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「サクラクエスト
〜勇者・大神とかえで姫の冒険〜」
第2章「聖石と魔石」その2
双葉に案内されて、大神とかえではモギリ山に向かって歩き始めた。
「大きな山だから見つけやすくてよかったわね」
「えーっと、入口は…――いぃっ!?」
モギリ山の登山ルート、つまりダンジョンの入口を巨木が倒れていて、道を塞いでいた。
「〜〜これ、どこから入るんだ…?」
「おかしいねぇ。朝来た時はこんな木なかったんだが…」
「…かえでさん」
「…えぇ、見えるわ」
巨木のすぐ上空にドラゴンの時と同じ暗黒のひずみが発生していた。
「〜〜こんな時にウイルスか…」
「まずはあれをどうにかしないと進めなさそうね…」
「ふははは…!!植物の分際で私の行く手を阻もうとはいい度胸だ…!――とうっ!!」
双葉は銀座の高層ビルを越えられるほど高く跳び上がると、斧を振り回して、邪魔な巨木を切りまくった…!
「おらおらおらおら〜っ!!」
――シュパパパパ…!!
「早すぎて見えないわ…!!」
「狩人というより忍者だな…」
双葉が華麗に着地すると、幹は細かい木屑となって、紙吹雪のように舞い降り、先程まで横たわっていた巨木はあっという間に消え去った…!
「きれ〜い…!まるで雪みたい」
「さすが姉さん、職人技だな…!」
「私にかかればこんなものだ。さっさと進むぞ〜、野郎ども♪」
「ふふっ、ウイルスを送り込んだ犯人もお義姉様の行動までは読めなかったみたいね♪」
「ハハハ…、ですね」
2個目のウイルスが双葉の手によってあっけなく消滅すると、ドラゴンを倒した時と同じように『冒険の書』が黄金色に光り始めた。
「ウイルスが消えて、物語の矛盾が正されたみたいね…!」
「文字が浮かんできたぞ…!なになに…?『――村一番の狩人・双葉に案内され、モギリ山に到着した勇者・大神とかえで姫。彼らを待っていたのは自然が衰えてしまった故に出来上がった死にも勝る過酷な山道だった…』」
緑でいっぱいだったハイキングコースが一瞬にして、ゴツゴツした岩だらけの山道に変わってしまった…!
「〜〜いずれにしろ、攻略は楽ではなさそうね…」
「〜〜ウイルス駆除しない方がよかったかもな…」
「これくらいで弱音を吐くな!私なんかトレーニングで毎朝駆け登ってるんだぞ?」
「〜〜姉さんは魔物並みの体力だからな…」
「仕方ないわよ…。時間もないし、早く進みましょう」
可愛い妹の小梅と姪っ子のプチミントを救う為、勇者・大神ご一行はモギリ山の険しい山道を登っていく。
「この手のダンジョンのボスは大抵、山頂にいるんだよな…。〜〜気が遠くなりそうですね…」
「〜〜これって、山道というより獣道よね…」
「どうした、かえで姫?そんな体力じゃ狩人の妻になんてなれやしないよ」
「〜〜ゲームの世界でも小姑は小姑ね…」
そこへ、猪型のモンスター・ウリッコが現れた!
「おっ!出たな、今日の晩飯!?」
「〜〜戦闘か…。ぜぇぜぇ…、テレビの前にいるだじゃよくわからなかったが、勇者ってかなり体力がいるんだな…」
「〜〜はぁはぁ…。待ってて…。今…、弱点を…――きゃあっ!!」
「かえでさん…!!」
フラフラした足取りで崖下へ滑り落そうになったかえでの腕を大神は引っ張り、抱き上げた。
「〜〜セーフ…。高速LIPSが間に合ったみたいだな」
「ありがとう、大神君…!」
かえで姫の好感度が上がった!
「あら…?そんなに息苦しくなくなったような…」
「きっと、好感度が上がるとステータスがアップするんですよ」
「ふふっ、最高値になったら、きっと魅力の値も上がるんでしょうね…♪」
「かえでさんは今のままで十分魅力的ですよ…♪」
「…お二人さ〜ん、イチャつくのは後にしとくれよ〜?」
「〜〜あっ!」
「ご、ごめんなさい…!」
無視されたのを怒ったウリッコの先制攻撃『突進』!!双葉はかわした!
