美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.6「月のプリンセス、覚醒!」その1



セレニティ目線。炎上する月の王国。戦う兵士達。

妖魔達を剣で倒しながらセレニティの手を引っ張って走るエンディミオン、王宮の出口前で止まり、辺りを見回す。

『――ここまで来れば大丈夫だろう。早くウラヌス達の元へ…!』

『〜〜いや…!あなたを置いて行けないわ!』

『心配するな。この戦いを終わらせたら、必ず君を迎えに行く…!』

『エンディミオン…』


抱き合うセレニティとエンディミオン。

『――そうはさせぬ…!』

驚く2人。女王姿のベリルがメタリアに取り憑かれながら剣を持って歩いてくる。

『セレニティよ、貴様だけは決して逃がしはしない…!』

『〜〜あ…ああぁ…』


怯えるセレニティをかばい、前に出てベリルと対峙するエンディミオン。

『すぐに兵を撤退させろ!戦からは何も生まれん!無駄に民を傷つけるだけだ!!』

『そこをおどき下さいませ、エンディミオン様。私はただ、この争いの元凶を滅ぼそうとしているだけ…』

『させるものか!セレニティは、この私が命に代えても守ってみせる…!!』

『〜〜エンディミオン様…。……くぅぅ…っ…!――うわあああああ〜っ!!』


悔しがり、やけになってエンディミオンに斬りかかるベリル。剣で防ぐエンディミオン。

『エンディミオン…!!』

『く…っ、早く逃げろ、セレニティ!』

『許さぬぅ…っ!〜〜絶対に…許すものかあああああああっ!!』


――ドス…ッ!!

『…っ!!』

ベリルの剣が刺さった腹に血が広がり、目の前でゆっくり倒れていくエンディミオンを見て、目を見開くセレニティ。

「〜〜エンディミオ――ンッ!!」

汗だくで息荒く飛び起きる制服姿のうさぎ。育子の寝室でパイプ椅子に座り、ベッドに突っ伏して眠っていた。

「……ゆ…め…?」

「――あらあら、やっと起きたのね、うちの大きな赤ちゃんは」


パジャマにカーディガンを羽織って病室に戻ってくる育子。

「ママ…!んもう、散歩行くんなら起こしてよね!?まだ怪我完治したわけじゃないんだから…」

「だって、あまりにぐっすり眠ってたんですもの、悪いかなって。――あ、そうそう、忘れるところだったわ。パパから頼まれたんだけどね、これ、うさぎに渡しておくようにって」


引き出しを開け、せつなとの晩餐会の写真をうさぎに渡す育子。

「あ…」

『――きゃああああああああ――…!!』


衛に傷つけられ、さらわれるせつなを思い出し、うつむきながら受け取るうさぎ。

「〜〜うん…。ありがと…」

鞄に入っている手帳に挟むが、いつの間にか飾られているバラの一輪挿しを見てハッとなるうさぎ。

「ふふっ、綺麗でしょう?それもパパが買ってきてくれたのよ。…結婚記念日の埋め合わせのつもりなのかしらねぇ?」

『――負けるな、うさ…!』


自分を守るタキシード仮面と操られた衛を回想し、拳を握るうさぎ。

(〜〜守れなかった…。せつな先生も…、まもちゃんも…っ)

せつなと衛の顔で抱き合うセレニティとエンディミオン、科学センターで親し気にするせつなと衛を思い出すうさぎ。

(――私…、本当嫌な女だよね…。あの時、ほんの一瞬せつな先生がいなくなればって…。だから、力を出せなかったんだ…。〜〜私…、プリンセスを守る戦士…、失格だよ…っ)

静かに泣き出すうさぎ。

「うさぎ…?やだ、どうしたのよ?」

「う…っ、〜〜ママぁ…!」


育子の胸に飛び込み、泣きじゃくるうさぎ。

「私…、自分が大っ嫌い…!〜〜人の不幸を望むなんて最低だよ…っ!!」

驚きつつも優しく微笑んで、うさぎの頭を撫でる育子。

「心が真っ白な人間なんていないわ」

「え…?」


驚き、顔を上げて育子を見つめるうさぎ。

「嫉妬したり恨んだり…、自分はあの子より幸せになりたい…。ママだってね、パパが自分より綺麗な人と喋ってるだけで妬いちゃうことがあるもの。個人差はあっても、そういう心の影を抱えてるものよ。人間なら誰でもね」

