美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.6「月のプリンセス、覚醒!」その3



麻布十番高校・廊下。

「ハァハァハァハァ…ッ」

クイン・ベリルに操られた職員と生徒達から逃げるうさぎ達。前方からも集団が迫ってくる。

「〜〜うわあ!出たぁ〜っ!!」

「こっちよ!」


みちるの誘導で非常扉から出て、非常階段を下りるうさぎ達。

「――馬鹿め!逃げられると思っているのか?」

うさぎ達の前に瞬間移動してきて、立ちはだかるジェダイト。

「〜〜ジェダイト…ッ!」

「変身だ!」

「させるかぁっ!!」


変身ペンを出し、構えるうさぎ達にダーク・パワーをかけ、黒い風を巻き起こすジェダイト。

「きゃああっ!!」

「ふはははっ!!苦しめ、苦しめぇっ!!」

「〜〜く…っ!――皆、いくよ!」

「うんっ!――ムーン・プリズム・パワー」

「マーキュリー・スター・パワー」

「ジュピター・スター・パワー」

「ヴィーナス・スター・パワー」

「ウラヌス・プラネット・パワー」

「ネプチューン・プラネット・パワー」

「メーイクアーップ!!」


それぞれの戦士に変身して、ダーク・パワーを弾き返すうさぎ達。

「〜〜チッ」

「まーた懲りずに来たのね、四天王!?私達の愛する学校をゾンビの巣みたくしちゃうだなんて許せないっ!!たとえホラー映画の監督が絶賛しても、このセーラーチームが月に代わっておしおきよ!!」

