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「サクラクエスト
〜勇者・大神とかえで姫の冒険〜」
第3章「月下の蛍」その2
「――さぁ、着いたぞ!ここがミカヅキ湿原だ」
このミカヅキ湿原もムーンライト=タウンの領土である為、街と同じように昼間でも暗い。所々にある水辺の周りには葉や茎が透明な青色の珍しい植物が生えていて、露が月光を反射して宝石のように輝いている。
「綺麗ねぇ…!ユニコーンや妖精でも住んでそうな所だわ」
「一見、ここは夢の世界に見えるが、出てくる魔物はマヒや毒攻撃をしてくる厄介なのが多いんだ。特に今日のような月食の日は狂暴化するからな。気をつけて行こう」
「そうだな…!」
湿原だけあって、地面がぬかるんでいて歩きづらい…。双葉から借りたせっかくの白いブーツに泥が跳ねてしまい、かえでは眉を顰めた。
「〜〜あんっ!……綺麗な場所だけど、ハイキングには向かないわね…」
「うわっ!?こんな所に水たまりが…。〜〜暗くて見えなかったよ…」
「この湿原を照らしているのは月だけだからな。3分おきに明るくなったり暗くなったりする場所が変わるんだ。足元には気をつけろよー?」
「〜〜ちょ、ちょっと待ってくれよ、加山!歩くの早過ぎだって…!!」
「〜〜こんな場所じゃ魔物とも戦いづらいわね…。ランプはないの?」
「ここの植物は日光や炎のような強い光を浴びると枯れちゃいますからねぇ…」
「そうか…。せっかくの月花草を枯らしたら意味ないからな…。――仕方ない…。かえでさん、歩きづらかったら俺の手につかまって下さいね?」
「まぁ…!ありがとう、大神君」
かえで姫の好感度が上がった!
「ヒュ〜ヒュ〜!羨ましいねぇ〜。俺も今度、プチミントさんを連れてこようかなぁ〜♪」
そこへ、カエル型のモンスター・フロッキンが現れた!
「魔物だ…!」
「モンスター・ブレスレットで調べてみるわ…!――奴の弱点は雷よ!」
「なら、俺は『雷天斬』で…!」
「私は雷属性の魔法『ライトニング・シュート』を…!」
「加山の武器『ギター』は水属性か…。なら、お前は防御を――!」
「――海はいいなぁ〜♪」
――ザザ〜ン…!!
加山は勝手に『特技』コマンドを入力すると、『津波』でフロッキンを押し流してしまった!
「〜〜ギエエエエ〜…!!」
「〜〜おい!何勝手に『特技』使ってるんだよ!?MPが勿体ないだろう!?」
「ケチケチすんなって♪雑魚戦で無駄な体力は使わない方がいいだろ?」
「〜〜そうだが…。今の技だとシステム上、『逃走』と同じ扱いになって、経験値が入らないんだよな…」
「〜〜しかも、水たまりが増えて、よけい歩きづらくなったわ…」
「はっはっは!気にしない気にしな〜い♪モンスターだって生き物だ。むやみに殺生したら可哀想じゃないかぁ〜♪」
「〜〜まぁ、いいけどさ…。次はちゃんと命令に従ってくれよな?」
「アイアイサ〜♪」
すると、今度はフロッキンがオタマジャクシ型モンスターのオタママを2匹連れて再出現した!
「また現れたわ!〜〜今度は数が多いわね…」
「雑魚戦を面倒がっているとレベル上げで苦労しますからね…。――加山、お前は『アイテム』コマンドから『雷のかけら』を投げて攻撃を――!」
「――はっはっはっは〜♪」
加山は『変な踊り』を踊った!フロッキンは混乱した!
「〜〜って…、また命令無視して何やってんだよっ!?」
「『変な踊り』で相手を混乱させてるんじゃないか♪見ろよ、大成功だぞ!」
「〜〜誰がこれ以上MPを浪費しろと言った…!?俺はお前に『アイテム』コマンドを指示したんだぞ!?パーティーキャラなのに勇者の命令に従わない奴がいるかっ!!」
「世の中、指示待ち人間は出世しないからなぁ〜♪」
「〜〜もっともらしいこと言って、ごまかすなっ!!」
「――大神君、敵の攻撃が来るわよ…!」
「〜〜くっ、仕方ない…。俺達で戦うしかありませんね…」
「オタママの耐性は水ね…!弱点は火みたいよ!」
「了解!――紅蓮斬!!」
「ファイヤー・ボール!!」
「ギエエエエッ!!」
大神とかえで姫の炎攻撃で2匹のオタママを倒した!
