美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.2「セーラー戦士、集結!」その4
美奈子に肩を貸して走り続けるレイ。その後を妖魔達が追う。
「〜〜悪霊退散っ!!」
「ギエエエエ…!!」
お札を貼られて消滅する妖魔。別方向から新たな妖魔達が現れ、向きを変えて逃げ始める。
「〜〜しつこいわねぇっ!!何なのよ、これ!?いつ出口に着くのよ…!?」
「――もう無理よ…」
「え?」
レイから離れ、足を引きずりながら座り込む美奈子。
「……どんなに逃げたって無駄…。どうせ私達二人ともここで死ぬのよ…。〜〜せつな先生みたいにあいつらにやられて…。皆…、〜〜皆、殺されるのよぉっ!!」
「何言ってんのよ、あんた――!?」
ハッと殺気を感じ、振り返るレイ。
「誰…!?」
お札を構えるレイの前に怯えながら歩いてくる亜美。
「亜美ちゃん…!?」
「レイちゃん!美奈子ちゃん…!」
「キエエエエエッ!!」
妖魔達に囲まれる亜美、レイ、美奈子。
「〜〜しまった…!追いつかれたわ!」
「…殺しなさいよ。〜〜早く殺せばいいでしょ!?もうこんな追いかけっこ、まっぴらよっ!!」
「美奈子ちゃん…」
「〜〜悪霊退散っ!!」
「ギエエエエ…!!」
「〜〜何すんのよ!?せっかく死ねるチャンスだったのに――っ!」
美奈子の頬を叩くレイ。
「〜〜簡単に死にたいなんて言わないで…!」
叩かれた頬を押さえて呆然とする美奈子の胸倉を掴むレイ。
「ここまで来て何諦めてんのよ!?あんた、わかってんの!?〜〜世の中にはねぇ、生きたくても生きられない運命に縛られた人達がたくさんいるのよ…っ!?」
少女時代を思い出すレイ。入院している母の枕元にいる幼いレイ。レイの頭を撫でる母。
『――レイ、何があっても生きるのよ…。お母さんの分まで生き抜いてみせて…!』
「レイちゃん…」
「〜〜じゃあ、どうしろって言うのよ…?このままのたれ死ぬまで、しつこく生き延びろってーの!?」
「なら、せつな先生はどうなるの!?」
「…!!」
「先生がどんな気持ちで私達を逃がしてくれたか、わかる…!?私達に助かって欲しいからでしょ!?〜〜生き延びて欲しいからでしょ!?」
「……」
肩を掴み、涙目で言い聞かせるレイにうつむく美奈子。
「何でわからないのよ…?〜〜先生の犠牲を無駄にしないで…っ!」
「う…っ、うわああああん…!!」
泣き崩れる美奈子を励ましながら不穏な顔を上げる亜美。
「レイちゃん…、まさかせつな先生…?」
「私達を助ける為に…、〜〜奴らに…っ!」
「〜〜そんな…」
「――キエエエエッ!!」
再び集まり、亜美達を囲い始める妖魔達。涙を拭い、足をかばいながら、亜美の肩を借りて立ち上がる美奈子。
「――私、先生を助けに行くわ!急げばまだ間に合うかも…!」
「美奈子ちゃん…。――そうね…!私達にもできることがあるかもしれない…!」
「私も…!――私も大切なお友達を守りたい…!!」
★ ★
「――ダーク・パワー!!」
四天王の攻撃に苦しむムーン、ウラヌス、ネプチューン、まこと。
「〜〜くそ…っ」
「たあああああっ!!」
まことをサイレンス・グレイヴで攻撃し続けるサターン。
「私にもっと力があれば…!〜〜力が欲しい…っ!!」
まこと、亜美、レイ、美奈子の額にそれぞれの守護性のマークが浮かび、緑、青、赤、黄にそれぞれ体が光り始める。
「これは…!?」
「ギャアアアア…!!」
光に触れて消滅していく妖魔達。まことの光に触れ、気を失って倒れるサターン。
「〜〜何…っ!?」
「まこちゃん…!?」
「――う…ん…。あれ…?ウラヌス、ネプチューン!セーラームーンも!」
「サターン…!」
「よかった。正気に戻ったのね」
光ったまま、まことの近くに瞬間移動してくる亜美、レイ、美奈子。
「亜美ちゃん、レイちゃん、美奈子ちゃん…!?」
「心配ない。戦士の目覚めの時だ…!」
4本の変身ペンがネプチューンの元から離れ、それぞれ亜美達の前に浮かぶ。
「このペンは…?」
「不思議…。言葉が浮かんでくる…!」
頷き合い、変身ペンをそれぞれ掲げる亜美、レイ、まこと、美奈子。