「こんな雑魚、ウォーミングアップにもなりゃしないね!」
双葉の攻撃!オーバーキル!!ウリッコを倒した!!
「オーバーキルで倒すなんて、さすが双葉姉さんだな!」
「だろだろう?もっとこの姉を褒めたまえ〜♪」
「〜〜情けないわね…。私にももっと力があれば、あやめ姉さんも城の者達も助けられたかもしれないのに…。〜〜王女なんて肩書きがあっても、いざって時は何の役にも立たないのね…」
「かえでさん…」
「何言ってんだい?城に籠りっぱなしだった姫さんが急に動けるようになるわけないだろ?」
「〜〜でも…、これ以上、一郎さんの足を引っ張りたくありませんもの…」
「…仕方ないねぇ。この先、山道はもっと過酷になっていくから、特別にとっておきのアビリティを教えてやるよ!」
「あびりてぃ?」
「操作キャラクターが使うアクションのことですよ。アビリティを覚えると、ダンジョン移動中に○ボタンや×ボタンを押すことによって、色々な動作を行えるようになるんです」
「へぇ、それは便利ねぇ」
「私のジョブは狩人だからね。登山に最適な『登る』と『ジャンプ』のアビリティを教えてやるよ。○ボタンでアクションだ!やってみろ」
「○ボタンって言われても…、どうやればいいの?」
「はは、それはゲームを操作するうえでの話ですからね。普通に動けば大丈夫ですよ」
「わかったわ。――こうね…!」
大神とかえでは『登る』『ジャンプ』のアビリティを覚えた!
「――できたわ!」
「やりましたね、かえでさん!」
「やればできるじゃないか。飲み込みが早い奴、私は好きだよ♪」
「ありがとうございました。今までそんなこともできなかったのに、よくここまで来れたわねぇ」
「〜〜まぁ…、ゲームってそういうものですから…」
「いいかい?あんたは庶民と比べて経験が少ないだけなんだ。これから一郎と一緒に色々なことを学んで、色々な経験を重ねていけば、そのうち何でもできるようになるさ。…だから、もうあまり自分を責めるんじゃないよ?」
「双葉お義姉様…。――ふふっ、えぇ…!」
「よ〜し、向上心のある義妹は大好きだ♪来いっ!」
かえでは感謝の気持ちを込めて、双葉と抱擁した。姉のあやめ姫に甘えていたように、強く、優しく、双葉を抱きしめる…。
――やっぱり、姉がいるというのはいいものだ…。
見ていると、そんなかえでの気持ちが伝わってきて、大神も微笑んだ。
「――あっ、あそこに宝箱が2つあるぞ…!」
大神は『皮の鎧』を手に入れた!かえでは『ビギナーズロッド』を手に入れた!
「やった、防具だ!早速、装備を変更しよう…!」
「私のは武器みたいね。でも、剣じゃないみたいだけど…?」
「かえでさんのキャラ設定ではロッドも装備できるみたいですね。攻撃力は落ちますが、その分、魔法攻撃が上がるんですよ」
「でも、魔法なんて覚えた覚えないわよ?」
「ちょっと待って下さい、術技ページで確認してみますから…。――『ファイヤーボール』と『ウィンドカッター』を習得しているみたいですよ」
「それって火と風の初期魔法よね?呪文書もないのに、いつの間に覚えたのかしら…!?」
「きっと、レベルアップしていくうちに自然と覚えたんですよ。俺も新しい剣技をいくつか習得してますし」
「そうだったの…!なら、ロッドを装備しても大丈夫ね。『魔法少女かえでちゃん』…なんちゃって♪」
「〜〜ま…、魔法少女…ですか?」
「…何固まってるの、大神君?」
「〜〜そ、そんなことありませんよ…!俺も姉さんも近接攻撃タイプですから、バランスが良くなりましたよね…!えっと、かえでさんの戦闘配置を後方に変更してっと…」
「お〜い、さっきから何話し合ってんだー?こんな山、本当なら5分で頂上まで行けるんだぞー?」
「〜〜だから、それは姉さんだけだってば…」
魔物を倒しながらどんどん登っていくと、山神の住処と言われる大樹がそびえ立つ山頂が見えてきた。
「あそこが山頂ですね。――ボス戦前に手前の魔法陣でHPとMPを回復してと…」
「肝心の山神様はあそこにいるのかしら…?」
「言い伝えでは、実りの収穫祭以外の時期はこの聖なる樹の中で眠っているとされているがな…。――ム…?」
「どうしたんだ…?――!」
近くで見上げると、聖なる大樹は枯れていた。葉は全て枯れ落ち、幹はしわしわに干上がっていて…。
「〜〜とても神様の住処とは思えないわね…」
「〜〜ありえん…!私が朝来た時はもっと葉が生い茂っていたぞ…!?」
「えっ?」
「これは山神様の住む聖なる木だ…!自然が破壊されるようになって、山道の緑は少なくなっていたが、この山頂だけは神の恵みを受けて、影響を受けなかったはずなのに…」
「どういうことなのかしら…?」
「ウイルスのせいで展開が改編させられたんでしょうか…?でも、ひずみは見当たらないしな…」
「よ〜し、何があったか山神様に聞いてみようではないか!一郎、その剣貸せ!!」
「〜〜えっ!?」
――ゴンゴンゴン…!!
