★2−4★
帝都タワーに集まっていく女性達に紛れる虚ろな瞳のさくら。タワーを囲んで破壊しようとする女性達。頂上に天海。
「いいぞぉ!もっと破壊しろ!!このタワーを壊し、帝都を混乱に導くのだ!!」
光武に乗って見上げる大神とカンナ。あやめから通信が入る。
『大神君、そっちはどう?』
「集まる女性が増えているように思われます。そちらはいかがですか?」
『もうすぐ番が来るわ。どうやら一人一人の霊力を奪っているみたいね』
「ちっ、ご苦労なこった…」
『私の発砲を合図に奴を叩きのめすのよ。いいわね?』
「しかし、それではあやめさんが…!」
『大神君、失敗した時のことを考えていては駄目。弱気でいたら、奴らにつけこまれるだけよ、いいわね?』
「……了解しました…」
『良い子ね。じゃあ、作戦通りにお願いね…!』
通信が切れる。拳を光武に叩きつける大神。
(俺はそんなに頼りないですか…?〜〜あなたにこんな危険な役目を負わせるなんて、俺…、情けないです…)
「――俺ぁ情けねぇぜ、女を戦場に送りだすなんてよ…」
轟雷号から米田の通信が入る。顔を上げる大神。
「軍人でしかも中将なんて階級までついててよ…。でも、俺は光武を操れるほどの霊力はねぇ。ただこうして指をくわえて、あやめ君達が戦うのを見守ることしかできねぇんだ。……それがすごくもどかしくてよ…」
「……」
「…でもよ大神、お前はそれをサポートしてやれるだけの霊力があるだろ?何をそんなに悲観してやがる?あやめ君が傷つくのを見るのが怖ぇなら、体張って守ればいいだけじゃねぇか!」
「司令…!――そうですね…。俺はあやめさんを、そしてさくら君達花組を守る為にこの力を使います!」
「おう、しっかりな!あやめ君達のこと、頼んだぜ!」
「了解しました!」
「へっ、嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか!いっちょやったろうぜ、この間のリベンジによ!行くぜ、隊長!!」
「よし!帝国華撃団、出撃だ!!」
★ ★
女の額に手をかざし、霊力を奪う天海。倒れる女。
「これだけあれば、脇侍の大量生産も可能じゃろ。じゃが、ここで退くのももったいないのぉ。あの小僧達を待つとするか。くくくく…!」
和服姿で凛々しく見るあやめ。控えている大神とカンナ。
「けっ、薄気味悪ぃじいさんだぜ」
「紅蘭とマリアが心配だ…。――紅蘭、そっちはどうだ?」
『今、さくらはんを追跡してますー。霊力がどんどん天海に集まってますわ。帝都タワーが倒れるのも時間の問題や。早いとこ手を打たんと…!』
「マリアはどうした?」
「それが通じへんのや。電波からして近くにおるのは間違いないんやけど」
「〜〜もしかして、マリアに何か…!?」
「いや、マリアのことだから大丈夫だろう。多分通信を切ってるのはわざとだ。あくまで単独行動を貫くつもりなんだろう…」
後をつけるマリア、紛れるあやめを発見し、隠れる。
「このままでは前回の二の舞だ…。〜〜くそ…っ!」
「隊長、あたいはあんたに従うぜ!さくらを元に戻すのが先だからな」
『うちもさくらはんが心配や!それに帝都タワーが壊れてもうたら、帝都の情報網はめちゃめちゃになってまう…!頑張って天海を止めまひょ!』
「ありがとう、二人とも!紅蘭は引き続きさくら君を追跡してくれ!」
「了解や!」
轟雷号。モニターで見ている米田と三人娘。
「大神さん、大丈夫ですかねぇ…?」
「ま、今は温かく見守ろうや。――さぁて、どう出る、隊長さんよ…?」
★ ★
帝都タワー。霊力を奪う天海。倒れる女。
「さぁて、次のおなごはどいつじゃ?」
ゆっくり近づき、ひざまずくあやめ。
「全ては天海様の御為に…」
「ほぉ、こりゃべっぴんさんじゃのぅ!くくく…、奪いがいがあるわい」
額に手をかざす天海。懐から銃を出し、撃つあやめ。天海の心臓に命中。
「今だ…!行くぞ、カンナ!!」
「おう!チェストオオオッ!!」
大神とカンナの合体攻撃に倒れる天海。屈み、天海の様子を見るあやめ。
「やったか…!?」
「大神君、早く女性達を轟雷号へ!」
「了解です…!」
(――おかしいわ…。あれだけの霊力を放っていた奴が、そう簡単にくたばるかしら…?)
