美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.3「銀水晶を探せ!」その2
「――ほたるちゃ〜ん、こっちこっち〜!」
「あははっ!待ってよ〜」
公園で友達と遊ぶほたる、ベンチに座っている衛を見つける。
「あれ?あの人…」
「なになに〜?」
「しーっ!」
アスレチックの上から衛をよく見るほたると友人達。
衛はプリンセスD晩餐会の招待状の中身を眺めている。
「だあれ、あの人?」
「うちのママが片思い中のお兄ちゃん♪」
「えーっ!?」
「それって浮気じゃん!離婚する時、すっげー慰謝料取られるんだぜ?」
「わー!離婚だ、離婚だ〜♪」
「せつなママは結婚してないも〜ん!」
「わー!おまえの母ちゃん、未婚の母なのかよ!?かっけ〜!」
「未婚だ、未婚だ〜♪」
「静かにしてよっ!!聞こえちゃうでしょー!?」
招待状をしまい、公園を後にする衛。隠れるほたる達。
「……行っちゃったね」
「なーんか暗そうな男だったな〜?」
「えー?格好良かったじゃーん」
言い争う友人達を背に、衛の背中を見つめるほたる。
★ ★
外部4戦士の家。
ヴァイオリンを弾く私服のみちる。ソファーに座り、宿題に頭を抱える私服のはるか。
「〜〜みちるっ!頼むから少し静かにしててくれよ!!」
「まだコンサートツアーは終わってないのよ?人間、努力を惜しまず前に進み続ければ必ず成果は出るの。ヴァイオリンだけじゃなくて、あなたが今苦しんでいる勉強もね♪」
「〜〜うっ」
「まずは一歩目!授業中居眠りしなければ、このレベルの問題は解けて当然♪」
「〜〜悔しいが、僕の負けだ…。ここ、教えて下さい…」
「フフッ、天才レーサーも家では形無しね♪」
はるかの隣に座り、解き方を教えるみちる。
花を生けた花瓶をテーブルに置き、ため息をつくせつな。妖艶なベリルを思い出す。
(〜〜どうしましょう…?女の人から誘われたのって初めてだわ…)
「…?どうしたの、せつな?顔色が優れなくてよ?」
「真っ青…っていうより真っ赤だな」
「えっ!?〜〜そ、そんなことは――!」
――トゥルルルル…!
電話が鳴り、ビクッと怯えるせつな。
「あら、電話」
「わ、私が出るわ…!」
受話器を取り、話し始めるせつな。
「も、もしもし…?」
「冥王先生ですか?校長の遠藤ですが」
「〜〜きゃあっ!!」
驚き、受話器を落としそうになるせつな。
「…せつな?」
「〜〜ほ…ほほほ…♪な、何でもないわ…」
不思議そうに顔を見合わせるはるかとみちる。
「――お、お待たせして申し訳ありません。ちょっと、お鍋が噴いちゃって…」
「そう。…それより招待状、渡してくれた?」
「申し訳ございません。まだメンバーを決めていないもので…」
「出来るだけ早くお願いしますね。メンバーが決まったら私に連絡して下さるかしら?」
「はい、わかりました」
「フフフッ、土曜日が楽しみね…♪それじゃあ」
電話が切れ、真っ赤になるせつな。
(〜〜ど、どうしましょう…?これって健全な指導と言えるのかしら…?)
