ってきてあげるね」

「は〜い!」

「店長さん、良い人でよかったね」

「そうね。それに、ちょっと格好良いし…♪」

「〜〜なでしこって結構、惚れっぽいよね…?」

「〜〜えっ!?べ、別にそういうつもりで言ったんじゃ――!」

「ねぇ、こっちのお部屋も倉庫かな〜?」

「あっ、ひまわり…!」

「〜〜勝手に入ったら怒られ――!?」


なでしこと誠一郎の忠告も聞かずに、ひまわりは隣の部屋の古い扉を開けてしまった。ギィ…とドアが古さできしみ、暗い部屋の中は少しほこりっぽい。

「…何もないや。つまんないのー」

「〜〜真っ暗で怖いよぉ…。早く出よう…?」

「お化け屋敷みたいで面白いじゃん!ちょっと探検してみようよ!」

「〜〜えぇ〜っ!?」

「んもう、ひまわり…!?――」

『――来るな…!!』


その時、聞いたことのある声が3人の頭の中で響いた。

「え…?」

「い、今の声って…!?」

「きゃっ!?〜〜な、何…!?」


すると突然、なでしことひまわりと誠一郎の体が白く光り出し、一筋の光となって集まって、同じ所を照らし始めた。

「こ…っ、これって…!?」

光の先に浮かび上がってきたのは、オーク巨樹の根に囚われたアモスの抜け殻だった…!

「〜〜アモス…!?どうしてこんな所にいるの!?『おーくきょじゅのゆりかご』に帰ったんじゃ…!?」

「わかんないけど、悪い奴に捕まったんじゃないかな…!?」

「〜〜アモス、しっかりして…!今、助けるわね…!?」

「でも、全然動かないよ…?〜〜もしかして、もう死んじゃったんじゃ――!?」

「〜〜変なこと言わないでよっ!!」「〜〜誠一郎の馬鹿〜っ!!」

「〜〜ひぃっ!?だ、だってぇ…」

「――ふ〜ん、やっぱり君達にはアモス君が見えるんだ〜♪」


そこへ、純がニタニタ不気味に笑いながら部屋に入ってきた。

「て、店長…さん…?」

「――やっと会えたね、隼人と藤堂の血が流れる金の卵達さん…♪」


純が立っている床に展開された赤い魔方陣から何本もの黒くて長い手が伸びてきて、なでしこ達を捕まえようとした。

「〜〜これは黒魔術だわ…!」

「まさか、アモスが言っていた『悪い魔法使い』って店長さんなの…!?」

「その通りさ。さすが子供ながらアッパレな推理力だよ♪」

「〜〜僕達を騙したな…!?」

「〜〜アモスにひどいことして…、許さないんだから〜っ!!」

「僕達の邪魔ができないようにアモス君には眠ってもらってるだけさ。ついでに霊力もちょっとばかり拝借してるけどねぇ♪」


純はオーク巨樹の根に魔法陣を展開すると、根っこを通してアモスの体から霊力を奪い、それが全て自分の体に流れるように細工した。

「〜〜アモス…!!」

「〜〜やめてよ…!!アモスが死んじゃう…!!」

「――う〜ん、元気百倍♪さすがパリシィの霊力は格別だねぇ」


純が自身に魔術をかけると、彼は鎧を身に纏い、大剣を携えた中世ヨーロッパの騎士のような姿になった!

「君達のような神の恩恵を受けた子供は芽が出ないうちに殺しておかないとねぇ。ついでにその極上の霊力も頂くとしようか…!」

「〜〜や、やだぁ…」

「〜〜ぐす…っ、父さぁん、母さぁん…」

「〜〜助けてぇ…っ!」


子供達は互いの小さな体を寄せ合って怯えながら、闇のオーラを纏う中世騎士と対峙して後ずさるのだった…!


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