美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.4「VS偽セーラー戦士!」その4
単独で十番街をパトロールしているせつな。
「この辺りは異常なしかしら…?」
なるの家『OSAP』が見えてくる。
『――勘違いするな。手当てするだけだ』
タキシード仮面との出会いを思い出し、頬を赤らめるせつな。
(――タキシード仮面…。彼は一体何者なの…?もし、彼も銀水晶を狙っているのだとしたら…)
――ガシャーンッ!!
「キャアアアア――ッ!!」
「ハ…ッ!?」
なるの店からガラスが割れる音と悲鳴が聞こえ、急いで駆けつけるせつな。
なるの店で暴れているマーズとジュピター。怯えているなる、るるな、なるママ。
「〜〜誰か助けてぇ〜っ!!」
「〜〜大変…!」
はるかに通信機で連絡を入れるせつな。
「なるちゃんの店に現れたわ!至急、応援をお願い!!」
『わかった、すぐ行く!』
裏口に隠れ、変身ペンを取り出すせつな。
「プルート・プラネット・パワー・メーイクアーップ!!」
プルートに変身するせつな。
暴れ、ガラスケースを壊し続けるマーズとジュピター。
「〜〜やめてぇっ!!なんでこんなことするのよぉっ!?」
止めようとしたなるを突き飛ばすジュピター。
「きゃあっ!!」
「〜〜なるちゃん…!!」「〜〜お姉ちゃん…!!」
「愚かな人間は、死あるのみ…!」
剣を振りかざすマーズ。身構えるなる。
「デッド・スクリーム!!」
紫の風が吹いてきて、倒れるマーズとジュピター。ガーネット・ロッドを手に階段から飛び降り、着地するプルート。
「冥王星を守護に持つ変革の戦士、セーラープルート、見参!世間にはびこる悪党は、冥界の風で仕留めてあげるわ!!」
「きゃああ〜っ♪生のプルートお姉様です〜♪」
「やっぱり、本物のセーラー戦士は違うわ〜♪」
「早く安全な場所へ…!」
「はいっ♪」「はいっ♪」「ありがとうございます…!」
逃げるなる、るるな、なるママ。
「邪魔をするな!我々にはエナジーが必要なのだ!!」
「これ以上、好きにはさせないわよ!?早くその変装を解いたらどうなの、四天王!?」
舌打ちし、逃げるマーズとジュピター。
「あっ、待ちなさい…!!」
外に飛び出して追うプルート。直後にウラヌス、ネプチューン、サターンが到着。
「プルート…!?」
「いない…。どこへ行ったのかしら?」
「――いたぞーっ!!」
包丁や棒を持って店に入ってくる商店街の人々。
「セーラー戦士め、よくも俺達の街をめちゃくちゃにしてくれたなぁ!?」
「正義の味方ヅラして…!よくも騙してくれたわね!?」
「〜〜違うわ!それは私達じゃない!!悪の組織が化けた偽者なの…!!」
「ケッ、この期に及んで言い逃れする気か?」
「お願い、信じて!私達は本当にこの街を…、地球を守りたいだけなの!!」
「そんなの信じられっかよ!」
「皆、やっちまえー!!」
「おーっ!!」
ウラヌス、ネプチューン、サターンに襲いかかる街の人々。
「きゃああっ!!」
「〜〜やめろ!どうして信じてくれないんだ!?」
「〜〜私達は、あなた達を傷つけたくないのよ…!?」
「ちっ、しぶとい奴らだ…」
攻撃を避け続け、背中合わせになる3人。
「〜〜説得の余地なしね…。一旦退きましょう」
「〜〜でも、出入り口が封鎖されてて…」
「――皆さん、こちらです!」
非常階段から顔を覗かせ、手招きするなる。頷き合い、非常階段を目指すウラヌス、ネプチューン、サターン。
