美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.3「銀水晶を探せ!」その3
晩餐会当日の夜・会場。
ドレス姿のうさぎ、亜美、レイ、美奈子、外部4人が会場を見渡す。はるかはタキシード。
「わ〜お!舞踏会だ〜っ♪」
「わ〜い、わ〜い!ご馳走だぁ〜♪」
「きゃ〜ん!お金持ってそうな男がいっぱ〜い♪うふふふっ」
「フフ、皆、楽しそうでなによりだわ」
「すみません、みちるさん。こんな素敵なドレスを…」
「いいのよ、こんなの腐るほど実家にあるんだから。私のお古だけど、丁度良いのがあってよかったわ。よかったら、もらってやってくれる?」
「えっ?そ、そんな…!〜〜こんな高級な物、頂けません…!!」
「いいから、もらってやって?私が持ってても、どうせ衣裳部屋に眠らせておくだけなんだし」
「ヒュー!さっすが財閥の一人娘は気前が違うよなぁ」
「あら、今日はやけにおだてるのね?昨日の宿題の件かしら?」
「…それは昨晩、きっちり返しただろ?」
照れるはるかとクスクス笑うみちるに首を傾げるほたる。
「何々?何の話ー?」
「〜〜子供は知らなくていいのっ!――向こうで夜景でも見ようか、みちる」
「えぇ」
腕を組んで仲良く移動するはるかとみちる。ぶーたれて、ご馳走を頬張るほたる。
「レイちゃん、レイちゃん!あの中で誰が一番イケてるっぽい?」
イケメン御曹司の集団を指差す美奈子。
「…興味ないわね、あんな優男達」
「え〜、何それ?…ひょっとして、レイちゃんってレズ?」
「〜〜レズッ!?」
美奈子の言葉に反応し、赤くなって動揺するせつな。
「〜〜あ…、そ、そうだったわ!校長先生にご挨拶しておかないと…」
「――冥王先生」
せつなの肩に手を置くベリル。
「〜〜きゃあああっ!?」
真っ赤になって体を押さえるせつな、驚くベリルに笑ってごまかす。
「〜〜ほ…ほほほ…。す、すみません、校長先生。挨拶が遅れまして…」
「気にしないで。ちゃんと連れて来てくれて感謝してるわ」
せつなに呼ばれ、挨拶するうさぎ達。軽快しているはるかとみちる。
「フフフ、本当に可愛らしいお嬢さんたちだこと。これならプリンセスもお喜びになるわ♪」
「〜〜は、はぁ…」
「あら、言ってなかったかしら?プリンセスDは同年代のお友達を世界中で探してるって」
「…え?お、お友達って…!?」
「私は歳は違うけど、彼女と文通を交わす仲なのよ。よく日本の学校や文化について教えてあげているのよ」
「あ…、〜〜か、関係ってそういう…。え?じゃあ、見た目にこだわってるのは…?」
「えぇ…。実はプリンセスDにはね…、〜〜生き別れになった腹違いの妹がいるの…!!」
「えぇ〜っ!?」
「でも、その妹は愛人の娘…。手掛かりは日本の麻布十番に捨てられた16歳の美しい少女ということだけらしいの。プリンセスの命令で国が総力を挙げて探しているらしいけど、なかなか見つからないみたい…。私も友人として、出来る限りのことはしてあげたくて…」
「な…っ、なんてドラマチックな…!!」
「うるうるうる…。映画にしたら、間違いなく興行収入1位だわっ!!」
「〜〜そ、そうかしら…?」
「そうだったんですか…。ごめんなさい、私ったら色々と勘違いしていたみたいで…」
「フフ、ごめんなさい。私もちゃんと説明すればよかったわね。皆、後でプリンセスの所にいらっしゃい。妹とはいかないまでも、お友達にはなってあげてね?」
「はーい!」
笑顔で会場を出るベリル。人気のない廊下に出ると、不気味に微笑む。
(――フン、愚か者どもめ。そんなわけあるか…!)