「――加山、今度こそ『雷のかけら』を――!!」
「――おぉ〜っ!アイテム袋に『ラットのしっぽ』がこんなに…!!これ、この地方だと高く売れるんだよなぁ〜♪」
「〜〜ずるっ!呑気にアイテム袋を物色してないで早く投げろよっ!!」
「そんなに焦んなくても平気だって♪向こうは混乱状態なんだからさぁ〜」
「〜〜もういい!私がやるわっ!――『ライトニング・シュート』!!」
「ギエエエエエッ!!」
かえで姫はフロッケンを倒した!
「〜〜ハァ…、なんとか倒せたわね…」
「よっ、お疲れ〜♪」
「〜〜『お疲れ〜』じゃないだろう!?どうして俺の命令に従わないんだよ!?」
「だってお前、MPケチって『戦う』コマンドばっかり選ぼうとするんだも〜ん。体力使うこっちの身にもなってくれよぉ〜」
「〜〜疲れるのは当たり前だろう、戦いなんだから!?…ハッ!?〜〜まさかとは思うが、お前のジョブって…」
大神は加山の設定ページを開いて、ジョブを確認してみた。
「〜〜やっぱりな…。お前のジョブは『遊び人』か…」
「何なの、『遊び人』って…?」
「戦闘中、プレイヤーの指示通りに動かずに勝手な行動ばかり取る、厄介なジョブですよ…。〜〜お前だけここに残って、レベル20まで上げろ!賢者にジョブチェンジしてやるからっ!!これは勇者命令だぞ!?」
「そんじゃさ〜、レベル上げに付き合ってくれよ、大神ぃ♪パーティー組んだ仲だろ〜?」
「〜〜ハァ…、そうか。イベント進行中は勝手にパーティー解消できないんだよな…」
「〜〜このダンジョンが終わるまで、私と大神君で頑張らないといけないのね…」
「ハッハッハ!頑張れよ〜、お二人さん♪今の段階でレベル20まで上げておけば、サクサク進めるからなぁ〜!」
「〜〜あなたも少しは頑張りなさいっ!!」
――ポカッ!!
「〜〜あいてっ!!」
その時、3人を見下ろすように頭上にひずみが発生した!
「ハッ!?あれは…!」
「〜〜きゃああっ!?」
見上げて存在を確認する暇も与えず、ひずみは3人をダンジョン内の別の場所にワープさせた!
「ここはどこかしら…?」
「〜〜いぃっ!?いきなりセーブポイント前かよ…!?」
「〜〜く…っ!……扉も開かないし、戻れそうにないわね…。私達がレベル上げできないよう、何者かに操作されたんだわ…」
「おっ、あの扉の奥が花畑だぞ!探索する手間が省けてよかったなぁ、大神♪」
「〜〜ハァ…、宝箱も取り逃したし、レベル上げしてない『遊び人』を連れた状態でボス戦に臨まなくてはいけないのが、とてつもなく不安だがな…」
「――ん…?何だ、これ…?こんな所に鏡なんてあったかなぁ?」
「RPGでよく見かける仕掛けだよ。天井から降り注ぐ月光を鏡同士で反射し合って、あの扉にうまく当てるんだ。そうすれば、扉が開くと思うぞ」
「なるほどね。頭を使う仕掛けなら任せて頂戴!」
「う〜ん…。俺はよくこの湿原に来るが、こんな部屋見かけたことないぞ?」
「おそらく、ひずみでダンジョンの一部が改変させられてるんだと思うわ」
「この仕掛けを解けば、ひずみが消えて、さっきの場所に戻れるかもしれませんね…!」
「ひずみ…?改変…?」
「…いいから、お前も仕掛けを一緒に解いてくれ!」
「OH!アイアイサ〜♪」
大神とかえでと加山は、自分の背丈ほどある大きな鏡を色々な角度に動かし、試行錯誤して月光を当てる角度を変えてみる。
「――この鏡から向こうの鏡に当ててみよう。〜〜うーん…。そうすると、あっちの鏡に当たらなくなるな…」
「じゃあ、この鏡をこの角度にすればいいんじゃないかしら?」
「あっ、そうか…!さすがかえでさんですね!」
「ふふっ、仕掛けが解けた時って気持ちいいわねぇ♪」
「――ふむ、なるほど、なるほど…♪」
鏡の角度を変えて仕掛けを解いている振りをして、かえでのスカートの中を覗こうとしている加山の頭に容赦なく魔法の氷の塊が落ちてきた!