「〜〜くそ…っ!だが、黒水晶などなくても俺の実力なら…!!――ダーク・パワー!!」

「シャボン・スプレー・フリージング!!」


マーキュリーの霧に闇の攻撃弾を凍らされるジェダイト。

「〜〜何…っ!?」

「ディープ・サブマージ!!」

「うわああああああっ!!」


深緑の攻撃弾に押し流され、背中を壁にぶつけて倒れるジェダイト。

「なんだい、もう降参かい?」

「だっらしないわね〜♪」

「〜〜くそぉ…っ」


クンツァイトから預かった黒水晶の欠片が懐から落ち、拾うジェダイト。

「…仕方ない。一度だけ使ってみるか」

覚悟を決め、黒く鈍く光る欠片を飲み込んだジェダイトの体から膨大な闇のオーラが発し、黒い嵐が巻き起こる。

「〜〜きゃあっ!?」

「〜〜な、何だ、このすさまじいエナジーは…!?」

「おおおおぉ…!この体の奥からみなぎってくる力は…!」

「〜〜おかしな物使いやがって…っ!――シュープリーム・サンダー!!」

「クレッセント・ビーム!!」

「――甘いわぁっ!!」


雷と光線を剣の一閃で吹き消すジェダイト。

「〜〜な…っ!?」

「ダーク・パワー!!」

「きゃあああああっ!!」「きゃあああああっ!!」


闇の衝撃波に吹き飛ばされるジュピターとヴィーナス。

「〜〜ジュピター!!ヴィーナスッ!!」

「ほぉ、これが黒水晶の力か…!ククッ、悪くない」

「な、何なの…?〜〜アイツ、急に強くなってない…!?」

「黒水晶というのは、奴らの闇の力を増幅させる薬みたいなものなのよ」

「〜〜たった一かけら使っただけで、あれほどのパワーを引き出すとはな…」

「ククッ、コケにしてくれた礼だ。――オラオラオラァァァッ!!」

「きゃああああああ〜っ!!」


ダーク・パワーの衝撃弾を連続でぶつけられ、倒れて悶えるムーン達。

「ふはははっ!面白い!!力を使う度にパワーがみなぎってくるぞぉっ!!アーッハハハハッ!!」

「〜〜うぅ…っ、なんて力なの…」

「〜〜こんな所でくたばってたまるか…っ!一旦、退くぞ!?」

「は、はい…!」

「ハハハハッ!!無駄無駄無駄ぁぁぁっ!!」


逃げるムーン達に狂ったように笑いながら、しつこく衝撃弾を放ってくるジェダイト。

「〜〜痛っ!!…痛ぁっ!!」

「〜〜うえええ〜ん!!やぁ〜だぁ〜っ!!しつこい〜っっ!!」

「――見つけた…」


逃げた先に待ち伏せている生徒と職員の集団。

「〜〜しまった…!」

「――残念だったな」

「ハ…ッ!?」


剣に黒い雷をまとわりつかせ、ほくそ笑みながら歩み寄ってくるジェダイト。

「これ以上、我々の邪魔が出来ぬよう、魂もろとも消し去ってくれる…っ!!」

「〜〜くっ、万事休すね…」

「ふははははっ!!――死ねぇぇっ!セーラー戦士ぃぃぃっ!!」


剣を振りかざすジェダイトに身構えるムーン達。

「――サイレンス・ウォール!!」

「ぐ…っ!?」


ムーン達とジェダイトの間に黒い闇の壁ができ、剣の攻撃を防ぐ。

「私達を忘れないでもらえるかしら?」

マーズとサターンが手すりから飛び降り、ムーン達がいる非常階段へ着地する。

「マーズ!サターン!」

「〜〜フン!たかだか2人増えたところで――っ!?」


刀身にまとわりついていた黒い雷と自身が纏っていた闇のオーラが消え、驚くジェダイト。

「〜〜しまった、黒水晶の効き目が…!」

「今よ!」

「任せときな!シュープリーム・サンダー・ドラゴン!!」

「や…、やめろぉぉっ!!〜〜ぐわああああああ〜っ!!」


雷のドラゴンに飲み込まれ、傷だらけになって膝をつくジェダイト。

「〜〜ぐぅ…うぅっ…、くそぉ…っ」

「皆、今のうちに!」

「えぇ!」


サターンに誘導され、階段から飛び降りて、中庭に着地するマーキュリー達。

苦しんでいるジェダイトを複雑そうに見ているマーズに気づくムーン。

「マーズ…?早く行かないと!」

「〜〜え、えぇ…」


飛び降りて逃げるムーンとマーズ。

「待てぇ…っ!〜〜ぐ…っ」

手をつき、息を荒げているジェダイトの隣に瞬間移動してくるゾイサイト。

「…だから言ったろう?リーダーの忠告は素直に聞くべきだぞ」

「うるさいっ!ハァハァ…、〜〜黒水晶を使うコツさえわかれば、あんな小娘どもなど…っ!!」

「ハァ…、だから、お前は駄目なんだよ。自信家の割に、パワーのデータは四天王の中でも最弱…。…なのに、思い上がりも甚だしい」

「〜〜黙れ、この陰険がぁっ!!俺は誰よりも強いっ!!四天王の誰よりもなぁ…っ!?」

「ほぉ…。ならば、貴様の本気を見せてもらおうか?口先だけではないということを証明してみせろ」

「あぁ、いいだろう!俺一人で全セーラー戦士を抹殺してみせようじゃないか…!!」

「フフッ、それはまた大きく出たものだ」

「クク…、後で吠え面をかくなよ?そうすれば四天王のリーダーは、この俺になるんだからなぁ!?」

「ハハハハ…!本当に実現出来れば、王国復興の記念にお前を称える記念碑を建ててやろう。――だが、安心しろ。もし命を落とすようなことがあっても、お前の名は後世まで伝えてやる。もっとも、その時は英雄ではなく、間抜けなホラ吹き男として…だがな?」

「〜〜…っ!!」


笑いながら歩いていくゾイサイトを悔しく睨みながら拳を握るジェダイト。

(〜〜どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがってぇ…っ!!)

ダーク・キングダムのアジトに戻り、玉座の間に入るジェダイト、女王の玉座の後ろにそびえ立ち、光沢を放つ巨大な黒水晶を見上げ、不気味に笑う。

「――これだけあれば上等か…。クククッ」

★               ★


ダーク・キングダムのアジト。

監禁部屋に軟禁されているせつなが傷だらけでベッドに寄りかかり、ボーッと遠くを見つめている。

(こんな状態がいつまで続くの…?〜〜もう…耐えられない…っ)

目に涙を浮かべ、うずくまるせつな。

(……でも、耐えなければ…。私には丁度良い罰…――!)

