美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.3「銀水晶を探せ!」その4
「――なるほど!それで幼くして、プリンセスDは王家に嫁ぐことになったと…!!」
「えぇ。わたくしの美貌に王子はイチコロだったそうよ」
テープレコーダーで撮り、メモする記者達。取材を受けるプリンセスDを撮影する健司。
「それでは、幻のクリスタルが発掘されたことに関して、ご感想を一言!」
「嬉しかったわ、とっても。――『だって、これで世界はわたくしのものですもの…!!』」
「え?」
黒い風を起こし、健司達を巻き込むプリンセスD。同時にエナジーを奪われ、倒れる健司達・報道陣。覗き見ていて驚くほたる。
「『フフフッ、庶民は庶民らしく這いつくばってなさいな』」
不気味に笑うプリンセスDは高く跳躍して、庭から2階のテラスへ。
「〜〜大変…っ!!」
――ガシャーンッ!!
「な、何だ…!?」
窓ガラスが割れ、クリスタルの宝箱がある保管室へ入ってくるプリンセスD。
「〜〜プ…ッ、プリンセス――!?ぐわあああっ!!」
警備員達を黒い風で飛ばし、ロックを解除して宝箱を奪うプリンセスD。
同時に消える会場の電気。充満している黒いオーラにエナジーを奪われ、倒れる参加者達。
「〜〜うわ〜っ!!な…っ、何…!?停電っっ!?」
「これは…!」
うさぎに気づかれないように離れ、退場する衛。
「妖気を感じる…!敵よ!!」
素早く亜美達の間をすり抜けるプリンセスD。
「〜〜何、今の…!?動物!?」
「違うわ!これは…!!」
スポットライト用の照明を動かし、動き回る影に光を当てるせつな。まぶしがり、動きを止めるプリンセスD。
「プリンセスD…!?」
「な、何で宝箱を持ってるの!?」
「『〜〜ふぅーっ、ふぅーっ…!邪魔を…するなぁ…っ!!』」
「〜〜この妖気はプリンセスから…!?」
「宝箱を奪い返すのよ!奴らは幻のクリスタルを奪う為、プリンセスDを操ってるんだわ…!!」
「任せて!」
プリンセスDを取り囲み、宝箱を奪い返そうと奮闘する亜美、レイ、美奈子、せつな。
「〜〜ひ、ひえぇ…」
一人戦わずに怯えるうさぎ。はるか、みちる、ほたるも会場に駆けつける。
「うさぎちゃん、大丈夫!?」
「はるかさん、みちるさん、ほたるちゃん!」
「何やってる!?お前も戦え!!」
「〜〜えぇ〜っ!?やぁ〜だ〜っ!!何かすばしっこくって怖いんだも〜ん!!」
「『銀水晶は我々のものだ!〜〜誰にも渡さん…っ!!』」
振り切って逃げようとするプリンセスDの前に立ちはだかるせつな。
「はああああっ!!」
せつなに蹴られ、倒れて宝箱を放すプリンセスD。
宙を舞う宝箱をキャッチするクンツァイト。後ろに立っているジェダイト、ネフライト、ゾイサイト。
「ご苦労だったな、プリンセス」
「〜〜またあんた達ね…!?」
「ようこそ、ダーク・キングダムの晩餐会へ。セーラー戦士の諸君」
「〜〜卑怯よ!プリンセスを元に戻しなさい!!」
「いいだろう。――ネフライト」
クンツァイトに促され、指を鳴らすネフライト。
倒れているプリンセスDの体から抜け出すクイン・ベリルの生霊の黒い影。
「〜〜ぎゃあああ〜っ!!お化けぇ〜っ!!」
神社の炎に浮かんでいたベリルの影を思い出し、ハッとなるレイ。
「違うわ!あれは…!!」
『ウオオオオオオッ!!』
「きゃああああああああっ!!」
影が起こした黒い突風に吹き飛ばされるうさぎ達。
