冥王せつな誕生日記念・特別短編小説2017
「愛の思い出」その2



「――私はギャラクティカ帝国総帥・セーラーギャラクシア…!!」

「〜〜…っ!?」


――ガク…ッ!!

ギャラクシアが威勢良く名乗りを上げた瞬間、さらに強力な黄金色のオーラの圧が彼女から発せられたのを私は怖いくらいに感じた。

悪魔の笑みを浮かべた、妖しくも禍々しい黄金色のオーラを放つ謎のセーラー戦士に私は自分でも驚くほどあっけなく…、屈辱的にも膝をついてしまった…!

「ふははは…!そうだ、我にひれ伏せぇっ!!私はいずれ、この銀河中を支配する覇者となる者だぁっ!!」

「〜〜くぅ…うぅ…っ」


〜〜ダメ…っ!ギャラクシアを直視しようとしただけで、こんなに体の震えが止まらないなんて…っ!!

これはマッドドッグの毒のせいなの…!?

〜〜目に見えない力にこんなに圧倒されるなんて…、初めて…っ!!

「話は聞かせてもらったぞ、冥王星のプリンセスとやら。せめてもの手向けだ。お前のセーラークリスタルと地球を司るスターシード、この私が共に並べて毎日鑑賞してやろう」

「ハァハァ…。そんな…こと…っ、〜〜させるもんですかぁ…っ!!」


私はロッドで体を支えて膝が震えるのを堪えて立ち上がると、

「やああああああっ!!」

と、ガーネット・ロッドを大きく振り上げ、黒いロングブーツで地面を強く蹴り上げて、素早くギャラクシアの懐に入り込んだ!

――今だわ…!!

「クロノス・タイフ…――!!」

「――フッ」

「え…っ!?」


ギャラクシアは私が大きく踏み込んで目の前に飛び込んできても顔色一つ変えず、笑みすら浮かべた状態で、ほんの軽く手首を動かした。

彼女の方はたったそれだけしか動いていないが、私の必殺技が発動する前に彼女が衝撃波を放つのが少しだけ早かった。――だが、それがまずかった…。

――ゴォ…ッ!!

「…っ!?――きゃあああああああああ〜…!!」

軽く発動したはずのその衝撃波の威力はすさまじく、私はとっさにガーネット・ロッドで防ごうとしたが間に合わず、逆に接近したことで鳩尾にモロに食らってしまい、いとも簡単に吹き飛ばされてしまった!

「〜〜かはぁ…っ!?」

大の字で校舎の壁にめり込み、前傾姿勢で吐血しながら白目を剥いて気を失った私…。

たった一撃で相棒のガーネット・ロッドもボロボロに折られ、先程まであれほど心強く輝いていたガーネット・オーヴの光も一瞬で消え失せてしまった…。

「クククッ、さっきまでの勢いはどうした?――もっとこの私を楽しませてみろぉっ!!」

「〜〜ひぃ…っ!?」


ギャラクシアに乱暴に前髪を掴まれ、ハッと意識を取り戻して、思わず恐怖に顔を歪めたのも束の間――!

――ヒュン…ッ!!

ギャラクシアが素早く腕を振り上げた直後に、私の体は星が見え始めた空に向かって軽々投げ出された…!

「きゃあああああああ――っ!?」

悲鳴をあげながら墜落する直前に背後にギャラクシアの気配を感じ、次の攻撃による激痛を既に背中に感じていた…!

「〜〜んはぁ…っ!!」

悲鳴をあげる間すら与えてもらえず、私は苦痛に悶えながら校庭に叩き落された…!!

――ドォォォン…ッ!!

