★7−4★
九段下。暴れる脇侍達。逃げる人々。高笑いする天海。
「人間どもの何と無力なことか!所詮殺人兵器に敵いはせぬ!」
地脈ポイントに降り立つ天海。
「ここか…。――むんっ!!」
地脈ポイントに力を送る天海。楔が黒く光り、魔力を発する。息が切れる。
「ちときついわい…。だが、これで本来の魔力を発揮するはずじゃ…!」
「――そこまでよ!!」
「何…!?」
見上げる天海。翔鯨丸から降り立つあやめとさくら達の光武。
「帝国華撃団、参上!」
「来たか、帝国華撃退団!ん…?ふふ、今日は白いのはいないのか?」
「だったら何ですの?楽勝、とでも言いたいおつもり?」
「ふふふ…、小娘達だけで何ができる!現に我はすでに一仕事終えた。後はお前らの死に顔を拝ませてもらうだけなのでのぅ」
「この間、散々ここで暴れたでしょう?まだ物足りないの?」
「ふん、敵に情報を与える馬鹿がいるか!脇侍ども、小娘どもを葬り去れ!!」
地中から出現する脇侍達。
「〜〜何の罪もない脇侍達を操って…!許さへんで、天海!!」
「ふははは…!!やってしまえいっ!!」
襲ってくる脇侍達。
「行くわよ、皆!各自、周囲の脇侍を撃破して!!」
「了解!」
「いっくよ〜!え〜いっ!!」
黄色い光で攻撃するアイリス。ショートし、倒れて動かなくなる脇侍達。
「行きます!たあああっ!!」
斬るさくら。背後から斬りかかる脇侍を撃つマリア。
「背後にも気をつけなさい」
「あ、す、すみません…!」
背後にいる脇侍達を撃つマリア。
「私の後ろには立たせないわ…!」
「きええええいっ!!」
長刀で脇侍を貫くすみれ。囲まれる。
「無駄ですわ!神崎風塵流・胡蝶の舞!!」
炎で焼かれる周囲の脇侍達。
「てやあっ!!どりゃああっ!!」
「はっ!!たあああっ!!」
空手と合気道で倒すカンナとあやめ。
「へへ、さすがだな、あやめさん!」
「ありがとう。今度、手合わせお願いできる?」
「お、嬉しいねぇ!んじゃ、ちゃっちゃと終わらせようぜ!」
「OK!」
倒されていく脇侍達を見つめる紅蘭。
「待っててや。今、解放してやるさかいな…!」
爆弾を投げつける紅蘭。破壊される脇侍達。
「……カンニンやで…」
モニターで見ている大神。
(さすがはあやめさん!無駄のない指揮と情報伝達…、俺も見習わないと)
風組のモニターが赤く点滅。
「脇侍生産装置、発見しました!橋の根元です!」
「わかったわ!紅蘭、頼んだわよ!」
「了解や!」
爆弾を投げる紅蘭。装置が爆破。動かなくなる脇侍達。
「〜〜ぬぅ…!おのれぇ…」
「――天海様」
現れる叉丹。体を震わせるあやめ。
「あやめさん…?」
「助太刀に参りました。ここはぜひ私めに」
「よかろう。楽しませてくれよ」
「かしこまりました」
神威を出現させ、搭乗する叉丹。
「へっ、懲りもせずまた来やがったぜ!」
「またこてんぱんにして差し上げますわ!」
飛びかかるカンナとすみれ。剣圧で吹き飛ばされる。
「〜〜な…っ!?うわあああっ!!」
「きゃあああっ!!」
「すみれ!!カンナ!!」
「〜〜な、何なんだ…?この前とは比べ物にならねぇ強さだぜ…」
「妖気の高まりもものすごいですわ…。〜〜これは一体…!?」
「愚か者め。前回は貴様達の実力をはかったまでだ」
剣圧に巻き込まれる。吹き飛ばされ、気絶するカンナとすみれ。
「カンナさん!!すみれさん!!」
「〜〜よくも…!スネグーラチカ!!」
氷の精霊を放つマリア。薙ぎ払い、腕に剣を刺して投げ飛ばす叉丹。
「うあああああっ!!」
落ち、気絶するマリア。
「マリアーっ!!」
「〜〜こ、こりゃまずいぞ…」
「あやめさん!早く撤退を!!」
「〜〜あ…、あ…」
「何してるんですか!?早く――」
揺れる轟雷号。周りで脇侍達が揺らす。
「いや〜ん!何々ぃ!?」
「脇侍が…!?」
「〜〜そんな!確かに装置は壊したのに…!!」
「ふふ…、こんな戦闘マシーン、再生させるのは造作もないことだ」
脇侍の目が黒く光る。
「な、何すんねん!?なしてこの子達を利用するんや!?機械を巻き込むなっ!!」
「――黙れ」
黒い衝撃弾が紅蘭にあたり、吹き飛ばされる。
「うわああああっ!!」
「紅蘭っ!!〜〜待ってて、今回復して――」
脇侍達に囲まれ、攻撃されるアイリス。
「きゃああーっ!!」
「アイリス…!!〜〜もう…もうやめてんかああっ!!」
気絶し、倒れるアイリス。
「ほぉ、やりおるな、叉丹」
「もったいないお言葉です」
