大神一郎誕生日記念・特別短編小説2013
「愛の魔法」その18



『フハハハッ!コレダヨ、コレェ!!力ガ溢レテ止マラナイヨォォォォッ!!』

あらゆる怪人の融合体・キメラと化したピエールは、まさに百獣の怪人と呼ぶにふさわしい異質な存在となってしまった…。

「〜〜それのどこが神よ…!?まるで人体実験に失敗したモルモットじゃない…!」

「〜〜完全に正気を失っているわ…。今の彼に何を言っても無駄よ…」

『これが力を追い求めた人間の末路ですのね…。〜〜なんと痛ましい…』

『…奴はもう手遅れだ。我らの手で苦しまずに逝かせてやろう…』

「あぁ、そうだな…」

『ヒッヒッヒ…!オ前ラノ霊力モ寄コセェェ〜ッ!!』

「きゃあ…っ!?」


なでしこ達に襲いかかろうとしたピエールの熊の腕をアモスは精霊術で刀身を太くした太刀で跳ね返した!

「アモス…!」

『パリシィでない貴様にこれ以上、聖地を踏み荒らされてなるものか!僕は大切に思う全てのものを今度こそこの手で守ってみせる…っ!!』

「アモス…」


下っ端の小精霊とは思えぬ霊力を発動し、凛々しく輝く光のオーラを身に纏い始めたアモスにサリュは思わず舌を巻いた。

『――冬牙様、私の力をお使い下さい!』

アモスは憑依するように冬牙の体に入り込むと、パリシィの力で霊体の冬牙にかりそめの肉体を与え、自身の霊力を真刀滅却に捧げた。

「礼を言うぞ、アモスよ。久方ぶりに万屋大名の人助けといこうではないか!」

『はい!』

「一人で先走るなよ、冬牙。お前には共に戦う仲間がいることを忘れるな」

「仲間…か。フッ、懐かしくて心地良い響きだ…。――共に参ろう、大神一郎!」

「あぁ!」

『あやめさん、私達も援護を!』

「えぇ!――かえで、子供達をお願いね!」

「任せて!」

「えぇ〜っ!?」

「〜〜僕達だって戦えるのにぃ…」

「――キシャアアアッ!!」

「〜〜きゃあっ!?」「〜〜ひええっ!?」「〜〜うわあっ!?」


子供達に襲いかかろうとした降魔をかえでさんは神剣白羽鳥で華麗に斬り裂いた!

「ふふっ、…これでも?」

「〜〜あははは…」

「〜〜おとなしく隠れてまぁす…」

「フハハハハッ!!神ノ力ニ敵ウ奴ナンテ、コノ地上ニイルモンカァァァッ!!」


ピエールのコウモリの口から放たれた強力な超音波を同じ巫女装束を着たあやめさんと美貴さんの二人が並んで手をかざし、霊力の結界を展開・発動して防いでくれた。

「今よ、一郎君!」『今です、冬牙様!』

「はい!」「あぁ!」


俺と冬牙は妻達の声援と後方支援を受けつつ、刀身を霊力で光らせたそれぞれの真刀滅却を手に衝撃波の雨を避けて走りながら、鷲の翼と蝶の羽根が融合した、まだらの翼で浮いているピエールの元へ飛び上がった!

「うおおおおおおっ!!――狼虎滅却ー!!」

「天下無双ぉぉぉぉっ!!」

「グギャアアアアアアアアッ!!」


クロスした俺と冬牙の真刀に同時に心臓を貫かれ、肉体を吹き飛ばされたピエールだったが、すぐに飛び散った肉片が集まり出し、またトカゲの能力で再生を始めてしまった…!

「〜〜くっ、また再生を始めたか…」

「アハハハッ!努力ナンテスルダケ無駄サ!!サッサト僕ニヤラレチャイナヨォッ!!」

『きゃあああっ!!』

「〜〜美貴さん…っ!!」


豹の鋭い爪で引っかかれそうになった美貴さんを冬牙はお姫様抱っこで抱え、素早く救出した!

