冥王せつな誕生日記念・特別短編小説2017
「愛の思い出」その7



『――……な……。………つ…な……!……せ……つ…な…!――せつな…っ!!』

「――っ!?」


普段聞き慣れている、落ち着いた温かみのある声で自分の名前を呼ばれ、遠くなりかけていた意識を私はハッと取り戻した。

『よかった…!やっと通信が通じたようね』

気が付くと、私と瓜二つのスーパーセーラープルートが全身から不思議な光を放ちながら、世界に一つだけの…私だけの武器であるはずのガーネット・ロッドを持って目の前に立っていて、黒と紫のマーブル状で覆われた異様な亜空間の中に私と一緒に立っていた。

「〜〜わ…、わ…たし…っ!?」

『正確に言うと、私は並行世界のあなた』

「並行世界…?」

『あなたが暮らす世界とは、ほんの少しだけ違う世界…。例えば、あなたがAかB、どちらかを選択しなければならなくなった時、あなたはAを選んだとするわ。そこで選択しなかったB…、つまり、ほんの些細な選択だったとしても、あなたが選ばずに体験しなかった世界がこの時空を隔てて無数に存在しているの。あなたが暮らす世界も、私が暮らす世界から見たら並行世界の中の一つに過ぎないのよ?』


並行世界…。フィクションの中にしか出てこない、実在しないものだと思っていたのに…。

「それじゃあ、あなたが衛さんと付き合っている、この世界の冥王せつななのね…!?」

『えぇ。あなたの技とギャラクシアの技がぶつかったせいで時空の揺らぎが発生してしまって、そのブラックホールから、すぐ近くに存在する私の世界にあなたは入り込んでしまったというわけ。でも、同じ世界に同じ人物が存在することは出来ない…。だから、代わりに私があなたの世界に弾き飛ばされてしまったのよ』

「そうだったの…。〜〜私の世界の戦いに巻き込んでしまったみたいで、ごめんなさいね…」

『あなたが謝る必要はないわ。あの状態でギャラクシアと一人きりで対峙していたら私だって、あなたと同じことをしたと思うもの…』

「ありがとう…。それを聞いて少し気持ちが楽になったわ」

『それに、並行世界や時空の揺らぎに関する良い勉強にもなったしね。いくら時空の扉の番人とはいえ、並行世界の存在を知ってしまうのは本来であればタブー…。でも、あなたは立派に使命を果たそうとしたからと我らが父・クロノスが特別に許して下さったそうよ』

「ホッ、よかったわ…」


この体を巡る時の神・クロノスの血…。私はまだ会ったことがなくて、神様なんていう人の顔も知らないけど…。

『でも、あなたの世界に行って驚いたわ…。この世界のあなたは…その…、〜〜衛さんとは…』

「……」


私と容姿が全く同じで、全く同じ名前が付いた全く同じ性格の人間で、十番高校の養護教諭という全く同じ職業を選んでいる上、月のプリンセスをお守りする冥王星を守護に持つ変革のセーラー戦士という全く同じ使命を背負っているはずなのに…。

〜〜それなのに…、この世界の私は衛さんと幸せにお付き合いできているなんて…。

「……気にしないで?私は、それでも幸せにやってるんだから…」

『〜〜…』

「…ふふっ、もうこの話はおしまいっ!それより、どうすればお互い元の世界に戻れるのかしら…?」

『…調査して気がついたんだけど、あなたが私の世界の住人と接したり、話したり、触れ合ったりして絆を深めることで、時空の揺らぎが少しだけど、ギャラクシアの技とぶつかった時と同じように発生することが分かったの。その揺らぎから生じた時空の裂け目を通じて何度か呼びかけているうちに、今回こうして通信に成功したってわけ!』

「〜〜私が今日、不自然に何回も気絶してるのは、あなたの仕業ね…?」

『ふふっ、そういうことになるかしらね?あなたが私の世界の衛さんと肉体的に深い繋がりを持ってくれたお陰で、ますます通信が入りやすくなったんじゃないかしら♪』

「〜〜う…♪それぞれ別の世界で暮らす私とあなたの世界の衛さんは本来なら決して交わることはない…。突然のことで予定外だったけど、逆に功を奏したわけね?」

『えぇ。…――っ!?』

「ハ…ッ!?〜〜時空の扉が…!?」


時空の扉に再び何者かが侵入しようとしている気配を私ともう一人のプルートは同時に感じ取った…!

