美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.5「恋敵はプリンセス!」その5



「――きゃあああああ〜っ!!」

飛ばされたプルートが2階から落下し、倒れて悶える。

影のマーキュリー達を従え、階段を下りてプルートに歩み寄るネフライト。

「…往生際の悪い姫君だ。あれだけ痛めつけられても、まだ歯向かってくるとは」

「〜〜うぅ…っ、もう…やめて…。許し…て…」

「やめろと言われたら、もっとやってやりたくなるのが性分なものでね…!」


指を鳴らすネフライト。

外部4人の屋敷で眠っている本体の亜美達から闇のエナジーがさらに吸収されると、影のマーキュリー達に注入され、さらにパワーアップ。

「あぁ…っ!?」

「――やれ!!」

『ダーク・パワー!!』『ダーク・パワー!!』『ダーク・パワー!!』『ダーク・パワー!!』

「あはあああああっ!!〜〜あ…あああぁ…」


影のマーキュリー、マーズ、ジュピター、ヴィーナスから発せられる闇の衝撃波を浴び続け、苦しむプルート。

「クククッ、そのまま死んでしまえ。最後に勝つのは愛でも正義でもない!戦いと破壊を好む憎しみの心だ…!!」

「――ネフライトッ!!」


クンツァイト、ゾイサイト、ジェダイトがやって来る。

「何をしている!?プリンセスは生け捕りにしろと言われているだろう!?」

「〜〜黙れ!!俺は今、腹が立って仕方ないんだっ!!」

「落ち着け!!何があったんだ!?」

「〜〜うるさいっ!!邪魔をするなぁぁっ!!」


クンツァイト、ゾイサイト、ジェダイトにダーク・パワーを浴びせるネフライト。

「〜〜ぐ…っ!」

「ネ…、ネフライト…!?」


駆けつけるウラヌス、ネプチューン、サターン。

「〜〜仲間割れ…!?」

「ハ…ッ!〜〜プリンセス…ッ!!」


倒れているプルートに駆け寄ろうとして、影の内部4戦士に邪魔される外部3戦士。

「〜〜くぅ…っ!さっきより闇のエナジーが強くなってるみたい…!」

「本体の水野さん達から吸収するエナジーの量を増やされたんだわ!〜〜早く止めないと、この娘達は…!!」


駆けつけるムーン。

「皆…!」

「セーラームーン!」

「無事だったのね…!」

『邪魔をするなぁっ!!』


影のマーズに悪霊退散のお札を貼られようとして避け、投げ飛ばすウラヌス。

「くそ…っ!ワールド――!!」

「待って!!話せばわかってくれるわ!!」

「無理よ!〜〜ここまで闇のエナジーに侵食されてしまったら、もう…」

「でもっ、〜〜仲間同士で戦うなんて、絶対ダメ…ッ!!」


影のヴィーナスの肩を掴んで言い聞かすムーン。

「美奈子ちゃん、聞こえる!?お願い!もう誰かを憎むのはやめて…っ!!」

『……』


ムーンの手を冷たく払う影のヴィーナス。

「やめろ!殺されるぞ!?」

首を横に振り、影のジュピターとマーズの肩を掴むムーン。

「まこちゃん!レイちゃん!憎しみからは何も生まれないよ!?」

『……』『……』


ムーンを突き飛ばす影のジュピターとマーズ。

『…本当に馬鹿ね。あんたなんかに私達の苦しみがわかるはずない…!!』

「亜美ちゃん…!〜〜いつもの優しい亜美ちゃんに戻ってよぉ…っ!!」


ムーンの頬を叩く影のマーキュリー。

「うさぎちゃん…!!」

「〜〜ゴメンね…。私…、馬鹿だから何で皆が苦しんでるのかわかんない…。でも、私達は同じセーラー戦士でしょう!?こんな罠で私達の心がバラバラにならないはずよ…っ!?」

『偉そうに…っ!!』

『ダーク・パワー!!』『ダーク・パワー!!』『ダーク・パワー!!』『ダーク・パワー!!』

「きゃあああああ〜っ!!」


影の内部4戦士の闇の攻撃を受け、倒れるムーン。

「〜〜セーラームーン…ッ!!」

歯を食いしばって体を起こし、真っ直ぐな瞳で影のマーキュリー達を見つめるムーン。

「亜美ちゃん…、レイちゃん…、まこちゃん…、美奈子ちゃん…、お願い…!綺麗な心を取り戻して…!!」

ムーンの変身ブローチが光り、タキシード仮面からもらった月のオルゴールがゆっくり回転して音色が聞こえ始める。

「この音色は…!」

「遠い昔に…、どこかで聞いたような…?」

『〜〜うぅ…っ』

『〜〜くうぅ…っ』


苦しむ影の内部4戦士に驚き、内輪揉めをやめる四天王。

オルゴールの音色が聞こえ、目を覚ますプルート。

「これは…!?」

ムーンの頭の中に亜美、レイ、まこと、美奈子の憎しみの原因が映像として入ってくる。涙を流すムーン。

(――そっか…。辛かったよね…。〜〜ゴメンね、気づいてあげられなくて…)