「傍から離れるな。お前は私が守る…!」

『冬牙様…♪』

「きゃあ♪」

「お父さんとお母さんって、昔っからラブラブだったのね〜♪」

「ラブラブ、ラブラブ〜♪」

「〜〜こら、おとなしく隠れてなさいっ!」


2本の真刀滅却と神剣白羽鳥でピエールと戦う過去と現在の俺とあやめさんの4人をサリュは不思議そうに見つめている…。

「――体中傷だらけなのに…、何の為に戦い続けるんだろう…?パリシィのことなんて彼らには関係ないはずなのに…」

サリュの問いかけに答えるように、オーク巨樹は大きな幹と生い茂る葉を淡く、美しく光らせた。

「…あなたはどうして彼らを信用するの?〜〜僕達は誇り高きパリシィなんだよ…!?なのに、他の民族の力を借りなきゃ現状を打破できないなんて情けないじゃないか…っ」

『――恥じることはありません』

『――私達は同じ人であり、同じ世界に住む対等な仲間…』

『――故に心を通わせ、協力し合うのです』

「え…っ?」


はるか頭上から声が聞こえてきたので、サリュは驚いて顔を上げた。

なんと霊力を奪われて消滅したはずの仮面の精霊達が皆、大樹に集まってきていたのだ…!

「お前達…!どうしてここに…!?」

『オーク巨樹が支配から免れたことで、私達の魂も解放されました』

『この世界を守りたいという彼らの強い意思が暗闇に囚われていた我々に光を差し伸べてくれたのです』

『ですが、未だ多くのパリシィはあの男の中…』

『我々も彼らに力を貸しましょう、我らが母・オーク巨樹の意思に従って』

『同胞を救い、皆が平和に暮らせる世界を創っていく為に…!』


天使のような白い翼が生えた精霊達はサリュの元へ静かに舞い降りると、彼の手を取って輪に加えた。

「人の感情を持たない精霊が意思を持って動いてるなんて…!」

サリュに微笑みかけるように、オーク巨樹もまた優しい木漏れ日をサリュに浴びせた。

(――温かい…。これが彼らが言う愛の力…?こんな優しい光が僕らの中にもあったなんて…)

「――わかったよ、オーク巨樹。もうパリシィの子供達を辛い目には遭わせないからね…!」


サリュは取り戻した霊力を解放すると、自らも純白の翼を生やし、精霊達と一緒にゆっくりと天へ舞い上がっていく…!

「サリュ…!?」

『――大神一郎、君には驚かされてばかりだよ…。あの時、巴里へ来るのが君じゃなかったら、今頃、巴里は僕らのものになってたろうにね…』

『サリュ様、何処へ…!?』

『僕は魂をオーク巨樹に還すことにする。どうか僕らの仲間を君達の手で救っておくれ…!』


サリュと精霊達の魂が光に還ってオーク巨樹の核と一つになると、核は輝きを取り戻して再生を始めた。

すると、オーク巨樹は自身を包む霊力のベールを強力な閃光に変えて全身から放ち、光の霊力を灼熱の太陽のように存分にピエールに浴びせた!!

「ウギャアアアアアアッ!!」

「〜〜サリュゥッ!!」

『――仲間の為に己を犠牲にする…か。ニッポンの武士道というのも…悪くないね…』


サリュの体が核のゆりかごの中へ消えた瞬間、暗闇だった異空間に光が差し込み、さくら君達とエリカ君達の姿が見えるようになった!

