★6−3★



大帝国劇場。花組の部屋に入り、荷物を放り出す米兵達。

「〜〜ちょいと!勝手に人の荷物を持っていかないで下さいましっ!!〜〜あぁ〜っ!!それは大事なお紅茶のセットですのよぉっ!?」

すごむすみれにビビる米兵。英語で怒鳴るリーダー格の米兵に怯え、マリアの後ろに隠れるさくら。

「〜〜な…、何ておっしゃってるんですか…?」

「…『お前達はもうここの人間じゃない。さっさと出ていけ』ですって」

「〜〜何ですってぇっ!?よくもまぁそんなこと言えますわね!?私は帝劇を援助している神崎重工の人間でしてよ!?」


米兵のネクタイを掴み、怒鳴り返すすみれ。怯え、銃を構える米兵達。

「さすがは神崎重工…!アメリカでも有名なんですねぇ…」

「〜〜神崎重工よりすみれ自身を敵に回す方が厄介かもね…」


★            ★


格納庫。ヤフキエルを輸送していくブレントの社員達と米兵達。キネマトロンを奪われる紅蘭、カンナ、アイリス、大神。

「何すんねん!?うちの発明品まで奪うなや!!今、特許申請中なんやで!?」

「俺達の話も聞いて下さい!これでは立派な人権侵害ですよ…!?」


大神に銃を突きつけ、怒鳴る米兵。大神の後ろに隠れて怯えるアイリス。

「何しやがるっ!?こっちには子供がいるんだぞ!?」

英語で怒鳴る米兵にイライラして頭をかきむしり、米兵の襟を掴むカンナ。

「〜〜あ〜、何言ってるかわかんね〜っ!社長を出せ、社長を〜っ!!」

「〜〜カ、カンナはん、暴力はまずいて…!」


暴れるカンナを必死で止めようとする紅蘭と大神。来て、銃を構える米兵を英語で説得するラチェット。銃を下ろし、大神達を追い出す米兵達。

「〜〜くっそ〜っ!何なんだよ、あいつら…っ!?」

「しばらくの辛抱よ。ヤフキエル部隊の準備が完了次第、ここに戻ってくることを許可してやってもいいって」

「そうか…。助かったよ、ラチェット」

「皆さんのお役に立てるのなら光栄ですわ。とりあえず玄関に出ましょう。マリアさん達もそこにいらっしゃるはずですよ」


微笑むラチェットを怯えて見つめるアイリスを抱っこするカンナ。

「よしよし、もう大丈夫だぞ、アイリス」

「〜〜あのお姉ちゃん、嘘ついてる…」

「へ?」


微笑んでくるラチェットから顔をそむけるアイリス。顔を見合わせる紅蘭とカンナ。

★            ★


支配人室の前でライフル銃を持って警護する米兵達。室内で向かい合う米田とブレント。

「後藤大尉にはお悔やみを申し上げます…。昨晩も熱心に工場見学をしておられたのですがね…。この件に関しては、立ち入り禁止区域を注意深く申し上げておかなかった我々にも責任があります」

「……不良品の暴走…ねぇ…」


つぶやき、ブレントを見る米田。微笑むブレント。

「ですが、今後はこのような事故が二度と起こらぬよう配慮致しますので、ご安心を」

「へっ、邪魔者は全て排除か…。効率の良いやり方だな」

「…何か誤解をなさっているみたいですね。我々は何も帝国華撃団を潰そうなどとは思っておりません。花組以外の組織は全て我がダグラス・スチュアート・カンパニーの傘下に入って頂くだけです」