「ハハハハ…!これは俺が作った影だ。力は本体の10分の1にも及ばんぞ?そんなザマで我らの女王に勝てるわけがない!」
「女王ですって…!?」
「――その通り…」
階段からゆっくり降りてくるベリルに黒い影がまとわりつく。ベリルを迎え、ひざまずく四天王。
「お前は誰だ!?」
「私はダーク・キングダムの女王、クイン・ベリル」
「クイン・ベリル…!?」
「そうか…。前世の記憶は封印されているのだったな。なら、知らぬだろう?私が成し遂げようとしていることも…、〜〜月のプリンセスに受けた屈辱も…っ!」
「屈辱ですって…?あんた達の目的は、ただの地球征服じゃないっていうの…!?」
「地球征服だと?クククッ、そんな生易しいものではない!お前達・月の王国の者とセレニティに復讐する為、私は地獄の底から復活したのだ…!!」
さらに激しくなる突風。苦しむうさぎ達。
「フフフ…、我々を甘く見ない方がよいぞ?私はちゃーんと知っているのだ、お前達の中に月のプリンセスの生まれ変わりがいることをな…!!」
「私達の中にプリンセスが…!?」
うさぎ達に落ちる黒い雷。
「きゃあああああーっ!!」
「アーッハハハハ…!!さぁ、プリンセスはどいつだ!?――お前か!?それとも、お前かぁっ!?」
倒れたうさぎ達の顔を一人ずつ杖で上げて見て回るベリル。
「〜〜え〜ん!知らないわよ、そんなの〜」
「そうよ、そうよ!前世の記憶は封じられてるって言ったのは、そっちじゃない!」
「〜〜チッ、まだ覚醒してはいなかったか…」
「クイン・ベリル様、ここはまとめて生け捕りにすべきかと」
「どの女がプリンセスかは後々調べればわかりますゆえ…」
「…そうだな。永年のこの恨み…、じっくり甚振ってから八つ裂きにしてやるとしよう…!」
笑いながら杖を掲げるベリル。杖の先端に集まる黒い電気。
「〜〜このままじゃ、やられちゃう…!」
「〜〜皆、変身よ!」
「させるか!」
「ダーク・パワー!!」「ダーク・パワー!!」「ダーク・パワー!!」「ダーク・パワー!!」
「きゃああああああああ――っ!!」
「無駄だ。この私がいる限り、貴様達に未来はない!おとなしくくたばれぇ…っ!!」
杖から雷を飛ばそうとするベリルに身構えるうさぎ達。
薔薇が飛んできて、ベリルは杖を落とし、雷も消える。
「〜〜く…っ、お前は…!」
「タキシード仮面様…!!」
テラスから会場へ入り、ステッキを構えるタキシード仮面。
「非力な少女達を甚振り、悪しき闇夜に葬ろうと企む闇の王国。己の復讐の為に黒い灰をばら撒く女王は、このタキシード仮面が許さん!」
「〜〜な…っ、何だと…!?」
ベリルの前に立って、タキシード仮面と対峙する四天王。
「〜〜おのれ…!また邪魔をするつもりか!?」
「クイン・ベリル様、ここは我々が…」
「あなた様が出ないまでも、奴らにはこれで十分です」
ベリルから黒い影を呼び戻し、うさぎ達を襲わせるネフライト。ベリルは悔しがりながら瞬間移動。
影の黒い突風と雷をステッキを回して弾き返すタキシード仮面。
「今のうちに早く変身を!」
「はいっ!――皆!」
「えぇ!」
ブローチと変身ペンを掲げるうさぎと亜美達。
「ムーン・プリズム・パワー」
「マーキュリー・スター・パワー」
「マーズ・スター・パワー」
「ヴィーナス・スター・パワー」
「ウラヌス・プラネット・パワー」
「ネプチューン・プラネット・パワー」
「プルート・プラネット・パワー」
