美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.3「銀水晶を探せ!」その1



エンジン音。カーレースの模様。はるかがぶっちぎりで優勝。

黄色い声で声援を送るはるかの女性ファン達。

「優勝おめでとうございます、はるか君!ファンに今のお気持ちを!」

「これも応援してくれている子猫ちゃん達のお陰かな。ありがとう!これからもよろしく♪」

「きゃああ〜っ」

「はるかくぅ〜ん♪」


ヒーローインタビューでカメラ目線で格好つけるはるかに再び黄色い歓声。

控え室に戻り、レーサー仲間達から祝福されるはるか。

「おめでとう!今日も快勝だったな」

「さすが日本が誇る、若き天才レーサー!」

「あんま褒めんなって。俺、調子に乗りやすいからさ」


仲間達に囲まれて笑っていたはるかだが、窓から強い風が吹き込む。

「おわっ!?」

「何だ?急に風が…」


驚く仲間達。

積み上がっていたファンレターが風に飛ばされ、拾いながら真面目な顔で空を見上げるはるか。

(――今日は風が騒がしいな…。〜〜また奴らが動き出す前に早くプリンセスを…!)

★               ★


ヴァイオリンを演奏中のドレス姿のみちる。終わって礼をすると、拍手の渦。

「みちるさぁ〜ん!今回のコンサートも最高だったわ〜!!」

「みちる〜!愛してるぜ〜っ!!」


関係者出入口前に殺到し、みちるに花束やプレゼントを渡すみちるのファン達。

「ふふふっ、ありがとう」

笑顔でプレゼントを受け取り、ファン達と握手するみちる。興奮するファン達から必死にみちるを守るガードマン。

「〜〜き、危険ですから下がって下さい!」

「いいじゃないの、少しくらい。職業柄、ファンは大切にしないとね」


ファン達をかき分けて、男の熱狂的ファンが前に出てくる。

「うぉ〜っ!!俺のみちるぅ〜!!」

「〜〜しまった…!!」


みちるに抱きつこうとした熱狂的ファン、みちるに背負い投げされ、気絶。

呆然とするガードマン。一気に静まり返る通用口。

「応援ありがとう。けれど、ファンならルールはしっかり守りなさい?」

みちるの格好良さに拍手し、再び歓声をあげるファン達とガードマン。

花束とプレゼントを抱え、十番高校の制服を着たはるかが運転するオープンカーの助手席に乗るみちる。

「今日は随分とご機嫌だな」

「ふふっ、登校前に良いウォーミングアップができたわ」

「フッ、今からだと新入生歓迎会だけになっちゃうけどな」


後部座席からみちるの十番高校の制服を取り、みちるに渡すはるか。

「あら、準備がいいのね」

「遅刻するとうるさいからな、うちの担任は。…それに――」


オープンカーを走らせながら空を見上げるはるかとみちる。太陽に無数の黒点。

「時期は近づいている…。奴らはまた来るぞ、僕らの街に」

「そうね…。この麻布十番はTOKYOでエナジー濃度が最も高いもの。奴らにはうってつけの場所だわ」


目を閉じるみちる。海が荒れ狂い、岩にぶつかる音が聞こえてくる。

「――海が荒れてるわ…。今度こそ見つかるかもしれないわね、私達のプリンセスと銀水晶が…!」

★               ★


「――あ〜、そもそも我が麻布十番高校は東京でも歴史のある学び舎として名高く、文武両道をモットーに生徒一人一人が明るい未来に向かって羽ばたけるよう、教師が一丸となって君達の夢の実現を支援していくことを誇りに――」

新入生歓迎会が行われている麻布十番高校の体育館。パイプ椅子に座って教頭の話を聞くうさぎ、亜美、まこと、美奈子。

「まこちゃん、偉くなったわね〜。ちゃ〜んと行事に参加してくれるなんて、ママ嬉しいわ〜♪」

「〜〜るせぇな。ハルダに見つかったんだよ、校門から抜け出す時にさ」

「ねぇー、教頭の話長くなーい?この後、校長も出てくるんでしょー?」

「〜〜み、皆…!あの…、ちょっと静かにした方が…」


白衣にスーツ姿のせつなも職員が集まる場所で春奈の隣に立っている。

「〜〜まったく…!静かに話も聞いてられないの、あの子らは…?」

「〜〜ま、まぁ…、子供達には少し退屈かもしれませんわね…」

「――であるからして、我が校は現在に至っているわけですなぁ。さて、そんな伝統ある麻布十番高校に入学した皆さんに、校長先生がありがた〜いお話を聞かせて下さるそうです。あー、くれぐれも失礼のないよう、制服は第一ボタンまできちんと――」

「…確かに長いかもね」


苦笑するせつな。はるかとみちるが制服を着て、静かに体育館に入って着席する。

「――それでは、遠藤校長先生、お願い致します!」

「〜〜はぁ〜…。やっと校長かぁ…」


元の校長が着ていたスーツで颯爽と舞台に上がるクイン・ベリル。美しさに釘付けになるうさぎ達。

(うひゃあ!綺麗な人〜)

