冥王せつな誕生日記念・特別短編小説2017
「愛の思い出」その10



「〜〜ち…、地場先輩…っ!?」

「何でここに地場先輩がいるんだよっ!?〜〜話が違うじゃねぇか…っ!!」

「〜〜それより、あの格好は何なんだ…!?ハロウィーンだからかっ!?」

「キング、どうして…?」

「説明は後だ…!」


――ダン…ッ!!

「〜〜ぎゃあああああっ!!」

トカゲ戦士の口から伸び、私の体に巻きついて地面を這っていた長い舌に向かってキングは杖の柄で上から力強く叩きつけ、ちぎって下さった!

お陰で拘束が解けて、自由に動けるようになったわ…!!

「〜〜おっ、俺の舌がぁ…」

「大丈夫か…!?」

「えぇ、キング…♪」


秘かに恋い慕うキングに手を差し伸べられて、私は頬を紅潮させ、心臓の鼓動を高鳴らせながら、その手を取って立ち上がった。

「〜〜くぅ…っ」

〜〜でも、エナジーをトカゲ戦士に奪われたせいで、まだ体がフラフラだわ…。

「私の後ろに隠れているんだ。――君は私が守ろう、プルート…!」

「…っ♪」


――きゅん…っ♪

いつも恋焦がれている仮面越しに見える優しい瞳と凛々しい微笑み…。

まさか、愛しのキング・エンディミオン様が助けに来て下さるなんて…♪まるで夢を見ているようだわ…♪

「ケッ、イケメンはいいよなぁ?カッコつけてもサマになってよぉ」

「〜〜よくも俺とせつな先生の濡れ場を邪魔してくれたなぁっ!?」

「〜〜こうなりゃ、地場先輩のスターシードもギャラクシア様に捧げてやるぅぅっ!!」


狼、トカゲ、熊の若きギャラクティカ軍戦士達が一斉にキングに飛び掛かってきた…!!

「死ねぇぇぇっ!!」「死ねぇぇぇっ!!」「死ねぇぇぇっ!!」

「〜〜キング…ッ!!」


襲いかかってきた狼の鋭い牙をキングは杖を横にした状態で前に突き出して防御すると、朝焼け色のマントを翻しながら華麗なアクションでトカゲと熊も蹴り倒し、突き出した右手に力を集中させた…!

「タキシード・ラ・スモーキング・ボンバー!!」

「どわあああああっ!!」


キングの掌から放たれた衝撃波がトカゲ戦士に見事命中すると、彼の気味の悪い舌だけでなく尻尾もちぎれ、砂となってボロボロ崩れて消えていった…!

「ギャ…、ギャラクシア…様ぁ………がくっ」

トカゲ戦士が大の字に倒れて戦闘不能になると、彼の尻尾に封じ込められていた私のエナジーが解放され、私の体に戻ってきた…!!

「キング、私も戦います…!」

「まだエナジーが戻って間もない…。無茶はするな?」

「えぇ、ありがとうございます…♪」


と、キングは手を私の肩や腰に添えて、優しく支えて下さっている…♪

変身リップロッドを構えた私はそんな場合じゃないと思いながらも、いつものように頬を赤く染めてしまったわ…♪

「〜〜な…っ、何なんだ、地場先輩のあの技…!?」

「〜〜エスパーっていうのはマジだったのかよ…」

「かよわい先生に寄ってたかって、お痛をした悪〜い生徒達にはおしおきが必要ね…!――プルート・クライシスパワー・メーイクアーップ!!」


冥界に吹く風を身にまとい、私はスーパーセーラープルートに変身した!

「時空の星・冥王星を守護に持つ変革の戦士、セーラープルート!悪の道に入った生徒は、この保健室のせつな先生が冥王星に代わって更生させてあげるわっ!!」

――ポォ…ッ!

「〜〜あぁ…っ!」

私が啖呵を切ると、熊戦士が持つガーネット・ロッドに装着されているガーネット・オーヴが深紅とえんじ色に光って反応し、彼の手から離れて、主人である私の手の中に帰ってきた…!

「〜〜くそぉ…っ」

「〜〜な…、何かヤバくね…?」

「冥界の風で仕留めてあげるわ!――デッド・スクリーム!!」

「〜〜チッ」


――ドン…ッ!!