「〜〜ふざけるな!!いいか?花組は俺が絶対に解散させやしねぇ…!」

「おかしな人だ。この方法が最もあなたに利益をもたらすというのに」

「利益なんぞ俺は求めてねぇ!帝劇にはなぁ、金じゃ買えねぇ大事なもんが山ほどあるんだ…!もっとも、お前さんにはわからねぇことだろうがな」

「えぇ、わかりたくもありませんよ。そんなもの、ビジネスの前では何の効力も発揮しませんからね」


ほくそ笑むブレントを黙って睨む米田。

★            ★


米兵達に追い出される花組。扉を強く叩いて怒鳴るすみれとカンナ。

「何しやがる!?開けろ、この野郎〜っ!!」

「まだお話は終わってませんのよ〜っ!?」

「…無駄よ。とりあえず、今は奪還の好機を待ちましょう」

「〜〜米田のおじちゃん達…、大丈夫かな…?」

「米田はんとあやめはん、椿はん達風組は帝劇に軟禁状態らしいで?」

「けっ、あたい達だけのけもんかよっ!胸くそ悪ぃぜ…」

「……大神さん…、これからどうしましょう…?」

「マリアの言う通り、ここはおとなしく帝劇奪還のチャンスを待とう」

「〜〜ただ待つだけなんて嫌ですわよっ!?おじい様に言って、あの生意気なメリケンどもを追い払って頂きますわ!」

「だったら、あたい達も行こうぜ。女がこぞって野宿は危険だろうしな」

「はぁ!?まさか帝劇を取り戻すまで私の実家に厄介になろうとか思っていませんわよねぇ!?」

「そうだよ?おめぇん家、金持ちなんだからそれぐらい朝飯前だろ?」

「わぁ…!私、すみれさんのおうちに一度行ってみたかったんです〜!」

「〜〜ちょいと!?勝手に話を進めないで下さいまし…っ!!」

「おめぇが実家のこと言い出すからだろうが!この非常時に仲間のあたい達を助けたいとか少しは思わねぇのか、この薄情女っ!!」

「ち〜っとも思いませんわねっ!!大体、入隊時の規則に『除隊後、次の仕事が見つかるまで神崎グループが面倒見ます』などと書いてありました!?ありませんわよねぇ!?」

「〜〜あ〜もう、二人とも――!」

「〜〜喧嘩は駄目だよっ!!」


アイリスの大声に驚く大神達。

「〜〜こんな時に…喧嘩なんて駄目だよ…。……もう…帰るおうちがなくなっちゃったんだよ…?」

「アイリス…。そうだよな。こんな時こそお互い支え合わなくっちゃな!」

「アイリスの言う通りね」


カンナとマリアに褒められ、喜ぶアイリス。黙って見つめるラチェット。

「――なら、熱海はどう?」

旅行バッグを持って玄関から出てくるあやめ。

「あやめさん…!」

「司令の命令で、私もあなた達に同行することになったの。明日から旅行のはずだったんだし、今からバスで向かえば丁度良い時間に着くと思うわ」

「せや、ドタバタしてて、すっかり旅行のこと忘れとったわ〜!それからのことは旅館に着いてから、ゆっくり考えまひょ、な!」

「なら、ついでに光武も輸送して特訓合宿も兼ねるというのはどうかな?」

「いいですね〜!臨時休暇ということで、思う存分遊びまくりましょう!!」

