★7−2★



格納庫。煙が充満。すすだらけになり、咳き込む整備服の紅蘭。

「げほっ、ごほっ!〜〜あぁ…、またやってもうたぁ…」

やってくる大神とあやめ。

「やっぱり紅蘭だったのね…」

「紅蘭…!ランチに行ってるんじゃなかったのか?」

「あー、そのつもりやったんやけど、装置だけは完成しときたくてな」

「へぇ、これが人体を浮遊させる装置か…!なるほど、ここにワイヤーをかけるわけだね」

「せや。もう少しで完成やったんやけど、配線間違えてしもうた…。どうもうまくいかへんなぁ…」


苦笑し、修理する紅蘭。ハンカチで紅蘭のすすを拭くあやめ。

「ハハ…、おおきに、あやめはん」

「何か手伝えることはある?」

「気持ちだけ受け取っときますわ。この子ら機械に命を吹き込むのが、うちの仕事やさかいな」

「機械に命を…?」

「せや、機械も人間と同じや。手間暇かけて大事にこの子らを作ろう、大切な人に喜んでもらおう思たら、自然と心の温かい、優しい機械になるんよ。設計思想いうやっちゃ」

「設計思想…?」

「発明家がこういう機械になってくれって願いを込めて設計することよ」

「さすがはあやめはん!物知りやなぁ」

「えぇ…。昔、よく聞いた言葉だから…」


光武を見つめるあやめ。首を傾げる大神。光武に触れる紅蘭。

「この光武もそうやで。帝都の平和を守る為に、一生懸命うちら人間に協力してくれとる!ほんま強くて、優しい子らや…!」

「きっと、光武を設計した人も心の優しい人だったんだろうね」

「ほんまになぁ!見てみぃ!ここにその人の言葉が残っとるんや!」


光武の設計図を大神に見せる紅蘭。目を伏せるあやめ。

「山崎真之介…?」

「せや!この言葉『光武が人間を幸せにする機械になりますように』…。胸にジーンとくるやろ?」

「あぁ。素敵な言葉だね!」

「――山崎さんは…」

「え?」

「陸軍の少佐だったの。本当に素敵な方よ…」

「あやめはん、会ったことあるんか!?」

「昔…、私が少尉の頃、少しだけお世話になったわ…」

「そうやったんかぁ!やっぱり素晴らしいお方なんやね、山崎はんて…!」


光武の設計図を抱きしめる紅蘭。うつむくあやめを見つめる大神。

(――山崎真之介って…、どこかで聞いたような…)