すさまじい爆音と共に砂埃が舞うと、しばらくして、まるで踏みつぶされた蛙のように無様にうつ伏せで倒れている私の姿が見えてきた。

スーパー戦士になって以来、私にも装備されるようになったプロテクターは破壊されて血が滲んだ肩が露わになり、特殊な繊維で破れにくく出来ているはずのセーラーコスチュームもたった数発攻撃を食らっただけというのに所々破け、痛々しい傷だらけの肌が露出している。

長い黒髪が淫らに乱れ、傷だらけでハァハァと呼吸を乱しているその姿が、不思議と最年長の社会人セーラー戦士である私の色気を妖しく引き立ててもいた…。

「フン、それで終いか?仮にもセーラー戦士だろう?もっと抵抗してもらわなくては、つまらぬではないか…っ!!」

「う…うぅ…っ」


――ギリギリギリィィ…ッ!!

「〜〜…っっ!?いやああああああ…っ!?」

「弱いクズめ…!」


――ギリィィィ…ッ!!

ギャラクシアは血が滲んで剥き出しになっている私の背中を、その細いヒールで踏みつけながら罵倒してきた。

「んああああっ!!やめ…っ!!〜〜あはああああああああ〜っ!!」

〜〜つ、強い…。今までの敵とは…比べ物にならないわ…。

それにマッドドッグが浴びせてきた毒のせいで、こうして踏まれてるだけでも耐えられないほどの痛みが襲ってきて、何度も意識が飛びそうになる…。

……もう…ダメ…。〜〜私一人の力じゃ…、とても…。

ガク…ッと私は意識を失った。そんな束の間の休憩すらギャラクシアは許してはくれない…!

「ギャラクティカ・インフレーションッ!!」

――ゴォォォ…ッ!!

「〜〜ひぐぅぅ…っ!?」

おしおきの鞭とばかりに幾度となく襲う全身の強い痛みに私は強制的に戦いのリングに引き戻され、ロッドがないので両腕をクロスさせて防御に徹しようとするも、効果があるわけもなく…。

「勝手に寝ていいと誰が言ったぁっ!?」

――ギュウウウウン…ッ!!

「きゃああああああああああああ…!!」

――ガッシャーーン…ッ!!

私は1年生の教室の窓を突き破って床に叩きつけられたが、ギャラクシアの技を食らってそれだけで終わるはずもない!

私はさらに教室のドアと校舎の壁を突き破って、中庭にズザァ…ッ!!っと、今度は仰向けで投げ出された…!

「弱すぎる…。もっと私を憎み、セーラークリスタルを輝かせてもらわなくては困る…っ!!」

――ゴォォォ…ッ!!

「いやあああああああああ…!!」

私はまるで子供に乱暴に振り回される人形のように虚ろな瞳で四肢をただ力なくぶらつかせ、高笑いするギャラクシアにされるがままだった…。

こうして吹き飛ばされ、かよわい少女のように…ただ早く相手の気が済んで解放して欲しいと願うのは、もうこれで何度目だろう…?

『――プルート…ッ!!』

そして、赤い薔薇がどこからともなく飛んできて、黒いマントを颯爽とひるがえして、彼が現れてくれるのを…。

……ふふ、私ったら…。こんな時でも、またあの人のことを考えてしまっているなんて…。

「……笑っている…だと?…フッ、どうやら私の攻撃を受けすぎて頭がおかしくなったようだなぁ?あっははははは…!」

ほとんど意識がなくて自力で動くことすらままならなくなった私の髪を乱暴に引っ張って無理矢理立ち上がらせ、最後の仕上げとばかりに私を蹴り上げて、ヒビや穴がいくつもあいてしまった校舎の壁に私を寄りかからせると…、

「――そろそろ頃合いだろう。貴様のセーラークリスタルを頂くとしようか…!!」

コレクションが増えることに対しての昂る気持ちを抑えきれないのか、ギャラクシアは自然に笑みがこぼれてしまうのを堪えつつ、ティンニャンコやアイアンマウスがしていたのと同じブレスレットを私に向けてきた。

……私…、死ぬの…?明日、お誕生日なのに…?