「サターン・プラネット・パワー」
「メーイクアーップ!!」
セーラー戦士に変身するうさぎ達。
「愛と知性の戦士、セーラーマーキュリー!」
「愛と情熱の戦士、セーラーマーズ!」
「愛と美貌の戦士、セーラーヴィーナス!」
「天王星を守護に持つ飛翔の戦士、セーラーウラヌス!」
「海王星を守護に持つ抱擁の戦士、セーラーネプチューン!」
「冥王星を守護に持つ変革の戦士、セーラープルート!」
「土星を守護に持つ破滅と誕生の戦士、セーラーサターン!」
「そしてこの私、愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラームーン!外国のお姫様を操り、銀水晶を奪おうとするなんて、外務省が許しても私達が許さない!国際問題に発展する前に、このセーラーチームが月に代わっておしおきよ!!」
「〜〜こしゃくなぁ…っ」
「クレッセント・ビーム!!」
「〜〜ぐっ、調子に乗りやがって…!」
「だが、もう遅い。銀水晶は我々が頂く!」
「偉大なる女王の影よ!奴らに天罰を…!!」
「一瞬で決めてやる!ワールド・シェイキング!!」
「加勢するわ!ファイヤー・ソウル!!」
影の体を攻撃弾と炎が通過する。
「何…っ!?」
「〜〜攻撃がきかない…!?」
「ハハハ…、無駄だ!こいつにお前らの攻撃は通じんぞ?」
「〜〜たあああああっ!!」
「はあああっ!!」
サターンのサイレンス・グレイヴとプルートのガーネット・ロッドも影の体をすり抜ける。
「…聞き分けのない女どもだ。――やってしまえ!」
『ウォォォォォォォォ…!!』
影の両腕が鎌になり、ムーン達に攻撃する。
「きゃああああっ!!」
「ハ…ッ!〜〜セーラームーン!!」
「フッ、勝負あったな」
宝箱を持って撤退しようとする四天王。
「逃がすか…!!」
「〜〜っ!邪魔をするなっ!!」
ステッキを伸ばして四天王に攻撃するタキシード仮面に攻撃を仕掛けるクンツァイト。
「〜〜危ない…っ!!」
タキシード仮面をかばってダーク・パワーで吹き飛ばされ、2階のテラスから落ちるムーン。
「きゃあああああああ…!!」
「〜〜セーラームーン…!!」
「セーラームーン…ッ!!」
ムーンの腕をとっさに掴むタキシード仮面。
「フン、愚かな…」
宝箱をゾイサイトにパスし、タキシード仮面の背中にダーク・パワーを浴びせるクンツァイト。
「うわああああっ!!」
「いやあああっ!!〜〜離して、タキシード仮面!このままじゃ、あなたまで…!!」
「うぅ…っ…。絶対に…っ、君を…離しは…しない…っ!」
「…っ!」
『――何があっても離すものか…!』
夢の中に出てきたエンディミオンを思い出し、驚くムーン。
「〜〜セーラームーン!タキシード仮面っ!!」
駆け寄ろうとしたプルートの前に立ちはだかり、ダーク・パワーをかけるジェダイト、ネフライト、ゾイサイト。
「きゃああああっ!!」
マーキュリー達の元へ吹き飛ばされるプルート。
「〜〜プルート…!!」
黒い雷がまとわりついた鎌をブーメランみたく飛ばす影。
「きゃあああああ〜っ!!」
鎌のブーメランが命中し、一人ずつ倒れていくマーキュリー達。
「〜〜皆ぁっ!!」
★ ★
まことのマンション。
電気を点けずにテレビを見るまこと。パールモント王国の晩餐会のニュースになり、黙ってテレビを消して通信機を見つめる。
『――これだけは忘れないで欲しいの。いつでもあなたの傍には皆がいるわ』