「でも、そのせいで取り返しのつかないことだって…」

「そうね。その影がほんの少しでも大きくなれば、相手を深く傷つけてしまうこともあるわ。そして、いつの間にか大切なものまで失ってることだってある…。結局そういう感情は巡り巡って自分までもを傷つけてしまうのよね…」

「…わかるの、私が何で悩んでるのか?」

「フフ、何年母親をやってきたと思ってるの?顔を見れば大体の察しはつくわ。恋の話…、でも、内容はヒミツ…でしょ♪」

「う…」

「ふふっ、安心しなさいって。深く問い詰めるつもりはないから。若いうちは色んなことを経験して、いっぱい悩みなさい。失敗して、悩んで、後悔して…、人はそうやって少しずつ成長していくの。ライバルから強引に奪えとまでは言わないけど、自分がこうしようと決めたら、その道を信じて歩いていきなさい。誰のものでもない、あなたの人生なんだから、後悔しないように生きればいい。でも、どんな時でも思いやりの気持ちだけは忘れないようにね?」

「ママ…」

「ふふっ、頑張りなさい、女の子!」

「うんっ!えへへへっ!」


安堵した顔で育子に甘えるうさぎ。

「やっぱりママは世界一のママだね〜!」

「フフ、やっぱりまだまだ赤ちゃんね」

(――そうだよね…。せつな先生がまもちゃんを好きだとか、そんなのは全然関係ないんだ!私はプリンセスを守る戦士。使命はちゃんと果たさなくちゃ…!)


★               ★


ダーク・キングダムのアジト。

ジェダイトに殴られ、口から血を流して倒れるネフライト。

「フン、てこずらせやがって!」

「クイン・ベリル様も相当お怒りだったぞ?頭を冷やした後で土下座でもするんだな」


鼻で笑い、怒りながら去るゾイサイトとジェダイト。うつむくネフライトに黙って歩み寄るクンツァイト。

「……何があった、いつも人を小馬鹿にするほど冷静なお前が…?」

「…別に大したことじゃない」

「嘘をつけ!些細なことで女王の命令を無視してまで暴れたりするものか!」


クンツァイトと目を合わさずに立ち上がるネフライト、拍子になるのハンカチが落ちる。

『――テニスプレイヤーが手を怪我するなんて命取りでしょう!?』

手当てしてくれたなるの笑顔を思い出し、ハンカチを拾って見つめるネフライト。

「――クンツァイト」

「…何だ?」

「……俺達の心にもあるんだろうか、『愛』なんて奴が…?」

「ククッ、何を言い出すかと思えば…」

「フッ、悪い。…だが、時々ふと気になる時があるんだ。この感覚…、遠い昔の記憶と共に置いてきてしまったような…」

「…ネフライト、誰に吹き込まれたかは知らんが、そんなものはまやかしだ。この世は人間の恨みと憎しみで腐り果てているのだ。そのことを忘れるなよ?」

「……あぁ、もちろんだとも」


眉を顰め、ハンカチを懐にしまうネフライト。

「…腑に落ちんという顔だな?」

「…そんなことはないさ」

「――忘れたわけではなかろう、我々の真の目的を?」

「…言われるまでもない。その為に俺達はここにいるのだからな…!」


ネフライトと視線を交わし、ほくそ笑むクンツァイト。

「――今のうちにゆっくり休んでおけ。女王の真の復活も近いのだからな」

部屋を出て行くクンツァイトを見送り、静かに椅子に腰かけるネフライト。

『――ネフライト…!』

前世のジュピターを思い出し、思い立って立ち上がり、通路を歩いていくネフライト。

景色が暗闇から十番高校の廊下へ変わり、自身も四天王の格好から制服姿の三船光になっている。

(――また来てしまったな…。もうここでの役目は終わったというのに…)