「ハ…ッ!?〜〜何を言ってるの…、私ったら…?」


扉が開く音に警戒し、振り返るせつな。

クンツァイトが食器が乗ったトレーを黙って運んできて、せつなの傍に置く。

「…何のつもり?」

「…少し体力をつけろ。そんな痩せた体じゃ、これから先、女王の拷問には耐え切れんぞ?」

「…いらないわ」

「……好きにしろ」


食事をそのままに、扉を閉めて去っていくクンツァイト。

美味しそうな匂いと湯気が少し気になり、食事を見るせつな。

廊下に出て、ジェダイトを見つけるクンツァイト。

「戻っていたのか…。……フッ、ゾイサイトから報告は受けたぞ。黒水晶の力を使ってもセーラー戦士を倒せなかったらしいな?」

「あぁ、俺としたことが油断してたみたいだ。これからは気をつけるよ、リーダー」

「あ、あぁ…?なら、いいが…」

「プリンセスのお相手、大変そうだな?たまには俺が代わろうか?リーダーとはいえ、お前も休まんともたんだろう?」

「…何かあったのか?」

「何故そう思う?」

「……いや。…そうだな、少し仮眠を取らせてもらおう。2時間経ったら呼びに来てくれ」

「わかった。――ゆっくり休めよ、リーダー…♪」


不気味に笑い、部屋に入っていくジェダイトを不審な顔で見るクンツァイト。

その頃、監禁部屋。せつながつばを呑み、食事を口に運んでいた。

「…結構、美味しいかも♪これ、クンツァイトが作ったのかしら…?」

「――寝床に食事付きとは、さすがお高いご身分だなぁ、プリンセス?」


振り返り、入ってきたジェダイトを睨みながら身構えるせつな。

「どうせなら、ジャグジーにシャンパンもつけるか?――お望みなら、オイルで全身マッサージもしてやるよ…♪」

「〜〜ふざけないでっ!!」


せつなの顎を軽く押し上げているジェダイトの頬を叩こうとしたせつなの手首を掴むジェダイト。

「…だが、一流ホテルにずっと缶詰めというのも退屈だろう?――たまには外の空気を吸いたくないか?」

驚き、ジェダイトを見つめるせつな。

★               ★


はるか、みちる、せつな、ほたるの家。

家の付近を無表情で歩き、うさぎ達を探す生徒と教師達。

カーテンの隙間から様子を伺い、閉めるはるか。リビングで暗く沈んでいるうさぎ達。

「〜〜許せないよ…。学校の人達は何も関係ないのに…っ!」

「…やはり、あの校長を何とかするしかないだろうな」

「だけど、学校中のエナジーを集めたことでクイン・ベリルの力は前よりさらに強まってるわ」

「それに、また学校に戻るのも危ないんじゃないか?」

「そうよ!〜〜やっとの思いで抜け出してきたのにぃ〜…」

「……やっぱり、幻の銀水晶を見つけるしか…?」

「…それができたら苦労はないよ」

「唯一の手がかりは、プリンセスが持っているということだけ…。でも、せつなママは何も持ってなかったよね?」

「ここを気づかれるのも時間の問題だし…、〜〜これからどうしたらいいかしら…?」


不安な顔を見合わせるレイ達。一人、コンピュータを動かしている亜美。

「…?亜美ちゃーん、さっきから何やってんの?」

「ちょっと待って、もうすぐ…――!」


――ピーピーピー!