「山神様〜、緊急事態だ〜!!あんたの樹が枯れてるぞ〜!!」
「〜〜お、お義姉様…!?」
「〜〜やめろって…!!折れたらどうするんだよ!?」
「馬鹿言え!伝説の剣がそんな簡単に折れるわけな…――!」
――パカッ!コロコロコロ…。
乱暴に幹を叩いているうちに柄の先端の青いオーブが取れてしまった。
「〜〜ほら〜、言わんこっちゃない…」
「〜〜ま…まぁ、刀身は無事なんだからいいじゃないか♪な?」
「大丈夫よ。またはめ直せば――!?」
すると、地面に転がったオーブが聖なる光を発して、ゴツゴツした岩の地面から草花が生え始めた。
「これは…!」
『――聖石を持っていたか…。助かったぞ、人の子よ…』
オーブの聖なる光で、たくさんの葉が生い茂る立派な大樹に甦ると、重々しく、威厳のある低い声が山頂に響いた。
その瞬間、ふさふさした白くて美しい毛並みの大きな狼が3人の前にゆっくり現れた。
「あなたが山神様なのか…?」
『さよう。我はこの世界が創造されてから、ずっと山々と村を守ってきた神だ。王家の宝剣を持っているということは、そなたは伝説の勇者だな?』
「あぁ、俺の名は大神一郎。そして、こちらは王家の血を引くかえで姫様だ」
「私達、あなたにお願いがあってここまで来たのよ」
『聞いてやってもよいが、その前に我の頼みを聞いてほしい』
「頼み…?何かしら?」
『魔石を持ったウサギ男が我を使役して、我の力を我がものにしている。奴の呪縛から我を解き放ってもらいたいのだ』
「ウサギ男…?それってシゾーのことよね…!?」
「あいつ、魔石を持っているのか…!?」
『さよう。魔石は我々・神に抗う為、魔族が創り出した地獄の宝石。それによって我が力は吸収され、不甲斐もなくこの樹を枯れさせてしまったのだ…』
「そうか…。見えない何かというのは魔石の力だったんだな」
『我はウサギ男の捧げてきた人の子の霊力を仕方なく取り込んで生命を保ってきたが、人の子を守るのが我の使命。生贄を取り込むのを拒否し続けていたら枯れてしまってな…。だが、そなたの聖石で我の力は甦った。――彼らは霊力を得るために取り込んでしまった生贄達だ。解放しよう…』
山神が遠吠えをすると、風が震え、大樹の幹に取り込まれていた村人達が息を吹き返した。
「お前達…!」
「よかった…!皆、無事だな…!?」
「ありがとなぁ、一郎ちゃん!」
「勇者様〜!姫様〜!」
「このご恩は一生忘れねぇだぁよ」
「これで生贄事件は解決ね!」
「あとはウサギ村長をぶっ飛ばすだけだね…!」
「――ウ〜ッサウサウサウサ…!!そう簡単にいくかピョ〜ン?」
ハッと振り返ると、シゾーが高笑いしながら黒い石を持って立っていた。しかも、護衛の二人はそれぞれ、小梅とプチミントを羽交い絞めにしているのである…!
