美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.5「恋敵はプリンセス!」その4



十番科学センター・廊下。

なるとるるなを連れて走るせつな。スタッフの控え室に着く。

「ここなら安全よ。奴らの注意をそらしたら呼びに来るから、それまで隠れてて…!」

「はい…!」

「――ご機嫌いかがかな、プリンセス?」


ハッと振り返るせつな。

ネフライトがニヤニヤしながら剣を持って歩いてくる。

「〜〜ネフライト…!」

「光栄だな。この俺がプリンセスのお相手に選ばれるとは」

「〜〜く…っ」


なるとるるなをかばい、ネフライトを睨むせつな。

「〜〜ま、まだ仲間がいたの…?」

怯え、せつなにしがみつくなるに気づき、眉間にしわを寄せるネフライト。

(チッ、またこいつか…!)

「――私が戻るまで開けてはダメよ!?」

「あ…!先生――っ!!」


ドアと鍵を閉めてなるとるるなを控え室に隠し、ネフライトと対峙するせつな。

「…約束して。もし私を倒しても、あの娘達には手を出さないと…!」

「…いいだろう。俺も誇り高き四天王だ。女の頼みは聞き入れる」


剣を構えるネフライト。変身ペンを取り出し、掲げるせつな。

「プルート・プラネットパワー・メーイクアーップ!!」

プルートに変身し、ガーネットロッドをネフライトに向けるせつな。

「時空と変革の戦士、セーラープルート!冥界の風で仕留めてあげるわ!!」

「プルート…!?――るるな!プルートお姉様が助けに来てくれたわ!!」

「うん!これでもう安心ね!」


控え室のドアに聞き耳を立て、るるなと喜ぶなる。

「安心しろ、すぐに殺しはしない。まずは我らの城へ来てもらおうか」

「丁重にお断りさせて頂くわ!――デッド・スクリーム!!」

「ダーク・パワー!!」


紫の風と黒い雷の攻撃弾がぶつかり、爆発。

「きゃああ〜っ!!」「きゃああ〜っ!!」

爆発に耳を塞ぎ、怯えて身を寄せ合うなるとるるな。

(ハ…ッ!?〜〜ダメだわ!ここじゃ、なるちゃん達まで巻き添えに…!!)

「…こっちよ、ネフライト!」


控え室から離れ、廊下を走っていくプルート。

「逃がすかぁっ!!」

「――プルートお姉様ぁ、大丈夫ですかぁーっ!?」

「…!!」


向こう側になるがいる控え室のドアを見て、我に返るネフライト。ドア越しに叫ぶなる。

「悪者なんかに負けないで下さいっ!!最後は絶対、愛と正義が勝つんですからねーっ!?」

「〜〜愛と正義…だと…?」


拳を震わせ、破壊しようとドアに手を伸ばしたネフライトだが、黙り込み、震える手をゆっくり下ろす。

「…くだらぬ!」

イラつき、プルートを追いかけて立ち去るネフライト。

(〜〜くそっ!何なんだ、この胸クソ悪い気分は…!?)

ゾイサイトが開発した影の内部4戦士との通信回線を繋ぐネフライト。

「セーラー戦士を皆殺しにしろ!一人も逃がすな…!!」

ネフライトの命令で影のマーキュリー達の瞳が黒く光り、起き上がる。

「え…っ!?」

「〜〜ちっ、そう簡単に眠っててはくれないか…」

「来るわよ!構えて…!!」


構えるウラヌス、ネプチューン、サターンだったが、瞬間移動してしまう影のマーキュリー、マーズ、ジュピター、ヴィーナス。

「えっ?き、消えちゃった…」

「フッ、ネフライトか。どうやらアイツを本気にさせてしまったようだな」


★               ★


「――ハァハァハァハァ…!」

『――待ちな!プリンセス!!』


走っていたプルートの前に瞬間移動で現れ、構える影のマーキュリー達。

「〜〜皆…!」

「――ムンッ!!」


――ザシュッ!!

「きゃあああっ!!」

背後からネフライトに襲われ、倒れるプルート。

「プリンセス!今日こそは何が何でも捕まえてやるからな…!!」

(〜〜く…っ、何なの…?殺気がさっきよりはるかに――っ!?)

「うおおおおおおっ!!」


プルートの腹を膝蹴りし、顔を殴るネフライト。

「う…っ!きゃああああっ!!」

倒れている間に影の内部4戦士からの攻撃を転がって避け、体勢を立て直してロッドを握り直すプルート。

「クロノス・タイフーン!!」

「甘いわああっ!!うおおおおおおお…っ!!」


紫の竜巻を剣で斬りまくり、霧散させるネフライト。

「〜〜そ、そんな…!?」

「――やれ!!」

『マーキュリー・アクア・ミラージュ!!』

『マーズ・スネーク・ファイヤー!!』

『ジュピター・ココナッツ・サイクロン!!』

『ヴィーナス・ウィンク・チェーン・ソード!!』

「きゃあああああああ…!!」


影のマーキュリー達の必殺技を受けて倒れるプルートに憎悪たっぷりに近づいていくネフライト。

悔しくネフライトを睨むプルート。

「〜〜うぅ…っ、お願い…。亜美ちゃん達を…解放して…あげて…」

「…運が悪かったな。今日の俺は一段と機嫌が悪いんだ…!!」


――ギリ…ッ!!

「ああああああっ!!」

ロッドを握ろうとしたプルートの手を踏み、剣を十字に斬るネフライト。

黒い闇の十字がプルートを刻む。

「きゃああああああああっっ!!」

倒れ、悶えるプルートの顎を押し上げ、睨みつけるネフライト。

「むしゃくしゃするんだよ!〜〜愛だの正義だのと馬鹿馬鹿しい…っ!!」

――ドスッ!!