キーボードを打つのをやめ、解析結果が画面に表示されて喜ぶ亜美。

「やったわ…!――皆、ダーク・キングダムのアジトがわかったわよ!」

「えっ!?」


一斉に画面を覗き込むうさぎ達。北極地点が赤い光で点滅している。

「すっご〜い!さっすが亜美ちゃん!!」

「あんな状況で、よく発信器なんてつけられたわね?」

「ジェダイトにじゃないわ。はるかさんとみちるさんに頼んで、遠藤校長のバッグにこっそり仕込んでもらったのよ」


回想。校長室で紅茶を淹れるベリルの様子を伺いながら、バッグに発信器を隠すはるかとみちる。回想終了。

「あ〜!だから今朝、校長室に行ってたんだー?」

「そういうこと!あれぐらい、僕とみちるにかかれば朝飯前だけどね♪」

「向こうは、せつなの居場所を吐かせに来たとしか思っていなかったようだけれど♪」

「さっすが、はるかさんとみちるさ〜ん!」

「で、そのアジトっていうのはどこにあるんだい?」

「この赤く点滅しているポイントよ。――北緯66度…、場所は北極圏Dポイント…!」

「よ〜し!じゃあ早速…――って、えっ!?」

「〜〜ほ…っ、北極ぅ〜っ!?」「〜〜ほ…っ、北極ぅ〜っ!?」

「…?どうかしたの?」

「〜〜いや、その…、あれでしょ?当たり前のように言ってるけど、北極って白熊なんかがいる…?」

「そうだよ!白熊さんとお友達になれるといいね〜、うさぎちゃん♪」

「〜〜あ…あははははは…。そ、そうだね〜♪」

「〜〜うぅ〜…。そこってマイナス何度になるわけぇ〜…?初夏に想像してもガクブルなんだけどぉ〜…」

『――ほぉ、我らのアジトを探し当てたか』

「え…っ!?」


カーテンを開けて空を見上げるうさぎ達。夕空に巨大なジェダイトの姿が浮かび、驚く街の人々。

「ジェダイト…!?」

『聞くがいい、セーラー戦士ども!一度だけお前達にチャンスをやろう!明日の午前0時、十番空港の6番ゲートに来るがいい!もしも俺と戦って勝てたなら、プリンセスはそのまま解放してやる!』

「えっ?ほ、本当に!?」

『ククッ、…だが、もし俺に勝てなければ、そのまま貴様達全員の命をもらう!フフ、怖くなったなら無視すればいいさ。プリンセスがどうなってもいいというならなぁ…!?』


ジェダイトの高笑いと同時に巨大な炎が街を覆い尽くす。

「きゃああっ!?」

ほくそ笑み、指を鳴らして炎を消すジェダイト。

『安心しろ、今のは幻だ。だが、約束を破ればプリンセスの体を今の数倍の炎で燃やしてやる!骨も残らぬ程になぁ…!ククク…ッ、アーッハハハハ…!!』

高笑いを響かせながら消えていくジェダイト。

「〜〜そんな…。せつな先生…」

「…行こう、皆!私達なら、きっと勝てるよ!!」

「〜〜でも、罠かもしれないだろ?」

「そうよ!〜〜それに、本当にせつな先生を連れてくるかも…」

「〜〜そんなのわかってるよっ!!……でも今は…、どんな小さな望みにもすがりたいの…っ!どんな時でも、命懸けでプリンセスを守るのが私達の使命でしょ!?」

「うさぎ…」


顔を見合わせ、凛々しく頷き合う亜美達。

「そうだよね!四天王なんてズババババーンってやっつけて、早くせつなママを助けてあげようよ!?」

「うん、そうだね!――負けないわ…!どんなことがあっても、私達は…!!」

(――そうだよね、まもちゃん…?)


沈む太陽に広がっていく黒点を凛々しく見上げるうさぎ達。

「〜〜……」

一人うつむき、複雑な表情のレイ。

★               ★


ダーク・キングダムのアジト。

エンディミオンが黒い水晶玉をイライラして床に叩きつけて割るベリルを見ている。

玉座の後ろにそびえ立っていた黒水晶が大きく削られている。

「〜〜おのれ、ジェダイト…!勝手にプリンセスと黒水晶を持ち去るとはぁ…っ!!」

「…落ち着け。セーラー戦士どもに奪われる前に取り返せばいいだろう?――たとえ部下だろうと、お前を悩ませる者は全て私が消してやるからな…?」

「エンディミオン…。あぁ、やはりあなたは私の夫にふさわしきお方…♪」


頬を赤らめ、幸せそうに寄り添ってくるベリルを抱きしめながら不気味に微笑むエンディミオン。

「――私達の王国復興を邪魔する者には制裁を加えればいい」

立ち聞きして舌打ちし、足早に離れるクンツァイト。

(――ジェダイト…、やはりそういうことだったか…。〜〜止めなくては…!お前を死なすわけにはいかぬ…っ!!)

そこへメタリアのうめき声が聞こえ、玉座の間に急ぐクンツァイト。

ジェダイトにほとんどを奪われ、残った黒水晶の塊から闇のエナジーが大量に放出しており、喜ぶクンツァイト。

「これは…!――ゾイサイト…!!ゾイサイトはいるか!?」

クンツァイトが玉座の間を後にすると、聞こえてくるメタリアの声。

『――私が…、私こそが真の闇の女王だ…!』

黒く光り、塊が成長して、巨大なメタリアの彫像に成長する黒水晶。


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