体育祭の準備に追われる校内。すれ違う生徒や職員がわからないように少しずつエナジーを吸い取られていくのを見つめている三船、立ち止まる。

校庭でビリで走る海野を張り切って応援している体育着姿のなるを発見。

「ほらー、もうちょっとよ、もうちょっと!走る走るー!!」

「〜〜はぁはぁ…。も…もう…限界ですぅ〜…」


倒れ込みながらゴールした海野の汗をタオルでぐしゃぐしゃ拭いてやるなる。

「もー、海野ったらダントツでビリじゃーん。だらしないなぁ…」

「〜〜す、すみません…。僕の体力ではあれで精一杯で…」


海野と楽しそうに喋るなるを渡り廊下から見つめている三船。

「――コラーッ、海野ーっ!!さっさと集まらんかぁっ!!」

「〜〜は…っ、はひ〜っ!!」

「あははっ、しごかれてこいよ〜♪」


竹刀を地面に叩きつける体育教師にビビリながら走り去る海野を笑いながら手を振って見送るなる、三船と目が合う。

「あ…!お疲れ様です、三船先輩〜!」

「あ…、あぁ…」


なるが駆け寄ってきて、頬を赤くする三船。

「先輩は何に出るんですか?自慢の俊足を生かして、…徒競走とか?」

「…まぁそんなところだ」


なるから目を逸らし、ふくれる三船。?を浮かべ、顔を覗き込むなる。

「?先輩、どうかされたんですか?」

「…今の男は?」

「あー、海野ですか?エヘ♪その…、実は彼氏ってゆーか…♪」

「〜〜んなぁ…っ!?君はあんなダサい男と付き合っているのか!?」

「う〜ん、そうやって皆から言われちゃうんですよねぇ、悲しいことに…。でも、私的には母性本能をくすぐられるっていうか〜、な〜んか放っとけない感じ…かなぁ?」

「そ、そう…か…」


残念そうにうつむく三船にクスクス笑うなる。

「先輩っていつも女の子に囲まれてるのに、…意外に純情なんですね?」

「〜〜わ…っ、笑うなっ!」

「ふふふっ、ごめんなさーい。でも、先輩だって本気で人を好きになったことくらいあるでしょう?」

「え?」

「私は今、そんな感じなんですよね〜。おかしな話に聞こえるでしょうけど、海野以外の男の子って、今は考えられないかなぁ?アイツとは中学からの付き合いなんです。どうしても私と付き合いたいって裏庭で言われて、良い暇潰しになるかなぁって、なんとなーく付き合うことにした…って感じだったんですよね、最初は。でも、いつの間にかアイツが傍にいるのが当たり前になっちゃったっていうか…。空気とか太陽って例えたらベタすぎるかもしれませんけど…、今、もしも彼がいなくなったら、私が私でいられなくなっちゃう気がするんです…。フフ、アイツのことを考えて、世話を焼いている私が一番私らしくて、自分でも大好きなのかも♪」

「……人を愛するって、そんなに素晴らしいことなのか?」

「え?フフ、どうしたんですか、今日は?何だかいつもの先輩じゃないみたい」

「あ…、いや、すまない。だが、俺には愛というものがどういうものなのか、よくわからないんだ…」

「うーん…、私もそんな深くは考えたことありませんけど…。恋っていうのは自分が相手を一方的に好きになることだけど、愛っていうのは相手も、相手に恋する素直な自分も好きになって受け入れるってことなんじゃないかって思いますよ」

「素直な自分を…?」

「はい。相手の全てを受け入れるのは、それなりの勇気がないと難しいかもしれませんけど…、皆が皆、お互いを思いやるようになれば犯罪も戦争もなくなるし、今よりもっと素敵な世の中になるんじゃないかって思いませんか?」