「うわあああっ!?」

狼戦士は動きが遅くて巨大な熊戦士を盾にしようと彼の背中を蹴って前のめりにさせ、自分は素早く飛び退いた…!

「ズッ、ズリィぞ、てめぇ…っ!?〜〜ぎゃああああああ…!!」

巨体の熊戦士は私の風の攻撃弾を全身に受けると、目を回しながら戦闘不能に陥った!

「さすがだな。転生しても、その力は衰えていないようだ」

「ふふっ、キングが助けて下さったお陰ですわ…♪」

「〜〜くそぉ…っ、もう少しでギャラクシア様を解放できたのによぉ…」

「残っているのは、あなただけよ?さぁ、せつな先生のおしおきを受けなさい…っ!!」


と、私は再びガーネット・ロッドからデッド・スクリームを放ったが、素早さが特徴の狼戦士にニヤつかれながら、また避けられてしまった…。

「〜〜く…っ!?速い…!」

「ケケケッ!どうした、せつな先生よぉ?おしおきするんじゃなかったのかぁ…っ!?」


狼戦士はぐわっと大きな口を開け、私に噛みつこうと迫ってきた…!

「〜〜きゃああ…っ!?」

「プルート…ッ!!」


――ガブゥゥ…ッ!!

「う…っ!!」

「〜〜キング…ッ!!」


キングが私の前に飛び出して、マントを翻してかばって下さったお陰で私の方は無傷で済んだけど…、代わりにキングは狼戦士の鋭い牙で左の二の腕を噛まれてしまったわ…!

「〜〜いやああ…っ!!私なんかをかばったせいで…」

「……心配するな。今の君は孤独の番人なんかじゃない。私がついている…!」

「キング…♪」


――不思議…。こうしてキング・エンディミオン様が傍にいて下さるだけで、体の底から無限の力が湧いてくるわ…!!

これが愛の力というものなのね…♪

「〜〜よくもキングを…っ!!――ディメンジョン・ダンスッ!!」

タン…ッ!と私は力強く地面を蹴り上げると、突進して狼戦士との間合いを詰めた…!

「ヘッ、スピードで俺様に勝てるとでも――っ!?」

「はああああああああああああっ!!」

「…っ!?〜〜な…っ、何ぃっ!?」


私は、まるでダンスしているかのような目にも止まらぬ動きで圧倒すると、ガーネット・ロッドで殴り、叩き、突き、そしてジャンプして狼戦士の頭をかち割り…、

「やああああああああああああっ!!」

――ドォォォォン…ッ!!

その勢いのまま、地面に叩きつけた…!!

「ぐわあああああああああああああ〜っ!!」

愛と怒りの私の猛攻に狼戦士は傷だらけになって、舌をだらしなく垂らしてフラフラ目を回すと、やがてドォ…ッ!!と仰向けに勢い良く倒れた…!

「よくやった、プルート。見事だ」

「私だけの力ではありません…。キング・エンディミオン様が傍にいて支えて下さったから、私はいつも以上の力を発揮することが出来たんです…♪」

「謙遜するな。私はサポートをしたまでだよ」

「そんなことありませんわ…!〜〜だって私は…、あなたのことが――っ!!」

「…?」

「あ……。〜〜…っ」


勢いで胸に秘めた想いを告白しかけ、慌てて口を押えた私をキングは不思議そうな顔で、きょとんと見つめている…。

「〜〜な、何でもありません…!まさか、この世界でキングにお会いできるとは思っていなかったもので、つい興奮してしまって…」

「ハハハ…、そうか。驚かせてしまって、すまなかったね。やはり、ここは別次元の世界なのだな?」

「えぇ。ここは時の神・クロノスが作り上げた、私達の世界とは異なる次元に無数に存在する並行世界の一つなのです…。ところで、キングはどうしてこちらの世界に…?」

「あぁ…、クリスタル・パレスに発生した異様な時空の揺らぎについて調査しようと次元の裂け目を進んでいたら偶然ここへたどり着いて、襲われている君を見つけてね…」

「〜〜30世紀にも時空の揺らぎが…!?」

「あぁ…。だが、私の時代のプルートの協力のお陰で、過去に何が起こって、どんな理由で時空が歪んだのかも調査出来たからね、事態を大体把握できてきたところだったから良かったよ。君の方こそ大変な事態に巻き込まれて災難だったな…。怖かっただろう…?」


キングは気の毒そうに私を見つめると、私の肩に手を添えて、優しく抱きしめて下さった…!