「――あら…?私達、いつの間に中枢部へ…!?」

「着弾はバラバラだったはずなのに、全員合流できたなんて奇跡だわ…!」

「皆…!」

「あっ!――皆さ〜ん、大尉さんとあやめさん、発見デ〜ス♪」

「よっ、遅れてすまねぇな!あたい達が来たからにはもう大丈夫だ!」

「〜〜バ、馬鹿ナァ!?ココヲ見ツケラレナイヨウ、空間ヲ細工シテオイタノニ何故…!?」

「きっと、サリュ達が皆をここまで導いてくれたのね…!」

「ちっ、あのピエロ野郎…。バックれようと思ったのに余計なことしやがってよぉ」

「んも〜、ロベリアってば!団結してる時にそういうこと言わないの!」

「〜〜だが、サリュは俺達の為に…」

「大神さん…」

「大丈夫ですよ。オーク巨樹があり続ける限り、パリシィの魂は消えたりしません…!」

「サリュと精霊達は私達を信じて力を託してくれたんですもの。その想いに応える為にも頑張りましょう!」

「かえでさん…。そうですね!――皆も準備はいいな!?」

「うん。皆で力を合わせれば、きっと勝てる…!」

「アイリスも頑張るよ〜っ♪えいえいお〜っ!」

「フフン!まぁ、帝都花組のトップスタァである私が来たからには巴里花組さんの出番は減ってしまうかもしれませんけどねぇ。お〜っほほほ…!!」

「〜〜何を言う、成金め!?日頃の鍛錬の成果、ここで見せてくれるわっ!」

「あははっ、こう人数がおると賑やかでええねぇ♪」

「一郎叔父ー!」


そこへ、新次郎とラチェットがスター機とは違う戦闘人型蒸気に乗って、俺達の元へ来てくれた。

「新次郎、ラチェット…!」

「二人とも無事だったのね!」

「はい、お陰様で!」

「それは…!もしかして双武!?」

「えぇ、グラン・マ司令からのサプライズ・プレゼントよ」

「一郎叔父に届けるよう、僕とラチェットさんは特別任務を命ぜられたんです!」

「そうだったのか…!助かるよ、これがあれば百人力だ!」

「…それで?大神隊長はあやめとかえで、どちらのパートナーと乗るつもりかしら?」

「えっ?そ、そうだなぁ…」


大久保長安を倒す時に一緒に乗ったのはかえでさんだが、霊力の波長が一番シンクロするのはあやめさんなんだよなぁ…。

〜〜う〜ん、これは究極のLIPSだ…。

「ふふっ、何を迷っているのよ?」

かえでさんは微笑むと、俺とあやめさんの手をぎゅっと繋がせた。

「かえで…」

「私の分まで一郎君を頼むわね、姉さん!前世から育んできた愛の力、見せてもらうんだから!」

「かえでさん…!」

「ふふっ、えぇ!行ってくるわね、かえで!」

「こんなこともあろうかと、双武の整備もバッチリしておいたさかい!万全な状態で戦えまっせ〜!」

「お二人の力で怪人をズババババーンと倒しちゃって下さいね〜♪」

「あぁ、任せてくれ!一緒に頑張りましょう、あやめさん!」

「えぇ、一郎君!」


俺にエスコートされて双武に乗り込むあやめさんをかえでさんは羨ましそうに見つめている…。

「フフッ、本当はあなたも大神隊長と乗りたかったんじゃない?」

「〜〜う…。……あとで3人乗りのを造れるか、神崎重工に掛け合ってみるとするわ…」


愛する人と力を合わせて動かす二人乗りの戦闘人型蒸気・双武。

実戦で使うのは今回で2度目だ。うまく動いてくれるといいんだが…。

「ふふっ、そんなに緊張しないで」

「あ、あやめさん…♪」


すぐ隣に乗っているあやめさんは緊張で汗ばんでいる俺の手をそっと握り、優しく微笑んでくれた。

「私達なら、きっと大丈夫よ。目の前にどんな敵がいても、二人一緒なら必ず乗り越えられるわ…!今までもそうやって戦ってきたでしょう?」

「あやめさん…」

「ほら、しっかりしなさい、一郎君!あなたには私がついてるわ…!」


あやめさんの温かい霊力が双武を通して体に伝わってくると、自然と緊張も和らいでいく…。

「あやめさん…っ!」

――ぎゅ…っ!

「あ…っ、一郎君…」

俺に抱きしめられると、あやめさんは笑みを浮かべて静かに瞳を閉じ、抱きしめ返して、頭を撫でてくれた。

「ふふっ、甘えん坊さんね…♪」

――あやめさんの心音と鼓動の速さが俺のと同調していく…。

愛する人が傍にいてくれるだけで、こんなに心強い…!あやめさんと一緒なら、俺はどこまでも強くなれる気がするんだ…!!