「遊びではなく合宿です。こんな時でも呑気ですわねぇ、さくらさんは」


笑うさくら達。つまらなそうに髪をいじるラチェットに微笑むあやめ。

「どうかした?」

「ふふっ、別に。怒ったり笑ったり、忙しい人達だなぁって」

「――あっ、もちろん、ラチェットさんも一緒ですよ!」


ラチェットの手を取り、微笑むさくら。驚くも、黙って微笑むラチェット。バスのクラクション。向こうから来るバス。

「〜〜な、何だか図ったようなタイミングだな…。じゃあ、行こうか――」

乗ろうとした大神に背後から抱きつく斧彦。

「待って〜ん、一郎ちゃ〜ん!」

「〜〜うわああああっ!!ば…っ、薔薇組の皆さん…!?」

「〜〜相変わらず神出鬼没やなぁ…」

「フフ、あんな手薄い警備を抜けることなど私達にとっては造作もない事」

「ご安心下さい。私達・薔薇組が命をかけて本部奪還を試みますから!」

「だから〜、それまでちょ〜っとだけ待っててねん!」

「しかし、あなた達だけでは危険です…!」


「――大神少尉、オカマはね、好きな男の為なら命をかけることなんて何でもないことなのよ…!」

琴音に扇子で顎を軽く押し上げられ、青ざめる大神。琴音を押さえつけ、前に出てくる三人娘。

「大神さぁん、お土産、買ってきて下さいねぇ〜!」

「椿ちゃん…!由里君、かすみ君!軟禁されてたんじゃなかったのかい!?」

「ふっふっふ…、実は支配人も知らない隠し通路の噂がありましてね、試してみたところ、見事に抜けられたというわけなのよ〜!」

「〜〜ちょっとぉっ!!それ、私達が先に見つけたのよっ!?」

「〜〜何ですかぁ!?オカマは引っ込んでて下さいっ!!」

「〜〜き〜っ!!何よ、三人ブスメ!!」

「〜〜あ…、あの…、あまり騒ぐとまずいんじゃ――」

「――コラッ!!そこで何をしている!?」

「〜〜やばっ!警備の連中だわ…!!」

「大神さん、これを…!」


大神にキネマトロンを渡すかすみ。

「これで本部と連絡が取れます。こちらの様子を逐一報告しますね…!」

米兵達が銃を乱射し、急いでバスに乗る大神達、急発車するバスに慌てて座席につかまる。

「私達み〜んな、皆さんの帰りを待ってますからねぇ〜!」

取り押さえられる薔薇組と三人娘を悔しく見つめる大神達。

「〜〜く…っ、皆…」

「――よぉ〜、お兄さん!可愛い娘達に囲まれて旅行なんていいね〜!」


バスの運転手の格好をし、ウインクする加山。

「か…っ、加山ぁっ!?お前…、何でここに――!?」

「加山ぁ?ハハハ、誰のことかなぁ?俺っちの名前は『香川』ってーんだ。熱海まで安全運転でぶっ飛ばしていくからよろしくな〜、ハッハッハ!」

(…おかしいなぁ。他人の空似か?)

「大神さんのお知り合いの方ですか?」

「いいや、初対面だとも。――OH!花組は本当に可愛い子ちゃんだらけだなぁ!いやぁ〜、君達とこれから数時間、同じ空間にいられるなんて俺は幸せだなぁ〜!」

(〜〜いや、あれはどう考えても加山だな――!)