ハンドバッグから人数分の招待状を取り出し、見つめるせつな。
「…それ何だ?」
後ろからせつなに抱きつき、招待状を取り上げるはるか。
「〜〜いやああ〜んっ♪」
はるかを振り払い、真っ赤になって自分の体を押さえるせつな。
「…せつな?」
「〜〜あ…。ご、ごめんなさい。何でもないの…」
「…?」
「あら…?――すごいわ!これってプリンセスD晩餐会の招待状じゃない…!」
「あー、幻のクリスタルが発掘されたって話題になってる国の…。何でせつながそんなもの持ってるんだよ?」
「今日、遠藤校長から渡されたのよ。十番高校1年生の可愛い女の子8人と一緒に来いって」
「…遠藤校長が?」
「女の子8人…?」
「あ、でも、職員の私も一緒に来いって。〜〜ちっ、違うのよっ!?校長室に呼び出されて誘われたっていっても、別に変な関係とかそんなんじゃ――!!」
「――よく考えてみろ。おかしいと思わないか?」
「…え?」
「晩餐会の開催とタイミングを同じくして、突如雰囲気が変わった遠藤校長…。それに、せつなに託された8枚の招待状…。間違いないわ!校長は裏でダーク・キングダムと繋がっているのよ…!!」
「えぇっ!?」
「そして、この8枚の招待状は僕達セーラー戦士に対する挑戦状だ…!!」
「そうか…!奴らは時期が重なって発掘された幻のクリスタルを銀水晶、そして、プリンセスDを月のプリンセスの生まれ変わりと読んでいるわけね!?」
「あぁ。――フッ、わざわざ学校に潜入してまで会いに来たとは面白いじゃないか。売られた喧嘩は買わないとな、みちる?」
「そうね。うさぎちゃん達にも話して、晩餐会の会場に潜入しましょう!」
「でも、罠かもしれないわ…!うさぎちゃん達はまだ覚醒して間もないし、なるべく度を越した危険は避けた方が…」
「甘いな。僕らはセーラー戦士。どんな危険が待ち構えていようと、地球とプリンセスを守る使命を全うするのが筋じゃないか?」
「〜〜それは…」
「――あ〜っ!!ま〜た秘密の会議してるぅ〜!!」
靴とランドセルを脱ぎ捨て、玄関から走ってくるほたる。
「おかえり、ほたる」
「今日は学校、どうだった?」
「うんっ、楽しかったよ!それよりさ〜、秘密の会議、私も入れてよぉ〜」
はるかの持っている招待状を覗き込むほたる。
「あー!そのパーティー、私達も行けるのー!?」
「『も』…って?」
「えへへ〜♪せつなママは知ってるよね〜?テニスボールのお兄ちゃん♪」
「えっ?まさか衛さん…!?」
「そうそう!その人がね、公園でおんなじ招待状を持ってるの見たよ」
「あら、じゃあ、きっとそのお兄さんも晩餐会に招待されているのね」
「残念だなぁ。せつなママ、行きたくないんだってよ」
「えー?そうなのー!?」
「嫌がってる人を無理に連れて行ったら可哀想ですものね?当日、せつなにはお留守番を――」
「〜〜行かないとは言ってないじゃないっ!!もし、プリンセスDが私達の探すプリンセスだったら尚更だわ…!!」
「フフッ、あなた、本当に最年長?ほたるよりお子様ね」
「出会った頃は、もう少し落ち着いた印象だったけどな?」
「〜〜んもう、失礼ねぇ…」
クスクス笑うみちる、せつなの頭を撫でる。
「私、お子様じゃないってばぁ!ちっちゃくったってセーラー戦士なんだからねっ!?」
「そうよねー?じゃあ、立派なセーラー戦士さんに大事なお仕事、頼んじゃおうかな?」
「え?何々〜♪」
「この招待状を一枚ずつ、うさぎちゃん達に渡してきてくれる?」
「いいよー!今から行ってきてもいい?」
「えぇ。暗いから気をつけてねー?」
「はーい!」
元気に出かけていくほたる。
「…普段はこういう風に冷静なのにな?」
「せつなって本当に恋愛音痴なんだから」
「〜〜う…。――そんなことより、早くアレの準備を…!」
頷き合い、2階のプラネタリウムの部屋に入り、それぞれの守護星のケースから通信機を全員分取り出すせつな達。
「これで分かれて調査できるわね」
「使う時が来ないよう、祈ってたけど…」
「仕方ないさ。それがセーラー戦士の宿命だ」
「……そうね…」
カーテンが揺れ、風が入る。黒点に覆われつつある太陽を見上げる3人。
「〜〜もう黒点があんなに…!」
「…想定していた以上に奴らの力が強まるスピードが速いわね」
「あぁ、早急に手を討たないとな…!」
★ ★
まことのマンション。料理を皿に盛って並べ、一人で食べるまこと。
「…いただきます」
電話が鳴るが、留守電になっている。
『――まことちゃん?静岡のおばさんだけど、元気にしてる?もうすぐお父さんとお母さんの七回忌だけど、今年は法事来れるわよね?もう受験も終わったんだし、たまには顔を見せにいらっしゃい?それじゃあ、電話待ってるわ』
箸を止め、うつむくまこと。
――ピーンポーン…!
