美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.4「VS偽セーラー戦士!」その3
十番街を歩く人々をシャッターが下りた店の前で座って眺めている美奈子とほたる。
「……現れないねぇ、セーラー戦士…」
「そうねぇ…。〜〜あ〜あ…、な〜んか疲れたなぁ…」
「そうだねぇ…。ずっと歩き回ってたし…」
「ハァ…。追試にバレーの特訓に、さらには重〜いセーラー戦士の使命…。〜〜これじゃあ体がいくつあっても足りないっつーの…」
「頑張って!弱音を吐くなんて美奈子ちゃんらしくないぞ!元気だけが取り柄でしょ!?」
「〜〜う…っ!…そうよね。私から元気を取り上げたら、な〜んにも残んないわよねぇ…」
「――あれ…?美奈Pじゃん!」
十番高校の制服を着た女子高生3人が近づいてくる。
「あれー?皆!何?ショッピング?」
「うん、せっかくのゴールデンウィークだしねー!さっきまでカラオケしてたんだ♪」
「美奈子も行かない?あんたのお気にのブランド、新しいデザイン入荷したって!」
「えっ?ホント〜♪」
無言で美奈子を見つめ、静かに首を横に振るほたる。苦笑する美奈子。
「〜〜あ〜ははは…。行きたいのはやまやまなんだけどぉ…、ちょっと用事が終わんなくてさ…」
「えー?そうなのー?」
「〜〜ほんっとゴメンっ!!また誘って!ネ!?」
手を合わせて拝む美奈子。顔を見合わせる友達3人。
「……うん…。まー、しょーがないか…」
「じゃあ、またねー」
「バイバーイ!」
去っていく女子高生達、少し美奈子を振り返りながらコソコソ言う。
「――美奈子、最近付き合い悪いよね〜?」
「ホーント。何か感じ悪〜」
聞こえていて溜息をつき、頭を掻く美奈子。
「〜〜大変だよねぇ、正義のヒロインってーのも…」
「…まぁね。急に連絡入るから、私も友達と喧嘩なんてしょっちゅうだもん…。それだけ重大ってことさ、この使命は!」
「……使命…か」
腕を組んで頷いているほたるの隣でボーッと通り過ぎるカップル達を見る美奈子。
「…やっぱり、正義のヒロインって恋愛も駄目なのかなぁ?」
「え?あー…うん…。それはねぇ…」
「あー、ゴメンゴメン!小学生にそんなこと聞いても、わかるわけないわよね〜♪」
「〜〜あ〜、ひっど〜いっ!美奈子ちゃんまでそんなこと〜!!」
「――何やってるんだ、愛野?」
「えっ?コ…ッ、コーチ…!?」
話しかけてきた訓に驚き、真っ赤になって直立する美奈子。
「そろそろ日が暮れるぞ。そんな所に座ってないで、早く帰れ」
「えへ、すみませーん♪ちょーっとお子ちゃまの面倒を頼まれちゃって…」
美奈子の視線を追うほたる。ほたるには訓が見えない。美奈子の通信機が黒く光っている。
「…美奈子ちゃん、誰と喋ってるの?」
「え?んもう〜!綺麗で優しいお姉さんを独り占めしたいのはわかるけど〜、初対面の人にはちゃんと挨拶しなさいね!ね〜、コ〜チ♪」
「だからぁ!どこにいるの、そのコーチって人!?」
「え…?」
(――チッ、邪魔なガキだ…)
ほたるを睨み、美奈子に微笑みかける訓。
「…愛野、少し買い物に付き合ってくれないか?」
「買い物ですか〜!?もっちろんオッケーですよっ♪もう何時間でも付き合っちゃいますっ!!」
「そうか。悪いな」
「あ、美奈子ちゃーん!どこ行くのー!?」
「しーんぱいしない!すぐ戻るから〜♪」
訓と腕を組み、ほたるに手を振りながら歩いていく美奈子。
「…んもぉ!――でも、何だったんだろう?美奈子ちゃんもレイちゃんみたいに霊感あるのかなぁ…?」
