美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.2「セーラー戦士、集結!」その1



クイン・ベリルが玉座に座り、身悶えしている。

「〜〜エナジーが足りぬ…!我が王国の復活の為に、もっと人間どもからエナジーを奪わねば…!」

「――クイン・ベリル様」


四天王、それぞれの扉から入ってきて、中央のベリルにひざまずく。

「四天王、ただ今戻りました」

「ご苦労であった。…して、成果は?」

「お喜び下さい。吉報でございます」


ゾイサイトが指を鳴らすと、玉座の前に3D映像でデータ結果が映し出される。

「エナジー濃度、さらにマスターと銀水晶の反応が最も高い場所を見つけました」

「何?それはどこなのだ!?」


3D映像が動き、詳しいマップ上の一点が反応して光る。

「麻布十番高校…。麻布十番の中央に位置する学び舎です」

「そこにエンディミオンと銀水晶が…!?」

「ほぼ間違いないかと」

「我々は今から潜入調査を開始します。地形・人数・エナジー濃度を考慮した結果、成功確率は99.9%。大船に乗ったおつもりでお待ち下さいませ」

「クククッ、そうか。期待しておるぞ、四天王」

「はっ」「はっ」「はっ」「はっ」


★               ★


放課後の麻布十番高校。

保健室でプリンを食べている制服姿のうさぎ。制服姿のはるか、みちる、白衣にスーツ姿のせつなもいる。

「――んで〜、強くなってきた妖魔にせつな先生達は戦力の限界を感じて、新しいセーラー戦士を目覚めさせている…。そういうことだよね?」

「へぇ、案外ものわかり早いんだな」

「ふふん!こういう展開は漫画やゲームでは王道だも〜ん!」

「それでね、うさぎちゃん。新たな戦士達が誰なのか、私達の方で目星はつけておいたわ。あなたには、その子達をマークする係を手伝ってもらいたいの」

「その子達って?」

「この子達よ。見覚えがある子もいるんじゃないかしら」


亜美、レイ、まこと、美奈子のデータの資料をうさぎに見せるみちる。

「おー!うちのクラスの水野さんに…、あ!まこちゃんと美奈Pまでいる!」

「本当に彼女達がセーラー戦士なのか、まだ確実な証拠はないわ。あくまで一番可能性がある娘ってことでね?」

「私は木野さんを、はるかとみちるは愛野さんと火野さんをマークするから、うさぎちゃんは水野さんをお願いね」

「OK!うさぎさんにまっかせなさ〜い!」

「――私にもマークさせて〜!!」


ランドセルを窓の外から放り投げ、保健室によじ登って入ってくるほたる。

「あら、ほたる」

「今日も学校、楽しかったかい?」

「それが聞いてよ!るるなちゃんが隣のクラスの男子に告られてね…って、話をそらさないでよっ!!ズルイよ!いっつも私抜きでヒミツの会議始めちゃってさ〜」

「ハハハ…、ほたるはまだ小学校に通うお子様だからな」

「あー!またそうやって子ども扱いするんだから、はるかパパはぁ!」

「くすっ、はいはい。じゃあ、ほたるは私と一緒に木野さん担当ね?」

「わ〜い!さっすが、せつなママはわかってるぅ〜♪」

「でもさー、本当に水野さん達がセーラー戦士だったとするよ?そしたら、次はどうするの?やっぱ敵のアジトを調べて、乗り込むとか!?」

「最終的にはそうなるな。だが、僕達には他にもやらなければならないことがあるんだ」

「それってどんなの?」

「私達の守るべきお方…、月のプリンセスを探し出すのよ」

「月の……プリン?」


持っているプリンを見つめるうさぎ。

「〜〜プリンじゃなくてプリンセスっ!お姫様ってことだよ」

「あー!あははは、なるほどね〜♪」

「――太古の昔、月にあった王国シルバー・ミレニアム…。私達・外部太陽系戦士はそれぞれの星から、今探している内部太陽系戦士は城内でプリンセス・セレニティをお守りしていたわ。だけど、月の王国は滅んでしまった…。亡くなったプリンセスは戦死した私達と共にこの地球に転生してるはずなのよ」