警報音。

「九段下に脇侍が大量発生した!至急、作戦司令室に集まってくれ!!」

「〜〜ど、どないするんや…!?みーんな出かけてはるで!?」

「仕方ない…。とりあえず俺達だけで行こう!」

「そうね…!」


★               ★


ダストシュートに飛び込み、戦闘服と軍服になって着地する三人。

「大神一郎、李紅蘭、藤枝少佐、到着致しました!」

「うむ、ご苦労」

「状況はどうですか?」

「脇侍どもが暴れて、被害が拡大しとるよ。まぁ、数は少ねーから、そんなに厄介じゃなさそうなんだが…」

「戦力不足…ですね?」

「花組どころか風組までいやしねぇ。おちおち昼飯も食ってられねぇな」

「とりあえず、俺と紅蘭で出撃します!」

「そうね。私もさくら達に連絡を取ったら、加勢するわ。一人でも多い方が心強いでしょ?」

「よろしくお願いします!」


脇侍が暴れるモニターを見つめる紅蘭。

「どうかしたのかい?」

「…何でもあらへん。――うっしゃあ!いっちょやったるで、大神はん!」

「よし!帝国華撃団、出撃せよ!場所は九段下、脇侍を殲滅するんだ!!」

「了解や!」


★               ★

「〜〜って、徒歩かいな!」

光武に乗って街中を歩く大神と紅蘭。応援する市民達に笑顔で応える二人。

「仕方ないだろ?風組の皆は今頃ランチだし…。〜〜ふぅ…」

ふらつく大神。

「大丈夫か!?やっぱ、その体調じゃ無理とちゃう…?」

「だ、大丈夫だ…。それより、早く現場に向かわないと…」


クラクション。大神と紅蘭の前にスライディングしてくるトラック。運転手に変装した加山がくわえたばこでウィンク。

「よぉ、お二人さん!物騒な格好でデートだねぇ」

「〜〜だ、誰や、あんた?」

「〜〜お、お前は、かや――」

「さー、乗った乗った!」


クレーンで光武を荷台に積み上げ、発車する加山。

「どこまで行くの?ん、九段下ぁ?そいつぁついてるな!ちょうど俺っちも行くとこなんだぜい!」

「加山…!お前何を――!?」

「さー、飛ばしていくぜ〜!!しっかりつかまってな!!」


アクセル全開する加山。転びそうになりながら、つかまる大神と紅蘭。

「し、知り合いかぁ?」

「あ、あぁ。士官学校時代の親友なんだが…。〜〜あいつ、転職したのか?」


無線で戦闘服のあやめと連絡を取る加山。

「こちら、加山!大神と紅蘭、搭乗完了しました!」

「ご苦労様!今から私も向かうわ。チップは期待しててね!」

「お、嬉しいこと言ってくれますねぇ。やっぱ美人は気立ても良くなくちゃ!」

「では司令、私も出撃します!」

「よし。期待してるぞ、あやめ君!」

「はっ!藤枝あやめ、参ります!」


米田に敬礼するあやめ。

★               ★


九段下。暴れる脇侍。逃げる人々。屋台の上に座り、見下ろすミロク。

「馬鹿な人間どもだねぇ。帝都はもうすぐ崩壊するっていうのにさぁ」

瞬間移動し、石碑の前に立つミロク。

「憎たらしいほど高い妖力…。ここだね?」

飛び上がって扇子で石碑を斬る。真っ二つに割れ、中から封印石出現。

「オンキリキリバサラウンバッタ、オンキリキリバサラウンバッタ…!!」

封印石が黒く光り、楔になって、地中へ消える。

「ふふっ、はい、完了!」

「――そこまでだ!!」


振り向くミロク。トラックの荷台から大神、紅蘭の、扉からあやめの光武が飛び降りる。

「帝国華撃団、参上!」

「来たね?…ん?ひのふのみぃ…。何だい、今日はちと寂しいねぇ」

「へーんだ!あんたなんかうちらだけで十分や!」

「ふん、黒之巣会も随分なめられたもんだねぇ。痛ぶりがいがあんまりないけど、これで勘弁してやるよ!」


地中から大量の脇侍が出現。

「俺が陣形を乱します!あやめさんは右側の、紅蘭は左側の脇侍を一掃して下さい!!」

「了解!」

「やっておしまい、脇侍ども!!」


襲いかかる脇侍達。突っ込み、斬っていく大神。

「うおおおおっ!!狼虎滅却・千変万化!!」

爆発していく脇侍達。眉を顰める紅蘭。

「陣形が乱れたわ!行くわよ、紅蘭!」

「あ…、りょ、了解や!」


銃を放ち、剣で斬るあやめ。爆弾を撃つ紅蘭、壊れる脇侍を寂しく見る。

(――何で機械同士、壊しあわなあかんのやろ…?この脇侍らかて、壊される為に作りだされたんとちゃうやろに…)