「マーキュリー・パワー」
「マーズ・パワー」
「ジュピター・パワー」
「ヴィーナス・パワー」
「メーイクアーップ!!」「メーイクアーップ!!」「メーイクアーップ!!」「メーイクアーップ!!」
マーキュリー、マーズ、ジュピター、ヴィーナスに変身する亜美、レイ、まこと、美奈子。
「愛と知性の戦士、セーラーマーキュリー!水でもかぶって反省しなさい!!」
「愛と情熱の戦士、セーラーマーズ!火星に代わって折檻よ!!」
「愛と勇気の戦士、セーラージュピター!しびれるくらい後悔させるよ!!」
「愛と美貌の戦士、セーラーヴィーナス!愛の天罰、落とさせて頂きます!!」
「わ〜お♪」
「覚醒したんだね…!内部太陽系セーラー戦士…!!」
「〜〜こしゃくなぁ…っ!!」
剣でマーキュリー達に斬りかかるジェダイト。
「シャボン・スプレー!!」
霧に包まれる異空間。姿が消え、ジェダイトの剣は空振り。
「〜〜くっ、どこに消えた…!?」
「これで少しの間、時間が稼げるわ」
マーキュリー、ゴーグルをつけてコンピュータを動かす。マーキュリーの影を見つけ、斬りかかるネフライト。
「そこかぁっ!!」
「――甘いわ!!」
ヴィーナスに手首を蹴られ、剣を落とすネフライト。足を動かしてはしゃぐヴィーナス。
「やったぁ!怪我が治ってる〜♪」
「〜〜ナメやがってぇっ!!」
「――サイレンス・ウォール!!」
「ぐわあああっ!!」
「よくもおもちゃにしてくれたわね!?このサターンが破滅に導いてあげる!!」
「我々も忘れるな!」
「ダーク・パワー!!」「ダーク・パワー!!」
サターンにダークパワーをかけるジェダイトとゾイサイトに不意打ちで攻撃するウラヌスとネプチューン。
「お前らの相手は僕達だ!」
「フッ、相手にとって不足はなさそうだな…!」
ウラヌスとネプチューンがジェダイトとゾイサイトと戦っている間を抜け、深い霧に包まれた辺りを見回すムーン。
「〜〜ふえぇ…。皆ぁ、どこ行っちゃったのぉ…?」
(フッ、隙だらけだな…)
ゆっくり背後に近づき、ムーンに斬りかかるクンツァイト。
「――ファイヤー・ソウル!!」
「何…っ!?」
炎に囲まれ、身動きができなくなるクンツァイト。
「あ〜!マーズ、発見〜!」
「ボサーッとしてないで戦いに集中しなさいよね!」
マーキュリーのコンピュータの画面に異空間の源の反応。
「わかったわ!異空間を作り出している場所はあそこよ!!」
「任せろ!シュープリーム・サンダー!!」
「クレッセント・ビーム!!」
雷と光線が黒水晶を壊し、集められたエナジーが放出され、異空間が消えて元の風景に。
「〜〜しまった…!!」
「今だ!セーラームーン!!」
「はいっ!!――ムーン・トワイライト・フラーッシュ!!」
「ぐわああああ…!!」
ティアラから発せられたピンクの月光の光線を受けるクンツァイト。
「クンツァイト…!」
「〜〜くそ…っ、私としたことがこんな小娘に…」
「〜〜調子に乗らないことだな、セーラー戦士!」
「〜〜次こそは我々が勝つ…!!」
負傷した体をかばいながら瞬間移動する四天王。
「やったぁ!勝った〜♪」
「校内で倒れていた人達も目を覚まし始めたみたいだわ」
「守れたんだな、私達…!」
「えぇ、私達の大切な人達を…!」
「えへへ〜っ♪」
「ははは、おいおい」
「ふふっ、本当によかった」
ウラヌスに抱きついて甘えてきたサターンの頭を優しく撫でるネプチューン。マーキュリー達と平和になった校舎を見渡し、微笑むムーン。
「よかった…!」
★ ★
元に戻った保健室でプルートを抱き起こしているタキシード仮面。消えていた春奈の姿も現れる。
「無事に終わったようだな…」
「――う…ん…――っ!?」
タキシード仮面の腕の中で目を覚まし、驚いて慌てて飛び起きるプルート。
「〜〜ど…っ、どうしてあなたがここに…!?」
「…命を懸けて仲間を守る姿、見事だった」
「え…っ?」
「これからも仲間との絆を忘れぬよう。――さらばだ」
窓から出て飛んでいくタキシード仮面を頬を紅潮させて見つめるプルート。
「タキシード仮面…」
「――ん…。……あらぁ…?」
(…はっ!?〜〜まずいわ…!)