プリンセスDの控え室にドアをすり抜けて入るベリル。
鏡台の前に座っているプリンセスD、気配に振り返る。
「…?どなた?」
ベリルの目を見て、とろんとした目つきになり、倒れるプリンセスD。
「お前も忠誠を誓え…!銀水晶を奪い、セーラー戦士を抹殺するのだ…!!」
「――仰せのままに。我らが女王、クイン・ベリル様」
起き上がり、不気味に笑うプリンセスD。
★ ★
「――これが通信機よ」
晩餐会・会場。うさぎ達に通信機を渡すせつな。
「すごい…!」
「腕時計型通信機ですね?」
「あぁ。奴らもこの会場に潜り込んでいるはずだ、携帯よりそっちを使った方が怪しまれないだろ?」
「怪しい奴らを見かけたら、すぐ私達に知らせること!いいわね!?」
「ラジャー!」「ラジャー!」
「はるかと私でパールモント王国のクリスタルが銀水晶かどうかを調べるわ。ほたるは入口で見張っててくれる?」
「任せて!」
「私達は会場を巡回すればいいんですね?」
「えぇ。敵を見かけても、単独で行動するのは控えて頂戴ね?」
「それでは、クリスタル公開の時間まで解散!」
バラバラに散り、それぞれの配置に着くうさぎ達。
「……まこちゃん、来なかったね…?」
「仕方ないわよ、おうちのことで色々と複雑なんでしょうし…。でも、同じセーラー戦士ですもの、木野さんは、きっと帰ってきてくれるわ。それまで、そっとしておいてあげましょう、ね?」
「うん…。そうだね!」
亜美、レイ、美奈子も離れた所でまことの話をしている。
「〜〜まこちゃん…、ずっと学校を休んでるけど、大丈夫かしら…?」
「……あの空手の特訓は、もしかしたら嫌なことを忘れる為にやってたのかもしれないわね…」
「〜〜もっと私達に相談してくれればいいのにね…?仲間なんだからさ…」
「――やぁ、君達も来てたんだ」
タキシードを着て正装している訓、以象、台東、三船が亜美達に近づいてくる。
「以象さん…!」
「台東さんも…!」
「こんばんは、レイさん」
「ドレス似合ってるぞ、愛野」
「きゃ〜ん、コーチ〜♪え?え?皆さん、どうしてここに〜?」
「遠藤校長に招待されたんだ。――あれ…?まこちゃんも来るって聞いてたんだけど…?」
「あ…、〜〜えぇ…。具合が悪いみたいで学校も休んでるんです…」
「そうなんだ…」
「では、後でお見舞いに行かないといけませんね」
「じゃあじゃあ〜♪皆で一緒に行きません?」
「お、それ乗った!」
「愛野にしては良い提案だな」
「〜〜あ〜っ!コーチったらひっど〜いっ!!」
「あははは…!」
四天王と楽しく喋る亜美達を羨ましく見るうさぎ。
「いいなぁ…。〜〜なによ!み〜んな彼氏がいちゃってさ〜」
「うさぎちゃんにもすぐできるわよ。こんな可愛い娘を誰も放っておくわけないもの」
「うぅ〜、せつな先生だけだよぉ、私の味方は〜!」
「ふふっ、よしよし♪」
抱きついてきたうさぎの頭を撫でるせつな。
「私達はプリンセスDの様子を見に行きましょうか。フリーの女同士、仲良くね♪」
「うんうん、そうだよね!行こ行こっ!」
せつなと廊下に出て歩き出したうさぎ、報道関係者の席にいる健司を見つける。
「あれ…?――パパ!」
「うさぎじゃないか…!何でお前がここにいるんだい!?」
「へっへ〜ん!十番高校の生徒代表で招待されたのよ〜ん♪」
「すごいじゃないか!うんうん、さすがはパパの娘だ♪――ところで、そちらのご婦人は?」
「うさぎさんの高校で養護教諭をしております、冥王と申します」
「あー、ははは、どうも!娘がいつもお世話になってます〜。――おいおい、綺麗な先生だなぁ、うさぎぃ♪」
「…パーパ?ママに言っちゃうよ〜?」
「〜〜うっ!そ、それだけは勘弁…」
「報道スタッフ…。報道関係のお仕事を?」
「えぇ、こう見えて私、雑誌記者をしておりまして…!これからプリンセスDにインタビューしに行くところなんですよ。――そうだ、うさぎ。記念に先生と一枚撮ってやろう!」
「本当?わ〜い!やったね♪」
腕を組んでピースするうさぎとせつなを撮る健司、他の記者に呼ばれる。
「あ、今行きまーす!――じゃあ、また後でな」
「バイバ〜イ!お仕事頑張ってね〜♪」
笑顔で手を振って、健司を見送るうさぎ。
「残念、インタビューの時間か…。しょうがないわ、少し経ったら会いに行きましょう。遠藤校長に頼めば大丈夫そうですものね」
「そうだね。よ〜し、それまでご馳走を食べてるとしよ〜う!」