★ ★
十番病院・地下駐車場。
辺りを見回す四天王。強い反応を示す黒水晶を見るネフライト。
「マスターの反応が強い…。近くにいるな」
「いるのはわかっている!おとなしく出てきたらどうだ?」
車の陰から様子をうかがうタキシード仮面。
気配を察し、タキシード仮面が隠れている車に向かって水晶の刃を飛ばすゾイサイト。転がりながらよけ、姿を現すタキシード仮面。
「フッ、やはりな」
「お前達は私が倒す!今日こそ必ずな…!」
「ククッ、果たしてできるかな?」
剣を手中に出し、タキシード仮面に襲いかかる四天王。ステッキで防いでいたが、クンツァイトの剣で払われ、飛ばされるタキシード仮面。
「ダーク・パワー!!」
「う…っ!!」
傷だらけになって仮面が取れ、素顔の衛になるタキシード仮面。
「――ほぅ…。やはり、あなたでしたか、マスター」
「〜〜これ以上、あの娘達を苦しめるな…!お前達の狙いは私だろう!?」
「あなたもご存知でしょう?我々の目的はそれだけではない…。闇の女王の完全なる復活の為にエナジーを集め、プリンセスを殺し、銀水晶を奪う…!」
「〜〜そんなこと…、私がさせるものか…っ!!」
ゾイサイトに薔薇を投げ、逃げるタキシード仮面。
「――逃がしませんよ、マスター」
薔薇を握り潰し、不気味に笑うゾイサイト。
★ ★
十番街の屋根を跳んでいくマーズとジュピターを追うプルート。途中で姿を消すマーズとジュピター。
「〜〜また消えた…!?一体何なの…!?」
突然聞こえてきた超音波に頭を押さえるプルート。
「〜〜うぅ…っ、な、何…?」
『――愚かなセーラー戦士どもよ…』
「〜〜その声は…!クイン・ベリルね…!?」
『来るがよい…、私の声を頼りに…』
「…!〜〜きゃ…っ!?」
黒い光に包まれ、麻布十番高校のテニスコートまで瞬間移動させられるプルート。
「ここは…、十番高校…?」
コートの上で十字架に磔にされている衛を見つけ、駆け寄るプルート。
「〜〜衛さん…っ!!」
衛を下ろそうと縄をほどこうとするプルート。
「衛さん…!〜〜衛さん、しっかりして…!!」
突如、衛の体が黒い蔓を纏った妖魔に変わり、蔓を伸ばしてプルートを捕える。直後にテニスコートが結界で覆われる。
「〜〜しまった…!?」
「――よく来たな」
高笑いしながら歩いて近づいてくるベリル。
「クイン・ベリル…!」
「お前だったか、セーラープルート。プリンセス・セレニティの生まれ変わりは…!」
「〜〜私が…、プリンセスですって…!?」
「信じられぬか?ならば、証拠を教えてやろう。まず第一に、私の呼びかけを聞くことができた。あれは月のプリンセスしか聞き取れぬ周波数で発していたからな」
「〜〜さっきの声が…?」
「そして第二に、捕らわれた地場衛が見えたこと…。クククッ、この妖魔はターゲットの一番愛する者の幻を実体化させて惑わすことができるのだ…!」
「それがどうして衛さんだといけないの…?」
「わからぬか?地場衛はエンディミオン…。〜〜太古の昔に月のプリンセスと通じ合った地球国の王子の生まれ変わりだからだ…!!」
「衛さんが地球国の…!?」
「セレニティよ、これではっきりしたな?転生しても尚、エンディミオンをたぶらかそうとは…!〜〜この泥棒猫がっ!!」
――パァン…!!
「きゃあっ!!〜〜う…っ、どういうこと…?セレニティとエンディミオンは愛し合っていたの…!?」
「黙れぇっ!!」
――パァン…ッ!!