慌てて変身を解き、せつなに戻るプルート。
「冥王先生ぇ…。――やだ!私、寝ちゃってました!?しかも床で!?」
「〜〜え、えぇ…。相当お疲れだったみたいですね」
「〜〜うわ!もうこんな時間!?大変!補習プリント…!!――冥王先生、手伝ってくれるわよね!?」
「ふふっ、えぇ。今夜は徹夜ですわね」
「ありがと〜っ♪」
せつなに抱きつく春奈。変身を解いて、保健室に入ってくるうさぎ達。
「あ…!」
「せつな先生ぇ〜っ!!」「せつな先生ぇ〜っ!!」
春奈を突き飛ばし、泣きながらせつなに抱きつくうさぎと美奈子。
「うわ〜ん!よかったよぉ〜!!」
「〜〜ちっともよくなぁ〜いっ!!大体、月野さんに愛野さん!?あなた達がちゃんと勉強してくれてれば、私はこんな苦労せずとも――!!」
うさぎと美奈子が春奈に説教されている間に、せつなに抱きつくほたる。
「せつなママ〜♪」
「ほたる…!無事で安心したわ」
ほたるの頭を撫でながら、変身ペンを持っている亜美とレイとまことの方を向き、微笑むせつな。
「覚醒したのね。おめでとう…!」
「はい!」「はい!」「はい!」
「――とりあえずは一件落着だな」
「えぇ…!」
★ ★
ダーク・キングダムのアジト。
イライラしながら水晶玉を四天王に投げつけるクイン・ベリル。
「〜〜誠に申し訳ございませんでした…!!」
「〜〜何が成功確率99.9%だ!?エナジー収集に失敗した挙句、内部太陽系セーラー戦士まで甦らせてしまうとは…!!」
「〜〜またもあのタキシードを着た男が邪魔に入りました…。あやつさえ現れなければ、我々の勝利は確実だったかと…!」
「〜〜もうよい!下がれっ!!」
「…はっ」
一礼し、それぞれの出入り口から出て行く四天王。息を切らし、タキシード仮面を思い出しながら玉座に座り直すベリル。
(――あの男のエナジー…、間違いない…。〜〜あの男は私の…!)
拳を震わせ、下唇を噛むベリル。
(〜〜プリンセス・セレニティ…。覚醒する前に私が直接手を下さなくては…!)
立ち上がり、闇の中を歩いていくベリル。風景が闇から麻布十番高校へ。職員や生徒達にベリルの姿は見えない。
校長室のドアをすり抜けるベリル。初代校長の銅像を磨く校長に黒い雷を落としてエナジーを吸い取り、存在を自分に移す。黒い電気を纏いながら校長が着ていたのと同じスーツ姿になるベリル。
「――待っておれ、プリンセス!必ず貴様を見つけ出し、この身に纏う復讐の灰でじっくり炙り殺してくれるわ…!!クククッ、アーッハハハハ…!!」
校長室に響くベリルの高笑い。気配を感じ、不思議そうに振り返るうさぎ。
ACT.2、終わり
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