大神の腕を引っ張り合うさくらとアイリス。

「〜〜離してぇ〜!お兄ちゃんはアイリスの隣なの〜っ!!」

「〜〜この前、デートさせてあげたでしょ!?今度は私の番なの〜っ!!」

「はいはい、どこでもいいから、さっさと座って!」


マリアに押され、後ろに座るさくらとアイリス。大神の隣に座るマリア。

「隊長と副隊長が並ぶのが自然の摂理よ」

「〜〜あぁ〜っ!!ずる〜い、マリア!!」

「ふふっ、少尉のご意見を伺わずに勝手に決めては不憫というものですわ。――少尉、誰の隣に座りたいのですの?…もちろん、私ですわよねぇ?」


笑顔でプレッシャーをかけてくるすみれに怯える大神。

「…ビビらせてどうすんだよ。――お〜い、あたいと座ろうぜ、隊長!」

「あなたは図体がデカいのですから、2席分お使いになるでしょうに!!」

「〜〜何だとぉっ!?」

「んもう、いいから皆、近くの席に座りなさい!危ないでしょ?」


渋々座るさくら達。安堵し、座る大神。ラチェットの隣に座るあやめ。

「ふふっ、ごめんなさいね。動物園みたいでしょ?」

「くすっ、退屈しなくていいではありませんか」


見つめてくるラチェットをバックミラーで見て帽子を深く被り直す加山。

★            ★


黒之巣会・本拠地。天海に土下座するミロク。

「〜〜のこのことよく戻ってこられたものだな!?一度までならず、二度までも無様に失敗しおって…!!」

「〜〜も…っ、申し訳ございません!!あの妙な魔装機兵を隠し持っていたとは思いもよらず――!」

「〜〜言い訳など聞きたくないわ〜っ!!」

「〜〜ひええええ〜っ!!」


ミロクの周囲に黒い雷を落としまくる天海。慌ててよけるミロク。ミロクの前に来て、ひざまずく叉丹。驚くミロク。

「――お怒りはごもっともです、天海様。しかし、孔雀はまだ整備中。ミロクが完全な力を発揮できないのも当然です」

「叉丹…」

「…フン、では叉丹、次はお前の番だな?」

「はい。先程、これまでの奴らの戦いぶりのデータ採取が完了したところです。弱点を突くことができれば、我らの勝利はほぼ確実かと」

「ほぉ、そうか!必ずや帝国華撃団の奴らを全員仕留めてくるのだぞ!?」

「かしこまりました。――全ては天海様の御為に…」


怪しく笑い、立ち去る叉丹を追いかけるミロク。

「ま、待っとくれよ…!――もしかして…、かばってくれたのかい…?」

無視して歩いていく叉丹。

「〜〜無視かいっ!何だよ、せっかく人が礼言ってやってるのにさぁ…。あ〜、あんたを少しでも良い奴と思った私が馬鹿だったよっ!」

怒って歩いていくミロクを背中越しに見つめ、妖しく微笑む叉丹。

★            ★


熱海。旅館『剣禄園』。荷物を持ってバスから降りるさくら達。

「わぁ、ここが剣禄園ですかぁ…!」

「なんでも、江戸時代から続く老舗らしいよ」

「へぇ〜、すっご〜い!」

「とりあえず、予定通りここを拠点に今後のことを話し合いましょうか」

「そうですね。――荷物降ろしておくから、先入ってなよ」

「は〜い!お邪魔しま〜す!!」

「団体で予約しました帝国歌劇団ですが」


出迎える女将と仲居達。

「はるばるようお越し下さいました…!ささ、お部屋までご案内致します」

孔雀の間。荷物を置くさくら達。

「わぁ、あやめお姉ちゃんのお部屋みた〜い!」

「おっ、海が見える!海行こうぜ、海〜!!」


服を脱ぎ始めるカンナに赤くなる大神。下に水着を着ているカンナ。

「〜〜な、何だぁ…」

「何や、大神はん?残念そうな顔やなぁ〜」

「〜〜そっ、そんなこと…決してないぞっ!?」

「へっへ〜ん!どうだい、隊長?似合うだろ〜!」

「えぇえぇ、よぉくお似合いですわよ〜?お下品なデザインで」

「〜〜んだとぉっ!?おめぇの毒色ビキニよりマシ――!?」


すみれとカンナの顔を押さえ、引き離すマリア。

「旅館では静かにしなさいね。周りに他のお客様もいるんだから」

「きゃははは!さっすがマリア〜!」

「よぉし、せっかく来たんだ。海に向かおうか!」

「お〜っ!」


★            ★


海。水着でビーチバレーする花組をパラソルの下で見守る大神。隣に来るあやめ。

「こうしていると、花組解散なんて嘘みたいね…」

「そうですね…。本当なら、もっと楽しい休暇になるはず――!」


上着を脱いで水着姿になるあやめに赤くなる大神。

「ふふっ、どう?少し派手だったかしら…?」

「〜〜そっ、そんな…、とってもお似合いです…っ!」


照れて水着を直すあやめ。胸の谷間に目が行き、慌てて目をそらす大神。

(〜〜まずいな…。どこに目をやったらいいものか…)

「日焼け止め、塗ってあげるわね。焼きすぎると痛くなっちゃうから」

「あ…、ありがとうございます…」


バッグから日焼け止めを出し、寂しい瞳で大神の体に塗るあやめ。

「……何とかなるわよね…、きっと…?」

「大丈夫です。舞台でも戦闘でも、俺達花組は今まで何度もピンチを切り抜けてきました。その度に互いの絆はどんどん強くなってきたはずです。絶対に好機は来ますよ、俺達が諦めない限り、そして花組を…、帝劇を愛し続ける限り…!」