「フフ…、あんまり食べ過ぎちゃ駄目よ?」
「――そうそう。余計、饅頭みたいな顔になるぜ?」
「…うっ!〜〜その声は…!!」
「あ…!」
振り返るうさぎとせつな。夜景が見える窓にもたれているタキシード姿の衛にときめくせつな。
「まさかお前も招待されてたとはなぁ。どうだ?あまりにも場違いで帰りたくなっただろ?」
「〜〜き〜っ!!やっぱり、あんただったのねっ!?何でいっつも私の周りをうろちょろしてるわけ〜っ!?」
「それはこっちの台詞だ。ははっ、今日は一段とおだんごがでかいな」
「〜〜これはおめかしですぅ〜っ!!あんたこそそのタキシード、ぜんっぜん似合ってないんだからっ!!」
「あ、あの…!」
「…ん?――あぁ、テニスコートの…!」
「はい!覚えてて下さったんですね…♪あの時はありがとうございました。今度ゆっくりお礼をさせて下さい」
「いえ、そんな気を遣って頂かなくとも…」
「なぁに〜?何の話?」
「私ね、学校でテニスボールが当たりそうになったところを衛さんに助けて頂いたの」
「ふーん。…あんたも人助けなんてするんだ?」
「まぁな。――誰かが助けを求めてくると、頭より先に体が動く性分らしい」
月光に照らされる衛の顔に少しときめくうさぎ。
(う…♪――時々、ちょっと似てるんだよなぁ、あの人に…。〜〜絶対ありえない話だけど…)
(――やはり似ている…、あの娘に…)
恥ずかしがるうさぎの横顔を夢の中に出てくるセレニティと重ね、見つめる衛にうつむくせつな。
「…まぁ、こんな機会滅多にないだろうから楽しんでけよ。羽目外しすぎて先生を困らせないようにな?」
「〜〜うっ、うるさいな〜っ!言われなくてもわかってるわよっ!!」
「あ、あの…!」
うさぎとせつなに背中を向けながら手を振って別れた衛、静かな廊下へ。
『――お願い、見つけ出して…!幻の銀水晶を…!!』
夢の中のセレニティを思い出し、月を見上げる衛。
(――幻の銀水晶とやら…、本当にここにあるんだろうか…?)
★ ★
まことのマンション。
電気も点けず、ソファーに体育座りしているまこと。テーブルに置いてある通信機を見つめ、昨晩やって来たせつなにもらったことを回想。
『――うさぎちゃんから聞いたわ。ごめんなさい、おうちの事情に首を突っ込むなんていけないことよね…。でもね、皆あなたを心配してるのよ?』
『私を…?フッ、冗談だろ?』
『嘘だと思うなら、いつでも保健室に確かめにいらっしゃい。今すぐ心を開いて欲しいなんて言わないわ。でも、これだけは忘れないで欲しいの。いつでもあなたの傍には皆がいるわ』
回想終わり、クッションを壁に投げるまこと。当たった花瓶が落ちて割れ、三船からもらった花束の花が飛び散る。
「私の何がわかるんだ…?〜〜皆…、私なんかを好きになっちゃ駄目なんだよ…っ!」
嗚咽を漏らしながら、体育座りで顔を埋めるまこと。
★ ★
晩餐会・会場。警備員に守られている宝箱。警備員に近づくみちる。
「…何だ?ここは立ち入り――おぉっ!!か、海王みちる…っっ!?」
「ごきげんよう。お仕事中ごめんなさいね?会場まで行きたいのだけれど、道に迷ってしまったみたいで…」
「でっ、では、自分が責任を持ってご案内致します!国を挙げてのパーティーです、テロリストが潜り込んでてもおかしくありません!あなたのようなかよわい女性が巻き込まれでもしたら一大事ですからなぁ」
「まぁ、ありがとう。お優しいのね」
「はははっ、これも仕事のうちですから〜♪ささ、どうぞこちらへ…!」
みちるを連れて持ち場を離れる警備員。
みちるの目配せに頷いて潜入し、クリスタルが入っている宝箱を開けようとするはるか。が、セキュリティーロックがかかっている。
「〜〜参ったな…。――水野?おい、水野!応答しろ!」
「――あ…!は、はい!?」
喋っていた以象に頭を下げ、離れた場所で通信機に応答する亜美。
「クリスタルを調べたいんだが、セキュリティーロックがかかってるんだ。今から情報を送るから調べてくれないか?」
「えぇ、わかりました」
変身ペンを出し、宝箱に掲げるはるか。
変身ペンから出た一般人には見えない光が会場まで伸び、受信したデータを基に小型コンピュータを操作する亜美。
「コードは00997、パスワードは――」
『――はるかパパ、はるかパパ!』
「…!悪い、ほたるから通信だ」
「では、データを転送しておきますね」
「悪いな、頼む」