踵を返す大神とカンナ。素早く起き上がり、あやめの首を絞める天海。
「あやめさん…っ!!」
「ふふふ…、わしの妖術にかからぬおなごがいたとはのぅ」
(〜〜この異様なまでの妖気…!こいつは…まさか――!!)
山崎が斬った封印石から出てくる天海を回想するあやめ、苦しみながら左胸を撃ち抜くが、穴が塞がる天海に驚く。
「くくく…!無駄じゃ、無駄じゃ!わしにそんな物は通用せんわ!!」
首を絞めながらあやめを落そうとする天海。
「〜〜く…うぅ…っ」
「あやめさん…!!」
駆け寄ろうとする大神とカンナの周囲に脇侍達が出現し、攻撃。
「〜〜しまった…!!」
「ちくしょう…!!やられてたまるかぁっ!!」
脇侍達を倒していく大神とカンナ。新たな脇侍が地中から出現。
「〜〜くそっ、新手か…!」
「くくく…、あいつらがどれだけ持ちこたえられるか見ものだな…」
苦しみながら天海を合気道で攻撃しようとするが、さらに絞められる。
「〜〜ああああ…っ!!」
「ふははは…!この天海に逆らう愚か者には制裁を加えねばならんなぁ」
霊力を発する天海。女達の霊力が一気に奪われていく。よろめくさくら。
「さくらはん…!!」
大声を出した紅蘭の周りを取り囲む女達。口を塞ぐ紅蘭。
「〜〜ま、まず…っ」
紅蘭に攻撃する女性達。
「うわ〜っ!!ちょい待ち〜っ!!」
『バズーカくん』を発射する紅蘭。怯む女性達。
「おぉ!爆発せんかったわ…ってそんなこと言うとる場合やなかった!〜〜さくらはん、もうやめてぇな!!それ壊れたら、蒸気テレビジョンおじゃんになってまうんやで!?」
「天海様の…御為に……」
「〜〜さくらはんっ!!あいつの言葉に耳貸したらあかん!!」
「〜〜うるさいっ!!」
紅蘭を突き飛ばすさくら。よろめく紅蘭。
「〜〜こ、光武なしでこれほどの力やとは…。あの天海とかいうじいさん、ただもんやないで…!?」
斬りかかるさくら。身構える紅蘭。銃声。倒れる女達。銃を向けたマリア。
「〜〜マ、マリアはん…!?」
「…麻酔針よ。人体に害はないわ」
「ほっ、そうでっか……ってそんなことはええんや!!いるならいるで連絡くれたらよかったのにぃ…」
「…仮に連絡したとして、あなたが何かできた?」
「〜〜し、失礼なやっちゃなぁ!うちかて自慢の発明品で――」
さくらに発砲。
「〜〜って人の話を聞かんか〜いっ!!」
霊力のバリアで針を弾くさくら。驚くマリアと紅蘭。睨むさくら。
「れ…っ、霊力の高さが仇になってもうた…」
「邪魔を…するなあああーっ!!」
二人に斬りかかるさくら。天海に斬りかかる大神。素手で受け止める天海。
「威勢の良い坊ちゃんじゃ。じゃが、まだまだ修行が足りんな」
吹き飛ばされ、鉄柱に激突する大神。
「うわああああっ!!」
「隊長っ!!」
「ふははは!!この女の霊力を吸い尽くしてから、貴様のも奪ってやるわい」
あやめの霊力を奪い始める天海。
「きゃ…っ!!〜〜い…っ、いやあああ〜っ!!」
「あやめさんっ!!〜〜く…っ!!」
脇侍の攻撃をギリギリでよける大神。
『大神、一旦戻れ!!今のあいつにお前らだけでは敵わん!!』
「し、しかし、あやめさんが――!」
『馬鹿野郎!!もたもたしてたら、おめぇらまであの世逝きだぞ!?』
「〜〜お、おい!?あやめさんを見捨てる気かよ!?」
『お前らまで倒れたら華撃団はどうなる!?文句言ってねぇで早く退けっ!!』
立ち尽くす大神。苦しみ、悶えるあやめを落そうとする天海。
「う…うぅ…、お…、がみ…君…、早く…逃げ…なさ…い…!」
「〜〜し、しかし…!」
「これ…は…命令…よ…ああああっ!?」
「〜〜あやめさんっ!!」
「〜〜させるかよおおっ!!」
天海に殴りかかるカンナ、衝撃波で飛ばされる。
「うわあああっ!!」