「ふーん…。で、そのぉ…、シルバーミニマム?」

「〜〜ミレニアム!」

「あー、それそれ♪何で滅びちゃったの?」

「それは僕達にもわからない…。前世の記憶はまだ封印されてる部分が多いからな」

「これは推測だけど、宝石店を狙う妖魔達の親玉が何か関係してるんじゃないかと思うの」

「〜〜妖魔って、この前なるちゃんのママに化けてたあの…!?」

「そうよ。奴らは何らかの形で生き永らえ、今になって活動を再開した…。おそらく、プリンセスが持っていた幻の銀水晶の手掛かりを掴んだんじゃないかしら?」

「まぼろしのぎんずいしょう?」

「シルバー・ミレニアムに代々伝わっていた秘宝で、すっごいパワーがあるんだよ!」

「どんな形をしているのか、今はどこにあるのか私達も情報を集めてるところだけど、もし奴らが先に銀水晶を手に入れてしまったら、地球は闇に支配され、世界は暗黒に包まれてしまうことでしょう…」

「奴らは同時にプリンセスを狙ってくるだろう。銀水晶を使えるのはシルバー・ミレニアムの後継者であるプリンセスだけだからな」

「プリンセスを殺され、銀水晶を奪われてしまったら、私達に勝ち目はないわ…」

「〜〜ひぇ〜!!なら、何が何でも早く見つけないと…!!」

「あぁ、これは時間との戦いだ。失敗は決して許されない…」

「幸い、奴らも銀水晶がある正確な場所まではまだわかってないみたい。こちらも後れをとらないよう、早く残りのセーラー戦士を覚醒させて、プリンセスをお守りしないと…!」

「一緒にやってくれるわね、うさぎちゃん?」

「〜〜う…。ちょっぴり怖いけど…、やるっきゃないない!――またセーラームーンになったら、タキシード仮面様に会えるかもしれないし…♪」

「…うさぎちゃん?顔赤いけど、大丈夫?」

「あ…、あははは!な、何でもないよ〜♪」

「じゃあ各自、今からマークについて!何かあったら、すぐ連絡すること。いいわね?」

「はーい!」「はーい!」

「3時間後にまたここで落ち合いましょう」

「では、解散!」

「了か〜い♪」「了か〜い♪」


元気に張り切って保健室を出るうさぎとほたる。

「きゃあっ!ビューティー・スリーが出てきたわよ〜♪」

「はるかく〜ん!」

「みちるさ〜ん!」

「せつな先生〜!」

「〜〜うわわわっ!?」


はるか、みちる、せつなが出てくると、保健室前で待ち伏せていた生徒達が押し寄せてきて、廊下は大騒ぎに。人波をかき分け、床を這いながら、ようやく人混みのない廊下へ出るうさぎ。