「小梅…!!プチミント…!!」
「〜〜お兄様…」
「〜〜助けて、一郎叔父様…」
「――二人を離せぇぇぇっ!!」
双葉は高く跳躍して、シゾーに斧を振り下ろしたが、シゾーを覆う闇のバリアーに弾き返され、吹き飛ばされた。
「〜〜お義姉様…!!」
「ウ〜ッサウサウサウサ…!!相変わらずうっとりしてしまう力だピョン!この魔石がある限り、シゾー様は無敵だピョ〜ン♪」
『罰当たりな…。村を食い物にせんとする貴様を成敗してくれよう…!』
「この魔石がある限り、神様なんて怖くないピョ〜ン。力が復活してくれてよかったピョン。これでもっともっとお前の力を奪えるピョンし〜、生贄を捧げる必要もないから、この娘っ子達を妻にできるピョ〜ン♪」
「〜〜いやああ〜っ!!」「〜〜いやああ〜っ!!」
「やめろぉっ!!――闇連砕!!」
双葉の術技攻撃!闇属性なので、吸収された!
「〜〜何…!?」
かえではモンスターブレスレットでシゾーの特性を調べた。
「あのウサギは闇属性の攻撃を吸収する特性があるみたいです…!」
「〜〜とことん気に食わないウサギだねぇ…」
「〜〜ウサギウサギ言うなピョン!!――今度はこっちからいくピョンよ〜!!」
シゾーの攻撃!大神の『カウンター』発動!!
「さすが大神君ね!」
「ボス戦では、まず雑魚から倒すのが鉄則です!――かえでさん、護衛の弱点は!?」
「風に弱いみたいね。なら、私の出番だわ…!――『ウィンドカッター』!!」
かえでの魔法攻撃!!護衛Aと護衛Bを倒した!!
「ふふっ、魔法少女かえでちゃん、大活躍ね♪」
「〜〜はは…、さすがです」
「お姉様…!」「お母様ぁ…!」
「よかった…!二人とも、エロウサギに何もされてないな!?」
「〜〜ウサギの上にエロを付けたピョンね…?――もうシゾー様は本気で怒ったピョ〜〜ン!!」
シゾーは魔石の禍々しい光を山神に向けて放った!
『ぐおおおおお…!!』
「〜〜山神様…!!」
「ウ〜ッサウサウサウサ…!!こうなったらお前の霊力を全て奪って、モギリ村を滅ぼしてやるピョ〜ン!!」
「やめろ…!!――!?」
山神の霊力が魔石に取り込まれていくと、地面が大きく揺れ、モギリ村の地下に埋まっていた巨大な白い石が顔を出した。
「あれは…!?」
「魔石の原石だ…!〜〜あんなものがモギリ村の地下にあったとはな…」
「あの原石を奪う為にモギリ村を支配しようとしてたのね…!?」
「さすがは姫君、察しがいいピョン!けど、今さらわかったところでもう遅いピョン!シゾー様の天下はもうすぐだピョ〜ン!!」
シゾーは高笑いしながら、山神の霊力をさらに奪っていく…!
「やめて…!!〜〜きゃああああ…!!」
「かえでさん…!!」
山神をかばおうと魔石の光を浴びて、よろめいたかえでを大神は抱きとめた…!
「〜〜なんて強力な闇の霊力なの…?これでは近づくことすらできないわ…」
「ウ〜ッサウサウサ!!何人もシゾー様を止めることはできないピョ〜ン!!」
シゾーの魔力を吸って、村の地下にある原石が黒く変色し始めた…!
「〜〜原石が魔石に変わっていくわ…!」
「〜〜あれが完全に魔石になってしまったら、村は滅びてしまいますわ…!」
「その前にシゾーを止めるんだ…!!」
「俺達も行きましょう!」
「えぇ!――『ファイヤーボール』!!」
かえでの魔法攻撃!シゾーには効かないみたいだ…。
「〜〜そんな…!?」
「諦めるな!!――はあああああっ!!これでもくらえぇぇっ!!」
双葉の特技『二段斬り』!シゾーには効かないみたいだ…。
「〜〜くそ…っ、魔石が全ての攻撃を吸収してしまう…!」
「一体どうすれば…!?」
「――下がれ…!!」
モギリ山の山頂に聞き慣れた声が響いた直後、青く輝く聖石を持った米田国王が山神の前に飛び出してきて、聖石で魔石の光を吸収し始めた…!