★               ★


幻想世界。制服姿の亜美、レイ、まこと、美奈子が暗闇の中に立ち尽くしている。

『――ママのせいで、私はいつも一人ぼっち…』

『――父への憎しみなしでは、生きていけない…』

『――信じ合える友情なんて、この世にあるものか…』

『――私の苦労なんて、誰も知らないくせに…』

『――安心して…』


白く全身を光らせて、ゆっくり亜美達に近づいていくムーン。顔を上げる亜美達。

『あなた達は一人ぼっちじゃないよ?私達・セーラー戦士は同じ使命を持って生まれた仲間だもの…!』

微笑み、亜美達をまとめて抱きしめるムーン。

『うさぎ…ちゃん…?』

外側で優しく見守りながら囲んでいるウラヌス、ネプチューン、プルート、サターンに気づく亜美、レイ、まこと、美奈子。

『憎しみの心は相手も自分も傷つけるだけ…。思い出して!憎しみを抱いている相手は本当に自分を愛してくれてはいない…?』

亜美は病気になった幼い亜美を看病する亜美ママを、レイは母の誕生日にカサブランカの花束をくれたレイパパを、まことはうさぎ達との思い出を、美奈子は友人達との思い出をそれぞれ思い出す。

『――思い出して!私達の使命を…!!』

★               ★


暗闇が晴れ、白い光の空間に。正気を取り戻した亜美、レイ、まこと、美奈子、うさぎに向かって微笑み、力強く頷く。

現実世界。影のマーキュリー達が消え、倒れていた館内の人々にエナジーが戻る。

「闇のエナジーが浄化されていく…!」

「〜〜馬鹿な…!?」


オルゴールの光が消え、音色もやむ。

よろめき、膝をつくムーン。

「セーラームーン…!!」

「えへへ…、よかったぁ…」

「フフ、よく頑張ったわね」

「エライ、エライ♪」

「〜〜く…っ、こしゃくなぁ…っ!!」


剣を振りかざし、ムーン達に降り下ろそうとしたネフライトの剣に黒い雷が落ちる。

「ぐああああああっ!!」

倒れるネフライト。

「――愚か者が…。女王の命令に背くとは何たる無礼…!」

ベリルが操られたタキシード仮面を連れて現れる。

「〜〜クイン・ベリル…!!」

「クイン・ベリル様…!」


ベリルとタキシード仮面にひざまずくクンツァイト、ゾイサイト、ジェダイト。

素顔のタキシード仮面を見て驚く外部4戦士。

「えっ?あれって…!?」

「衛…さん…!?」

「まもちゃん…!?〜〜どうしたの!?何でそいつらと一緒にいるの…っ!?」

「エンディミオン様は私の婚約者。長い時を経て、ようやく私の元へ帰ってきてくれたのだ…!」

「〜〜エンディミオンがクイン・ベリルの婚約者…!?」


無表情でひざまずき、ベリルの手の甲にキスするタキシード仮面。

ショックを受けるムーンとプルート。

「タキシード仮面…、――いや、エンディミオン!やはり僕達を騙してたんだな!?」

「そんな…!〜〜嘘だよね、まもちゃん!?」

「黙れ、小娘!――さぁ、エンディミオン様。私への愛の証に、そこにいる薄汚い月のプリンセスを生け捕りにするのです…!!」

「――仰せのままに。我が最愛の妻・ベリルよ…」

「〜〜衛さん…!?」


黒い風に包まれ、エンディミオンの格好になるタキシード仮面、プルートを睨み、剣を構える。

「セレニティ…、どれだけお前に会いたかったことか…」

――ゴオオオオッ!!