回線を切り、コンピュータではるかの変身ペンにパスワードを転送する亜美。亜美を不気味に見つめ、近づいてくる以象。
「…どうかした?」
「あ…、い、いえ…!〜〜友人からメールが来たもので…」
亜美が後ろ手に隠したコンピュータと通信機を見つめる以象。
「――それ…」
「え…っ!?」
「面白い時計してるね?どこで買ったの?」
「〜〜さ、さぁ…?誕生日に母からもらったものなので…」
「ふぅん…。――素敵なプレゼントだね…」
動揺する亜美を見つめ、ほくそ笑む以象。
★ ★
「――ったく…、国宝放ったらかして、どこ行きやがったんだ、あいつ?」
「〜〜ちっ、仕事熱心でご苦労なことだな…」
新しい警備員が入ってきたのを見つけて隠れながら、ほたると通信を開始するはるか。
「どうした、ほたる?」
「んとね、何だかプリンセスDの様子が変なの…!」
テラスでご馳走を食べながら、健司達報道陣の取材を庭で受けるプリンセスDを双眼鏡で見張っているほたる。
「変って、どういう風にだ?」
「カメラを回されてても生気がないっていうかボーッとしてて…。私の思い過ごしかもしれないけど、テレビで見た雰囲気と何か違うんだよねぇ…」
「プリンセスと接触するのは、せつなと月野だったよな…?――おい、せつな!月野!」
会場でご馳走を食べているうさぎと一緒にいるせつな。
「――あ、はるかさん…!」
「何かあったの?」
『プリンセスDとはもう会ったか?』
「いいえ。取材中だから終わってからにしようと思って…」
『そうか…。ほたるの報告だと、プリンセスの様子がどうもおかしいみたいでな…』
「ほへ?」
「それって…、敵に操られてるかもしれないってこと?」
『断定はできないが、その可能性も否定できないな…。念の為、警戒を怠らないように注意してくれ』
「わかったわ」「アイアイサー!」
せつなが通信を切った直後、ダンスミュージックが流れてくる。
「あ〜!ワルツだ〜♪」
「そろそろ取材が終わる頃ね。うさぎちゃん――あ…!?」
「きゃはははっ!たっのし〜♪」
周りがペアでステップを踏む中、一人ではしゃいで回るうさぎ。
四天王にエスコートされ、踊り始める亜美、レイ、美奈子。
「あ〜っ!!いいな、いいなぁ〜!何よぉ、皆ぁ〜!!」
「うさぎちゃん!遊んでないで行くわよ?」
「え〜っ!?一曲だけぇ〜!!」
「〜〜んもう、しょうがないわねぇ…」
困り顔で腕を組むせつなにリッチそうなイケメンが手を差し伸べてくる。
「お一人ですか、マダム?」
「え?」
「僕と一曲踊って頂けませんか?」
「それなら、是非私と」
「いえいえ、僕と踊って下さい、美しい人」
「そ、そんな…♪」
3人から誘われ、恥ずかしがるせつなを羨ましく見るうさぎ。
「いいなぁ〜、せつな先生…。〜〜わあっ!?」
「あ、失礼」
ダンスする人達に次々ぶつかり、会場の端に追いやられるうさぎ。
「〜〜何よ、もう…」
仲良く踊るペア達を羨ましそうに見つめ、ため息ついて柱に寄りかかるうさぎ。
「……あ〜あ…。…どうせ私は美人じゃありませんよ〜だっ」
「――やっぱり残ってたか、おだんご頭」
「えっ?」
うさぎに歩み寄り、笑う衛。
「ちっ、地場衛…っ!!〜〜フンッ!馬鹿にしたきゃすれば?どうせ私は誰からも相手にされないお子ちゃまで――っ!」
ひざまずき、うさぎに手を差し伸べる衛。
「一曲踊ってやるよ。退屈しのぎにな」
微笑む衛に頬を赤らめるうさぎ。
「〜〜あ…っ、あんたなんかに同情されたくないけど…、……まぁ、退屈しのぎには…なるわね」
「フッ、決まりだな…!」
うさぎをエスコートして踊り出す衛。
「〜〜うわわっ!?ちょ、ちょっとぉ!?私、ダンスなんてしたこと――!!」
「俺がフォローする。見よう見まねでやってみろ」
「…う、うん。え〜っと…」
「ぷっ…くくっ!何だよ、それ?ロボットダンスか?」
「〜〜うっ、うるさいわねぇっ!!」
楽しそうに踊るうさぎと衛に注目し始める周りの人々。
「フフッ、見て、あの二人」
「ハハハ、ステップはめちゃめちゃだけど、楽しそうでいいな」
「素敵ねぇ…!お似合いのカップルって感じで♪」
うさぎと踊る衛を見て、うつむくせつな。同様に階段の上から衛を見つめるベリル。
目の前の衛を見つめるうさぎ。
(――不思議…。何でだろう…?この感じ…、前にもどこかで…)
月の王国で踊るセレニティとエンディミオンを思い出し、拳を震わせるベリル。
ACT.3 その4へ
セーラームーン・トップへ