『――明日のお誕生日会、うさぎちゃん達と一緒にお祝いしようね☆』

……ごめんなさいね、ほたる…。お誕生日会、どうやら出来そうにないみたい…。私がいなくなっても、はるかとみちると仲良く暮らしてね…。

そして、プリンセス…。〜〜うさぎちゃん…、最後まで、お傍でお守りできなくてごめんなさい…。どうか衛さんとお幸せにね…。

「ククッ、私の攻撃をこれほど受け続けて、最後まで意識を保っていられたのは貴様が初めてだぞ。その功績に免じて、セーラークリスタルを奪った後はお前を泥人形として甦らせてやろう!我が配下となり、お前の愛する男のスターシードを共に奪おうではないか…!!」

「――っ!?」


衛さんの…スターシード…。地球を司るゴールデン・クリスタルを…奪う…?〜〜私が…!?

「〜〜い…や……」

そんなの…、絶対ダメ…っ!!衛さんを…っ、〜〜私のプリンスを死なせるわけには…っ!!

〜〜く…っ!?……でも、もう…体に…力が…入ら…な…い…っ。

ガーネット・ロッドも使い物にならなくなってしまい、時間を止めることもできない…。

――でも、まだ…!私に残された最後の切り札が…あるはず…っ!!

どうか応えて…!

――ポォ…ッ!

「ム…!?」

――お願い、ガーネット・オーヴ!どうか私の最後の願いを聞き入れて…っ!!

ガーネット・オーヴは私と同じく最後の力を振り絞るように再び強く光り始めると、折れてしまったロッドから独立して、宙に浮かんで光りながら私の元へ移動してきた…!

「ほぅ、ここまでされてもまだ諦めぬとは…。クククッ、地球人とは面白い種族だなぁ?」

ギャラクシアは不測の事態に対しての焦りというより、むしろ私がこれから何をするのか興味があるらしい。

「〜〜ガーネット・オーヴ…ッ!!」

私が速まる心臓の鼓動と呼吸を必死に整え、動くのもやっとの状態で震える手を必死に空に向かって伸ばすと、その決意に応えるように両掌に降りてきてくれたガーネット・オーヴを高く掲げて、その力を解放した!

――パァァァァァァ…!!

ガーネット・オーヴがひときわ強く深紅とえんじ色の混合色の光を放った次の瞬間、大きな時空の揺らぎが麻布十番高校を包むように発生した…!!

「ほぅ、お前は時と空間を自在に操れるセーラー戦士だったのか…!くくっ、ますますそのセーラークリスタルを手に入れたくなったぞ…!!」

「ハァハァ…。――あなたを…、異空間へ閉じ込めます…っ!!」

「フン!そんなことをすれば、お前も一緒に――っ!?」


やがて麻布十番高校の校舎が消え、周りの景色が真っ暗な異空間へ変わったことで、ギャラクシアの顔に初めて焦りの色が見えた…!

「〜〜貴様ぁ…っ!!そうまでして、あのプリンセスを守りたいかぁっ!?」

「当然よ!私の大事なプリンスとプリンセスに指一本触れさせるものですか…っ!!」

「〜〜生意気なぁっ!!――ギャラクティカ・マグナムッ!!」


――バアアアン…ッ!!

「きゃあああああああっ!?」

私のパワーとギャラクシアのパワーがぶつかって、異空間にさらに揺らぎが生じた!

「ふはははははっ!!愚か者め!宇宙最強のセーラー戦士であるこの私に勝てると思ったか!?」

〜〜くぅ…っ!もう…腕がちぎれそう…。ギャラクシアの力に…押し潰される…っ!!

――でも、ここで私が踏ん張らなければ…!

こんなに強大な力がもし、プリンスとプリンセスの身に降りかかったら…。〜〜マーキュリー達全員の力を結集させても守り切れるかどうか…。

「これほどまでに強いパワーを秘めていたか…!〜〜その力…!何としても手に入れてやるぅ…っ!!」

――タン…ッ!!

ギャラクシアが我を失って、私との間合いを詰めて特攻してくるこの時を待っていたわ…!!