「〜〜くそ…っ!司令、俺も出撃します!!」
「落ちつけ!!病人一人加わったところで何になる!?」
「〜〜しかし…!」
「――あの子達を信じるんだろ?」
拳を握る大神。脇侍達と戦うさくらとあやめ。
「〜〜ど、どうして…!?いつもより格段に強い…!」
叉丹を見るあやめ。不気味に笑う叉丹。蒸気だけ出て動かない紅蘭の光武。
「お願いや、動いてくれ…!〜〜このままやと皆…」
脇侍達にやられるさくら。
「きゃああーっ!!」
「さくら…!!〜〜はあああっ!!やああっ!!」
脇侍達を斬り、さくらを助けるあやめ。
「大丈夫!?」
「す、すみません、助かりました…!」
「ふっ、さすがは藤枝の巫女。霊力も実力も遥かに上か…」
あやめに斬りかかる叉丹。剣で防ぐあやめ。
「私を斬ってみろ。憎き悪の幹部だぞ?」
「〜〜く…っ」
離れ、叉丹に銃口を向けるあやめ。
「くく、どうした?早く撃て。今が好機だぞ?」
「〜〜く…う…うぅ…」
「あやめさん、どうしたんだ…?」
銃を持つ手が震えるあやめ。あやめと叉丹のキスを思い出し、俯くかすみ。黙る米田。近づき、銃を払う叉丹。銃が地面を滑り、叉丹に踏まれる。
「〜〜あ…あぁ…」
「お前に私は撃てまい。地獄で運命を呪え…!!」
あやめを剣圧で飛ばす叉丹。
「きゃあああーっ!!」
「あやめさんっ!!」
「〜〜ちょびっとでええんや…!うちに…うちに力を貸してくれ…!」
呪文を唱え、魔法陣から衝撃波を出す叉丹。
「きゃあああああっ!!」「きゃあああああっ!!」
外に投げ出されて倒れるさくらとあやめ。
「あやめさん!!さくら君!!」
剣を突きつける叉丹。さくらを抱き寄せ、睨むあやめ。
「貴様達の実力はその程度か?片腹痛いな」
「〜〜く…っ」
「いかが致しますか?天海様」
「皆殺しにせよ。これ以上、我の野望を邪魔できぬようにな」
「…だそうだ。どうだ?みっともなく命乞いでもしてみるか?」
「〜〜そんなこと…、するもんかああっ!!」
斬りかかるさくら。
「ふん、無駄なあがきを」
防ぎ、反撃する叉丹。防ぎ続けるさくら。
「さくら…!〜〜う…っ」
肩を押さえるあやめ。刃に傷がつく霊剣荒鷹。驚くさくら。
「勝負あったな」
薙ぎ払われ、地面に刺さる荒鷹。
「〜〜さくらはんっ!!」
「まずは貴様から葬ってくれよう。――さらばだ、真宮寺の娘」
衝撃波を飛ばす叉丹。身構えるさくら。叫ぶ大神。
「〜〜やめろおおおっ!!」
さくらをかばうあやめ。
「きゃあああああ…!!」
「あぁ…っ!?」
「あ、あやめさんっ!!」
倒れこむあやめを抱きかかえるさくら。
「〜〜あやめさんっ!!しっかりして下さい…!!」
「う…、け…、怪我は…ない…?」
「私は無事です…!」
「よか…った……」
気絶するあやめ。紅蘭の涙が操縦装置に落ちる。緑に光る紅蘭の光武。
「ふん、愚かな女だ。そんなに部下が大切か」
倒れている光武達を見るさくら。気絶している隊員達とあやめ。
「……許さない…、〜〜絶対に許さないっ!!」
「お前一人で何ができる?おとなしく負けを――」
緑に光る紅蘭の光武が立っている。
「〜〜な…、何…!?」
「――黒之巣会、お前らだけは絶対に許さへんで…!?」
他の光武もそれぞれの色に光る。意識を取り戻し、驚くマリア、アイリス、すみれ、カンナ。さくらの光武が自然に動き、さくらに手を差し伸べる。あやめの光武があやめを抱きかかえる。意識を取り戻すあやめ。
「こ、これは…!」
「〜〜て…っ、鉄くずが勝手に動いただと…!?」
「そうか!皆、光武と心を一つにするんだ!俺達が光武を信頼し、正義を貫けば光武も応えてくれるはず…いや、応えてくれるのを待ってるんだ!」
「そうや…。光武はただの機械やない。ちゃんと心を持っとるんや!うちらの正義の心にちゃんと応えてくれるんや!!」
並び、それぞれの色の霊力を放出。
「この私に傷をつけるなんて、よくもやってくれましたわね!?」
「このおとしまえ、きっちりつけさせてもらうわ!!」
「あたい達をみくびると、後悔するぜ!?」
「アイリス、もう怒ったんだからーっ!!」
「皆さん…!――あ…」
光武の手がさくらとあやめを操縦席へ戻す。頷き合うさくらとあやめ。
「皆、光武と心を共鳴させるのよ!」
「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」
目を閉じる花組とあやめ。
(――感じる…。これが光武のほんまの力なんや…!)