「そうだな…。フッ、強いんだな、君は」

「ふふっ、三船先輩もいつか出会えますよ。自分のことを愛して、受け入れてくれる人に」


――キーンコーンカーンコーン…。

「あ…、もう教室に戻らないと!次、英語の小テストなんですよね」

「そうか。付き合わせて悪かったね」

「いえ、お話できて楽しかったですから。――それじゃ!」


明るく走って、海野と仲良く教室に帰っていくなる。

「…あっ!!」

ハンカチを返しそびれたのに気づき、深くため息をつきながら頭を掻きむしる三船。

「〜〜あんな小娘相手に…、何をやってるんだ、俺は…っ!?」

「――フフッ、お前が恋煩いとはなぁ」


ムッとし、振り返る三船。ニヤニヤ笑いながら、教科書と参考書を抱えた制服姿の以象が歩み寄ってくる。

「命令に背いた挙句、女とイチャつくとは良いご身分だな?少しは反省しているものと思ったが…」

「…お前こそ何故、まだここにいる?プリンセスは捕えたし、エナジーも女王が力を取り戻すほど量は集まったはずだ。もうここに用はないはずだろう?」

「おや、もしかして聞かされてないのかい?ククッ、そりゃそうか。今までずっと懲罰房に入れられていたのではな」

「…どういうことだ?はっきり言ったらどうなんだ!?」

「ククッ、わからないか?十番高校での最後の作戦だよ」

「最後の作戦…だと…?〜〜一体何をするつもりだっ!?」

「貴様は懲罰房に戻ってろ。――先程の娘、…よほど気に入ってるんだろう?」

「…っ!!」


襟を掴んでいた三船の手を払い、眼鏡を押し上げてほくそ笑む以象。

「フッ、愛なんてものは持っていても厄介なだけさ」

「〜〜おい!ちゃんと説明を――っ!?」


去っていく以象に掴みかかろうとした三船、闇のエナジーが高まる気配がし、ハッと辺りを見回す。

「この気配は…!?」

★               ★


保健室。

空席のせつなのデスクに置いてあるせつなの湯呑を見つめるうさぎ。

深刻な顔の亜美、レイ、まこと、美奈子、はるか、みちる。ベッドに座り、泣いているほたる。

「〜〜う…っ、ひっく…、せつなママぁ…」

「ほたるちゃん…」


隣に座ってほたるを抱きしめ、なぐさめる亜美。

「〜〜ごめんなさい…。私達がもっとしっかりしていれば、こんなことには…」

「…まったくだ」


驚き、はるかを見るうさぎ。

「あんなくだらない心理作戦に引っかかるとは…、セーラー戦士としての自覚が足りない証拠だな」

「〜〜ちょ…っ!そんな言い方しなくてもいいじゃないっスか!!」

「そうよっ!好きな人に騙されてた私達の気持ちも少しは考えてくれたって…っ!!」

「だから、お前らは甘いんだ!その心の弱さを克服しない限り、プリンセスを守るのは一生無理だ!!」

「だったら、あなた達はどうなのよ!?そもそも、あなた達が奴らと互角に戦えるくらい強かったら、プリンセスを守りきることができたんじゃないの!?」

「何…っ!?」

「――もうやめてぇぇっ!!」


ハッとなり、振り返ってうさぎを見る亜美達。

「〜〜今、ここで仲間割れしたって、せつな先生は助けられないんだよ…?辛いのは皆、同じはずでしょ!?なら慰め合って、力を合わせて戦えるようにしなきゃ…駄目だよ…っ」

「うさぎちゃん…」

「〜〜……っ」「〜〜……っ」「〜〜……っ」「〜〜……っ」

「彼女の言う通りよ。喧嘩する前に、一刻も早くプリンセスを助け出さないと…!」

「でも、どうやってアジトを見つけ出すの?〜〜うさぎちゃん達が仲間になる前からずっと探してるけど、未だに何も掴めないし…」

「ほたる、人間っていうのは学習する生き物よ。――亜美ちゃん?」

「はい…!」


発信器を取り出し、見せる亜美。

「ホームページを参考に、見よう見まねでつくってみたの。動作はテスト済みだから、これを奴らにつけられればエナジー濃度が算出されて、おおよその範囲は特定できるはずよ」