「カンナ…!!」
「あははは…!このすさまじい霊力…!このまま殺すのは実に惜しいが、我が野望成就の為じゃ。おとなしく死んでもらおう…!!」
霊力の球を発しようとする天海。隙を突き、天海を延髄蹴りするあやめ。
「ぐぬうっ!!〜〜な、何と…!?」
「今よ…!!」
「は、はい…!うおおおおっ!!」
天海を斬る大神。
「ぐおおおっ!!〜〜ふふ…、ふふふふ…、なかなかやりおるのぉ。じゃが、この我を本気で怒らせたようじゃな…!」
オーラを発する天海。吹き飛ばされそうになる大神、あやめ、カンナ。
「〜〜な、何て霊力だ…!?」
「〜〜この力…、やっぱりあなたがあの天海なのね…!?」
「ふははは!いかにも!冥土の土産に教えてしんぜよう。我は黒之巣会総帥・天海!もうすぐこの帝都は我の手に落ちる!!――我に逆ろうた罰じゃ!貴様から葬ってくれるわ!!」
天海の衝撃波に吹き飛ばされ、タワーから墜落するあやめ。
「きゃああああああ…!!」
「あやめさああんっ…!!」
青ざめるカンナ。駆け下り、鉄柱につかまりながら手を伸ばし、あやめを右手の平で受け止める大神の光武。
「〜〜セ…、セーフ…」
「お…、大神…君…!?」
「あやめさん…、俺は花組隊長です…!花組はあなたの仲間です!もっと俺達を頼って下さいよ…!」
驚くあやめ。カンナも手を貸し、大神の光武とあやめを引き上げる。
「同じ帝国華撃団の仲間だろ?もっと部下を信頼してもいいと思うぜ」
「あなた達…」
驚くあやめ。微笑む米田。タワーの下からさくらの雄たけび。マリアと紅蘭を荒鷹で斬ろうとするさくら。よけ、発砲するマリアだが、霊力のバリアに弾かれる。麻酔針がなくなり、舌打ちするマリア。紅蘭を狙い、斬りかかるさくら。よける紅蘭。
「〜〜さくらはん、やめてぇな!!うちらがわからんのか!?」
「天海様の邪魔をする奴は…、全て排除するっ!!」
斬りかかるさくら。よける紅蘭だが、発明品が斬られ、ロボが墜落。
「あぁ〜っ!!うちが徹夜して作った『ついせきくん・ロボ型』がぁ〜…」
「〜〜マリア!紅蘭…!」
「任せろっ!!」
飛び降り、さくらの刀を受け止めるカンナ。
「さくら、目を覚ませ!!お前はあのじいさんに操られてるんだよ!!」
「〜〜邪魔をするなああっ!!」
霊力を放出するさくら。吹き飛ばされるマリア、紅蘭、カンナ。
「うわあああ…!!」
「皆…!!」
「大神君、早くさくらの術を解いてあげて!あなたならきっとできるわ!!」
「わかりました!少しの間、頼みます!!」
鉄柱を伝って下りる大神。微笑み、頷くあやめ。背後から近づく天海。
「お前も帝国華撃団の者じゃったか。どおりで素晴らしい霊力のはずじゃ」
「あなたにはわからないでしょうね…。霊力は何の為に使うべきかなんて」
翔鯨丸が天海を発砲し、あやめの背後につく。
「〜〜な…っ、何と…!!」
「副司令〜!迎えに来ましたよぉ」
「ご苦労様。――それじゃ、私も本気を出させてもらうわね…!」
★ ★
大帝国劇場。サロンで茶を飲むすみれ。
『――さくらも大好きな父ちゃんを悪く言われて、すごくショックだったと思うぜ…?』
『――怪我、早く良くなって下さいね!』
回想し、ティーカップを置くすみれ。気配なしに背後から声をかける加山。
「――神崎すみれさん…ですよね?」
振り返るすみれ。郵便屋の制服を着てニッと笑う加山。
「〜〜あ、あなた、いつの間に…!?」
「いえいえ、偶然お見かけしたもので、つい。いやぁ、間近で見るとまた格段にお美しい!帝劇のトップスタァになること間違いなしですね!」
「あらぁ!ま、当然のことでしょうねぇ!おっほほほほ…!!」
「今はすみれさんお一人ですか?他の方々は…?」
「〜〜知りませんわ、あんな方達なんて!」