「きゃあああああっ!!」

剣圧から発せられるダーク・パワーに倒れるプルート。

「〜〜プルートッ!!」

「嘘よ…!〜〜嘘よぉっ!!」

「プリンセスを守るのよ!!」

「うん!!」

「――させるかぁっ!!」


黒い球体のバリアーに包まれるムーン、ウラヌス、ネプチューン、サターン。

「これは…!?」

サイレンス・グレイヴを使って破ろうとするサターン。

「〜〜ダメ…!ビクともしない…!!」

「〜〜まもちゃん、やめてぇっ!!」


プルートに剣で攻撃し続けるエンディミオン。よけ続け、後ずさるプルート。

「〜〜まもちゃんっ!!」

「ククッ、愛する者とは戦えぬか?アハハハッ!」

「〜〜く…っ、衛さん…っ」


壁際まで追い込んだプルートに手を伸ばすエンディミオン。

「ダーク・パワー!!」

「きゃああああああっ!!」


倒れるプルートの髪を掴んで起こし、殴るエンディミオン。

「〜〜プリンセス…ッ!!」

「〜〜やめろぉっ!!」

「あぁ…っ!う…うぅ…っ」


仰向けに倒れ、近づいてくるエンディミオンを朦朧とした意識で見つめるプルート。

「エ…、エンディミ…オン…さ…ま……」

「私のエンディミオン、ふしだらな姫君に制裁を加えるのだ…!!」


プルートに向かって剣を振り上げるエンディミオン。

「〜〜せつなママ!!」

「〜〜やめてぇぇ〜っ!!」


プルートのリボンの留め具を破壊するエンディミオン。

「きゃああああああああ――…!!」

変身が解け、元の私服に戻って気を失うせつな。

剣を鞘に戻し、せつなをお姫様抱っこして、ベリルの隣に戻るエンディミオン。

「よくやった、エンディミオン」

「やめて…!〜〜せつな先生を返してぇっ!!」

「ふはははっ!我々の勝利だ!!プリンセスは頂いていくぞ、セーラー戦士ども!!」

「〜〜待て、クイン・ベリル!!」

「アーハッハッハッハ…!!」


瞬間移動して消えるベリル、エンディミオンとせつな、ゾイサイトとジェダイト。クンツァイトは気絶しているネフライトに肩を貸しながら。

バリアーが消え、泣きながら座り込むムーン。

「……どうして…?〜〜何でこんなことに…っ」

「〜〜う…っ、ぐす…っ、せつなママぁ…」

「〜〜ちきしょう…っ!」

「〜〜……」


拳を床に叩きつけるウラヌスの肩に手を置き、うつむくネプチューン。

「――またお前達か…」

ハッと振り返るムーン達。エナジーを奪われた科学センターにいた人達が怒りに震えながらムーン達を囲んでいる。

「ひどい…!いつまでこんなこと続けるつもりよっ!?」

「安心して暮らせやしないよ!!」

「〜〜だから違うんだってば!!それに、もう偽者は――っ!!」

「黙れぇっ!!」

「今日こそ警察に突き出してやらぁ!!」

「うおおおおおお…っ!!」


ムーン達に襲いかかってくる人々。よけ続けるムーン達。

「〜〜お願い!話を聞いて…っ!!」

「どりゃあああああっ!!」

「〜〜きゃ…!?」


展示してあった壺で殴ろうとしてきた男に身構えるムーン。

「――シャボン・スプレー!!」

霧に包まれるセンター内。

「〜〜くそ…!どこ行きやがった!?」

駆けつけるマーキュリー、マーズ、ジュピター、ヴィーナス。

「皆…!」

「こっちよ!」


マーキュリー達に誘導され、その場から立ち去るムーンとウラヌス達。

(……せつな先生…。〜〜まもちゃん…っ!)

涙を堪えてうつむきながら走っていくムーン。

★               ★


ダーク・キングダムのアジト。

ベッドで眠るドレス姿のせつなを満足気に見つめるベリル。

「フフフ…、遂にプリンセスに復讐を果たせる時が来たか…!」

隣にいるエンディミオンを見つめ、寄り添うベリル。

「闇のエナジーが集まり、私の力ももうじき復活する…。今度こそ、この地球を私とエンディミオン様の手で…!」

ベリルを抱きしめ、キスするエンディミオン。

同時に黒い闇のエナジーが体内に流れ込み、うなされるせつな。

「〜〜うぅ…っ、あく…うぅ…っん…っ」

「プリンセス・セレニティよ、今こそ我が復讐の灰を受けるがよい…!!」

「〜〜あ…っ、ああああああ〜っ!!」


闇のエナジーに体が侵食されていく苦痛に目を見開き、悲鳴をあげるせつな。

「ククク…、アーッハハハハハ…!!」『ククク…、アーッハハハハハ…!!』

ベリルの高笑いと同時に聞こえてくるメタリアの笑い声。

ACT.5、終わり


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