『…どうやら、あなたが異空間に閉じ込めたセーラーギャラクシアが自らの封印を解こうとしているようね。あなたがギャラクシアを封じた異空間というのが実は私の世界なの…』

「そんな…!〜〜私ったら…、なんていうことを…っ」

『気に病むことはないわ。それより、ギャラクシアが封印を完全に解いてしまうまで、あまり時間がないわ。このままだと、すぐに私の世界にもギャラクシアがやって来るわ…。正確に言えば、あなたの世界のギャラクシアが…ね』

「どうすればいいの…!?〜〜また同じ手で封じ込めても、今度はまた別の並行世界が…」

『本来なら、私の世界のギャラクシアが地球に攻めてくるのは30世紀より、ずっと後…。私の世界の彼女は今もカオスを自らの体内に封じ込めたまま、自我を保てているわ』

「カオス…?」

『フッ、時が来れば嫌でもわかることよ。私達が互いに元の世界に帰るには、もっと時空の揺らぎを大きくしなくてはいけない…。…つまり、それはギャラクシアの解放も意味するわ。〜〜でも、並行世界と並行世界の間に不自然な時空の歪みが中途半端に長い期間、生じたままの状態が続けば、いずれ私達2つの世界が共に消滅してしまう…!だから、私達は何としても、それぞれが元の世界に戻ることが出来るほどの大きな揺らぎを出来るだけ短い期間で発生しなくてはいけないの…っ!』

「それには、私とあなたの世界の衛さんがもっとたくさん交わうのが一番の近道ってことね…!?」

『えぇ。肉体だけじゃなくて、魂と魂の精神的な深い繋がりも大切よ?違う世界のあなたと衛さんの心と心が通い合えば合うほど、大きな揺らぎも発生しやすくなるわ。〜〜私も協力してあげたいけど…、あなたの世界の衛さんは、うさぎちゃんと付き合ってるんですものね…』

「……えぇ…」

『〜〜私とあなたは同じ人間だから、痛いほど伝わってくるわ…。あなたが私に負けないくらい衛さんを愛しているということがね…。〜〜いつも、こんなに辛く切ない気持ちにあなたはあの世界で耐えているのね…?』

「……これも孤独の番人に課せられた試練だと思えば…ね」


並行世界のプルートは私を不憫そうにしばらく見つめると、やがて切なそうに微笑んだ。

『…今からあなたを私の世界へ戻すわ。――忘れないで…。どれだけあなたが深く衛さんと愛し合えても、私の世界には長くはいられないということを…』

「…えぇ、わかってるわ」

『…っ!』


そして、スーパーセーラープルートは涙ぐみながら、私の体を強く…、優しく抱きしめてくれた。

『それまで私の世界を満喫してね…?』

「……ありがとう…」


プルートがガーネット・ロッドを高々と掲げると、ガーネット・オーヴが光って、その光が暗い異空間の中に光の道を作ってくれて、私に道筋を示してくれた。

『そうだわ…!寝室のクローゼットを覗いてみて?きっと良い物が見つかるはずよ…♪』

「…?良い物…?」

『ふふっ、せっかくのお誕生日ですもの!衛さんとの思い出、たくさん作ってね…♪』


並行世界のプルートに笑顔で見送られながら、その光を辿って歩いていくうちに、だんだんと強烈で眩い光に包まれていって…、私は夢のような幻想世界から抜け出して、ゆっくり瞳を開けた。