せつなの言葉を思い出して、ゆっくり通信機を手に取り、電源を入れるまこと。
『――きゃあああああ〜っ!!』
ムーン達の悲鳴が聞こえてきて、ハッとなるまこと。
「皆…!?」
『もう降参か?偉そうなのは口だけだったようだな』
『うぅ…っ、うぅ…』
「〜〜この間の奴らか…。…クソッ!」
『――まこちゃんは一人じゃないよ!?私はもちろん皆…、皆、まこちゃんのこと大好きで、一緒にいたいんだよ?』
うさぎの言葉を思い出して拳を握り、立ち上がるまこと。緑に強く光る変身ペンを制服の胸ポケットから取り出す。
「そうか…。お前も協力してくれるんだな…!」
変身ペンを握り、凛々しく微笑むまこと。
★ ★
「――キャアアアアーッ!!」
攻撃を受け続け、傷だらけで動けなくなるマーキュリー達。
「…もう虫の息だな。俺達が本気を出せばこんなものだ」
「とどめは刺さないでおこう、クイン・ベリル様のご命令だからな。――クンツァイト?」
「わかっている。――死なない程度になっ!」
タキシード仮面を突き飛ばすクンツァイト。バランスを崩し、ムーンと落ちていくタキシード仮面。
「タキシード仮面様…」
「すまない…、セーラームーン…。〜〜せめて君だけは…っ!」
ムーンを抱きしめ、庭へ落ちていくタキシード仮面。
「フン、無駄なあがきを――っ!?」
「うおりゃああああああっ!!」
落下地点に素早く駆けつけ、踏ん張ってムーンとタキシード仮面を抱き留めるジュピター。
「ジュ、ジュピター!?」
「へへっ、待たせて悪かったね!――愛と勇気の戦士、セーラージュピター、ただ今参上!!」
「ジュピター…!!」
「来てくれると信じてたわ…!」
跳躍して会場に入り、マーキュリー達をかばって四天王と対峙するジュピター。
「…私と関わると不幸になるよ?それでもいいんだな?」
「望むところよ!」
微笑み、構えるジュピター。マーキュリー達も支え合いながら立ち上がる。ムーンとタキシード仮面を駆け寄る。
「セーラームーン、行くよ!」
「うんっ!」
「フン、手負いのお前達に何ができる?――我らが女王の分身よ、やってしまえ!!」
『キエエエエエエエッ!!』
襲ってくる影を華麗に避けるジュピター。
「喧嘩で勝つコツだ!まずは雑魚から片付ける!!」
ジェダイトに殴りかかるジュピター。
「〜〜な…っ!?お、俺達が雑魚だとぉっ!?」
「〜〜ふざけるなぁっ!!」
ジェダイト、ネフライト、クンツァイトの攻撃をすり抜け、ゾイサイトに体当たりするジュピター。衝撃で宝箱を放すゾイサイト。
「〜〜しまった…!?」
宙を舞う宝箱をサターンがジャンプしてキャッチする。
「べ〜っだ!悔しかったら、ここまでおいで〜♪」
「〜〜このガキ…ぃっ!!」
「マーズ!パ〜ス♪」
「OK!――悪霊退散っ!!」
宝箱を持ったままジェダイトの額にお札を貼るマーズ。
「ぐ…〜〜あああああ〜っ!!」
「ふははは…!!後ろががら空きだぞ!!」
ゾイサイトに剣で攻撃されて不意を突かれ、宝箱を放してしまうマーズ。
「もらったぁぁぁっ!!」
「ウラヌス・スペース・タービュレンス!!」
「な…っ!?〜〜ぐわあああああああっ!!」
弾き飛ばされるゾイサイトを足蹴にし、宝箱をキャッチするウラヌス。
「スピードで僕に勝てると思うなよ♪」
「〜〜おのれぇっ!」
ウラヌスの背後からネフライトがブーメランを飛ばしてくる。
「ネプチューン・ヴィオロン・タインド!!」
荒波に飲まれ、床に叩きつけられるブーメラン。