「――ダーク・ドーム・クローズ…ッ!!」

私は高々と掲げていたガーネット・オーヴからさらに光を放出させると、目の前に踏み込んできたギャラクシアをその光に包んだ…!

「〜〜何ぃ…っ!?ぐああああああああああ…!!」

ガーネット・オーヴの不思議な光は、ギャラクシアの体を異次元への揺らぎへ閉じ込める時空の棺へと姿を変え、彼女を異空間の中へと消し去った…!!

「はぁはぁはぁはぁ……っ」

ギャラクシアが暗闇へ消えたのを見届けると、私は安心したのか、そのまま意識を失い、自分も真っ暗闇の異空間に投げ出されて漂い始めた。

――遠く離れた時空の扉が最強の脅威が消え去ったことを教えてくれている…。

あぁ、キング…。私…、やりましたわ…。

あなたとクィーンのいる30世紀まで、この地球の平和を守ることが出来たんですね…。

キングの笑顔を思い浮かべ、私はゆっくり瞳を閉じて、時空の流れに身を任せてみる…。

――まるで宇宙の中を漂っているかのような、とても静かで暗い空間…。

どこまで行っても終わることのない暗闇の中を目に見えない何か驚異的な力が私を導くように体を引っ張っていく…。

(……このまま行くと、どこへ流れ着くのかしら…?……また私、一人ぼっちになってしまったのね…。〜〜冥王せつなとして転生して、やっと皆と戦うことができるようになったのに…)

『――プルート…』

『――せつなさん…』

(――でも…、これでいいんですよね、キング…、プリンス…。これであなたの大切なクィーンを…、プリンセスを…、破壊の悪魔から守ることができたんですもの…)


胸の奥が熱い…。まるで胸の奥に星が誕まれたみたい…。

不安な状況のはずなのに、あの人を思い浮かべるだけで、こんなに穏やかな気持ちになれるなんて…。

もし、また生まれ変わることが出来たら…、衛さん…、またあなたのお傍にいさせてもらえますか…?

――パァ…ッ!!

すると、しばらく変わり映えのしなかった闇の空間に突如、一筋の光が差し込んできた…!

(この光は…!?――っ!)

その時、向こうから私と同じように時空の流れに流されてくる人影が見えた!

(あれは…!私…っ!?)

私と全く同じスーパーセーラー戦士の戦闘服を着た、外見も私と全く同じセーラープルートがすれ違った私に何かを伝えたそうに身を乗り出して口をパクパクさせている…!?

でも、一瞬すれ違っただけで、すぐに私と瓜二つの彼女は私が流されてきた方へと流されていってしまった…。

……何だったのかしら、今のは…?

と、次の瞬間!

――パァァァァァァァァァァ…!!

(〜〜きゃ…!?)

目の前に現れた眩い光の中に、私は流れ星になったかのように飛び込んでいった…!

奥へ進むにつれ、どんどん強くなっていく光に私の体は対処が追いつかずに強烈な眩暈に襲われ、私の意識もだんだん遠のいていった…。



「――………せ…ん…せ…!」

「……」

「――な先生…っ!せつな先生…っ!!」

「…?――うぅ…ん……っ」


気がつくと、私は白衣にスーツ…、プルートに変身する前のいつもの姿で保健室のベッドに横になっていた。

「あ…っ!せつな先生ぇ〜っ♪」

ボーッとしている頭を押さえながら私がゆっくり体を起こすと、麻布十番高校の制服を着た美奈子ちゃんが嬉しそうに私に抱きついてきた…!