「――せつな…!」

「――う…ん…」


気が付くと、私は寝室のベッドに横になっていた。

衛さんも心配そうな顔で私を見つめてくれている…。どうやら、保健室で失神した時と同じように私が目を覚ますまで、ずっと傍についててくれたみたいね…♪

「衛さん…♪」

「きっと長いこと風呂場にいたから、のぼせたんだな…。大丈夫か?」

「えぇ、もう大丈夫よ。――ありがとう。ずっと傍にいてくれたのね…♪」

「あぁ、もちろんだ。無理させて悪かったな…」

「ううん、いいのよ。衛さんがこうして想ってくれているだけで…私、幸せだもの…♪」


衛さんは微笑みながら、優しく私の頭と髪を撫でてくれた。

いつの間にか、私は裸ではなく、お洒落なシルクのベージュ色のパジャマを着ていた。

あの後、倒れた私が風邪を引かないように衛さんが着せてくれたらしい。

「そのパジャマ、この前、一緒に買いに行ったペアのやつ。よく似合ってるよ」

「そう?ふふふっ」

「あの時はさ、店員に『新婚さんですか?』って聞かれて、ちょっと照れくさかったよな…♪」


これ、衛さんとお揃いのパジャマなのね。

何だか恥ずかしいけど…、ふふっ!とっても嬉しいわ…♪

「腹は減ったか?食べられそうなら、温め直すけど…?」

「え…!?〜〜もう10時…っ!?〜〜大変…っっ!!」

「まぁ、その…なんだ…♪キングと俺の2人連続して激しくヤッた後だからか、気持ち良さそうに寝てたぞ?」

「〜〜はうぅ…♪」

「出来たら呼びに行くから、せつなは横になってろよ。…な?」


衛さんは私の頭をポンポンすると、今さら照れくさくなって真っ赤になった顔を隠したいのか、少しうつむき加減で寝室を出て行くと、静かにドアを閉めてくれた。

〜〜あぁ〜ん、もうっ!!何だか思い出すと、私まで恥ずかしくなってきちゃったわ…っっ♪

『――ああああああああああんっ!!ま…っ、衛さぁん…♪』

〜〜私ったら…、衛さんの前で、あんなにふしだらな声をあげて、淫らな姿を晒しまくって…♪

言い訳に聞こえちゃうかもしれないけど…私、ホログラムのキング・エンディミオン様以外の男の人に…、生身の男性に抱かれたのは初めてだったんですもの…。

――でも、私の初めてを愛する衛さんに捧げられて良かった…♪しかも、お誕生日の前の日になんて…♪ふふふっ!いやああ〜んっ♪

…などと、私が興奮しながら真っ赤な顔を両手で覆ってベッドの上をゴロゴロしていると、衛さんが使っていると思われる大きなクローゼットが目に入った。

『――寝室のクローゼットを覗いてみて?きっと良い物が見つかるはずよ…♪』

ベッドがあるし…、寝室のクローゼットって多分これのことよね…?

〜〜人の家の物を勝手に物色するなんて本当はいけないことだけど…、事情が事情だし、今はそんなこと言ってられないわ…っ!!

――ギィ…!