「え…っ?キ、キング…!?」

「間に合って本当に良かった…。君が無事で安心したよ」

「キング…♪」


……キングにとって、これはただ仲間を励ますだけのスキンシップなのかもしれない…。

――でも、私にとっては…♪

「…っ!!」

キングは私の肩にご自分の左の二の腕が触れると、苦痛に息を荒げて腕を押さえた…!

「先程の怪我ですね…!?〜〜思ったより傷が深いわ…」

「…これくらい、すぐに治るさ」


キングはご自分のヒーリング能力で傷を塞ごうとされたけど、二の腕は牙に噛まれた部分の生地が破れ、薄紫色の美しいタキシードが赤い血で痛々しく滲んでしまっている…。

「〜〜いけませんわ!膿みでもしたら大変です…っ!!」

私はショルダーバッグからハンカチと職業柄いつも持ち歩いている救急セットを取り出すと、いつも仕事でしているようにキングの二の腕の傷口を消毒し、ハンカチを巻いてあげた。

「手際が良いな。そういえば、転生した君は十番高校で養護教諭をしているのだったな」

「えぇ。その方がプリンセスを…、未来のネオ・クィーン・セレニティ様をお傍でお守りできますもの…」

「君は昔から、そうやってクィーンを守ってくれているのだな。クィーンも高校時代、養護教諭の君にいつも励まされて助けられていたと、よく話をしてくれるよ」

「ふふっ、うさぎちゃんの笑顔と明るさにいつも励まされているのは私の方ですわ」

「ははっ、スモール・レディが君に懐いているのも血筋のようだな。いつも私達・家族の為に尽くしてくれて礼を言う」

「そんな…!私の対処がもっと的確でしたら、キングをこんな危険な目に遭わせずに済みましたのに…。〜〜本当に申し訳ありません…っ」

「君が責任を感じる必要はないよ」


キングは微笑むと、手袋を着けた指で私の涙を優しく拭って下さった。

「どうか泣かないでくれ…。君が時間を止めて息絶える時に流したあの涙を見て以来、君の悲しそうな顔を見るのは辛くてね…」

「キング…」


誰にも邪魔されない空間でキングと二人きり…、こんなに近くで見つめ合っている…♪

この世界の衛さんには悪いけど、もう少しこのままキングとの時間を満喫させて…♪

――シュン…ッ!

…と、戦いが終わったからか、私はプルートから元のせつなの姿に戻った。

――むにゅ…っ♪

「……ん?」

「…え?〜〜き…っ、きゃああああああああああ〜っ!!」


〜〜わ…っ、忘れてたわ…っ!!私、あの高校生トリオに服を破かれてたんだった…!!

露わになった豊満な胸や股間を慌てて手で隠したけど…、〜〜キングに見られてしまった上、体に押し付けてしまったわ…っ!!

「〜〜す、すまないっ!わざとではないんだ…っ!!」

「え、えぇ…、わかってます。〜〜こんなはしたない姿をお見せしてしまい、申し訳ありません…っ」

「いや、その…ゴホン!べっ、別に君が謝る必要は…♪」


口元を押さえ、わざとらしく咳払いしているキングは照れて赤くなりつつも半裸状態の私の姿が気になっているようで、直視はしないまでもチラチラと視線を向けてくる…♪

…もしかして今、キングったら私のことを一人の女として意識して下さってるのかしら♪

「〜〜痛…っ!」

「…!大丈夫か!?」

「へ、平気です…!ただのかすり傷ですから…」

「何がかすり傷だ…!?〜〜君の方こそ、こんなに怪我をしてるじゃないか…!!手当てをしてくれた礼に今度は私が治してやろう」

「えっ?あ…♪」


奪われたガーネット・ロッドで殴られてアザや傷が出来た私の肩や腕にキングは手をお当てになると、不思議な光を掌から出し、ヒーリング能力で治療して下さった。

――ポォォ…!

あぁ…、なんて温かくて優しい光なのかしら…♪みるみるうちに傷口が塞がっていくわ…!