背後から紅蘭に斬りかかる脇侍。殺気で振り返る紅蘭。

「〜〜しもた…!!」

大神が刀で受け止めてかばい、脇侍を斬る。

「大丈夫か!?」

「お、おおきに…」

「どうしたの?戦闘に集中しなさい!」

「〜〜す、すんまへん…」


地中から脇侍が追加。

「〜〜くそ、新手か…!」

倒していく三人。息が荒くなり、ふらつく大神。

「大神君…!」

「大丈夫です。少し息が切れただけで…」

「無理してはだめよ。まだ熱が高いんだから…」

「すみません…。〜〜くっ、やはり生産装置を見つけて、壊さないとだめか…。かすみ君達がいればな…」

「うち、調べてみるわ。ちょっとだけ時間稼いでくれるか?」

「できるのか?」

「任せとき!自分で言うのも何やけど、機械のスペシャリストやで!?」

「頼んだわよ。なるべく私達で脇侍を近づけさせないようにするから」

「了解や!」

「はあああっ!!」

「てりゃあああっ!!」


脇侍を斬る大神とあやめ。斬られていく脇侍達を見ながら、調べる紅蘭。

「〜〜待っててや。これ以上無駄死にさせへんからな…!」

モニターで見ている米田。がらんとしている作戦司令室を見渡す。

「むぅ…、やはり三人じゃきついか…。〜〜はぁ…。こんな所に一人きりってーのも嫌な感じだな…」

息を切らし、背中合わせになる大神とあやめ。

「はぁはぁ…、大丈夫…?」

「はい…。はぁはぁ…、まだ…やれます…!」

「しぶといねぇ。でも、私が出るまでもなさそうだね」


指を鳴らすミロク。さらに増える脇侍。

「〜〜く…っ、紅蘭、何かわかったか!?」

「待ってや、もう少しで…」


紅蘭機のモニターに反応。木の下に赤い点が点滅。

「反応あり…!木の下や!あのでかい木の根元を狙うんや!!」

「よくやった!うおおおおっ!!」


突進する大神。周りの脇侍達を斬って撃っていくあやめ。

「雑魚は任せて、早く装置を…!」

「ありがとうございます!――狼虎滅却・快刀乱麻!!」


剣圧が地中にのめりこみ、装置を破壊。動かなくなる脇侍達。

「よかった…。これでもう悪事に使われへんね」

「ちっ、生意気な奴らだねぇ…!」


呪文を唱えるミロク。動かなくなった脇侍が合体。

「あぁ…っ!?」

「お前達相手に孔雀は必要ないよ。せいぜいこいつと戯れてるんだねぇ!」


消えるミロク。

「とりあえず一気に攻めましょう!合体しても弱点は同じはずです!」

「えぇ!三人でかかれば、きっと勝てるわ!」


巨大脇侍に斬りかかる大神とあやめ。戦いを呆然と見る紅蘭。

(何でや…?〜〜せっかく戦いから解放されたのに…。もう悪事には利用されずに…おとなしく眠れるはずやったのに…)

「紅蘭、何してる!?君も戦うんだ!!」

「あ…、す、すんまへん…!」


巨大脇侍に狙いを定める紅蘭。指を震わせる。

(〜〜何でこんなひどいことするんや…?脇侍かて立派な機械やのに…)