「あう…っ!!」

蹴り飛ばされ、腹を押さえながら息が絶え絶えになるプルート。

「――すみませんねぇ、ベリル様。お届けすることになるのはプリンセスの亡骸かもしれません…!!」

妖しく笑いながら剣を黒く光らせ、プルートにゆっくり近づいていくネフライト。

「〜〜い、いや…。来ないで…」

怯え、壁まで後ずさるプルート。

「この期に及んで命乞いか?情けない姫君だ…!!」

笑い、プルートに向かって剣を振り下ろすネフライト。

「〜〜いやあああああ――っ!!助けてぇぇ――っ!!」

★               ★


「――っ!?」「――っ!?」

ネフライトの異常なまでの憎悪を感じ、戦っていた動きを止めるゾイサイトとジェダイト。

「ネフライト…!?」

「〜〜何やってんだ、あの馬鹿…っ!」


イラつき、瞬間移動するゾイサイトとジェダイトにきょとんとするウラヌス、ネプチューン、サターン。

「な、何?どうしたの…?」

扉とシャッターが開く。

「扉が…!」

「今のうちにプリンセスを…!!」

「えぇ!」「うんっ!」


展示場から脱出し、プルートの元へ向かう外部3戦士。

★               ★


十番科学センター・プラネタリウム。

「――はああああああっ!!」

タキシード仮面と一緒にクンツァイトと戦っているムーン。

「〜〜はぁはぁはぁ…。こいつ…強いよぉ…」

「大丈夫か、セーラームーン?」

「はい…」

「フフ、これくらいで息があがるようではプリンセスを守る戦士失格だな」

「〜〜うっるさいわねぇっ!!私は体育も苦手なのよーっ!!」

「――!?」


クンツァイトもネフライトの憎しみのエナジーを感じ、眉を顰める。

「〜〜チッ、厄介者めが…!」

マントを翻し、瞬間移動するクンツァイト。

プラネタリウムの扉が開く。

「どうしたんだ、急に…?」

「へっへーんだ!アイツもきっと体力の限界だったんですよ〜♪〜〜ふぅ…」

「…!セーラームーン…!!」


よろけたムーンを抱き留めるタキシード仮面。

「あ…。ご、ごめんなさい…!ちょっと…疲れただけですから…」

「よく頑張ったな、セーラームーン。礼を言う」


タキシード仮面に見つめられながら腕に抱かれ、赤くなるムーン。

「い、いえ、そんな…。私の方こそ足引っ張ってばかりで…その…♪」

「いや、謝るのは私の方だ。…黙っていてすまなかった」

「……」


うつむくムーンに月のオルゴールを渡すタキシード仮面。

「君が持っていてくれないか?」

「えっ?〜〜ダメです!そんな大切なもの…!!」

「君に持っていて欲しいんだ。これはきっと前世と今を繋ぐ神からの贈り物。君に力を貸してくれるはずだ」

「…それはプリンセスに渡して下さい。〜〜前世の…あなたの恋人なんですから…」


涙を見られないように顔を伏せるムーン。

眉を顰め、ムーンを抱きしめるタキシード仮面。

「え…っ?」

「――感じるんだ、君こそが俺の運命の人なんだと…。…プリンセスなんかどうでもいい!俺は…、愛する君を守りたいんだ。――大切な君の傍で永遠に…」

「タキシード仮面様…」


頬を紅潮させるムーンにキスするタキシード仮面。

泣きながらタキシード仮面の胸に顔を埋めるムーン。

「〜〜嬉しいけど…、そんなのダメだよ…」

「君に何と罵られようと構わない。もう決めたことだ、君だけを愛すと」

「衛さん…」


――ドォォォォン…ッ!!

「…!?」「…!?」

見つめ合っていたが、爆発の音にハッと振り返るムーンとタキシード仮面。

「今のは…!?〜〜まさか、せつな先生が…!?」

「早く行ってやれ!博覧会にいる人達のエナジーを集めて、奴らも力を増しているはずだ…!」

「はいっ!」


月のオルゴールを握りしめ、立ち上がってタキシード仮面に背を向けるムーン。

「――セーラームーン!」

「は、はい…!?」


ムーンを見つめ、仮面越しに微笑むタキシード仮面。

「負けるな、うさ…!」

「…はい!」


赤くなりながら笑顔で頷き、プラネタリウムを飛び出すムーン。

(――『うさ』…だって♪『衛』なら『まもちゃん』…かな♪えへへっ♪)

照れながら嬉しそうに走っていくムーンを満足そうに見送るタキシード仮面。

「――見つけたぞ…」

「…っ!?」


殺気に振り返るタキシード仮面。

クイン・ベリルが闇の黒いオーラを出しながら杖を持って歩いてくる。

「〜〜お前は…!」

「お懐かしゅうございます、エンディミオン様。――何故あの時、この女王をお見捨てになりました…!?」

「見捨てた…?〜〜うぐ…っ!?」


ベリルが飛ばした黒水晶が胸に入り、うずくまるタキシード仮面。

「〜〜こ…れは…っ!?」

「闇こそ美しき力!――思い出して下さいませ、エンディミオン!あなたは私だけのもののはず…!!」

「うあああああああああ…!!」


胸に入った黒水晶から黒い電気が発生し、タキシード仮面の全身に走り、気を失って倒れる。

「ククク…、さぁエンディミオン様、邪魔なプリンセスを共に抹殺しましょうぞ…!!」

差し伸べたベリルの手を取り、無表情で起き上がるタキシード仮面。瞳が黒く光り、顔を上げて不気味な笑みを浮かべる。


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