「あぁ〜ん、よかったぁ〜!敵の幹部が現れた上にプルートが一人で戦ってるってバレー部の子から聞いて、うちら慌てて駆けつけたんですよ〜?」

「そしたら、せつなさんが変身が解けた状態で倒れてたものだから心配になっちゃって…。急いで保健室へ運んだんです」

「でも、よかったぁ…。大した怪我はしてないみたいですね♪」

「本当!あんなに強く感じてた妖気も嘘みたいに消えたしね?」

「皆…」


同じく十番高校の制服を着た亜美ちゃん、まこちゃん、そしてT.A.女学院に通うレイちゃんもわざわざ駆けつけてくれたのか、私の意識が戻ったことに4人とも安堵の表情を浮かべていた。

「ごめんなさいね。〜〜生徒に心配かけちゃうなんて、ダメな先生ね…」

「そんな…!〜〜こっちの方こそ、すみませんでした…っ!!」

「部活中じゃなければ、もっと早く駆けつけられたのに…」

「私も巫女の仕事があったせいで…。〜〜本当にごめんなさい…」

「いいのよ。私も正体不明の敵に一人で挑んだりして無謀だったわ…」

「そうそう!せっかく同じ高校にいるんだしさ、これからはもっと私達・内部太陽系戦士のことも頼ってくれよ!な?」

「ふふっ、そうさせてもらうわ。ありがとう、皆」


――あら?でも、確か私…、ギャラクシアと戦った後、一緒に異空間に飛ばされたはずなんだけど…?

……いつの間に保健室に戻って来たのかしら…?

「〜〜びえええ〜んっ!!せつな先生ぇ〜っ!!」

そこへ、保健室のドアを開けて入ってきたうさぎちゃんがいつものようにわんわん泣きじゃくりながら私に抱きついてきた!

「〜〜亜美ちゃん達から聞いたよ〜っ!?せつな先生、敵に襲われて倒れたんだってっっ!?」

「〜〜離れなさい、うさぎっ!!せつなさん、まだ意識が戻って間もないのよっ!?」

「だぁ〜ってぇ〜っ!!〜〜ぐす…っ、私が出かけた直後に襲われたみたいだから責任感じちゃってさ…。……本当にゴメンね…?」

「うさぎちゃん…」


――そっか…。せっかく衛さんとデートしてたのに、うさぎちゃんってば私が倒れたことを聞いて戻ってきてくれたのね…。

「ふふっ♪ありがとね、うさぎちゃん。うさぎちゃんの顔見たら、何だか元気になっちゃったわ」

「本当?えへへ〜♪よかったぁ〜」


微笑みを浮かべた私に優しく頭を撫でられると、うさぎちゃんは嬉しそうに甘えてきて、寄り添ってきてくれた。

……私ったら馬鹿ね…。

〜〜ギャラクティカ軍団の汚いやり方とはいえ、ほんの一瞬でも衛さんとの甘い生活の為に、うさぎちゃんのシルバー・クリスタルを奪うことを考えてしまったなんて…。

――ガラッ!!

「――せつな…っ!!」

「え…っ?」


そこへ、何やら慌てた様子でドアを開けて、保健室に入ってきたのは…!?

「ま…っ、衛さん――…っ!?」

想い人のいきなりの登場に、まだ心の準備をしていなかったものだから、思いっ切り声が裏返ってしまった私を衛さんは何も言わず、ただ強く抱きしめてくれた…!

(え…?〜〜えええええええ〜っ!?)

「ちょ…!?〜〜ま、衛さん…っっ!?あ…、ああああああの…その…」

「無事でよかったよ、せつな。助けに行ってやれなくて本当にすまなかった…」

「え…?」

「せつな…、――俺だけのプリンセス…♪」


えええ〜っ!?〜〜どっ、どういうことなの、これ…!?

ま…っ、衛さんの…!く…っ、くくく唇が…!!〜〜私の唇に近づいてくるぅ〜…っ!?

「い…っ、いやあああああ〜んっ♪」

――ゴスッ!!