「――ほたる!」
ほたるに駆け寄るはるかとみちる。
「あ!はるかパパ、みちるママ!」
「愛野はどうした!?」
「うーん…。何かコーチコーチ言って、どっか行っちゃった」
「〜〜やっぱり…」
顔を見合わせるはるかとみちる。首を傾げるほたる。
★ ★
十番公園。訓の後に続いて公園の茂みに入っていく美奈子。
「コーチ、こんな所にお店があるんですか?」
「あぁ、もう少しで見えてくる」
(――夕暮れ時の公園にコーチと二人っきり…♪うふふっ!コーチってば茂みに誘い込んで何するつもりなの〜?いや〜ん♪)
「――さぁ、ここだ」
「あ、着きましたー?」
とろんとした目つきの亜美、レイ、まことが立っていて、驚く美奈子。
「皆…!?〜〜コーチ…、これは一体…!?」
訓が指を鳴らすと、正気に戻る亜美、レイ、まこと。
「――あら…?」
「私達、何やってたんだっけ…?」
「それに、ここは…?」
「――まんまとかかったな、セーラー戦士!」
訓の後ろから現れる以象、三船、台東。
「三船…!?」
「以象さん…!?」
「人間とは思えない妖気を感じるわ…!〜〜あなた達は一体…!?」
服を脱ぎ捨て、四天王の格好に戻るクンツァイト達。
「〜〜四天王…!?」
「ウソ…!〜〜冗談よね、コーチ…!?」
「信じられないか?先程のは我々の仮の姿。今回、お前達を利用する為のな!」
「〜〜そんな…!私達を騙してたの!?」
「ゴメンよ、亜美ちゃん。でも、君達は敵だ。我々の野望を阻む者は全て排除しなければならない…!」
自分が着けている黒井通信機を見せるゾイサイト。
「それは…!」
「晩餐会の時、データを採取して構造を調べさせてもらったよ。それで、すぐピーンと来たんだ。これは使えるってね…!」
「〜〜まさか、それを使って私達をここまで…!?」
「そうだ。さすがに勘がいいな、セーラーマーズ」
「私達をどうするつもりだ!?エナジーを奪って、偽セーラー戦士として、また街で暴れるのか!?」
「偽セーラー戦士?我々が?フハハハ…!これは傑作だ!」
「いいだろう、教えてやる!偽セーラー戦士の正体はお前達だよ…!!」
「ハァ!?何わけわかんないこと言ってんのよ!?私達が二重人格とでも言いたいわけ!?」
「そうだ。お前達が掲げている愛や希望と表裏一体にある怒りや憎しみの感情…、人間なら誰でも持っているその感情を力の源とし、我々がお前達の憎悪を増幅させて、影のセーラー戦士を実体化させているのだ!」
「何ですって!?〜〜う…っ!」
苦しみながら倒れる亜美、レイ、まこと、美奈子。亜美達から黒いエナジーを吸い取る四天王。
「ハッハハハハ…!!裏切られたショックがよほど大きかったようだな!すさまじい憎悪だ!!」
「もっと我々を憎め!そして、己を不幸にする奴らもだ…!!」
「お前達が憎めば憎むほど、街は破壊されていくぞ!?」
「〜〜くぅ…っ、ひ、卑怯者め…っ!」
「〜〜皆…、心に憎しみを抱いては駄目よ…!」
「〜〜でも、憎しみなしでどう戦えば…!?」
「〜〜とりあえず、変身よ!」
「させるかぁっ!」
「きゃあああああっ!!」
変身ペンを出そうとした亜美達から、さらに黒いエナジーを吸収する四天王。
「ハハハ…!何をやっても無駄だ!!」
「おとなしく息絶えろ!そして、我らの為に力を尽くせ!!」
「〜〜う…、うぅ…っ」
「〜〜ダメ…、力…が……」
亜美ママ、レイパパ、うさぎ・はるか・みちる・せつな・ほたる、友人3人がそれぞれ頭に浮かびながら気絶する亜美、レイ、まこと、美奈子。