「戦いに勝って、一緒に帝都へ帰りましょう、あやめさん…!」

「えぇ、約束よ、一郎君…!」


俺とあやめさんが機内で見つめ合ってキスを交わすと、双武が力強く蒸気を噴射して起動した。

「隊長、出撃命令をお願いします!」

「帝国華撃団の皆、巴里華撃団の皆、俺達に力を貸してくれ!」

「これが最後の戦いよ!皆で私達の世界を守りましょう!!」

「行くぞ!大神華撃団、出撃!!」

「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」

「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」


俺とあやめさんの双武を中心に帝都と巴里、二つの花組の光武が咲き乱れる花々のように色鮮やかに並んだ。

「フハハハッ、神ニ逆ラウ愚カ者ドモメ!オ前ラノ霊力モ全テ奪ッテヤルゥゥッ!!」

「元気になあれ〜♪――イリス・グラン・ジャンポール!!」


ここへ辿り着くまでに降魔達と戦って傷ついた機体がアイリスの霊力で傷が癒えた刹那、すみれ君とグリシーヌは争うように先陣を切った!

「ほほほほ…!粋がっても、あなたの出番はありませんでしてよ?」

「〜〜貴様の方こそ下がっていろっ!――フュリー・ネプチューン!!」

「食らいなさいっ!――神崎風塵流・不死鳥の舞!!」

「ナ、何…!?〜〜グアアアアアアッ!!」


すみれ君の炎とグリシーヌの水の相反する攻撃を避けようとしたピエール。だが、喧嘩しながら放った二人の攻撃は奇妙な軌道を描いたので、ピエールは思惑は外れて命中し、左右の翼をもがれて地面に激突した。

「〜〜ちょいと、グリシーヌさんっ!?海水で私の炎を消そうだなんて嫌味にも程がありましてよっ!?」

「〜〜何を言うかっ!!貴殿こそ攻撃のタイミングを考えたらどうなのだっ!?」

「んも〜!すみれもグリシーヌも力を合わせなくっちゃ駄目だよー!?」

「へっ、あんな陰険女どもなんて放っとけって!あたい達も行くぜ、コクリコ!!」

「了解だよっ♪」

「うおりゃあああああっ!!」


ピエールに向かって突進していくカンナの肩に乗っていたコクリコは身軽に飛び上がると、ステッキを高々とかざした。

「マジックならボクも負けないよ〜!――マジーク・プティ・シャ!!」

コクリコのマジックでピエールの額のユニコーンの角が折れた。

「グアアアッ!!〜〜グゥ…ッ、コシャクナァ…ッ!!」

「へへっ、どこ見てんだよっ!――桐島流奥義・三十六掌っ!!」

「ギャアアアアアアッ!!」


コクリコに気を取られていたピエールの熊の腕をカンナはへし折ると、下段回しで豹の脚もすかさず攻撃し、体勢を崩した。

「へっへ〜!ボクとクレオの勝ちだねっ♪」

「〜〜う〜ん…。その名前で呼ばれると萎えちまうんだけどなぁ…」

「カンナはん、コクリコはん、ナイスチームワークやったで!――ロベリアはん、うちらも負けてられまへんな〜♪」

「〜〜ったく…、何でお前とまた組まなきゃなんねぇんだよ?」

「水臭いですなぁ。武道館で一緒に眼鏡組を組んだ仲ですや〜ん♪」

「〜〜私をそこらの眼鏡キャラと一緒にすんなっ!――デモン・ファルチェ!!」

「ほな、うちも行かせてもらいまひょ!――聖獣ロボ・改っ!!」


四神の聖獣ロボ達がピエールの長い舌を引っ張り出すと、ロベリアが炎の爪で根元から舌を切り裂いた。

「ギャアアアアアアッ!!」

「ふんふん、眼鏡組の連携もなかなかやねぇ〜♪」

「…ケッ、勝手に言ってろってんだ」

「ふふふっ、ロベリアさんたら、あんなに楽しそうに…」

「私達も行くわよ、花火!」

「了解です、マリアさん!」


紅蘭とロベリアの漫才に気を取られているピエールにマリアと花火君はそれぞれ銃口と矢先の狙いを定めると、引き金と弦を引き…!