「背中の傷がひどいな…。――ゴホン…!し、失礼するよ…♪」

「え?〜〜ふあぁ…っ!?はあああああぁぁ…んっ♪」


キングは私の背中にご自分の唇をお当てになると、治癒の光を今度はキスを通して背中の傷口に直接注ぎ始めた。

「あああああああぁぁぁぁっ…!キ…ッ、キングゥ…♪」

――ちゅううううぅぅ…っ!ペロ…ッ♪

「あはああああぁぁぁぁ…っ!そこぉ…っ♪はぁはぁはぁはぁ…っ!き…っ、気持ち良いですぅ…っ♪」

キングにこうやって気持ち良くキスされたり、くすぐったく舐められるだけで温かい治癒の力が傷口を通して全身に渡っていくのを感じる…。

いつも抱かれているホログラムとは違う…、本物のキングの温もりと優しさがこの体に染みわたっていく…♪

「はぁはぁはぁはぁ…っ。あ…!っああああぁ…ん…っ!すごい…っああ…っ!?気持ち…良い…っ!イ…ッ、〜〜イ…ック…ぅぅぅぅ〜…っ♪」

さっきの高校生達の愛撫からは決して感じられなかった、背中にまるで羽根が生えてフワフワ舞い上がっていくような快感が大好きなキングによって生まれ、私は心身共に満足する絶頂を迎えることが出来た…♪

「ハァハァハァハァ……っぁあああぁぁー……♪気持ち…いひいぃ……っっ♪」

「――終わったよ…♪」


キングに後ろから抱きしめられながら耳元で囁かれて、私は甘く淫らな喘ぎ声を漏らしながら我に返った。

「はぁはぁはぁ…っ、キ…、キングゥ…♪」

「すまなかったな…。私もクィーン以外にしたのは初めてだったんだが…、こうした方が治りが早いんだ」

「そ、そうだったんですね…。――私は、てっきり…その…♪」

「え?」

「…いえ、いいんです!――キングになら私、いつでもこの体を喜んで捧げますから…♪」

「…っ!そ、そうか…♪」


〜〜っ!?私ったら、イイ雰囲気なことをいいことになんてことを口走ってしまったの…っ!!

「〜〜その…っ!!キングはさっきの子達と違って、私の体が目当てとか…、そういう邪な思いでされたわけではありませんものっ!!さっ、さっきの発言はキングになら安心して、この身を任せられるという意味で…っ!!〜〜け…っ、決して、あなたともっと深い仲になりたいとか、そういうんじゃ…っっ♪」

「ありがとう、プルート。つまり、私を信頼してくれているということだね?」

「あ…!――えぇ…!そういうことですわ、キングッ♪」


それに、キングのお陰で私…、衛さんだけに捧げるこの体…、この貞操を守ることが出来たんですもの…♪

ふふっ、こんなことを暴露したら、あなたをきっと混乱させてしまうんでしょうけど…♪

「…あっ!そういえば、今日は君の誕生日だったな?」

「えっ?覚えていて下さったんですか…♪」

「当たり前だろう?〜〜だが、あいにく今は渡せる物を持ち合わせていなくてな…。私の時代のプルートには、もうプレゼントを渡したのだが…」


えぇっ!?30世紀の私が羨ましいわ…!

きっと未来の私も今頃、嬉しすぎて気絶寸前になってることでしょうけど…♪

「い、いいんです…!キングが私の誕生日を覚えていて下さっただけでも幸せですから…♪」

「だが、せっかくこうして誕生日に会えたんだ。つまらない物だが、感謝を込めて、後でスモール・レディに届けさせよう」

「わざわざ申し訳ありません…」

「いいんだよ。君の誕生日会に21世紀のサターンに招待されたとスモール・レディも喜んでいたからな」

「ありがとうございます、キング…!とっても嬉しいです…♪」


キングが私の為にプレゼントを用意して下さるなんて…♪

あぁ〜、感激すぎて、本当はキングに抱きつきたいくらいだわ…っ♪

――ぐにゃあ…っ!

その時、結界の中がぐにゃりと歪み、周りの風景がまるで並行世界と並行世界の間の亜空間のように黒と紫のマーブル状態に変化しつつあった…!