「〜〜何をしているのかしら〜、『遊び人』の加山君?」
「ハハハッ、『遊び人』の密かな楽しみですよ〜♪」
「〜〜真面目に考えろよ!解けなきゃ、一生ここから出られないんだぞ!?」
「そう堅い頭で思い込んでるから、そう感じるんだよ。もっと頭を柔らかくしてみろ♪違う解決法だって思いつくかもしれないだろ?」
「…例えばどんな?」
「お前らが仕掛けを解いてる間に俺は抜け道を探してくる!…とかな♪ハッハッハ…!待ってろよぉ〜、プチミントさぁ〜ん♪」
加山は人並み外れた跳躍力で壁をよじ登ると、陽気に笑いながら横穴に入っていってしまった…。
「〜〜あの身体能力を戦闘で生かして欲しいものですけどね…」
「でも、これで静かになったわ。残りの謎解きに集中できるわね♪」
「はは、ですね。――よっと…!あとはこの鏡をこっちに向ければ…」
「手伝うわ!せーの…っ!!」
大神とかえでが最後の鏡を扉へ向けると、月光が当たった扉に光る魔法陣が浮かび上がり、扉がゆっくりと開いた…!
――ゴゴゴゴ…!
「やったわ!」
「扉が開いたぞ…!!」
すると、湿原の入口に発生していたひずみが消えて、大神とかえで姫は扉を抜けると、元いた場所に戻ってくることができた。
「元の場所に戻れたみたいね…!これで先に進めるわ」
「おーい、加山ー?仕掛け解けたから戻ってこーい!」
「…返事がないわね?どこまで行っちゃったのかしら?」
その時、ひずみが消えたお陰でゲームに侵入していたウイルスが一つ消滅し、黄金色に光り始めた冒険の書が『サクラクエスト』の元の物語を紡ぎ始めた…!
「あっ、また冒険の書が…!」
「何々…?『――ミカヅキ湿原にやって来た勇者・大神とかえで姫は、近道を探すと言ってはぐれた加山を探しつつ最深部へ向かう』…か。〜〜物語の矛盾はなくなったみたいだけど…」
「〜〜あいつがいないとレベル上げの意味ないんだけどな…」
「ふふっ、歩いていればそのうち遭遇するわよ。時間が勿体ないし、先に行ってましょ!」
「そうですね!」
その時、ミカヅキ湿原を照らしていた月が月食を始めてしまい、ダンジョンの中が何も見えなくなるほど真っ暗になってしまった…!
「〜〜きゃ…!?急に月明かりが…」
「〜〜いてっ!かえでさん、大丈夫ですか!?どこに――!?」
手探りでかえでを確認しようと大神が手を前に出しながら辺りを探っていると…、――むにゅっ!!
「きゃああっ!!」
「うわっ!?――や、柔らかい…♪この感触はもしかして…!」
――もみもみもみ…♪
大神は掴んでいる柔らかい二つの物体を思い切って鷲掴みにして揉んでみた!
「ああんっ!こ、この激しくも丁寧な揉み方は…っ♪――大神君、そこにいるのね…!?」
「よかった…!かえでさんもそこにいるんですね?」
「え、えぇ。〜〜あっ!ダメぇ!!そんなに強く揉まれたら私…っ!!」
「手を払わないで下さいね?でないと、またはぐれちゃいますから…♪」
「いやああっ!!だったらその手やめてぇっ!!〜〜あはああ…っ!はああんっ!!んっ、ん…っ!大神君にずっとそんなことされたら、我慢できなくなっちゃうぅ…!!」
「か、かえでさん…♪胸だけでそんなに感じてしまうんですね…?」
かえでの艶やかな声に大神は聴覚だけで興奮すると、かえでを水辺に押し倒して馬乗りになり、胸をさらに力を入れて激しく揉みしだいた!