「麻布十番高校・校長の遠藤レイカと申します。皆さん、改めましてご入学おめでとうございます。学校を代表して、心からお祝いを申し上げますわ」

「ね…ねぇねぇ!遠藤校長って、あんな美人だったっけ…!?」

「な、何だか雰囲気が変わったわね…。入学式で拝見した時は親しみやすい感じだったのに、妖艶で神秘的になったというか…」


不審そうに顔を見合わせるはるかとみちる。

体育館の入口からT.A,女学院の制服姿で校長に扮しているベリルを見るレイ。

「静かに!」

「それでは、ここで我が校の卒業生代表として、地場衛さんに祝福と激励のスピーチをお願い致しましょう」


ベリルの紹介でスーツで舞台に上がる衛。顔をしかめるうさぎと驚くせつな。

(〜〜出たぁ…)

(――あの人…!)

「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。3年前にこの高校を卒業した地場衛です」


話す衛を見て、静かにはしゃぐ女生徒達。

「ねぇねぇ!あの人、格好良くな〜い?」

「素敵〜♪モデルとかやってるのかなぁ?」

「先輩から聞いたんだけど、あの人、この高校を首席で卒業したらしいよ!しかも、今はKO大学の医学部に通ってるんだって〜♪」

「や〜ん!イケメンの上に超エリートとか〜♪」

(…カッコいい?エリート?アイツが?)


鼻で笑い、再び衛を見つめるうさぎ、少しときめき、赤くなる。

(……た、確かに顔は格好良いかも…♪〜〜けどっ!性格は超悪いんだからっ!!騙されちゃ駄目よ、皆っ!?)

(格好良い〜…♪――ハッ!駄、駄目よ!!地球の一大事って時に…そんな…!れ、恋愛なんて…♪)

「ス・テ・キ…♪彼女とかいないのかしら?いや〜ん、駄目よ!大学生なんて年下すぎる〜♪でも、愛に歳の差なんて…♪きゃっ♪」

(〜〜うぅ…。やっぱりライバル多そうね…)


はしゃぐ春奈を見て肩を落とすせつな。

舞台の端から衛を見つめるベリル。

(――この男…、やはり間違いない…!)

★               ★


放課後。保健室でお茶するうさぎ、内部4人、はるか、みちる。養護教諭のせつなはデスクで仕事。

「う〜ん♪このお饅頭、美味し〜い!」

「うさぎちゃ〜ん?あんまり食べると自分の顔が饅頭になるわよ〜♪」

「平気、平気!育ち盛りだからっ♪」

「でも、火野さんも来てたなんて知らなかったわ」

「この間の事件のことが気になってるもので、様子を見に来たんです」

「四天王…だったか?幹部が姿を現したのは前回が初めてだったからな」

「亜美ちゃん達が戦士として目覚めてくれなかったら、私達皆、助かっていなかったでしょうね…」

「でも、頼りになるはるかさん達がいて下さって心強いです」

「そうそうっ!憧れのビューティー・スリーと使命と秘密を共有できるなんて感激よね〜♪」

「自分が悪と戦う戦士なんてまだ実感がわかないけど、これからは協力して地球の平和を守っていかないとね!」

「そうだよね〜!皆で戦えば怖くなんてないないっ♪」


皆で頷き合い、団結する中、一人黙って立っているまこと。

「…?どうかしたの、まこちゃん?」

「何だか元気ないね〜?」

「…別に。これからバイト行って、夕飯の買い出しに行かなきゃなって思っただけさ」

「そっか…。まこちゃん、一人暮らしって言ってたものね?」

「え?そうなの?」

「大丈夫?顔色が悪いけど、疲れてるんじゃない?」

「…別に平気ですから」

「本当に?なんなら今晩、私達の家で夕飯を一緒に――!」

「〜〜本当に平気ですからっ!!」


声を荒げたまことに驚くうさぎ達。ハッと我に返り、気まずくなるまこと。

「あ…、〜〜す、すみません…。本当に大丈夫ですから、私のことは放っておいて下さい…!」

「あ…!まこちゃん!?」


足早に保健室を出て行くまこと。

「…何かに追い込まれてるみたいだったわね」

「まこちゃん、大丈夫かしら…?」

「まこちゃん…。〜〜まこちゃ〜ん!」

「あ!うさぎちゃん…!?」


まことを追いかけ、保健室を出て行ったうさぎ。直後に校内放送。

「――養護の冥王先生、冥王先生、至急、校長室までお越し下さい」

「あ…!」

「…行けよ。明日にはケロッと戻ってくるさ」

「……そうね。じゃあ皆、ゆっくりしていってね」

「はーい!」


保健室を出て行き、うつむいて廊下を歩いていくせつな。

★               ★


同じ廊下の奥の玄関でまことを追ううさぎ。

「ハァハァ…、〜〜まこちゃん、どこ行っちゃったんだろ…?」

校長姿のベリルとすれ違ううさぎ。走っていくうさぎを横目で見るベリル。

殺気がし、立ち止まって振り返るうさぎ。もうベリルの姿はない。

「〜〜今の…何…?」

(――今の娘もそうか…)