「シェルクーンチク!!」

「北大路花火、二の舞!落花啼鳥!!」


――ズギューン…!!

――ドスッ!!

「ギャアアアアアアッ!!」

能力を限界まで出し切って血走っているピエールの両方の目をそれぞれ同時に射抜いた!

「フフ、腕は落ちていないようね」

「マリアさんのお力になれて光栄です…ぽっ♪」

「さすがマリアさんと花火さんですね!――エリカさん、私達も頑張りましょう!」

「は〜い!エリカ、今日は覚醒バージョンで張り切っちゃいますよ〜♪」

「えっ?か、覚醒ばあじょんって…!?」


エリカ君は神がかった力を解放すると、自身の霊力とさくら君の破邪の力をパワーアップさせた。

「――さくらさん、主はいつでも私達を見守ってて下さいますよ」

「エ、エリカさん?なんだかいつもと雰囲気が…」

「参ります…!――グラース・オ・スィエール!!」

「えっ?えーっと…!――破邪剣征・桜花爛満!!」

「グアアアアアアアアアッ!!」


さくら君とエリカ君の合体攻撃は、サイや象のように皮膚が固いピエールの腹部を貫通し、大きな穴を開けた!

「きゃあ!やりましたね〜、さくらさ〜んっ♪」

「えっ?そ、そうですねぇ…!〜〜意外に戻るの早かったなぁ…」

「えへへっ!ページ数押してるんですから仕方ないですよ〜♪」

「〜〜レニ〜、私達だけ余っちゃったデ〜ス…」

「帝都花組の方が人数多いからね。行くよ、織姫!」

「新鮮味のないコンビデスけど、仕方ないデ〜スネ…。――ヴィアッジョ・ローズ!!」

「ジークフリード!!」

「グオオオオオオオオッ!!」


織姫君とレニの攻撃で、トカゲというよりドラゴンに近いずっしりした尻尾が切れて、ピエールの体から離れた。

「フフフッ、私とレニが本気を出せばこんなものデ〜ス♪」

「隊長、あやめさん、今だ!」

「あぁ!」

「行くわよ、一郎君!」


俺とあやめさんが霊力の波長と呼吸を合わせて操縦している双武が二本の刀をクロスさせながら足の蒸気を噴射すると、ピエールとの間合いが一気に詰まっていく…!

「これでとどめだぁっ!!」

「狼虎滅却・天地神明ーっ!!」「狼虎滅却・天地神明ーっ!!」


――ザンッ!!

体のほとんどを機能停止にされたピエールが再生を始める前に頭部を斬り落とすことに成功した…!

「はぁはぁはぁ…」

「や、やったか…?」

「あれだけフルボッコにノシてやったんだ。簡単に生き返るわけ――!」

『――フフフ…、君達ニハ学習能力トイウモノガナイミタイダネェ?』


と、ピエールは何事もなかったように全身の細胞を再生させながら不気味に笑い、俺達をドヤ顔で見つめた。

「な、何だと…っ!?」

「〜〜全然効いてないじゃんか〜!!」

『クククッ、惜シカッタネェ。イヤ本当、君達ノ攻撃ハナカナカダッタヨ?ケド、ドウヤッテモ神デアル僕ニハ敵ワナイミタイダネェ〜♪』

「〜〜そんな…。一体どうすればよいのでしょう…?」

『フハハハ!馬鹿ダナァ!!素直ニ負ケヲ認メチャエバ楽ニナレルノニ…!!』

「きゃあああーっ!!」「きゃあああーっ!!」


くそっ、このままでは俺達の体力ばかり削られていく…!

〜〜やはりピエールを倒すのは無理なのか…!?