「〜〜はぁ…、人気者っていうのも大変だねぇ…。せつな先生達、あんなんでマークできるのかなぁ…?」

「――あ、いたいた!うさぎー!」


疲れて立ち上がったうさぎを見つけ、駆け寄ってくるなる。

「あ、なるちゃん!今帰り?」

「うん。今日コンピュータ部休みだから、海野とデートする約束したんだ♪それより、模試の結果見た?もう張り出されてるわよ」

「〜〜ゲッ!?…まさか、この前の校内模試?」

「そうそう!ねぇ、見に行こ!私、実は結構頑張ったんだよね〜♪」

「えっ?ちょ、ちょっとぉ〜…!」


なるに腕を引っ張られ、無理矢理付き合わされるうさぎ。

「やったー、30位台♪ねぇねぇ、うさぎは?」

「〜〜フッ、夕日が目に染みるぜ…」

「〜〜ご…、50位までには入ってないみたいね…。隣見てみたら?いくらなんでも100位には入ってるでしょ…」

「――『月野うさぎ』…。100位にも入ってないみたいだぞ?」

「そ、その声は…!」


隣に衛が立っていて、サングラスを外す。

「よぉ!また会ったな、おだんご頭」

「〜〜あぁ〜っ!!この前のグラサン男〜っ!!な〜んであんたがここにいんのよっ!?もしかして、うちの生徒なの!?」

「OBだよ。今は大学生。遠藤校長に呼ばれてな、来週の新入生歓迎会でスピーチをやるよう頼まれたんだ」

「えっ!?今度の月曜の!?それに、あんたも来るのぉ!?」

「なんだ、お前1年だったのか。だったら、まだ間に合うぞ。今から猛勉強すれば最低ランクの大学には入れるんじゃないか、ギリギリで?」

「〜〜うるさ〜いっ!!良い大学に入るだけが人生じゃないのよぉ〜っ!?」


衛にパンチをぶつけるうさぎ。掌で拳を受け止める衛。その瞬間にタキシード仮面を思い出すうさぎ。

「へぇ、力はあるんだな。馬鹿力ってか?」

「〜〜何ですってぇっ!?」

「ハハ、冗談だよ。じゃあな、おだんご頭」

「〜〜まったくもう…。何なのよ、アイツ…」

「ねぇ、うさぎ!今の格好良い人誰!?お友達!?」

「と、友達なんかじゃないわよっ!だ〜れがあんなキザな奴…」


衛と触れ合った手を見つめながら去っていく衛の背中を見つめるうさぎ。

(――でも、さっきの温もり…、ちょっとだけあの人と似てたかも…。〜〜って、私の馬鹿!何でそんなこと思っちゃうのよ…!?あんな奴、タキシード仮面様と似ても似つかないってーのに…)

「…あ、うさぎ、名前あったよ」

「え?どこ!?」


最下位の場所に名を見つけ、がっくりするうさぎ。苦笑し、うさぎの肩を叩いて励ますなる。

「ドンマイ、うさぎ!これぐらいでくじけるあんたじゃないでしょ?」

「〜〜ハァ…。まぁ予想はしてたけどさ…。ま〜たハルダとママにお説教されちゃうなぁ〜…」

「それに比べてすごいわねぇ…!1位はやっぱり水野さんかぁ」

「え?水野さん!?」


亜美の名を聞き、顔を上げて確かめるうさぎ。

「水野亜美…、うひゃあ!全教科満点!?」

「すごいわよねぇ。確か入試でも全教科満点取って、入学式の時、新入生代表で挨拶してたよね?」

「IQは300あって、しかも、母親が医者で億ションに住んでるらしいわよ?」

「うっそ!マジ〜!?」

「〜〜お金持ちの天才少女かぁ。不公平よねぇ、世の中って…」


なるが近くにいた女学生と嘆き合っていると、亜美が廊下から教科書と参考書を持って歩いてくる。

「あ、水野さんだ…!」

立ち止まり、模試の結果を確認する亜美。背後から悪口が聞こえる。

「――見て、水野さんよ」

「相変わらずくっら〜い。また一人でお勉強でもしてたのかしら?」

「おとなしぶって嫌味な感じよねぇ。どうせうちらみたいな馬鹿とは話もしたくないってことなんでしょうけど」

「ちょっと頭が良いからって、お高くとまっちゃって…」


悪口が聞こえ、亜美はうつむき、うさぎとなるは眉を顰める。

「〜〜ちょっとでも目立つと、すぐイジメって始まるのよねぇ…」

「優等生も大変だわ…」

「ひどいよ、本人にわざと聞こえるように言うなんて…!――ちょっと、あんた達!?」


悪口を言った女生徒達を怒鳴るうさぎ。驚く亜美。

「な、何よ?」

「水野さんに謝りなさいよ!悔しかったらテストで勝ってみなさいっつーの!!」

「そ…、そうよ、そうよ!嫌がらせすることしか能がないなんて、お気の毒よね〜?」

「〜〜な…っ、何ですってぇっ!?」

「――月野さん、大阪さん…!!」

「え?」


呼ばれ、亜美の方を振り返るうさぎとなる。

「〜〜いいの…。私のことは放っといて…」

「あ、水野さん…!――なるちゃん、ゴメン!先帰ってて…!!」

「えっ?ちょっと、うさぎー!?」


亜美の後を追って廊下を走るうさぎ、非常階段を上っていき、座って泣いている亜美を見つける。

「水野さん…」

亜美にハンカチを差し出すうさぎ。驚き、顔を上げる亜美。

「よかったら使ってよ。ワンポイントにうさぎが入ってて可愛いでしょ?」

「ふふっ、そうね。ありがとう…」

「隣、座ってもいい?」

「…えぇ」


頷いてハンカチを受け取り、涙を拭く亜美。隣に座るうさぎ。

「……さっきはごめんなさい。かばってくれたのに、あんな言い方しかできなくて…」

「気にすることないって!あいつらがまた何か言ってきたら、このうさぎさんがビシーッ!!っておしおきしてあげるから♪」

「ふふっ、ありがとう。…でも、悪いわ。私をかばったら、今度はあなたが…」

「あはは、大丈夫、大丈夫!私、打たれ強いしさ!それに、友達をかばうのは当たり前でしょ?」

「友…達…?」

「そうだよ?おんなじ高校入って、クラスメートになった時から、もう私達友達でしょ?今まであんまり話したことなかったけどさ、これからはいっぱいお喋りしようよ!私、水野さんとお話ししてみたかったんだよね〜」

「月野さん…」

(――皆、亜美ちゃんと話したがってるよ!)