「米田国王…!!」
「お父様…!?」
「そうか…!聖石と魔石は同じ原石からできているから、聖石の力を逆に魔石に送り込めば…!」
「そうとわかれば…!」
大神は宝剣の柄についていた聖石のオーブを拾うと、米田国王の隣で魔石の力を吸収し始めた!
「手伝います、米田国王陛下…!」
「へへ、さすが宝剣を手に入れた勇者だな…!」
「あぁっ!このままでは俺様の魔石が聖石になってしまうピョン…!!〜〜ぐぬ〜っ!!こんなところで負けられないピョ〜〜ン!!」
シゾーは魔石の力を最大限に高め、闇の霊力を大量に放出し始めた…!!
「うわああっ!!」
「〜〜大神君…!!お父様…!!」
「〜〜ぐっ!しょうがねぇ、最後の手段だ。――大神よぉ…!」
「え…?」
「――かえでを頼んだからな…!」
「お父様…!?」
「俺の全霊力をくれてやらぁ…!!――うおおおおおおおおおお…!!」
「〜〜いけません!米田国王…!!」
「〜〜お父様ぁぁぁ…!!」
まばゆい光が米田国王の全身から聖石に伝わって、さらにシゾーの魔石に注入されると、魔石は黒から青く変色し、聖石に変化した…!!
「ま、魔石が聖石に変わったピョン…!?〜〜まっ、まぶしいピョ〜ン…!!」
シゾーの聖石から放たれた光の霊力がモギリ村地下の原石に注ぎ込まれ、原石が青く輝き出した。美しい聖石に変化したのである…!
聖石の光がモギリ山を包んでいくと、枯れていた山の植物は咲き誇り、絶滅しかけていた動物達は甦り、濁っていた川の水は美しく澄み始めた。
そして、モギリ村の土壌もさらに肥え、尽きかけていた井戸水も増え、村を囲む木々に美味しそうな果実も実った。
「奇跡だわ…!」
「自然が甦っていく…!」
「これでモギリ村は安泰ですわね!」
「〜〜う〜ん…。負けたピョ〜ン…」
魔族のシゾーは聖石の光の霊力にやられたので、丸々太っていた体は痩せ衰え、山頂の突風に飛ばされていってしまった。
「俺達、勝ったのか…」
「〜〜お父様…!!返事をなさって、お父様…!!」
かえでの悲痛な叫びに大神はハッとなった。かえでが涙を流しているそこで、米田国王は石化していたのである…。
「〜〜米田国王陛下…!!」
『――どうやら、先程の戦いで霊力を使い果たしてしまったようだな…』
聖石で力を取り戻した山神は、石造になってしまった米田を調べている。
『石化を治す薬草ならあるが、これはそんな生易しいものではない…。〜〜すまない…。我があんな魔石に力を奪われなければ…』
「起こっちまったことを悔やんでも仕方ないさ。それより、元に戻る方法はないのかい…!?」
『…ないわけではない。――かえで姫、そなたはヒーラーの素質を持っているようだな?』
「ヒーラーって…、確か回復魔法や補助魔法を使うジョブのことよね?」
「えぇ。――何か白魔法をかければいいのか?」
『さよう。この大陸のどこかに石化を解く白魔法を使える魔女がいるらしい。彼女を見つけて、その白魔法を伝授してもらうのだ』
「その白魔法を使えば、お父様の石化は解けるのね…!?」
『絶対とは言い切れないが、試してみる価値はあるだろう』
「その魔女はどこにいるんでしょう…?」
「それなら、港町『ムーンライト=タウン』にいる情報屋さんに聞けば何かわかるんじゃないかしら。――ねぇ、小梅叔母様?」
「そうね。私とプチミントはその街の雑貨屋『ROMANDO』でお仕事をしているの。助けてくれたお礼に案内するわね♪」
「〜〜港町『ムーンライト=タウン』に『ROMANDO』か…」
「〜〜次に出てくる顔なじみが大体想像できるわね…」
「私は石像が盗まれないように村に運んで見張ってるよ。気をつけて行ってくるんだぞ?」
「あぁ、行ってくるよ、姉さん」
「お義姉様もお気をつけて…!」
「おう!小梅とプチミントを頼んだぞ〜!」
双葉に見送られながら、勇者・大神とかえで姫は小梅とプチミントを仲間に加え、ここから西にある港町『ムーンライト=タウン』へ出発した。
第2章、終わり
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