「…!この服は…」

きっと、これはこの世界の私が自分の誕生日用に用意したものだと一目見て、すぐに理解した。

私は感激しながら、それを抱きしめると、一旦クローゼットに戻して、顔を洗って準備をしようと洗面所に向かった。



歯ブラシスタンドには、黒色と白色の歯ブラシがペアで置かれている。

きっと白い方のは、この世界の私が使ってる歯ブラシなんだろうな…。

『――忘れないで…。どれだけあなたが深く衛さんと愛し合えても、私の世界には長くはいられないということを…』

……もう10月も終わる頃なので、水道の水がひんやり冷たくて、毛穴がキュッと締まる。

…現実に戻り、心を引き締め直すには丁度良かった。

水滴をタオルで拭い、まるで戦闘準備のように深紅の口紅を塗り直し、ファンデーションやアイラインを塗り直してメイクアップし直した自分の顔を鏡越しに見つめた。

〜〜もうあまり時間がないわ…。ギャラクシアの復活も近い…。

いつまでも、こうして違う世界の衛さんと甘い幸せに浸っているわけにはいかないもの…。

「――ここにいたのか。お待ちかねのディナー、準備できたぞ」

そこへ、寝室にいない私を探していたと思われる衛さんが洗面所に顔を出して、ようやく私の姿を見つけたとばかりに安堵の表情を浮かべた。

「…ちょっと待って。その前に着替えてきてもいいかしら?」

「?別に構わないが…」

「ふふ、ありがとう。――すぐに済むから、ちょっとだけ待っててね…♪」


私は笑顔で衛さんに軽く手を振ると、寝室に戻ってドアを閉めた。



ダイニング・キッチンに戻った衛さんはエプロンをしてソースを煮込んでいるらしく、味見をして鍋の様子を見ながら私が来るのを待っていた。

「せつな、遅いなぁ…。何やってるんだろう…?」

「――遅くなって、ごめんなさい…!着るのに、ちょっと手間取っちゃって…」

「…っ!」


私の声が聞こえてきた方に顔を向けた衛さんは思わず頬を紅潮させ、味見していたソースを吹き出しそうになった…!

「ふふっ、どうかしら…?」

冥王星のカロン・キャッスルで生まれた、上品で美しい大人のプリンセス…、プリンセス・プルートをモチーフにしたと思われる、黒を基調としたロングドレスを着て、肘ぐらいまでの長さがある黒の手袋に、黒いピンヒール靴を履いた私を衛さんは目を輝かせながら見つめてくれた。

「テーマは『エンディミオン様主催の晩餐会に招待されたプリンセス・プルート』よ♪」

「すごく綺麗だよ、せつな…!誕生日に、俺の為にドレスを作って着てくれるって言ってたもんな♪」

「ふふっ、ありがとう。衛さんの為に特別にメイクアップしたのよ…♪」


デザイナーに憧れていた時期があったから、こういう服を作るのも実は得意なのよね…♪

うさぎちゃん達とのハロウィーン・パーティーでも、張り切って衣装作っちゃおうかしら。

「俺もタキシード着た方がいいかな…?」

「ふふっ!ご自由にどうぞ、エンディミオン様♪」


衛さんはとりあえずエプロンを外すと、プリンスらしく私の手を取って、手の甲にキスしてくれた。

「我が晩餐会へようこそ、プリンセス・プルート。こちらへどうぞ」

「ふふっ♪お招き頂き感謝しますわ、エンディミオン様」


衛さんに手を引かれてダイニング・テーブルの椅子に座らせてもらうと、テーブルの上に、お洒落で高級そうな料理が乗った皿が所狭しと並べられているのがわかった…!

「すご〜い!これ全部、二人で食べ切れるかしら…?」

「時間がなかったから、ほとんど買ってきたものだけどな…。――でも、これは俺の自信作なんだ…♪」


と、衛さんはバラがプリントされたフライパンからトングで茹でたてのパスタを私の前にあるお皿に盛り付けると、その上に自慢のお手製トマトソースをたっぷりかけてくれた。

「せつなの為に昨日から仕込んでおいたんだ」

「フフ、衛さんって一からソースを作る派ですものね?」

「あぁ、料理に関しては妥協しない主義なんでね♪それじゃ、食べようか?」

「えぇ!――ねぇ、これをかけない?ウィーンで収録したっていう、みちるの新作CDよ」

「おっ、晩餐会にはピッタリじゃないか…!さすが、せつなは用意周到だな?」

「ふふ…っ♪」


これも実はドレスと一緒にクローゼットに入ってて、並行世界のプルートが用意してくれたものなんだけどね…♪

ワイヤレススピーカーから、みちるの優雅なヴァイオリンの音色が流れてくると、衛さんは部屋の電気を消して、テーブルの真ん中に用意しておいたキャンドルに灯りをともした。