「〜〜また時空の歪みが…!?」

「あの高校生達が君を襲ったことで歪みが大きくなり、ギャラクシアの封印も弱まったんだろう…。ギャラクシアは君に封じ込められた状態で、あの子達を洗脳する力を使ったんだ。当分はおとなしくしているだろうが…」

「キング、お急ぎ下さい…!〜〜早く来た道をお戻りにならないと、キングまで時空のひずみに取り残されてしまいますわ…!!」

「あぁ…。君も早く元の世界に戻ってくるんだぞ?そして、セーラームーンと過去の私…、タキシード仮面の力にまたなってやって欲しい」

「えぇ、キング。もちろんですわ…♪」

「誕生日おめでとう、プルート。久し振りに話せて嬉しかった。元の世界で、また君に会えるのを楽しみにしているよ」

「私もですわ、キング…♪本当にありがとうございました…!」


微笑み、マントを翻してマーブル状の空間を抜けていったキングを私は深く一礼して、お見送りした。

まさかホログラムじゃない、本物のキング・エンディミオン様にこの世界でお会い出来たなんて…♪ふふふふ…っ♪

――ゴオオォォォ…!!

…!喜びに浸っている場合ではないわね…!私も早く結界から出ないと…!!

「時の神・クロノスよ…!我を導きたまえ!我を守りたまえ!――ダーク・ドーム・クローズ…ッ!!」

私がガーネット・ロッドを掲げると、ガーネット・オーヴから放出された光が私を包み込み、展開されていた結界は消えて、私は無事に元のサンシャインシティの展望台に戻ってくることが出来た。

「――うぅ〜ん…」

ホッとしたのも束の間、スターシードを取り戻して人間に戻った高校生トリオが目を覚ましそうだわ…!

…その前に、帽子の子のスマホをちょっと拝借してっと♪

――ピッピッピッピ…!

…よしっ、私のレイプ動画を削除できたわ!これで一件落着ね♪

「――あれぇ…?」

「俺達、一体…?」

「金ピカのセーラー服のお姉さんに話しかけられたとこまでは覚えてるんだけどなぁ…?」


ギャラクシアの洗脳が解けたらしく、3人とも不良スタイルから第一ボタンまでちゃんとボタンを留めて制服を着ている、真面目でおとなしそうな生徒達に戻っていた。

「あなた達、大丈夫?さっき、3人とも急に貧血を起こして倒れたのよ?」

「〜〜えぇっ!?俺ら3人ともッスか!?」

「…あれ?〜〜も…っ、ももも…もしかして、麻布十番高校のせつな先生…っっ!?」

「えぇ、そうよ?」

「ど…っ、どどど…どうしよう…!?緊張して、うまく話せないよぉ…♪」

「写真より生で見る方がさらに美人だなぁ…♪」

「頼んだらLINEのID、交換してくれるかな…♪」

「おっ、お前が言えよ!」

「むっ、無理だよぉ…」

「こ〜んなに綺麗な先生がいるなら…俺、十番高校に転校しよっかな〜♪」


……この子達、本当はこんなに内気で、おとなしい生徒さん達だったのね…。

この子達の純情を弄ぶなんて…、〜〜許せないわ、ギャラクシア…!

「あ…、あの…先生…」

「その格好…♪」

「え…?〜〜きゃああああ…っ!?」


〜〜しまった…!!服がビリビリに破かれちゃったこと、またすっかり忘れちゃってたわ…!!

とっ、とりあえず…!どこかの店で代わりの服を買って、着替えないと…っっ!!

「――お〜い、せつな〜?」

〜〜ハ…ッ!?ま、まずい!衛さんの声だわ…っ!!厄介なことになる前に隠れないと…!!

「おかしいなぁ…。せつなの奴、どこ行ったんだ…?」

「〜〜ち…っ、地場先輩…っ!?」


正気に戻った高校生トリオは衛さんを見つけた途端、シャキーン!!っと背筋をピンッと伸ばし、まるで応援団のようにキビキビした動きで一斉に頭を下げた!