「――!今の霊力の流れは…!」

「あやめさん…?何かわかったんですか!?」

「えぇ。おそらく美貴さんも同じ反応を感じたと思うんだけど…」

『えぇ、かすかにですが、彼の体内で闇の霊力が渦巻くのを感じました。今回は大きな傷を負ったせいで再生に時間がかかり、隙ができたようですね』

「つまり、ピエールの弱点がわかったということですか!?」

「断定はできないけど、その可能性が高いわ…!――かえで、ピエールが体を再生する時に霊力を集中させている箇所を見つけたの。大まかなポイントを転送するから、一郎君の光武で解析できる?」

「やってみるわ!」


かえでさんはズタズタにされた俺の光武Fに乗り込むと、搭載されているコンピュータを動かして、ピエールの体内の霊力反応を調べてみた。

幸い、コンピュータは破損していなかったようで、結果がすぐにモニターに映し出された。

「一瞬だったけど、霊力が集まった場所を特定できたわ!そっちへ転送するわね…!」

かえでさんが送ってくれた映像が双武のモニターに映し出された。

「首の後ろか…。そこを集中的に攻撃すれば再生を止められるかもしれませんね!」

「えぇ、あとはどうやって隙を突くかだけど…」

『――その囮役、我々が引き受けよう…!』

「ハ…ッ!冬牙…!?」

「美貴さん…!」


冬牙と美貴さんは舞い上がり、支え合いながら共鳴し合う霊力を掌から同時に放つと、破邪の力で結界をつくり、ピエールを閉じ込めた!

『〜〜ウグゥ…ッ!!オノレ、死ニゾコナイメェ…』

『侘びがまだだったな。我らの力、そなた達に授けよう!』

『今こそ裏御三家の名にかけ、魔を滅する時です!』


そう言うと、冬牙と美貴さんの精身体は俺とあやめさんの体にそれぞれ入り込み、霊力を強化してくれた。

「胸が熱い…。この力は…!」

『――あやめさん、私と冬牙様の愛の力、受け取って下さいまし…!』

『――そなた達の愛でこの世界を救うのだ…!!』

「ありがとう、冬牙、美貴さん…!」


過去と現在の隼人と藤堂の当主の魂がリンクして強い霊力が俺とあやめさんの中に流れ込んでくると、双武の霊力の輝きも一層増した…!

――これならイケる…!!

俺とあやめさんは凛々しく頷き合うと、手を重ねて臨戦態勢を取った。

「お父さん、お母さん!頑張って〜!!」

「パパ〜、ママ〜!やっちゃえ〜っ!!」

「僕達も応援してるからね〜っ!!」

「あぁ!」

「一郎君、あなたがいてくれれば私、何も怖くないわ…!」

「あやめさん…!」


体が軽い…!あやめさんとの愛が俺を強く前へ押し進めてくれる!!

「〜〜グオオオオッ!?ナ、何ダヨ、コノ光ハ…!?体ガ焼ケルゥゥ〜!!」

「どんな大掛かりな手品にも必ずタネはあるものよ!」

「俺とあやめさんの愛の魔法はお前の黒魔術なんかに負けたりしない!」

「――狼虎滅却・震天動地ぃぃぃぃっ!!」「――狼虎滅却・震天動地ぃぃぃぃっ!!」

「ヤ、ヤメロォッ!来ルナァァ…ッ!!〜〜グギャアアアアアアア〜ッ!!」


結界の影響で動けなくなったピエールの首の後ろを双武の刀で貫くと、ピエールの肉は剥がれ落ち、骨と筋肉も朽ちていき、やがて刀に貫かれている核だけが残った。

『オオオオォ…、集メタ力ガ抜ケテイクゥ…!〜〜死ニタクナイヨォ…!!でぃゆーニナッテ復讐ヲ果タスマデ…、僕ハ終ワレナインダヨォォ…ッ!!』

『……復讐に燃える心は、やがて己の身も焼き尽くす…。魂を天へ還し、また新たな人生を歩むがいい』

『力に囚われし哀れな子よ、安らかにお眠りなさい…』

『〜〜イヤダァアアアアアアアアア……!!』


冬牙と美貴さんの力を借りて、俺とあやめさんで光の霊力を注ぎ込むと、ピエールの核は粉々に砕け散った…!


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