「…?はーい?」
インターホンが鳴り、玄関を開ける。
うさぎが制服を着たまま旅行鞄を持ち、立っている。
「えへへ〜♪一人暮らしって寂しいんじゃないかなって思ってホラ!泊まりに来ちゃった♪」
「うさぎちゃん…」
「おっじゃまっしま〜っす♪」
ズカズカ入っていき、部屋を見渡すうさぎ。
「うわぁ、超ピカピカ!ちゃんと掃除してて偉いね〜!」
「あの…、うさぎちゃん――」
「あ、観葉植物だ〜!まこちゃんもこういうの好きなの?うちのリビングにもねー、おんなじようなのあるんだー♪」
「…ゴメン、今日は――」
「あれ?留守電入ってるよ?」
留守電を再生するうさぎ、聞いて少し気まずくなる。うつむき、ため息つくまこと。
「あ…。〜〜ゴ、ゴメン…」
「…悪い。今日は帰ってくれる?最近、ちょっとゴタゴタしててさ…」
「でも――!」
「〜〜帰れっつってんだろっ!?」
拳で壁を叩き、声を荒げるまことに驚き、目を見開くうさぎ。
「〜〜うさぎちゃんにはわかんないだろ、一人ぼっちの私の気持ちなんてさ…?」
「あ、まこちゃ――!」
うさぎを追い出し、鍵を閉めるまこと。
「〜〜まこちゃんは一人じゃないよ!?私はもちろん皆…、皆、まこちゃんのこと大好きで、一緒にいたいんだよ?……まこちゃんが悲しい顔してると、私も悲しいもん…」
「〜〜いいから帰ってくれよっ!!私は忙しいんだ!!」
「まこちゃん…」
うつむき、帰るうさぎ。玄関のドアに寄りかかり、静かに泣くまこと。
――ピーンポーン…!
再びインターホンが鳴り、イライラしながらドアを開けるまこと。
「〜〜だから帰れって――っ!!」
「――こんばんは、まこちゃん♪」
三船が笑顔で花束を持って立っている。
「〜〜何だよ!?勝手に人ん家調べやがって…!」
「最近、元気なくて心配だったからさ。――これ」
「あ…っ」
花束をまことに渡す三船。
「花が好きなんだって?可愛いんだね。想像していた通りだ」
「〜〜るせー!!とっとと帰りやがれっ!!」
乱暴にドアを閉めるまこと。頬を紅潮させ、花束を見つめる。
(何でだよ…?〜〜あんなキザ野郎に何ドキドキしてんだ、私…!?)
不気味に笑い、肩をすくめて立ち去る三船。階段から見ているほたる。
「ほー♪」
★ ★
クリスタル・ゼミナール。自習室で亜美のやったプリントを見ている以象。
「――すごいよ!全問正解…!!1年生でここまで出来れば大したものだよ」
「以象さんのお陰です。私のスケジュールに合った問題集をわざわざ選んで下さるなんて…」
「謙遜することはないよ。全て君の実力さ。僕は天才少女さんのサポートをしたまでだよ」
「そ、そんな…♪ご自分も受験でお忙しいのに私なんかの為に…」
「もっと自信を持ちなって。君はとっても輝いてる。勉強を教える側として誇りに思うよ」
「以象さん…♪」
赤くなって恥ずかしがる亜美。時計を見て立ち上がる以象。
「おっと、そろそろ講義が始まる時間だ!――じゃあ、また明日学校でね」
「ありがとうございました。以象さんも受験勉強、頑張って下さい…!」
「あぁ、ありがとう」
立ち去る以象を手を振って見送る亜美。
塾の外の窓にへばりつき、ニヤニヤしながら見ているほたる。
「へー♪」
★ ★
麻布十番高校・体育館。
遅くまで残って、訓からバレーの特訓を受けている美奈子。
「どうした、愛野!?反応が遅れてるぞ!!」
「すっ、すみませ――きゃ…っ!!」
飛んできたバレーボールで突き指する美奈子。
「愛野…!!」
「〜〜いったぁ〜い…」
ボールを飛ばすのをやめて美奈子に駆け寄り、指を見てやるコーチの訓。
「あ…♪」
「…じっとしていろ」
「〜〜はっ、はいっ!!」
美奈子の指を水飲み場で冷やし、テーピングしてやる訓。
「…まだ痛むか?」
「い、いえ!まだやれますっ!!」
「…今日の練習は終了だ。念の為、病院で診てもらえ」
「で、でも…!」
「自分の体と相談して、休める時に休んでおけ。無理して悪化でもしたら、チーム全員に迷惑がかかるんだぞ?」