「素敵…♪お洒落なレストランにいるみたいね」

「そうだろ?――改めまして、誕生日おめでとう、せつな」

「ふふっ!ありがとう、衛さん♪」

「…んで、今年でいくつになったんだっけ?」

「……歳の話はしたくありませんっ!」

「〜〜ちぇっ!今年こそ、せつなの年齢がわかると思ったのになぁ…」

「ふふっ、婚姻届を書く時までのヒ・ミ・ツ・よ♪」

「ははっ、その時が楽しみだよ」


衛さんは冷やしておいたワインボトルの栓を慣れた手つきで抜くと、私の分のワイングラスに注いでくれた。

「やっぱり、トマトソースパスタにはフルーティーな白ワインだよな?」

「ふふ、そうね。――乾杯…っ♪」

「乾杯…!」


衛さんと私のグラスがぶつかって、チン…!と心地良い音を立てた。

「う〜んっ♪このパスタ、美味し〜い!このワインによく合うわぁ〜♪」

「だろ?隠し味は…」

「麻布十番商店街のマルシェでしか売ってない、特製トマトケチャップ!」

「正解!さすが料理好きのせつなだな。こうして共通の話題で盛り上がれるから嬉しいよ」

「ふふっ、私もよ…♪」

「ケーキの方も期待しててくれよな!今年は麻布エトワールのザッハトルテだぞ?」

「あの人気店の…!?行列に並んで、わざわざ買って来てくれたの…?」

「まぁな。せつなの喜ぶ顔が見たくてさ…♪」

「衛さん…♪」

「バースデー・ディナー、喜んでくれたみたいで良かったよ。俺が大学を卒業して就職したら、高級レストランにも連れて行ってやるから…。…それまで我慢してくれるか?」

「もちろんよ。高級レストランなんかで食事しなくても、こうして衛さんがお祝いしてくれるだけで私は幸せですもの…♪」

「ありがとう、せつな。プレゼントは明日、二人で買い物しながら決めるって約束だったよな?せつなの欲しい物、買いに行こう…♪」


私にこれ以上、欲しい物なんてないわ…。

衛さん…、あなたがこうして私の目の前に座って、私をまっすぐに見つめてくれている…。それだけで、私は何もいらないもの…。

「愛してるよ、せつな」

――どうして、この世界のあなたは…、そんなに私に優しいの…?

〜〜私は今までの人生のどこをどう選択したら、こんなあなたと巡り会うことができたの…?

〜〜そんなに優しくされたら…、元の世界に戻る時に余計に辛くなっちゃう…っ。

「……せつな?どうした、ボーッとして…?」

「…ううん、何でもないわ。食事が終わったら…、お皿、洗わせてくれる?ご馳走になりっぱなしじゃ悪いもの」

「メイドじゃないんだからさ、恋人に対してまで、そんな気を遣うなって。誕生日の時ぐらい、ゆっくりしろよ?」

「でも…」

「…あ。でも、せつなのメイド姿って結構イケてるかもなぁ?黒のメイド服にカチューシャつけて、『ご主人様の衛様、お慕い申し上げます♪』…って」

「んもう、衛さんったら。ふふふふ…っ!」


メイド服を着た自分の姿を想像して笑った私を衛さんは見て、優しく笑みを浮かべた。

「やっと、いつものせつなに戻ったな」

「…え?」

「心配してたんだ…。今日の君は俺の知らない…、どこか寂しそうな顔を時たま見せるから…」

「…っ!」

「何だか俺の知ってるせつなが遠くへ行ってしまっているようで怖いんだ…。〜〜もうこのまま君を離すものか…っ!!」


衛さんはそう言うと、黙って口を一文字にきゅっと結び、私の方へ来て、力強く抱きしめてくれた。

「衛さん…」

……衛さん、何となく気づいているみたいね…、私が自分の知ってる冥王せつなじゃないってこと…。

〜〜やっぱり、衛さんはごまかしきれないな…。それだけ…、この世界の衛さんは、この世界の私のことをよく知ってて、いつも気にかけてくれてるってことなんでしょうけど…。