「あ…っ!ああああああ〜ん!!」
「はぁっ、はぁっ…!かえでさん、気持ちいいですか!?」
「ああああああっ!!とっても気持ちいいわよ、大神君っ!!もう…イク…っ!暗がりで大神君にイタズラされて、イッちゃうぅ〜っ!!」
かえで姫の好感度が上がった!
「へぇ、相手をイカせても好感度って上がるんですね♪」
「ああっ!あああああ〜っ!!これ以上はやめてぇ、大神君っ!下はダメぇ〜っ!!」
「しー…。大声出すとモンスターが寄ってきますよ?」
「ああああっ!!〜〜コラ…!言うこと聞きなさい、大神君…っ!!ふあああああっ!!熱いのが当たってるぅ!!ひぃんっ!おっ、大きい…っ!!大神君の大きいのが入ってくるぅ〜っ!!」
「暗くても、かえでさんのここ…ヌルヌルしてますから、すぐわかりますよ…♪こっちの世界来てから初めての交わいですね…!」
「あああああああ〜っ!!動かさないでぇっ!!〜〜ラぁ…、ライトニング・シュートぉぉっ!!」
「いぃっ!?〜〜うわあああっ!!」
かえで姫は魔法で雷を大神に直撃させると、涙目で頬を紅潮させながら、はだけた服を直して体を隠した。
「〜〜んもう、大神君ったら…。暗いのをいいことにすぐエッチなこと始めるんだから…」
「〜〜セックスの途中でおあずけなんてあんまりですよ…」
「ここじゃ魔物がいっぱいいて、落ち着いてできないでしょ?…今夜、宿屋に戻ったら…ね?」
「…じゃあ、これならいいですよね?」
「えっ?――きゃ…っ!?」
大神はかえで姫をお姫様抱っこした!
「これならはぐれる心配ありませんし、靴も汚れずに済むでしょう?」
「そ、そうだけど…、重い…わよね…?」
「平気ですよ。ダンジョン攻略中ずっと、かえでさんと触れ合っていられて嬉しいですから…♪」
「大神君…♪」
かえで姫の好感度が上がった!
「…でも、またエッチなことしたらビンタですからね?」
「はは、わかりましたよ。しっかりつかまってて下さいね、かえでさん」
「ふふっ、えぇ♪」
文句を言うかえで姫だが、自らも暗いのをいいことに愛しの勇者様に笑顔でしがみつくのであった…♪
大神はかえで姫をお姫様抱っこしながら、モンスターを倒しつつぬかるみを慎重に進んでいき、最深部の花畑へ到達した。
「わぁ…!これが月花草ですね」
「この場所は月光が当たってて明るいわね。蕾がよく見えるわ」
淡い桃色の蕾の数々が月光に照らされて風になびく様子は、ファンタジー世界ならではの幻想的な美しさを醸し出している。
「綺麗ねぇ…。ふふ、依頼じゃなくて、デートの時に来たかったわね…♪」
「はは、そうですね。〜〜でも、結局、加山に会えなかったな…。アイツ、どこまで行っちゃったんだろう…?」
――ズシーン…。ズシーン…。
「……ねぇ、月花草から生まれる月花蛍ってあれのことかしら…?」
「え?月食はこれからのはずじゃ――!?」
「――キエエエエ…ッ!!」
「〜〜いぃっ!?」
花畑を揺らして近づいてきた蛍型の巨大モンスターが勇者・大神とかえで姫を見下ろし、威嚇してきた…!
「〜〜まさか…っ!!絶対違いますって…!!」
「〜〜でしょうね…。ここまでいくと、蛍って言うよりゴキブリだけど…」
「きっと、このダンジョンのボスですね…!こいつを倒して、月花草を手に入れましょう!」
「了解よ!」
大神はかえでを降ろすと、伝説の宝剣を構えた…!
「キエエエエエッ!!」
巨大蛍は小さな蛍型モンスターを召喚すると、2人に襲いかからせた!
「大神君、奴らの弱点は雷よ!」
「了解!――雷天斬!!」
大神の特技攻撃!だが、空振りしてしまった!
「〜〜何…!?」
巨大蛍は周りに映えている草を伸ばして壁にして、身を守っている!