各々の色の霊力が大量に放出。止まる脇侍達。霊力に飲まれる叉丹と天海。
「そ、そんな馬鹿な…!?〜〜ぐ…っ!!」
「ぐおおおおっ!!〜〜い、いったん退くぞ…!」
瞬間移動する天海と叉丹。
「す、すごい…」
「あれが…花組さんと光武の本当の力…」
「皆…!」
ふらつきながら、駆け寄る大神。降りて、大神に駆け寄るさくら達。
「大神はーん!」
「皆、よく頑張ったな!あやめさんもお疲れ様でした!」
「いいえ、これも大神君と光武のおかげよ。そうよね?紅蘭」
「はいな!」
「すごい力だわ。あれだけダメージを受けたのに、嘘みたいに動けるもの」
「でも、一応手当てを受けた方がいいよ。早く医務室に…〜〜あ…れ…?」
ふらつき、座り込む大神。
「〜〜きゃ〜っ!!お兄ちゃ〜ん!!」
「まったく、病人はおとなしくしてて下さいな」
「はは、これで皆仲良く医務室行きだな!」
笑う花組。大神に手を差し伸べる紅蘭。
「ごめんな、うちのせいで…。でも、一晩中そばにいてくれて、ほんまは嬉しかったんやで?」
「紅蘭…」
「おわびに機械の話をぎょうさんしてやるわ!ベッドの上で退屈せんようにな!」
「はは、ありがとう」
微笑むあやめ、暗い顔で荒鷹を拾うさくらを見つける。
「さくら…?」
刃がぼろぼろの荒鷹をなでるさくら。駆け寄り、連れてくるカンナ。
「何してんだよぉ!早くいつものあれ、やろうぜ!」
「え…?…は、はい!そうですね!」
「よし、じゃあ、今回は紅蘭、頼むよ!」
「よっしゃ、任せとき!ほな、勝利のポーズ…決めっ!」
ポーズを決める花組を撮るジャンポール。笑って皆と喋るさくらを見つめるあやめ。
★ ★
格納庫。新しい装置の設計図を見て、ため息つく紅蘭。
「――紅蘭…」
振り返る紅蘭。大神とすみれ達が立っている。
「どないしたんや、皆そろって…?稽古の時間やろ?」
「その…、これを…」
すみれから設計図を受け取り、広げて見る紅蘭。
「人体浮遊装置の設計図…!もしかして、すみれはんが考えはったん!?」
「あれから、皆で考えたんだ。西遊記だけじゃなく、他の公演でも使える装置を作るにはどうしたらいいかってね。発案者はすみれ君なんだけどさ」
「ご、誤解なさらないで!一刻も早く装置を作って頂きたいだけですわ!」
「へへ、照れんなって!」
「〜〜照れてませんっ!!」
「今回の件で、私達も色々考えさせられたわ。機械は道具じゃない、心を持った私達のパートナーなんだって」
「大事に使えば、きっと装置さんも喜んでくれるよね!」
「みなはん…、ほんまおおきにやで!よっしゃあ!早速、製作に取り掛かりますわ!もう日にちも少ないしな!」
「俺達も何か手伝えないかい?」
「せやなぁ…。ほんなら、大神はんとカンナはんはこれをあそこに運んで、マリアはんとすみれはんは――」
遠くから見て微笑むあやめ。顔を上げ、辺りを見る大神。
「ん?そういえば、さくら君は…?」
廊下を歩き、テラスでさくらを見つけるあやめ。
「さくら…?――!」
荒鷹を抱きしめ、泣くさくら。荒鷹の入った袋が涙で染みができる。
★ ★
仙台・真宮寺家。気配を察し、顔を上げる若菜。
「おばあ様…」
「うむ…。遂に来たか…」
襖を開け、一馬の仏壇の前で合掌する桂。
「一馬、いよいよじゃぞ…。……果たして…どうなることやら…?」
一馬の写真を見て、俯く若菜。微笑む写真の一馬。ろうそくの炎が揺れる。
第7話、終わり
次回予告
大神さん、なぜお父様は命がけで帝都を守ったのでしょう?
私に流れるこの破邪の血…、一体何の為に授けられたのでしょうか…?
――お母さまからお電話?――えぇっ!?私が大神さんとぉっ!?
次回、サクラ大戦『父と娘と』!太正桜に浪漫の嵐!
さくら、仙台に参ります!
第8話へ
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