「――安心して。あなたの知ってる私は明日の誕生日に帰って来るから」

「…?どういうことだ?」

「ふふ、明日になればわかるわよ。――それより踊りませんか、エンディミオン様?」

「え…っ!?きゅ、急にどうしたんだ、せつな…っ?」

「たまには、いいじゃない。――今のうちに衛さんとの愛の思い出を…、少しでも増やしておきたいんですもの…」


私のどことなく切なく、儚い表情に衛さんは何かを感じ取ったのか、私の手を取って体を抱き寄せると、CDのみちるのヴァイオリンの演奏に合わせて優雅にワルツを踊り、リズムに体を揺らし始めた。

「俺に合わせて、ステップを踏んでごらん」

「えぇ。ダンスなんて初めてだから、上手く踊れないかもしれないけど…」

「その割にはリズム取れてるじゃないか。――もっと体を寄せてきて…」

「あ…っ♪」


衛さんの手の温もりを背中と腰に感じながら、プリンスらしいたくましい胸板にそっと体を預けてみる…。

舞踏会で王子様と踊るシンデレラって、きっとこんな気持ちだったんでしょうね…♪

「皿洗うのは明日でいいよ。寝室でワインの続きを飲もうか?」

「えぇ…♪」




食事を終えて寝室に戻ってきた私と衛さんは、さっきまで私が横になっていたフカフカの衛さんのベッドに二人並んで腰掛け、ワイングラスをサイドテーブルに置いて、電気を点けない部屋で一層映える麻布十番の…、都会の美しい夜景を一緒に眺めている。

「夜景が綺麗ねぇ…」

「昔はこの夜景を眺めながら…、夢に出てくるセレニティによく想いを馳せていたものだよ…。――けどプルート、今は転生した君が俺の傍にいてくれる…」

「衛さん…」

「前世では出会えなかった為に一緒になれなかったが…、現世では幸せになろうな…♪」

「えぇ…♪」


お慕いする衛さんに愛の言葉を囁かれ、私はうっとりしながら衛さんの胸板に寄り添った。

抱き合い、ワイシャツを通して伝わってくる衛さんの優しい温もり…。

「〜〜帰りたくない…っ」

「帰る必要ないじゃないか。今日は泊まっていくんだろ?」

「泊まっていくけど…、〜〜私が言いたいのは、そういうことじゃないのよ…っ」

「せつな…?」

「……このまま、ずっと離さないでいてくれる…?」

「あぁ、もちろんだとも。これからも俺達はずっと一緒だ」


〜〜出来ることなら、このまま時間を止めてしまいたい…っ!!

たとえタブーを犯したせいで命が尽きることになっても…、この世界にいたまま衛さんの腕に抱かれ、愛されたまま死ねるなら本望だわ…!

「はは、ワインが強かったかな…?今日はもう寝るか?その代わり、明日は早く起きて――」

「私なら、まだ平気よ?〜〜お願い、私を抱いて…っ!!」

「せつな…。でも、今日は君も疲れて――!」

「お願いよ、衛さん…っ!〜〜今は私だけを見て…!私だけを愛して…っ!!」

「せつな……」


もっと衛さんと愛の言葉を囁き合い、セックスの回数を重ねて、時空の歪みを大きくしなくては…!