「きゃああっ!!」
「〜〜貴様だけは絶対に許さん…!エンディミオンを奪われた積年の恨み…!たっぷり地獄を味わわせてから殺してくれる…っ!!」
「エンディミオンを…奪われた…!?」
「〜〜死ねぇぇぇぇっ!!」
爪をプルートに突き刺そうとするベリル。身構えるプルート。
「ムーン・ティアラ・アクショーン!!」
飛んできたティアラを避け、プルートから離れるベリル。Uターンしてプルートを捕えている蔓を切り、ムーンの元へ戻ってくるティアラ。
「セーラームーン…!」
「プルート、大丈夫!?――くぉらぁっ!そこのオバちゃん!!そんな長い爪振り回したら危ないでしょうがっ!!」
「〜〜貴様…、何故この結界に入れた!?」
「ほえ?何故って…、別にスルーッと…?」
「この空間は私とプリンセスしか入れぬはずだぞ!?」
「え…っ?」
驚いてムーンを見るプルート。
「それに、何故この場所を…!?〜〜まさか、お前も私の声を聞いたというのか!?」
「何それ?私はこの冴えた頭で推理したのよ!あんた、地場衛がいた場所をしらみつぶしに襲わせてるでしょ!?何が目的かは知らないけど、すぐにやめなさいっ!!皆、迷惑してるのよ!?」
「何…!?〜〜貴様もエンディミオンを知っているのか…っ!?」
「はぁ?『エンディングがミリオン』…?」
(〜〜まずいわ…!このままじゃ、うさぎちゃんまで…)
前に出てムーンをかばい、凛々しくベリルを睨むプルート。
「――下がりなさい、セーラームーン」
「え?」
「クイン・ベリル、あなたの言う通りよ。私が月のプリンセス、セレニティの生まれ変わりです」
「え…っ!?」
「フン、やっと認めたか」
「ほ、本当なの、プルート…!?」
「…今まで黙っていてごめんなさい。本当は以前から記憶がありました。――私はシルバー・ミレニアムの後継者!あなた方のような闇の王国に負けるわけには参りません…!!」
「〜〜く…っ、どこまでも腹の立つ女よ…!私を怒らせたこと、後悔させてくれるわぁっ!!」
ベリルの攻撃をガーネット・ロッドで防ぐプルート。
「セーラームーン、逃げて!」
「えっ?」
「奴らは私一人で十分です!さぁ、早く…!!」
「〜〜駄目だよ!私はプリンセスを守る戦士なんだから…っ!!」
プルートの前に立ち、構えるムーン。
「〜〜駄目っ!早く逃げて…!!」
「〜〜邪魔をするな、小娘っ!!」
ムーンに手を伸ばすベリル。黒い光線を受け、身動きが取れなくなるムーン。
「〜〜か…っ、体が…!?」
「セーラームーン…!!〜〜きゃあっ!!」
隙を突かれ、妖魔のダーク・パワーを受けて倒れるプルート。
「セレニティ!貴様は私が殺す…!!――受けてみろ!ダーク・パワー・ストロング!!」
「きゃあああああっ!!」
吹き飛ばされ、転がって悶えるプルート。
「〜〜プリンセスッ!!」
「素直に負けを認めたらどうだ、プリンセス?ここは世界とは隔離された異空間…。お前の戦士達は誰も助けには来れまいぞ?」
「〜〜誰が…、あなたなんかに…っ!」
「フッ、負けず嫌いなのは変わってないか…」
指をプルートに向けるベリル。黒い雷のリングで巻かれ、全身に電流が走るプルート。
「きゃああああああ――っ!!」
「アーッハハハハッ!!さっさと降参して、銀水晶を渡したらどうだ?」
(〜〜つ、強い…。でも、ここで負けるわけには…っ)
ムーンを見るプルート。涙目でプルートを見つめるムーン。
(プリンセスが…!〜〜く…っ、せめて通信機で皆を…っ!)
動こうとし、腕を震わせるムーンを嘲笑うベリル。
「ククク…、本当に愚か者ばかりだ」
ベリルが指を鳴らすと、プルートを苦しめていた電流とリングが消える。傷だらけで息が荒くなり、倒れ込むプルート。
「おとなしく見ていろ、セーラームーン。貴様達のプリンセスが受ける報いをな…!!」
「ウオオオオオオッ!!」
ベリルに目で合図され、蔓で縛り上げたプルートを振り回し、地面に叩きつける妖魔。
「きゃあああああっ!!」
再び持ち上げ、空間のあちこちにプルートをぶつけ、振り回し続ける妖魔。
「いやああああああああ〜っ!!」
「〜〜やめてぇっ!!」
不気味に微笑み、杖を掲げるベリル、蔓に縛られたまま空中でぐったりするプルートに黒い雷を落とす。
「きゃあああああああああああああ…!!」
「〜〜プルートォォ――ッ!!」
「あ…あぁ…」
気を失ったプルートを見て、高笑いするベリル。
「てこずらせおって…。フフフッ、後でたっぷり可愛がってくれるわ…♪」
プルートを抱きかかえる妖魔。
「〜〜や…めて…」
「セーラームーンよ、仲間に伝えろ。プリンセスはこのダーク・キングダムが預かった、最早お前達に勝ち目はないとな…!アッハハハハハ…!!」
「〜〜や…だぁ…」
(せつな先生…、〜〜せつな先生が…っ、殺されちゃう…!!)