「〜〜これじゃ攻撃が通じないわ…」
「多分、今は防御形態なんですよ。何ターンか経てば、攻撃形態に戻って草の壁を解除するでしょうから、ダメージを与えられるようになると思います。〜〜今までのボスより長期戦になるでしょうね…」
「なるほどね…。なら、相手が閉じこもっている間に私達も体力と魔力を回復しておきましょうか?」
「お願いします!その間、俺は小さい蛍を引きつけて倒しますから…!」
「――キエエエエエッ!!」
その時、草の壁に囲まれて身を隠しているはずの巨大蛍が突然お尻を発光させた!
「きゃああっ!!」
「〜〜く…っ!何だ…!?」
光を浴びた大神とかえでは巨大蛍にひれ伏すように、地面に倒れた!
「〜〜体が…痺れるぅ…っ!く…うぅ…っ」
「〜〜くそっ、こいつ、防御中にマヒ攻撃もしてくるのか…っ!」
すると、巨大蛍の周りを飛んでいた小型蛍がかえでに体当たりしてきた!
「きゃああああーっ!!」
「〜〜かえでさんっ!!」
「う…あぁ……あ…お……」
痛恨の一撃!かえで姫は小型蛍のヒップアタックで腹を強打し、気絶した!
「かえでさああんっ!!〜〜くそっ、体が…っ!」
大神はしびれて動けない!
「〜〜体の痺れが取れん…っ!どうすれば…いいんだ…っ!?」
と、その時だった…!
「――頑張れ、勇者よ〜♪魔王を倒し、世界を救うのだ〜♪ライラライラライラライラライラ〜♪」
「ギエエエエエ〜ッ!!」
ギターの音色と歌声と共に突然、巨大蛍が苦しみ始めたのである…!
「この歌声とギターの音色は…!」
「――フッフッフ…、これは相手の状態異常を悪化させる『呪いの歌』だ!――とうっ!!」
加山は背負っているギターを背中にずらすと、横穴から花畑に着地した。
「加山…!お前…っ、どこ行ってたんだよ!?」
「いやぁ〜、待たせたなぁ、大神!探索している間にこんな物をフロッキンから拝借したからさ、挨拶がてら、そこのデカ蛍に使ってみたわけよ♪」
「『毒の針』だって…!?そのアイテムは『盗む』コマンドを使わないと手に入れられないはずだが…!?」
「そうなのか?適当に相手してる間にゲットできちゃったけどなぁ〜♪」
「〜〜適当にって…。――だが、『遊び人』に『盗む』コマンドは使えないはずだけどな…。どういうことだ…?」
「――ギエエエエッ!!」
「〜〜うわっ!?それより、早くあいつを倒さないとな…!――加山、俺とかえでさんのマヒを解いてくれ!」
「いいぜぇ〜♪特別に『ROMANDO』特製の万能薬を飲ませてやろう」
「わっ!?〜〜馬鹿!何す…っ!?」
「動けないんだから、俺が飲ませてやるって。お礼は勇者様の唇な…♪」
「やめ…!〜〜んん…っ、んうぅ…」
加山は口うつしで大神に『ROMANDOの万能薬』を飲ませた!
「ん…っ、ぐ…うんんっ、ぷはぁ…!はぁはぁはぁ…っ」
大神のマヒが治った!
「はぁはぁ…、どうだ、大神?気分は最高だろ?」
「〜〜普通に飲ませろよな…?舌まで絡ませてきやがって…」
加山の好感度が上がった!
「可愛いなぁ、大神は♪俺は元々、両刀使いなんだよ。プチミントさんのような可憐な美少女も大好きだが、お前のような熱血主人公も大好物なんだぜ…♪」
真っ赤な顔と潤んだ瞳で睨みながらよだれを袖で拭く大神の頭を、加山はニコニコしながら撫でた。
「〜〜こ、こんな時に何カミングアウトしてるんだよ…っ!?あ…っ!やめろ…!!戦闘中にどこ触ってんだっ!?」
「この万能薬は1本1万ガルドもするんだぜ?金持ってないなら、その鍛え抜かれた体で払ってもらわないとなぁ…♪」
「〜〜馬鹿なこと言ってないで、早くかえでさんも助けてやれ!〜〜んあっ!かえでさんに変なことしたら、ただじゃおかないからな…!?」
「ハハッ、わかってるって!――では、『加山雄一ベストメドレー』いってみようか〜♪」
加山の『弾き語り』!かえで姫の状態異常が全て回復した!