爆弾を放つが、あやめに当たる。倒れるあやめ。

「きゃあああっ!!」

「あぁ…っ!」

「あやめさん!!大丈夫ですか!?」

「う…、え、えぇ…」

「何してるんだ!?しっかり狙え!!」

「〜〜す、すんまへん…!〜〜あ…!!」


紅蘭に刀を振り下ろす巨大脇侍。

「紅蘭…っ!!」

アイリスが紅蘭を連れてテレポート。刀が地面にめり込む。

「アイリス…!」

「えへへ〜!皆、おいで〜!」


飛び降りて着地するさくら、すみれ、マリア、カンナの光武。

「遅ればせながら、帝国華撃団・花組、参上!」

「よかった、間に合ったのね…!」

「遅れて申し訳ありません。カンナが大食い記録に挑戦していたもので…」

「へへ!おかげで腹と財布が満たされたぜ!やる気満々だぁ!!」

「ふん、これだからゴリラ女は…」

「大神さぁん!私達もいますよぉ!」


モニターで手を振る椿と由里。

「楽しんだ分、頑張っちゃいますよ!」

「巨大脇侍の弱点は胸の核です!そこを集中攻撃して下さい!」

「ありがとう!よし、一気に形勢逆転するぞ!帝国華撃団、出撃!」

「了解!」


向かっていくさくら達。

「破邪剣征・桜花放神!!」

尻もちをつく巨大脇侍。

「いっくぜぇ!おりゃおりゃおりゃーっ!!」

核を殴り続けるカンナ。振り下ろす脇侍の刀をすみれが長刀で受け止める。

「邪魔ですわ!神崎風塵流・胡蝶の舞!!」

脇侍の片腕が焼け、落ちる。銃で脇侍の顔を爆発させるマリア。寂しく見る紅蘭。

「あやめお姉ちゃん、大丈夫!?イリス・マリオネーット!!」

ジャンポールのナースがあやめ機を回復。

「ありがとう、アイリス。――行くわよ、大神君!」

「了解!」


走って同時に飛び上がる大神とあやめ。どくカンナ。

「頼んだぜ、お二人さん!」

「はあああああっ!!」「はあああああっ!!」


核を斬る大神とあやめ。核が割れ、動かなくなる脇侍。

「ふぅ、これでもう安心ですね!」

「しっかし、バカでかい奴だなぁ…。何tあるんだ?」

「脇侍界のカンナさんですわね」


言い争うカンナとすみれに笑う大神達。うつむく紅蘭。

「紅蘭、どうしたの?」

巨大脇侍をなでる紅蘭。脇侍の目が光り、紅蘭に向って刀を振り下ろす。

「紅蘭っ!!」

紅蘭をかばう大神。大神の光武から大量の火花が散る。

「光武が…!!〜〜くそ…っ!まだ動けたとは…」

「隊長、一気に破壊して下さい!」

「〜〜あかん!今、光武に無茶させたら、動かなくなってまう…!!」

「え…?」


刀を大神に振り下ろす巨大脇侍。

「〜〜しまった…!」

「伏せて下さい!!スネグーラチカ!!」

「おとなしくおねんねしなさい!はああああっ!!」


凍った巨大脇侍を斬るさくら。氷ごとバラバラになる。

「〜〜あ、あぁ…」

「これで大丈夫でしょう…!動かないように念を送っときます…!」


熱心にハンドパワーするさくら。脇侍の破片を拾う紅蘭。

「心配しなくても大丈夫よ。もうこいつは二度と動かないから」

「〜〜カンニンやで…」

「え…?」

「さくらぁ、紅蘭〜、早くおいでよ!勝利のポーズ、やるよー!」

「あ、はーい!」

「いっくよ〜!勝利のポーズ…決めっ!」


ポーズを決める花組を撮るジャンポール。紅蘭は暗く。

「何してんだよ?ちゃんと決めなきゃ、勝利の快感、味わえねぇじゃんか」

「……すんまへん。少し…疲れましてん…」


とぼとぼ去っていく紅蘭。

「どうしたんでしょうか…?」

「変な紅蘭〜」


心配で顔を見合わせる大神とあやめ。歩きながら泣く紅蘭。

★               ★


医務室で蒸気体温計を測る大神。

「9度4分か…。あー、このまま寝てたい…。頼むから、今は誰も――」

「大神さん、大変ですっ!!」


勢いよくドアを開けるさくら。ため息つき、寝返りを打つ大神。

「呑気に寝てる場合じゃないんですよ!!紅蘭が…!紅蘭が大変なんです!!」

「え…?」


★               ★


格納庫にさくらに連れられて入る大神。光武に閉じこもっている紅蘭。

「あの後、ずっと光武に閉じこもったまま出てこないんです…」

「え…?どうしたんだ、紅蘭?」


黙って体育座りで泣く紅蘭。

「誤射したことを悔やんでるのか?それなら大丈夫だよ。あやめさんの怪我も大したことなかったし――」

「…うるさいねん。もう放っといてんか」

「紅蘭…?」

「さっきから、ずっとあんな感じなんです。何を言っても駄目で…」

「そうか…。一体どうしたんだ…?」


大神の袖を引っ張るアイリス。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん、アイリス達に任せて!」

笑顔で来るアイリス、すみれ、カンナ。肉まんを袋ごと抱えているカンナ。

「ほらほら、紅蘭、見ろよ!木村屋の肉まん、買ってきたぞー!」

「お、なるほど!天の岩戸作戦だな!」

「あまのいわと…?どなたですか?」

「はは、違う違う。日本の神話だよ。へそを曲げた天照大神という女神が洞窟に閉じこもり、大きな岩の扉を閉めてしまったんだ。その女神は太陽を司っていたから、世界に昼が来なくなり、ずっと夜になってしまった。困った他の神達は協力して、洞窟の外でお祭りをして騒いだんだ。最初は意地を張っていた天照大神も外があまりに楽しそうで、つい覗いてみた。その隙に他の神達は彼女を引っ張り出し、昼を取り戻したっていう話さ」