〜〜それに、もう二度と…、こんな風に衛さんの腕に抱かれて眠る夜が来ることはないだろうから…っ。

「何も心配するな…。今は何も考えなくていい。新しい敵のことも、プリンセスを守る使命も…。――今はただ、俺に全てを委ねてくれればいいから…」

「衛さん…」


衛さんは私をベッドに優しく押し倒すと、私を抱きしめながら唇を重ね、甘い吐息と共に舌を絡ませてきてくれた。

「んふぅ…っ!くちゅう…♪はぁ…はぁ…っ、大好きよ、衛さぁ…んっ!愛してるわ…♪」

「俺も愛してるよ、せつな…♪」


その時、お洒落なガラステーブルの上に置かれていた衛さんのスマホがブルブル震え、『Happy Birthday!せつな』という画面で部屋にわずかな灯りをもたらした。

「十二時過ぎたみたいだな。――誕生日おめでとう、せつな…♪」

「ありがとう、衛さん…♪〜〜んん…っ!…あん…っ!?」

「ちゅ…っ♪――ドレス…、シワにならないようにするから…」


衛さんは私の唇と首筋を重点的に責めてきながら、私の黒いドレスを器用にはだけさせ、徐々に脱がせていく…。

「ハァハァ…ッ。ああぁ…っ!お酒が入って…っ、余計感じちゃうぅ…っ♪」

「…チュッ♪――こうやってキスだけで焦らされるの…、せつな、好きだろ?」

「え、えぇ…。もっとエッチなことをプルートにいっぱいして下さい…っ!私…、お慕いするエンディミオン様のどんな要望にもお応えしますから…♪」

「おっ、言ったな?じゃあ、今度はもっとアブノーマルなこともしてみるか…♪」

「え…っ?〜〜きゃあああっ!?」


衛さんは私を大きく開脚させると、プリンセス・プルート風のロングドレスのスカートの中に頭を突っ込み、舌や指で私のアソコを責めだした。

「あ…っ、あああ…!〜〜えっ!?いやあああああっ!!それはぁ…っ、ダメェェ〜ッ♪」

「…お慕いしてやまないエンディミオン様のどんな要望にもお応えするんだろ?」


――くちゅくちゅくちゅ…っ!!

「いやああああああ〜っ!!あああああああああああ〜ん!!だからって…っ、そんなもの突っ込まないでぇ〜っ♪」

――グググゥ…ッ!!ヴヴヴヴヴヴヴ…ッ!!ググググググググ…ッッ!!

「んひいいいいいいぃ〜っ!!最初から激しすぎるぅぅ〜っ♪これぇ…、らめぇ…!気持ち良すぎてダメになるぅぅっ!!…あひぃっ!?〜〜あおぉっ!?らっ、らめぇ…!?いやあああ〜っ!!イッちゃぅぅぅぅぅ〜っ!!」

ロングスカートで隠れちゃってるせいで衛さんが私に何をしているのか、よく見えないからわからないでしょうけど…。

〜〜うぅ…。恥ずかしくって、私の口からは言えないわ…♪

「…プリンセス・プルートがそんなはしたない声を出していいのかな?」

「〜〜う…。ご、ごめんなさい…。どんなにアブノーマルなプレイでも…、衛さんが望まれるのであれば、せつなはヤり抜いてみせますわ…っ」

「フッ、健気な乙女は大好きだぞ…♪じゃ、今度は尿道と浣腸プレイでもやってみるか?」

「えぇっ!?〜〜そ、そんな…!せっかくのドレスが汚れてしまいます…っ」

「エンディミオン様の命令は絶対、だろ?」


――ズブウウウウウウウウウウウゥゥゥ…ッ!!

「きゃあああああ〜…!?あはあああああああぁ〜んっ!!エンディミオン様ぁ〜っっ♪」

こうやって、いつまでも衛さんに甘えて、激しく体を求め合って一つになり…、愛してるってたくさん伝えておきたい…。

愛する衛さんのお傍で…、時間の許す限り、ずっと…。


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