「〜〜す、すみません…」
「君はエースであり、将来が期待されている選手だ。俺は君を一人前の選手にして、ナショナルチームに入れさせてやりたい。君と一緒に海外遠征ができる日を楽しみにしている」
「コーチ…♪はいっ!愛野美奈子、斉藤訓コーチの為に頑張りますっ!!」
「フッ、それだけ元気なら心配なさそうだな。――今日は遅くなってしまったので、車で送っていく。片付けと帰り支度を済ませてしまえ」
「はーいっ♪」
訓と仲良く片づけをする美奈子。水飲み場に隠れてニヤニヤ見ているほたる。
「あらー♪」
★ ★
火川神社。祈祷の炎の前で巫女装束で祈祷しているレイ。
「――臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前…!!」
激しく燃え上がる炎にクイン・ベリルと四天王の黒い影が浮かぶ。
「〜〜これが災いの元凶…!!」
炎に浮かんだベリルが笑いながら手を伸ばすと、炎が黒くなり、爆発して消える。仰け反り、炎を睨みつけるレイ。
「……あの黒い影…。確かにこの間の奴らだったわ…」
殺気を感じ、庭にお札を飛ばすレイ。札を素手で取る台東。安堵するレイ。
「台東さん…」
「…ひどいなぁ。物の怪扱いですか?」
「ごめんなさい、少し気が立っていたもので…。確か必勝祈願のお守りでよろしかったかしら?」
立ち上がり、お守り売り場に移動しようとしたレイの腕を掴む台東。
「――それと…、恋愛成就のお守りも頂けますか?」
「え…っ?」
赤くなり、慌てて手を払うレイ。
「あ…。〜〜すみません、急にこんなこと言われても、ご迷惑ですよね…?」
「い、いえ…。そんなつもりじゃ…♪」
うつむき、恥ずかしくて互いの目を見られない2人。
「あ、あの…、でしたら――!」
「――レイ〜、風呂空いたぞ〜い」
パジャマで襖を開けるレイの祖父。
「〜〜おっ、おじいちゃん…!?」
「ん?何じゃい、この若いもんは?――ほほぉ、さては彼氏じゃな♪」
「〜〜んな…っ!?ちっ、違うわよっ!!」
「ふむ、ルックスはまぁまぁじゃなぁ。わしの若い頃にそっくりじゃ♪お前さん達、どこまで進んどるんじゃ♪」
「〜〜おじいちゃんっ!?」
「あの…、レイさん。僕はこれで…」
「あ!台東さん…!!」
立ち去る台東を名残惜しそうに見送るレイ。
「〜〜何すんのよっ!?せっかく良い雰囲気だったのに〜っ!!」
「ふぉっふぉっふぉ、あれぐらいで逃げ出すようでは、まだまだ尻が青いのぅ♪」
「〜〜んもう!許さな〜いっ!!」
竹箒を持って祖父を追いかけるレイ。鳥居からほのぼの見守っているほたる。
「春ですねぇ…♪」
★ ★
深夜のうさぎの家。ベッドの上でうなされているうさぎ。
『――セレニティ…』
月の光を浴びながら、隣で地球を眺めているエンディミオン。顔は見えない。
(あなたはだあれ…?)
『おいで、セレニティ』
(せれに…てぃ…?)
エンディミオンの手を取るセレニティ。花畑で向かい合い、抱き合う2人。
『君とずっとこうしていたい…。何があっても離すものか…!』
(――何だろう…?なんだかとても懐かしいような…)
地球から迫ってくる黒い影に引き裂かれ、互いに手を伸ばす2人。
『〜〜セレニティ――ッ!!』
「〜〜エンディミオ――ンッ!!」
汗びっしょりでベッドから飛び起きるうさぎ。
「ハァハァハァ…。何…、今の夢…?〜〜何でだろ…?涙が止まんない…」
指で涙を拭ってベッドから降り、カーテンを開けて月を見上げるうさぎ。
「月…。月と…地球……?」
月光が招待状を照らす。ほたるが届けてくれた招待状を手に取り、見つめるうさぎ。
「誰かが…私を呼んでるの…?」
月光に照らされるうさぎ。
招待状を手に、マンションの部屋から月を見上げている衛。
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