「へぇ…!さすがは大神さん、何でもご存知なんですねぇ!」

「それほどでもないよ。そうだ、俺達も何かやろうか!」

「あ、良いこと思いつきました!」

「――知ってるか?皮はもちもちだし、肉もジューシーですっげぇうまいんだぜ!ほら、出て来て一緒に食おうよ!な?」

「…いらん」

「んなこと言うなよ!ほら、出来たてホカホカだぞ〜!」

「いらん言うてるやろ…?」

「ありゃ…」

「本当にお馬鹿ですわねぇ。紅蘭が肉まんごときで喜ぶとお思い?」

「ケッ!じゃあお前は何かあるのかよ?」

「ふふん、いいから見てらっしゃい。――ほら、紅蘭!あなたが前から欲しがっていた本場アメリカ製の工具ですわよ!」


光武のカメラの前で工具を見せびらかすすみれ。

「ご覧になって!我が神崎重工の力であのエジソン博士にサインも彫らせましたの!いかが?こんな素晴らしい工具、世界に一つしかなくてよ?」

黙っている紅蘭。

「〜〜ちょいと、聞いておりまして!?」

「あー、怒っちゃだめだよ!こういう時はね、これが一番!」


たくさんのぬいぐるみを光武の周りに浮かすアイリス。

「見て見て!お部屋から持ってきたんだよ!皆、アイリスのお友達なの!可愛いでしょ〜?出てきてくれたら、好きなのプレゼントしてあげる!」

黙っている紅蘭。

「むぅ…。かわいいのになぁ…」

「――私達に任せて下さい!」


さくらの姿に驚くアイリス達。はっぴを着たさくらと大神。大太鼓を叩く大神と『ゲキテイ音頭』を歌うさくら。

「どこから引っ張り出してきたのやら…?これだから庶民は…」

「う〜!何か楽しそうだぜ!あたいも混ぜろ〜!!」

「アイリスも〜!!」

「はぁ?おほほ…、あんな低俗なダンス、よく恥ずかしくありませんわねぇ。まぁ、所詮私は庶民とは格が…」


楽しく歌って踊るさくら達を黙って見るすみれ。

「……ゴホン、た、たまには庶民の娯楽もいいかもしれませんわねぇ…」

一緒に踊り始めるすみれ。やってきて驚くマリア。

「〜〜な、何やってるの、あなた達!?」

「あ、マリアさん!一緒にいかがですか?天の岩戸作戦ですー!」

「やめなさい!今は深夜よ!?ご近所に迷惑でしょう!?」

「〜〜あうぅ…、怒られちゃいましたぁ…」

「だから申し上げましたでしょう?まったく、これだから庶民は…」

「けっ、よく言うぜ」

「はぁ…。まったく隊長まで一緒になって…」

「〜〜す、すまない…」

「紅蘭!いい加減にしなさい!!いつまでそうやってるつもりなの!?」


黙っている紅蘭。

「黙ってないで何とか言いなさい!!ハッチ、こじ開けるわよ!?いいわね!?」

「マリア、あまり強引にやらない方が…」

「だからつけあがるんです!甘やかしていては、紅蘭の為になりません!」

「お願い、出てきてよぉ…。紅蘭がそんなんじゃ、アイリス、寂しいよ…」


泣き出すアイリスの頭をなでる大神。

「わけを聞かせてくれないかな?一体何があったんだい?」

黙っている紅蘭。

「いい加減になさらないと、さすがの私も怒りますわよ!?まだ新しい装置もできていないのでしょう!?閉じこもるのは、それを完成させてからにして下さいまし!」

「――そんなんやから…」

「え…?」

「そんなんやから、一度しか使わん装置を平気で作れなんて言えるんや!!戦闘中もそうや!皆、平気で脇侍を倒しとる!機械を何やと思とるんや!?」

「何を言ってるの…?脇侍は敵なのよ!?倒すのは当り前でしょう!?」

「脇侍かて、ただ利用されとるだけや!!悪事に使われなければ、絶対に悪い機械にはならへん!!皆そんな考えやから、平気で機械を傷つけられるんや…!〜〜人間は最低や!機械の方がずっとええ!!〜〜皆、大嫌いや…!!」

「紅蘭…。すまなかった、俺達皆、機械のこと好きになるから!な?」

「うるさいわっ!!〜〜もう誰ともしゃべりとうない!!放っといてぇな!!」

「紅蘭…」

「…行きましょう。今はそっとしておくのが一番よ」

「けどよぉ…」

「朝になってから、もう一度出直しましょう」

「うん…」


出ていく花組。振り返り、紅蘭を見つめるすみれ。

「さ、隊長も…」

「俺はここに残るよ。話を聞いてくれるまで待ってみる」

「そうですか…。すみません、お願いします」


出ていくマリア。紅蘭の光武の隣に座る大神。

「紅蘭、俺はずっとここにいるから、話せるようになったら話してみてくれないか?機械のこと、もっと教えてくれよ」

カメラで大神を見て、嗚咽を漏らす紅蘭。遠くから見て、微笑むあやめ。


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