「――う…ん…。あら…?マヒが治ってるわ…!」
「どうだ、大神ぃ〜♪アイテムを消費しなくても、たった1回の使用で全状態異常が回復する俺の神業は!」
「〜〜そんな技を使えるなら、俺の時も使えよっ!!」
「ハッハッハ…!まぁまぁ、色男の勇者様♪それより、毒が効いているうちにとどめを刺さなくていいのかな?また厄介なことになるぞ〜?」
「あ…、そうだったな…!――立てますか、かえでさん?」
「えぇ、一気にたたみかけましょう、大神君!」
「いいぞ〜、いいぞ〜♪GOGO!大神ぃ〜♪」
加山の『応援』!大神の力が上がった!
「〜〜『戦う』コマンドを命令してるのに、何で『応援』するかなぁ…?」
「――ライトニング・シュート!!」
「ギエエエエッ!!」
かえでの魔法のいかずちが巨大蛍を取り巻いていた小型蛍を全て撃ち落とした!
「今よ、大神君!」
「了解です!――狼虎滅却・天地一矢!!」
「ギャアアアア…!!」
大神が宝剣を鞘に戻すと同時に、十字に斬られた巨大蛍は断末魔の叫びをあげ、体の組織を崩壊していった…!
「よし、倒したぞ!」
「ヒュ〜ヒュ〜!よくやったぞ、大神ぃ〜♪お前は俺の誇りだぁ〜!」
「月花草も無事ね!よかった…」
「いやぁ〜、今年はたっくさん生えてるなぁ〜♪ど〜れ〜に〜し〜よ〜う〜か〜な〜♪」
「…全部持ち帰って、店で売ろうとか考えるなよ?」
「OH!ひどいなぁ、大神ぃ。――俺はプチミントさんが働いてくれている店でそんなあこぎな商売はしないよ。プチミントさんさえ喜んでくれれば、それで幸せなんだ…」
「加山…」
「ふふっ、加山君の気持ち、プチミントさんに伝わるといいわね」
「早く摘んで帰ろう。プチミントも小梅もお前の帰りを首を長くして待ってるだろうからな」
「はは、そうだな。じゃ、帰ろうか…!二人の協力、感謝するぜ♪」
こうして月花草を貴重品袋に入れ、ムーンライト=タウンへの道を戻っていく勇者・大神とかえで姫と遊び人・加山だったが…。
「――ん…?街が随分騒がしいな…?」
「もうお祭りが始まったのかしら…?――っ!?」
「〜〜こ…っ、これは…!?」
街に入った3人は驚愕した!
平穏なムーンライト=タウンが火の海に包まれ、お洒落な家屋は焼け落ち、住民や観光客のカップル達がパニックになって逃げ惑っていたのだ!
「〜〜誰がこんなひどいこと…!?」
「――兄…さん…、加山…さん…」
「――ハ…ッ!小梅君!?」
大神達を見つけて安堵したように小梅はすすだらけで笑みを浮かべ、火傷を負いながらフラフラ歩いてくると、力尽きて加山の胸に倒れ込んだ。
「〜〜小梅君…っ!!しっかりするんだ、小梅君っ!!」
「俺達の留守中に何があったんだ…!?」
「〜〜アグニ刑務所から脱走した…放火魔…が……」
「〜〜何だって…!?」
「それって、馬車のラジオで聞いたニュースの囚人の…!?」
「はい…。〜〜奴が…祭りの準備中に火を…放…って……」
「〜〜小梅君、しっかりしろ!プチミントさんはどこにいるんだ…!?」
「〜〜多分、『ROMANDO』に…。あの娘…、加山さんの店を守りたいからって…避難している途中で…引き返して……」
「〜〜なんてことだ…!――大神、小梅君を頼む…っ!!」
「あっ、加山…!?〜〜待て!一人じゃ危険だ…!!」
加山は大神に小梅を託すと、炎をかき分けて街の奥へと走っていった!
「小梅さんは私が手当てしておくわ。大神君も早く行ってあげて…!」
「〜〜お願いします…!!」
大神は煙を吸い込まないようにマントで口を押さえ、急いで加山の後を追うのであった…!
第3章「月下の蛍」その3へ
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