ムーンが頭を抱えると、周囲の結界が揺らぎ始めたことに驚くベリル。
「ム…?〜〜こ、これは…!?」
「〜〜いやああああああああ――っ!!」
体を拘束していた黒い光線を弾き返し、髪飾りから超音波を出すムーン。耳を塞ぐベリルと妖魔。
「〜〜ぐわああああっ!!な、何だ、これは…!?」
「先生を…っ、――離せぇぇぇぇぇっ!!」
「ギャアアアアアア…!!」
全身から発する強力な光が妖魔に当たり、一瞬で浄化される。
「な、何…!?」
妖魔が消えて落とされ、意識を取り戻すプルート。
「ん…っ、セーラー…ムーン……?」
「〜〜こんのぉ…っ!!」
「きゃ…!?」
ベリルに攻撃されようとしたプルートの周りに月光の結界ができ、弾き返されるベリル。
「〜〜く…っ、月光のバリアか…」
「はああああああっ!!」
手中にスティックを出し、白い光線を出してベリルに攻撃するムーン。
(〜〜な…っ、何者なのだ、この小娘…!?一体どこからこれ程の力が…!?)
「〜〜ちっ、ここまでか…」
空間に亀裂が生じ、舌打ちして瞬間移動するベリル。
「待ちなさいっ!!」
「セーラームーン、もう大丈夫よ!落ち着いて力を抑えて…!」
我に返って振り返り、プルートの無事を確認すると、髪飾りの超音波が消え、意識を失って倒れるムーン。
直後に空間が崩壊し、落ちてくる黒い透明な壁からムーンを抱きしめてかばうプルート。
「結界が…!?〜〜きゃああああっ!!」
颯爽と駆けつけ、ステッキを回して壁の破片を弾き返して2人を守るタキシード仮面。
(タキシード…仮面…?)
タキシード仮面を見つめながら気を失うプルート。
タキシード仮面が手を伸ばして光を放つと結界が消滅し、元のテニスコートに戻る。倒れているプルートの寝顔を見つめるタキシード仮面。
「――この人が…セレニティ…?」
夢の中のセレニティを思い出し、眉を顰めてプルートから離れるタキシード仮面。
駆けつけ、ムーンとプルートを抱き起こすウラヌス、ネプチューン、サターン。
「セーラームーン…!!」
「プルート…!!」
「…安心しろ。気を失っているだけだ」
「――待て!…お前が2人を傷つけたのか?」
「…ある意味ではな」
「それは、あなたもプリンセスと銀水晶を狙う敵…と取っても構わなくて?」
「…確かに銀水晶は必要だ」
「何故だ?まさか地球征服する為とは言わないよな?」
「……自分が何者かを知る為だ…」
「え…っ?」
「…他の仲間にも伝えろ、プリンセスはプルートだそうだ。守ってやれ」
「プルートが…!?」
「――さらばだ」
マントを翻して去っていくタキシード仮面を見つめるウラヌス、ネプチューン、サターン。
「…相変わらず謎が多い男だな」
★ ★
マンションに戻り、ベランダに出て月を見上げる衛。
(――何故だ…?プリンセスが見つかったというのに…、〜〜何故、俺の心は晴れない…?)
夢の中のセレニティとプルートを比較した後に、うさぎとムーンを思い出し、己の掌を見つめる衛。
(…答えてくれ、セレニティ。――もしかして君は…)
ACT.4、終わり
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