★ ★
十番病院。うさぎ、健司、進吾が病室のベッドで眠る育子を見守っている。
「育子…、〜〜育子ぉ…」
「…ママ、本当に大丈夫なのか?〜〜もし、このまま目を覚まさなかったら…」
「ちょ…っ!馬鹿なこと言わないでよっ!!〜〜きっと大丈夫よ、大丈夫…」
育子の寝顔を見つめ、手を握って涙を流すうさぎ。
(〜〜ゴメンね、ママ…。追試になんてならなければ、一緒にお買い物行ってあげられたのに…)
うさぎの涙が育子の手の甲に落ちる。涙が白く光り、ゆっくり目を覚ます育子。
「――う…ん…」
「育子…!!」
「ママ…!!」「ママ…!!」
「……今、何時ぃ…?お夕飯しなくちゃ…。今日は、すきやきなのよ…」
「すきやきなんて、いつでも食べられるっ!!〜〜君さえ生きててくれれば僕は…!うっうっ…!!」
「もう…。泣き虫ねぇ、パパったら…」
「あ〜ん、よかったぁ〜!びええええ〜ん…!!」
「…ケッ、親子してこれだもんなぁ」
「〜〜何よぉ!こんな時ぐらい、あんたも素直になりなさいよねっ!?」
進吾を羽交い絞めするうさぎ。つられて涙を浮かべる進吾。
「〜〜ったくよぉ…」
「そうだ!先生を呼ばないと…!!」
ナースコールで呼び出す健司。
「これで、ひとまずは安心だな。うさぎ、進吾、お腹すいただろ?食堂で何か食べてきなさい」
「わ〜い!ごっはん〜、ごっはん〜♪」
「俺はいらねぇよ。こんな状況で腹すかせる方がどうかしてるぜ」
「へっへ〜んだ!ママの傍にいたいなら素直に言いなさいよ、マザコン進吾!」
「〜〜るせぇなぁ。さっさと行けよ、バカうさぎ!」
笑いながら病室を出るうさぎ。廊下に出て安堵し、涙ぐむ。
「よかった…。――さ〜て、何食べよっかな〜♪ラーメンかな〜?カレーかな〜?」
「――静かにしろよ、おだんご頭」
ムッと振り返るうさぎ。私服の衛が立っている。
「ここは病院だぞ?お前の下手な歌を聞かされちゃ患者が迷惑だろう。ま、頑丈女は病院に縁がないから、患者の気持ちなんてわからないか」
「〜〜ま〜たあんたっ!!ほんっと、しつこいんだから〜!!このストーカーっ!!」
「ストーカーはお前だろ?」
「〜〜何よぉ!?い〜っだ!!」
「――あれ?うさぎちゃんじゃないか…!」
車いすに乗って来るパジャマ姿の元基。
「元基お兄さん…!〜〜どうしたんですか、その怪我!?まさか、お兄さんも…!?」
「あぁ、ハハハ、参ったよ。でも、慣れてくれば入院も悪くないよ。少し暇だけど、体を十分に休められるしね。それより、衛と知り合いなの?」
「衛って…、まさか、こいつとお友達なんですかぁっ!?」
「あぁ、同じ大学に通ってるんだ。サークルが一緒でね」
「へー。じゃあ、あんた、元基お兄さんのお見舞いで来てたんだ?」
「そうだよ。文句あるか?」
「べっつにー」
「衛とは仲が良いんだ。この前も『クラウン』に遊びに来てくれたしね」
「ふーん…」
衛を見るうさぎ、うさぎと衛を交互に見る元基。
「…うさぎちゃん、これから食事?」
「はい!お兄さんもですか〜?」
「うん。でも、僕は病院食があるからね。――そうだ!衛もまだだったよな?うさぎちゃんと一緒に食べてきたらどうだ?」
「は…?」
「〜〜えぇ〜っ!?こんな奴とですかぁ〜っ!?」
「最近、物騒だから女の子一人で行動するのは危険だよ。衛もちゃんとうさぎちゃんを守ってやるんだぞ?――じゃあ、俺は病室に戻ってるから♪」
車いすの車輪を動かし、満足にうさぎと衛を見て去っていく元基。
「〜〜うぅ…。何でよりによってこいつなんかと…」