「〜〜ぐほぉっ!?……ガクッ」

「〜〜せ…っ、せつなさんっ!?」


〜〜し…っ、しまったわ…!!私ったら、あまりの出来事に頭と心が体に追いつけなくて、ついガーネット・ロッドを手中に呼び出して、衛さんを…。

「〜〜うわあ…、痛そう…」

「〜〜衛さん、たんこぶ出来ちゃってる…」

「だ…っ、だだだだって…!衛さんったら、いきなり私にキスしようとしてきたんですもの…っ!!〜〜一体何を考えてるんですか、あなたはっ!?しっ、しかも…、う…、うさぎちゃんがいる前で…っっ!!」

「な〜に今さら言ってんのよ!せつなさんと衛さんってば、いっつも私らの前でキスしてんじゃ〜ん?」

「ね〜?」「ね〜?」

「…え?」

「わ…、私もよく先生と衛さんの…、その…!〜〜く…っ、くちづけを目撃しますけど…!!お二人とも大人ですから、そういうのって当たり前なのかもしれませんね…♪」

「〜〜えぇっ!?」

「ヒュ〜ヒュ〜♪私達のことは気にしないでさ、今日もブチュッとかましちゃいなよっ♪」

「〜〜み…、皆、何言ってるのよっ!?――そりゃあ…、妄想や夢の中では衛さんとキスしたことは何度もあるけど…♪〜〜じゃなくてっ!!――うさぎちゃんっ!あなたからも皆に何とか言ってやって――っ!!」

「あ〜あ…。いいなぁ〜、せつな先生には地場衛っていう彼氏がいて!」

「…え?」

「私、彼氏できたことないからさ、ファーストキスまだなんだよねぇ…」

「〜〜えぇぇぇぇ〜っ!?」

「うさぎに彼氏ぃ〜?ハン!一生ムリムリ♪」

「ま、うさぎちゃんよりは先に彼氏が出来る自信はあるかもな?」

「当然よ!この美貌をもってすればねっ♪」

「〜〜むぅ〜っ!!レイちゃんもまこちゃんも美奈子ちゃんもイジワルなんだからぁ〜っ!!」

「あはははは…!」「あはははは…!」「あはははは…!」「あはははは…!」


ど、どういうこと…?〜〜私と衛さんが…恋人同士…ですってぇっ!?

「――う〜ん…」

「あっ、気がつかれましたか?衛さん」

「〜〜ま…っ、衛さん!ご…っ、ごめんなさいね!?さっきから私にはこの状況、何が何やらさっぱりで…」

「いや、俺の方こそすまなかった…。一人で怖い思いをしたばかりなのに君の気持ちをわかってやれなくて…。――お詫びに今日は俺のマンションでゆっくり休んでくれ」


と、衛さんは自分の部屋の鍵を目の前にちらつかせて、渡してくれた。

「〜〜あぁ…っ!?あ…あ…あ…」

「合鍵〜っ!?」「合鍵〜っ♪」「合鍵〜っ♪」「合鍵〜っ♪」「合鍵〜っ♪」「合鍵〜っ♪」

「今日、渡す約束だっただろ?――これからは会いたくなった時にいつでも俺の所に来ていいからな…♪」


と、衛さんは慣れた手つきで、ごく自然に私の頭を優しくポンポンしてくれた…。

「いいなぁ〜、せつなさ〜ん」

「ズル〜いっ!!セーラー戦士って恋愛ご法度じゃなかったのぉ〜っ!?」

「君達は高校生だろう?せつなは大人だからいいの!な?」


ど…、どういうことなの、これは…?〜〜私が眠ってる間に一体何が…っ!?

――それに、よく考えたら…。

「衛さんが…私を呼び捨てにしてる…♪――ふぅ…♪」

――バッターン…!!

「〜〜うわああ〜っ!!せつな先生がまた倒れたぁ〜っ!?」

「〜〜顔がすごい真っ赤だけど…!?」

「すごい熱だわ…!!〜〜やっぱり、一人で無理して戦ったせいじゃ…!?」

「〜〜せつなっ!!しっかりしろ!せつなぁ〜っ!!」


あぁ…、あの時と同じように衛さんが私の体を抱きしめてくれている…♪

私、こんなに幸せなら、またいつ死んでも構いません…♪


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