「すっご〜い!」

「さっすが亜美ちゃんだね!」

「あとは、うまく奴らにつけることができれば…!」

「えぇ。たとえ一人一人の星の光は儚くても、全員集まれば太陽にも勝る輝きを放つことができる…。――意味は分かるわよね?」


気まずそうに見つめ合うレイ、まこと、美奈子、はるか。

「…ごめんなさいは?」

「……ごめんなさい」「……ごめんなさい」「……ごめんなさい」「……ごめんなさい」

「えへへっ、よろしい!」


腕を組み、満足気に微笑むほたる。

「――おっじゃま〜♪」

春奈が紙袋を持って保健室に入ってくる。

「…あら?今日、冥王先生、休みだったのねぇ」

「ハルダ…!〜〜う、うん…。ちょっと体調崩しちゃったんだって…」

「そう…。残念だわぁ、せっかく沖縄のお土産持ってきたのに…。つまんないし、お見舞い行ってあげようかしら?」

「〜〜えぇっ!?え〜っと、それはぁ…」

「代わりに渡しておきますわ。冥王先生、それはそれはおたふく風邪がひどくて…。あまりお顔を見て差し上げない方がよろしいですよ?」

「まぁ、そうだったの!?〜〜可哀想に…。大人になってからのおたふく風邪って苦しいのよねぇ…。――じゃあ海王さん、頼んだわね♪」

「ふふっ、えぇ♪」

「〜〜みちるさんって結構ドSよね…?」

「〜〜うんうん…」「〜〜うんうん…」


みちるに紙袋を渡して出て行こうとしたが、立ち止まって振り返る春奈。

「――そういえば月野さん達、あの後、追試はどうなったの?」

「〜〜ぎくっ!?」「〜〜ぎくっ!?」「〜〜ぎくっ!?」

「〜〜え〜っとぉ…、じ、実は途中で偽セーラー戦士が現れてぇ〜――もがっ!?」


うさぎの口を塞ぐまことと美奈子。

「〜〜は〜い!もう〜それはそれは冥王先生の熱心なご指導のお陰で、4人ともバッチリ合格しました〜♪」

「〜〜そ…、そうそう!最終的にうちら全員満点取っちゃって♪それはそれは気持ち良く終われたんスよ〜!!」

「〜〜つ…っ、次の期末、楽しみにしててくれよな、先生〜♪」

「あらあら、よく頑張ったじゃな〜い♪うんうん、やっぱり私って教師に向いてるのよねぇ〜!〜〜そうよ…。たとえ一生結婚できなかったとしても、一人で食べていけるだけの財力さえあれば…ぶつぶつぶつ……」


急に暗くなりながら保健室を出て行く春奈。

「……今ので大体想像ついたよな、沖縄旅行の結末?」

「ふふっ、ご愁傷様〜♪」


★               ★


職員室。

ため息をついて職員室に戻ってきた春奈。

「〜〜そうよっ!結婚だけが女の幸せじゃないわっっ!!そうよ、結婚は墓場で、30年過ぎたら忍耐が必要になるって一般的に言われてるし…ぶつぶつぶつ……」

「あっ、桜田先生〜!」

「沖縄旅行、いかがでした〜?」

「――あぁん!?」


怖い顔で春奈に睨まれ、ビクビクしながら抱き合う同僚の女教師達。

ベリルが教頭を連れ、スーツ姿で入ってくる。

「校長…?」

「いかがされたんですか?」

「はいはい、皆さん集まって下さーい!遠藤校長から大切なお話がありますよー」


不思議そうに顔を見合わせ、席に着いてベリルに注目する職員達。職員達を見渡し、微笑むベリル。

「皆さん、毎日ご苦労様です。あなた方の努力の甲斐あって、我が麻布十番高校は昨年度、有名大学への現役合格率を過去最高に伸ばし、都内の公立高校の中でも上位に位置する進学率を誇ることができました」

「おぉ〜っ!」

「ウフフッ、やっぱり私はこの仕事が天職なのねぇ…♪」

「そこで我が校は、生徒さんや親御さん達からのさらなる期待に応える為、今年度より大規模な構造改革に打って出ることに致しました」

「構造改革…ですか?」

「私立ならともかく…」

「えっ?〜〜あ、あのー、校長?今日は全国高校対抗ドラマ合戦についてのお話じゃあ…――?」


教頭に不気味に微笑み、瞳を黒く光らせるベリル。教頭や教師達の体から奪われるエナジーの速度が速まり、ゾンビのように全員操られる職員達。

「――構造改革その1、幻の銀水晶を見つけ、私に捧げること。そうすれば我が校は世界最高ランクの実績を永遠に保つことが出来るでしょう」

「――仰せのままに、クイン・ベリル様」


無表情でベリルの前にひざまずく春奈達。


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