「――しょうがない…。行くぞ」
うさぎの腕を引っ張る衛。
「あ…!〜〜ちょ…っ、ちょっとぉ!」
「早く食べて、お袋さんについててやれ。それが一番の薬だ」
「え…?な、何でうちのママが入院してるって知ってるの?」
「お前の泣き声が元基の病室まで響いてきたからな。ビンビンビンビン壁が揺れて参ったよ」
「〜〜う…。わ、悪かったわねぇ!どうせ私は泣き虫ですよー!」
「別に悪いこととは思わないぜ?子供が親を心配するのは当然だしな」
衛の微笑みにときめくうさぎ。
(〜〜う〜ん…。顔は私好みなんだけどなぁ…)
★ ★
十番病院・食堂。ショーウィンドゥの前で悩んでいるうさぎ。
「う〜ん…。ラーメンもいいけど、オムライスも捨てがたい…」
「…早く決めろよ。夜が明けるぞ」
「〜〜そっ、そんなわけないでしょっ!?まだ7時なんだからっ!!――え〜と、ん〜と…」
「…わかったよ。両方頼め。ラーメンとオムライスだな?」
食券を買う衛。
「え?ちょ、ちょっと…!」
「おごってやるよ。どうせ小遣い、残ってないんだろ?」
「うるさいわねっ!私だって…!!」
財布を取り出し、中身を見るうさぎ。10円しか入ってない。吹き出す衛。
「ハハハ…!面白い奴だな、お前って」
「〜〜ふんだっ!貧乏で悪ぅござんしたねっ」
「はいはい。――ほら、入るぞ。いい加減、俺も腹減った」
隣の衛の横顔を見るうさぎ。
(――何で…?私が好きなのはタキシード仮面様なのよ?なのに、こいつに同じくらいドキドキしてる…)
受け取り、向かい合って食べるうさぎと衛。
「う〜ん、美味し〜いっ♪しゃ〜わせぇ〜♪」
見つめてくる衛に気づくうさぎ、少し赤くなる。
「〜〜な…っ、何よ?」
「…いや、美味そうに食ってるなーと」
「…何よ?あんたのまずいの?」
「別に…。ただ…、何でだろうな?最近気づくと、お前の顔を見てる。お前といると何故だか安心するんだよな」
「…なっ、何それ?」
頬を紅潮させながら、衛をチラッと見るうさぎ。
「わ…っ、私も何か…、あんたといるとホッとする。うまく言えないけど…、あんた、私の好きな人に似てるわけ。……多分、それが理由…」
「ふーん…。その好きな人って誰?」
「ふっふーん!知りたい?じゃあ、特別に教えてあげる!タキシードを着て〜、颯爽と現れては乙女のピンチを救ってくれる格好良いタキシード仮面様!もう超〜私のタイプ〜♪」
「……あ、そ」
「…私の一番好きな人はタキシード仮面。これは絶対に譲れないけど…、――2番目はあんたにしといてあげる!何か腐れ縁って感じだし〜」
「…そりゃどうも」
吹き出し、笑い合ううさぎと衛。それを見ながら宙に浮かんでいる四天王。
「――マスター、今日こそあなたを我らが女王の元へ…!」
ゾイサイトとクンツァイトの持つ黒水晶からマーキュリーとヴィーナスが飛び出し、窓ガラスを割って食堂へ侵入し、荒らし始める。
「〜〜うわあああ〜っ!!」
「〜〜セーラー戦士よぉ〜っ!!」
パニックになって逃げる客達。
「偽セーラー戦士…!!」
「…!!逃げろ…っ!!」
「えっ?あ…!」
四天王の気配を察知し、うさぎを引っ張って廊下に出て、隠れる衛。
「お前はここに隠れてろ。あいつらが姿をくらましたら、すぐに逃げるんだ!いいな!?」
「でも、あんたは…!?」
「俺は…、助けを呼んでくる!」
「えぇっ!?危ないわよ…!!ここは私…じゃなくて!セーラームーンちゃんに頼めば――!」
「〜〜一人じゃ危険だ…っ!!」
「え…?」
「……とにかく、言う通りにしろ!」