校長室に入るベリル。せつながデスク前で立って待っている。

「校長先生…!」

「あぁ、ごめんなさいね。私から呼び出しておいて」

「いえ…。あの、どのようなご用件でしょうか?」

「フフ、そんなに緊張せずに…楽に聞いて頂戴?」

「はぁ…」


せつな、恐縮して頭を下げる。

引き出しを開けて、9人分の招待状を渡すベリル。

「パールモント王国の王妃・プリンセスDが来日しているのはご存知よね?」

「えぇ。確か日本の別荘が近くにあるとか…?」

「そう。私、昔から彼女と親しくさせてもらっててね、この前、パールモント王国で幻のクリスタルが発掘されたでしょう?その記念も兼ねての来日晩餐会が今度の土曜に開催されるの。その晩餐会に私も招待されててね、十番高校の職員と生徒を何人か連れて来てほしいって頼まれてるのよ」

「はぁ…。でも、どうして私を?」

「あなた、いろんな生徒さんと仲良いでしょう?その中からお気に入りの娘を8人選んでくれないかしら?――特に1年生の女子を」


せつなの耳元で妖しく囁くベリル。頬を赤らめ、耳を押さえるせつな。

「〜〜い…っ、1年生の女子…ですか?」

「そう。特に美しい娘…、プリンセスDがお気に召すようなね…♪」


せつなの顎を指で軽く押し上げ、デスクに寄りかからせるベリル。

「〜〜う…、美しい…娘…?」

「あら、知らないの?――私とプリンセスDは、そういう関係なの…♪」


妖しく微笑み、顔と唇を近づけてくるベリルを突き飛ばすせつな。

「〜〜し…っ、失礼します…っ!!」

一礼し、慌てて校長室を出るせつな。

(〜〜はぁはぁはぁ…、危なかった…。もう少しでアブない世界に足を踏み入れるとこだったわ…♪)

「…フン。歳のくせに純情を気取るつもりか、あの女?」


椅子に座り、指を鳴らしてセーラー戦士達の資料を引き出しから浮かび上がらせ、手に取って見ていくベリル。

(――今の女は冥王せつな…、セーラープルートか。う〜む…、プリンセスにしては歳をとりすぎているか…?――次は土萌ほたる。…小学生?子供過ぎるっ!――海王みちる。ヴァイオリニストの卵か…。なるほど、美しく、プリンセスとしての気品もあるが、少々落ち着きすぎているような…。…保留にしておこう。――続いて天王はるか、か。〜〜な…っ!?お、男ではないかっ!!こやつは男の分際でセーラー戦士をしておるのかぁっ!?…いや待てよ、プリンセスとバレぬよう、敢えて男装しているのやも…?〜〜わからん!次っ!!――愛野美奈子。ほほう、1年生にしてバレー部のエースか…!〜〜って!!体育しかできぬではないか、この娘っ!!セレニティはあくまでプリンセスだ!そんなに馬鹿なわけ……いや、わからぬな。――まぁよい。次は木野まこと…。う〜む、少々背が高いか…。それにプリンセスとして身を隠す身なら、わざわざ喧嘩して問題を起こすわけがないだろう。――次、火野レイ。〜〜何!?学校が違うだとぉ!?資料がないではないか…っ!!〜〜ぐぬぬ…、仕方ない。後でジェダイトに情報を集めさせるとするか…。――続いて、水野亜美。ふむ、成績も優秀だし、生活態度も素晴らしい!プリンセスはこの娘か…!?…いや待てよ、プリンセスは控えめというより、おてんばな印象を受けたような…?…まぁ一応、第一候補として挙げておくか。――で?最後は月野うさぎ…。〜〜な…っ、何だ、この娘はっ!?勉強どころかスポーツも実技も何一つ出来ぬではないかっ!!しかも、遅刻が今月だけで20回だとぉ!?〜〜こんな奴に地球を守られてたまるかぁぁっ!!)

イライラして資料をばら撒き、頭を抱えるベリル。

「……こいつらの中に本当にプリンセスがおるというのか…?〜〜冗談ぬかせぇっ!!」

落ちた資料に黒い雷を落とし、燃やすベリル。

「…フン!小娘どもが」

「――クイン・ベリル様」


校長室に瞬間移動してきて、ひざまずく四天王。

「…四天王か」

「〜〜申し訳ございません!我々の力及ばず、クィーンのお手を煩わせることになってしまい…」

「構わん。プリンセスはこの手で直接下したいと思っていたところだからな。ククク…、早くあの死に顔をもう一度見たいものよ…!」

「御意!そして、我らがマスターをクイン・ベリル様のパートナーに!」

「地球に再び我らの王国を!」

「その為にもまず、セーラー戦士抹殺と銀水晶を!」

「四天王、今度こそ小娘どもの首を持って帰るのだぞ?――行け!」

「はっ!」「はっ!」「はっ!」「はっ!」


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