美奈子の言葉を思い出し、恥ずかしそうに微笑む亜美。

「――私も…仲間に入ってもいいのかしら…?皆と遊んでもいいのかしら…?」

「あったりまえじゃ〜ん!これからは『亜美ちゃん』って呼んでもいい?私は『うさぎ』でいいからさ!」

「えぇ。よろしく、うさぎちゃん」

「えへへ〜♪今日、コンピュータ部休みなんだよね?よかったらゲーセン寄ってかない?面白い格ゲー入荷したんだ〜♪」

「あ…、〜〜ごめんなさい。これから塾の時間まで図書室でお勉強しないと…」

「えぇっ!?ガッコ終わってもまだ勉強するの!?」

「えぇ。母のような立派な医者になるのが夢なの」

「へぇ、亜美ちゃん、お医者さんになりたいんだ?」

「えぇ、小さい頃からの夢だから…」


図書室に入り、医学関係の本をどっさり置いて席に着く亜美。向かい合って座るうさぎ。

「〜〜うわぁ〜、字ばっかり…。私が読んだら2秒で寝ちゃいそう…」

「ふふっ、読んでみると面白いわよ?今度、オススメの本貸してあげるわね」

「〜〜あははは…。でも、亜美ちゃんって夢に向かって一生懸命で偉いねぇ〜!私なんて初めて入ったよ、図書室なんて…。いつもだったら授業終わったら、さっさと帰っちゃうもんな〜」

(――気をつけて。今週は高校の方角に良くない相が出てるから…)


レイの予言を思い出し、シャープペンを書く手を止める亜美。

「…亜美ちゃん?どうかしたの?」

「う、ううん…、何でもないの。せっかくだから、うさぎちゃんも勉強していかない?」

「え?わ、私も…?〜〜いやぁ、付き合いたいのはやまやまなんだけど、お勉強はちょっと…」

「ふふふっ、うさぎちゃんって面白い人ね」

「あははは〜、よく言われま〜す」

「――こんにちは。水野亜美さん…だよね?」

「え?」


笑い合ううさぎと亜美に近づいてきた以象。眼鏡をかけた制服姿の以象に少しときめく亜美。

「失礼。僕は3年1組の委員長、斉藤以象です。入試をオール満点で突破した子がいるって聞いたものだから、会ってみたくなってね。でも、驚いたな。まさかこんなに可愛い娘だったなんて…」

「えっ?〜〜そ、そんな…!可愛いだなんて…」


真っ赤になって、うつむく亜美。亜美と以象を交互に見てニヤニヤするうさぎ。

「亜美ちゃ〜ん♪お邪魔みたいだから、お先に失礼するね♪」

「えぇ…っ!?」

「僕ももう行かないと。これからクリスタル・ゼミナールで模試があるんでね」

「えっ?以象さんもクリスタル・ゼミナールに通ってらっしゃるんですか?私もこの前、高校コースに入ったばかりなんです…!」

「本当?奇遇だなぁ!今度、志望大のプリント持ってきてあげるよ。あのゼミのプリント、解き応えがあって評判なんだ!」

「えぇ!ありがとうございます…!」

「それじゃ、また塾でね、水野さん」


図書室を去っていく以象を見つめる亜美をニヤニヤして突つくうさぎ。

「いいなぁ〜、亜美ちゃんってば。入学早々、彼氏ゲットかぁ〜♪」

「〜〜そ、そんなんじゃないわ!ただ、同じ塾に通うお友達として…」

「――あなた達!図書室では静かにね!!」

「〜〜す、すみませぇん…」「〜〜ご、ごめんなさい…」


図書室の司書に怒られ、おとなしくするうさぎと亜美。

「えへへ、怒られちゃったね♪」

「ふふっ、でも、こういうのってちょっと楽しいかも…♪」


うさぎと喋る網を図書室の外から見つめる以象。

「水野亜美…か」

眼鏡を外し、不気味に微笑んで去る以象。


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