うさぎを残し、廊下を走っていく衛。
「ちょ、ちょっとぉ…!今の、どういう意――!?」
大きな破壊音がし、食堂がある方を振り返るうさぎ。食堂を破壊しているマーキュリーとヴィーナスが見える。
「〜〜今はあいつらを何とかしなくちゃ…!――ムーン・プリズム・パワー・メーイクアーップ!!」
ムーンに変身するうさぎ。
「〜〜もう許さないんだから…っ!」
走って食堂に戻るムーン。
ムーンが食堂に入ると同時に、四天王が廊下を歩いてくる。
「〜〜くそっ!どこに行った…!?」
黒水晶を見つめるネフライト。黒水晶が衛の走っていった先に黒い光を出す。
「――向こうだ!追うぞ!!」
走っていく四天王。
マーキュリーとヴィーナスが食堂で暴れている。エナジーを奪われ、倒れる人々。
「エナジーを…、もっとエナジーを集めなくては…!」
「――お待ちなさいっ!!」
振り返るマーキュリーとヴィーナス。ムーンが入口から歩いてくる。
「何の罪もない人々を襲い、エナジーを奪う悪党ども!しかも、私達に変装して街のあちこちで事件繰り返すなんて、言語道断!横断歩道よっ!!この愛と正義の美少女戦士セーラームーンが月に代わっておしおきよ!!」
「…お前、私達の邪魔をするつもりか?」
「あったりまえでしょっ!?ママや元基お兄さん達の仇、倍返しにして取ってやるわっ!!――セーラームーン・キーック!!」
マーキュリーとヴィーナスに襲いかかるムーン。顔を見合わせて不気味に微笑み、バックスキップするマーキュリーとヴィーナス。
「うわわわっ!?〜〜ぎゃんっ!!」
よけられ、尻もちをつくムーン。
「〜〜いったぁ〜いっ!!こぉらぁっ!!精一杯の攻撃をよけるんじゃなぁ〜いっ!!」
顔を見合わせ、窓から飛び降りるマーキュリーとヴィーナス。
「ちょ…っ!待ちなさいよぉっ!!」
2人が飛び降りた窓に駆け寄るムーン。もう2人の姿はない。
「〜〜何よ…?これ以上、まだ犠牲者を増やすつもり…!?」
ほたるから通信が入り、通信機で応答するうさぎ。
『うさぎちゃん、大変なの!この間、プリンセスDの晩餐会が開かれた会場!あそこがまた襲われたんだって…!!』
「え…っ!?こっちも病院の食堂が襲われたのよ!逃げられちゃったから、また違う場所に現れるかもしれないけど…」
『わかった!敵を見つけたら、また連絡して!』
「うん!ほたるちゃんも気をつけてね…!?」
通信を切り、エナジーを奪われて倒れている人々を見渡すムーン。昏睡状態だった育子を思い出し、拳を震わせる。
「〜〜もう奴らの好き勝手にさせるもんですか…っ!!」
目を瞑り、精神を統一させて考えるムーン。
(――落ち着くのよ、うさぎ。私だって考えればわかるはず…!学校、うちの近所、晩餐会の会場、ゲーセン、病院…。〜〜共通点は何…!?)
『――衛とは仲が良いんだ。この前も『クラウン』に遊びに来てくれたしね』
元基の言葉を思い出し、ハッと目を開くムーン。
(――地場…衛…?そうだ…!今までアイツと出会った場所…、アイツが行ったことのある場所が狙われてるんだわ…!!でも、どうして…?)
苦しむ人々に気づき、首を横に振るムーン。
(今は考えてる場合じゃないわ!それより、次の場所…。アイツが最近行ったことのある場所は他にどこがあるの…!?)
『――学校でテニスボールが当たりそうになったところを衛さんに助けて頂いたのよ』
「――ハ…ッ!テニスコート…!!」
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