「〜〜お…っ、おはようございます!地場先輩っ!!」

「お初にお目にかかりますっ!!」

「ん…?…その制服、君達、元麻布高校の生徒か?」

「はっ、はいぃっっ!!」

「雲の上の存在である地場先輩にお声をかけて頂けるなんて、光栄の極みでありますっっ!!」

「〜〜は、はぁ…?」

「――衛さん、お待たせ〜♪」


と、私はワインレッドのスーツを着て、笑顔で衛さんに駆け寄った。

〜〜ホッ、なんとか間に合って良かったわ…。

「せつな…!よかったぁ…。今までどこにいたんだよ?携帯に出ないから心配してたんだぞ?」

「ごめんなさい。気に入った洋服を見かけたから、衛さんに見せようと思って、買って着替えてたのよ…♪」

「そうだったのか…。――うん!さっきまでのモノクロの服より、そっちの方が華やかでデートに合ってるんじゃないか?」

「ふふっ、でしょ♪」

「…ま、バブリー感はプンプンするけどな♪」

「〜〜う…」


〜〜確かにこのスーツは、バブル時代に若い女性がお立ち台の上で扇子振りながらよく着ていたものだけど…っ!

これでも、たまたま近くにあったハロウィーン限定のコスプレショップで売ってた物の中では、まともな方だったのよ…!?〜〜さすがに肩パッドは外したけど…。

「〜〜ハァ…。やっぱり、地場先輩に敵うわけないよなぁ…、俺達…」

「〜〜地場先輩の彼女に手を出そうとしてたとは…、なんて恐れ多いことを…」

「えぇっ!?〜〜そうだったのか…?」

「安心して下さい、地場先輩!未遂ですからっ♪」

「〜〜俺達みたいな地味男には、せつな先生みたいな高嶺の花は到底手が届きませんよ…」

「3人とも、もっと自分に自信を持ちなさい?真ん中の君は足が速いでしょ?帽子を被った君はカメラ撮影の才能があるし、背が高い君は力持ちなんだから、君達の魅力をそれぞれわかってくれる娘達がいつかきっと現れるわよ」

「せつな先生ぇ…♪」

「じ〜ん…♪」

「……でも、何で俺達のこと、そんなに詳しいんですか?今、会ったばかりなのに…」

「〜〜お…、おほほほ…!私は先生ですもの、生徒達の才能をすぐに見抜けるのは当然よっ♪」

「おぉ〜っ!!さすが俺達が憧れるせつな先生だっっ♪」

「何か元気出てきた〜!!今なら新しい恋も見つかりそうな気がするっ♪」

「おい、見ろよ!あの娘達、可愛くね?」

「お…、お前が声かけてこいよぉ…♪」

「い、いやだよ〜!何で僕ばっかり〜…――」

「……行っちゃったわね」

「〜〜一体何だったんだ…?」

「ふふっ、さぁね?」


…また衛さんが嫉妬しちゃうと大変だから、さっきのキングとのことは黙っておきましょうっと♪ふふふっ!

「無事に合流できて良かったよ。今度から長時間離れる時は連絡くれよな?」

「そうね…。〜〜本当にごめんなさい…」

「…俺の方こそゴメン。列、抜け出してきたから最初から並び直しだな」

「フフ、そんなのいいのよ。今度は二人で並びましょ?そうすれば時間が経つのなんて、あっという間だわ♪」

「ハハ、確かにそうだな。――だが、その必要はないみたいだぞ…?」

「え?」


腕時計で時間をチェックした衛さんに私が首を傾げると、衛さんは微笑んだ。

「――プラネタリウム♪もうすぐ上映時間だ」

「本当だわ…!それじゃ、行きましょ♪」

「はい、せつなの分」

「えっ?雲シート…!?土日なのによく取れたわねぇ?」

「サプライズで予約しておいたんだ。せつな、一度座ってみたいって言ってたろ?」

「衛さん…♪」


頬を赤く染めて幸せに笑った私は、この喜びを衛さんの腕にギュッと抱きつくことで表現してみた…♪

「本当にありがとう。私、とっても幸せよ…♪」

「どういたしまして、プリンセス♪」


腕を組みながら仲良くプラネタリウムに向かう私と衛さんをギャラクシアは亜空間に漂う時空の棺の中からワナワナと怒りで体を震わせながら見つめている…。

『〜〜おのれぇ…、忌々しい冥王星のプリンセスめぇ…っ!』

私を睨みつけていたギャラクシアは、私の隣にいる衛さんに視線を向けると、次の作戦を思いついたのか、ニヤッと不気味に口角を上げた…。

『――地球の王子・エンディミオン…。セーラープルートの最愛の人であり、最大の弱点…か。クククク…ッ!アーッハッハッハッハ…!!』


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