「忘れないことね、ウラヌスの傍にはいつでも私がいることを」
「フッ、助かったぜ、ネプチューン。――そらよ!」
ムーンに宝箱をパスするウラヌス。
「えっ?〜〜えぇっ!?私ぃ〜っ!?」
「チッ、それをよこせぇぇっ!!」
「〜〜ひええ〜っ!!」
「たあああああああっ!!」
「〜〜ぐあああっ!?」
ムーンに手を伸ばそうとしたネフライトにアクロバットで攻撃するヴィーナス。
「あんた達なんかに渡すもんですかっ!」
「デッド・スクリーム!!」
「フッ、だから無駄だと――!?」
紫の攻撃弾が影の体をすり抜け、当たった先の窓を割ってカーテンを飛ばし、月光が影に降り注ぐ。
『ギャアアアアアアアア…!!』
苦しみながら消える影。
「〜〜な…、何…!?」
「おあいにく様、弱点は調べさせてもらったわ!」
小型コンピュータを手に微笑むマーキュリー。
「シャボン・スプレー・フリージング!!」
「ぐ…っ!!」
「〜〜ふざけおってぇ…っ!!」
マーキュリーに剣で斬りかかろうとしたクンツァイトにステッキで攻撃するタキシード仮面。
「この娘達に手出しはさせん!!」
「きゃ〜っ♪タキシード仮面様、頑張って〜!」
「セーラームーン、私達もやるわよ!」
「へ?」
「私達を怒らせるとどうなるか、思い知らせてやろうぜ!」
「そ、そうだね!よーしっ、セーラー戦士の結束を見せてやるんだから!!」
横に並ぶムーン、ジュピター、プルート。
隙を突かれたタキシード仮面にクンツァイトの剣が伸びる。
「くたばれぇっ!!」
ロッドで剣を防ぐプルート。
「行くぞ、セーラームーン!」
「えっ?ちょ、ちょ…!〜〜うわわっ!?」
ムーンを飛ばすジュピター。
「セーラームーン!」
「うわわわ〜っ!!〜〜もうこうなりゃヤケよぉ〜っ!!」
プルートのロッドを足掛かりにして自らが攻撃弾になり、クンツァイトに体当たりするムーン。
「セーラー・ボディ・アターック!!」
「ぐわああああっ!!」
よろめき、倒れるクンツァイト。
「ウッソ〜、当たっちゃった…。あはっ!やった、やったぁ〜♪」
「セーラー戦士よ、全員の力を集結させるんだ!」
「はいっ!――皆、行くよ!!」
「セーラー・プラネット・アターック!!」
「ぐわああああああああ〜っ!!」
何色もの光の光線に貫かれ、傷だらけになって剣で体を支える四天王。
「〜〜く…っ、この借りは必ず返すからな…!」
瞬間移動して退却する四天王。
「きゃはははっ!勝った、勝った〜♪」
「――う…ん…」
「あら…?私…、ダンスの途中で眠ってしまったのかしら…?」
エナジーが戻り、気がついて起き上がる参加者達。
「皆、早く変身を解いて!」
「う、うんっ!」
変身を解くムーン達。
「――う…、わたくしは一体何を…?」
「おぉ!プリンセスが正気に戻られたぞ!!」
「……?はい…?」
執事と召使いと警備員達に囲まれ、きょとんとなるプリンセスD。
「よかった…」
「元通りになったみたいだね、晩餐会」
「あ…!タキシード仮面様は…!?」
振り返るうさぎだが、タキシード仮面の姿はなく、割られた窓から入ってきた風にカーテンがなびいている。
「〜〜もういない…か…」
しゅんとなるうさぎを複雑そうに見つめるせつな。
★ ★
元通りになった晩餐会を楽しむうさぎ達。まこともみちるにドレスをもらい、着ている。