「ふふふっ、不思議ね。大神君が言うと、本当に何とかなっちゃいそう」

「ハハ…、それにたとえ花組が失くなったとしても、俺達の絆は決して壊れはしません…!」

「俺達の絆…か。ふふっ、あなたもだんだん米田司令に似てきたわね」

「えっ?そ、そうですか?」

「ふふっ、えぇ。でも、大神君の意見に私も賛成よ。風組と薔薇組からの本部奪還伝達を信じて、今はおとなしく待ちましょう」

「それまでこの合宿を続けて、己の体力とチームワークを強化しておく…ですよね?」

「ふふっ、そういうこと。――はい、終わり。私にも塗ってくれる?」

「〜〜いぃ…っ!?じ、自分が…ですか…!?」

「えぇ、お願いできる?隊長さん」


水着の紐を外し、うつ伏せになるあやめ。

「わ、わかりました…。失礼します…」

あやめの背中に触れようとした大神の手首を締め上げるすみれとカンナ。

「〜〜あいたたたた…!!なっ、何するんだよぉっ!?」

「〜〜フン、みっともなく鼻の下伸ばして…。最低ですわ!」

「まったくだぜ!」

「〜〜なっ、何を怒ってるんだよ、二人とも…〜〜あたぁっ!?」


大神の頭にビーチボールが直撃。さくら、マリア、アイリスが仁王立ちで睨んでいる。

「…早くゲームに加わって下さい。チームワークの強化メニューとして提案したのは隊長ではありませんか」

「〜〜んもぉ〜っ!!お兄ちゃん、デレデレしてて格好悪〜いっ!!」

「〜〜フン!大神さんのスケベ…!!もう知りませんっ!」

「あはははっ!残念やったなぁ、大神は〜ん」

「〜〜そっ、そんなんじゃないって!!…もう、女とは思えない力だったぞ?」

「ふふっ、私はいいから、早く行ってあげなさいな」

「はい…。――あ、そうだ!あやめさんも一緒に〜〜ぐえええっ!?」

「〜〜いいからさっさと来るっ!!」「〜〜いいからさっさと来るっ!!」


大神を羽交い絞めにして、ひきずって無理矢理連れて行くすみれとカンナ。

「〜〜いたたたた…!!み…っ、皆、何でそんなに怒ってるんだよぉ…!?」

微笑み、ビーチバレーを楽しむ大神達を見守るあやめ。静かに近づく加山。

「…何かわかった?」

「ラチェットのキャメラトロンにスチュワート社との通信記録が残っていました。ご推察通り、ダグラスと繋がりがあるのは間違いないかと…」

「…わかったわ。合宿終了まで気を抜かないようにね」

「了解しました」


音を立てずに立ち去る加山。ラチェットの不在に気づくさくら。

「――あら?そういえばラチェットさんは…?」

「あ〜、休憩時間中に洞窟を探検してくる言うてはったけど…?」

「まったく…。勝手に単独行動なんて、協調性のない方ですわね」

「〜〜おめぇが言うな、おめぇが」

「せやけど、行ってからもう1時間近いなぁ…。ちと心配やな…」

「見知らぬ異国の地で迷ってるんじゃないのか?あたい、見てくるよ」


大神のキネマトロンにラチェットから通信。応答する大神。

「ラチェットからだ…!――どうした、ラチェット?」

『申し訳ありません。洞窟を見学してたら滑って足をくじいてしまって…』

「え…っ!?わかった!すぐ行くから、動かずに待っていてくれ…!」

『はい…。ご迷惑をおかけして、申し訳ありません…』


切る大神。画面を黙って見つめ、大神の肩に手を置くマリア。

「隊長はここでご指導をお願いします。代わりに私が…」

「え…?あ、マリア…!?」


マリアに目で合図し、頷くあやめ。黙り、頷くマリア。

「私が責任を持って迎えに行くわ。――皆はそのまま続けていて頂戴」

「ラチェットさん、大丈夫でしょうか…?」

「フン、足をくじいたぐらいで大袈裟な女ですわね」


不安な顔で大神にしがみつくアイリスに気づき、?な大神。

★            ★


洞窟の最深部。足首を押さえ、座っているラチェット。あやめが来る。

「足をくじいたんですって?大丈夫?ここは滑りやすそうだから…」

「……大神隊長は…?」

「チームワークの強化メニューを行っている最中だから、代わりに私がね。ほら、つかまって。どこが痛む――?」


肩を貸そうとするあやめの手を払い、平然と歩き出すラチェット。

「空気が読めない人ね。…それとも、わざとかしら?」

笑いながら出ていくラチェット。黙り、ため息つくあやめ。

★            ★


ギターを背負い、夕日が沈む浜辺に佇む加山。

「う〜む、絶景かな、絶景かな!やっぱり海はいいなぁ〜。海と言えば恋!やっぱり夏は恋の季節だよなぁ〜!」

妄想。水着でさくらと浜辺で追いかけっこする加山。ヤシの葉のうちわをすみれに扇いでやる加山。日焼け止めをマリアに塗る加山。同じジュースをストロー2本でアイリスと飲む加山。スイカ割りを紅蘭と楽しむ加山。泳ぎを競争し、水しぶきを飛ばして顔を上げ、加山に微笑むカンナ。妄想し、にやける加山。

「いやぁ〜、やっぱり海は最高だなぁ〜!」

海が少し荒れるのを真面目な顔で見つめる加山。

「海が荒れている…。〜〜この胸騒ぎ…、気のせいならいいが…」


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