「はぁ、そうですか。――あ、申し遅れました、私、郵便局の加川と申します。郵便物を事務局に届けておきました!」
「…わかったから、さっさと仕事にお戻りなさい」
「では、失礼しま〜す。――あー、そうだ!」
「〜〜まだ何か?」
「これ、ロビーの前のごみ箱で見つけたんですが、あなたのですか?」
さくらの差し入れのかごのリボンを見せる加山。回想し、奪い返すすみれ。
「きれいなリボンでしたから、もったいなくて拾ってきてしまいました」
「…これは私のです。余計なお世話してないで、早くお行きなさい」
「やっぱりそうでしたか!では、今度こそ失礼しま〜す!」
明るく走っていく加山。黙り、リボンを見つめるすみれ。
★ ★
荒鷹を振り回すさくら。よけ続ける大神達。
「さくら君、頼む!少しでいいから、俺達の話を聞いてくれ…!!」
「うるさい、うるさい、うるさあああいっ!!」
「〜〜いい加減にしなさい、さくら!正気に戻らないと本気で撃つわよ!?」
「〜〜邪魔をするなあああっ!!」
マリアに飛びかかるさくら。構えるマリア。
「マ、マリアはん、あかん――!!」
さくらを押さえ込む大神。
「皆、さくら君のイヤリングを外してくれ!それのせいで操られてるんだ」
「よし、わかった!」
近づくカンナと紅蘭だが、荒鷹を振り回すさくらに近づけず。
「これは大神さんからもらった大事なものなのっ!!誰にも渡さない…っ!!」
「せやからぁ、そこから変なんが出てるんやてぇ!」
「さくら君、また新しいの買ってやるから!な?」
「〜〜いや〜っ!!私はこれがいいの〜っ!!」
さらに霊力を放出するさくら。耐える大神とマリア達。
「〜〜な、なんて力だ…!?」
「…もういいわ、あなたに罪はないけど…!」
銃を構えるマリア。
「マリア、やめろ――!!」
「――胡蝶の舞!!」
炎に怯むさくら。長刀でさくらのイヤリングを斬り、破壊するすみれ。
「すみれ君…!」
「まったく…、私がいないとからっきし駄目ですのね」
「イヤリング〜っ!!私のイヤリ――あれ?私、こんな所で何を…?」
光武から降りる大神とマリア達。
「〜〜はぁ…、やっと正気に戻ったかぁ…」
「あら?皆さん、光武なんかに乗ってどうしたんです?」
「…誰のせいでこんなことになったと思ってるの?」
鋭く睨むマリアにビビるさくら。
「すまなかった。君に買ってあげたイヤリングは敵の罠だったんだよ」
「えぇっ!?そ、そうだったんですか!?」
「米田司令から事情は伺いましてよ。まったく、敵の策略にまんまとはまるだなんて、さすがは小川少尉と田舎娘ですこと」
「ムッ!田舎なのは関係ないと思いますっ!!」
「すまなかった…。今回は俺の責任だ…」
「ま、ええやないの!後は親玉をぶっつぶすだけやし」
「すみれもなんだかんだ言って、さくらのことが心配だったんだなぁ!」
「〜〜わっ、私は別に!ただ暇で何もすることがありませんでしたから…」
「はいはい、そういうことにしといてやるよ!あっはははは!」
「〜〜き〜っ!!カンナさんのくせに生意気ですわっ!!」
「そうだったんですか!ありがとうございました、すみれさん!」
微笑むさくら。赤くなって照れるすみれ。
「〜〜で、ですから、私は別に…」
翔鯨丸から椿の声。
「さくらさぁん、早く光武に搭乗して下さぁい!」
「あ、は〜い!わかりましたぁ!」
「よし、では皆揃ったところで天海を倒そう!今の俺達なら絶対大丈夫だ」
手を重ね合う大神と花組。嫌がるマリアを引っ張る紅蘭。
「ほらほら、マリアはんも!」
「〜〜な、何で私まで…」
「――帝国華撃団、出撃!親玉の天海を叩きのめすぞ!!」
「おーっ!!」
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