「――私が小さい頃…、そうだな、ほたるちゃんぐらいの時だった。私の両親、海外で働いててさ…、静岡にある叔父の家で暮らしてたんだ。でも、やっぱり同年代の子が父さんや母さんと楽しそうにしてるの見るの、辛くてさ…。1日でいいからどうしても会いたいって電話で両親に頼み込んだんだ。最初は仕事が入ってるから無理だって断られたんだけど、最後は娘の私の願いを聞き入れてくれてさ…、そりゃ嬉しかったよ…。〜〜でも、両親が日本に帰って来る日…、丁度乗っていた飛行機がエンジントラブルで墜落して…」
「それで、ご両親が亡くなったのは自分のせいだと…?」
「あぁ…、今でも後悔してるよ。〜〜あの時、私がワガママを言わなければ今も父さんと母さんは…っ!」
「〜〜まこちゃんのせいじゃないよ…!私だって、はるかパパ達と一緒にいたくて、ワガママ言っちゃう時…あるもん…」
「あまり自分を責めない方がいいわ」
「大切な人を失う苦しみを味わいたくなくて壁を作ろうとしてるのはわかるけど、誰もあなたと関われば不幸になるなんて思ってない…!」
「そうよ!もっと私達を信じて、頼って…!仲間でしょ、私達?」
「そうだな…。ありがとな、皆。これからもよろしく」
「こちらこそよろしくな、子猫ちゃん♪」
プリンセスDが舞台に上がり、マイクで喋り出す。
「――皆さ〜ん、お待たせ致しました〜!いよいよ我がパールモント王国の秘宝『幻のクリスタル』の初披露で〜す!」
「いよいよクリスタルのお披露目ね!」
「本当に幻の銀水晶だったらいいね!」
ドラムロールが鳴り、プリンセスDが警備員達に警護されながら宝箱からクリスタルを取り出す。
「じゃじゃ〜ん!純度100%!!パールモント王国初代国王のクリスタル像で〜す♪」
「おぉ〜!あれが幻のクリスタルか!!」
「素晴らしいですわ〜♪」
大きな拍手を受けながら像を掲げるプリンセスDを撮影する健司達・報道スタッフ。
「〜〜な…、何だかちょっと…」
「〜〜銀水晶とは違うみたいね…」
「〜〜私達の苦労は何だったのよぉ〜…」
「――あれ…?うさぎちゃんとせつなママは?」
★ ★
廊下のソファーで眠るうさぎにブランケットをかけてやるせつな。
「〜〜ジュースと間違えてお酒飲んじゃうなんて、うさぎちゃんらしいわね…」
「うふふ〜……、もう食べられないよぉ……」
クスッと笑い、その場を離れるせつな。
せつながいなくなったことを確認し、ゆっくりうさぎに歩み寄るタキシード仮面。
『――エンディミオン…』
(――やはり…あの娘に似ている…)
夢の中のセレニティを思い出しながら、うさぎを見つめ、キスするタキシード仮面。
「――うさぎちゃんに近づかないで!」
振り返るタキシード仮面。
水の入ったグラスを持ったせつなが睨みながら、ゆっくり歩いてくる。
「…あなたは何者なの?どうしていつも私達を助けてくれるの?」
「…さぁな?自分でもわからない」
「〜〜ふざけないでっ!こっちは真面目に――!!」
「――助けたくなるんだ、この娘を…」
「え…?」
「傍にいて守ってやりたくなる…。……それだけだ」
『――誰かが助けを求めてると、頭より先に体が動く性分らしい』
衛の言葉を思い出しながら、立ち去るタキシード仮面を見つめるせつな。
(〜〜どうして…?何故、あの人を見ていると胸が苦しくなるの…?――前にもどこかで…こんな苦しみを感じたような……)
月光に照らされながら、眠るうさぎの傍でタキシード仮面の背中を見つめるせつな。
ACT.3、終わり
ACT.4へ
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