★7−1★
帝都を走る蒸気鉄道。
『――我々の日常生活に欠かすことのできない蒸気。欧州はイギリスで発見されてからというもの、世界の文明にさらなる飛躍をもたらし、今も発展を遂げています。ここ日本にも蒸気の時代がやってきたのです!』
ラジオを聞きながら、光武を整備する紅蘭。整備服姿。
「――よっし、ここはOKや!後は霊子水晶の微調整やな…。――あ…!?」
光武の傷を見つけ、なでる紅蘭。ミロクとの戦いを回想する。
「そうかぁ。この前はよう戦ってくれたやさかいな…。こないに傷だらけになるまで、うちらを守ってくれて…。ほんま、おおきにやで。待っててな、すぐ直してやるさかい!」
道具を取り出す紅蘭。舞台から破壊音がし、驚く。
「〜〜な、何や!?」
舞台に駆けつける紅蘭。壊されたセットにショック。
「ひ、ひどい…。どないしたんや…?」
「あーん、紅蘭、何とかしてぇ…!」
紅蘭に抱きつくさくら。すみれとカンナが衣裳のまま喧嘩。
「〜〜まったく何度言えばわかりますの!?ここは私の見せ場であり、あなたはただボーッと丸太の如く突っ立っていればよろしいんですのよ!!」
「ここは悟空と妖鬼夫人の立ち回りじゃねーか!!どうせ自分ばっかり目立つ気なんだろ!?魂胆見え見えだぜ!」
「〜〜いい加減にしないか!!こんなんじゃ本番に間に合わないぞ!?」
「少尉は黙ってらっしゃい!!ここは私がトップスタァの意地をかけ、帝劇の歴史に残る名シーンにしたいのです!!邪魔しないで下さる!?」
「トップスタァトップスタァって馬鹿の一つ覚えか!主役はあたい、お前は悪役。どんなに目立とうが、最後は倒される運命なんだよ!なぁ、隊長!?」
「〜〜え、えぇと…」
「き〜っ!!この私を悪役ですってぇっ!?〜〜考えてみればそうですわ…!何故トップスタァの私がこんな妖怪の役をやらねばならないのです!?」
「支配人も良い人選したよな!腹がよじれて笑い死にしそうだぜ!」
「〜〜き〜っ!!カンナさんのくせに生意気ですわ!!」
「何だよ、やるか!?サボテン女!!」
取っ組み合うカンナとすみれ。さらに壊れるセット。ショックな紅蘭。
「やめろ!!今はそんなことでもめてる場合じゃ――」
「〜〜うるさいっ!!」「〜〜うるさいっ!!」
セットの破片が飛んできて、壁にめり込む。青ざめ、腰が抜ける大神。
「〜〜す、すみません…」
「〜〜あ〜もうっ!!お兄ちゃん、情けな〜い!」
「さっきからずっとこんな調子なの…。言うこと全然きいてくれなくて…」
「深川のことで、少しは仲良くなったと思ったんだけどなぁ…」
「そ、そうなんか…」
壊れていくセットを悲しく見つめる紅蘭。
「も〜、何ですぐケンカするかなぁ!?早くやめないと、マリア呼ぶよー!?」
「〜〜一体何の騒ぎ!?」
入ってくるマリアに泣きつくさくらと夢声。
「あうー…、見てのとおりですぅ…」
「マリア君、何とかしてぇ!稽古進まなきゃ、僕が怒られるんだよぉ…」
「なるほど。私が少し席を外していただけでこれですか…。…で、隊長は何をなさってるんです?」
「〜〜いや、あはは…、少し動けなくなって…」
すみれとカンナを引き離すマリア。
「いい加減にしなさい、二人とも!今は稽古中でしょう!?」
まだ騒いで言い合うすみれとカンナ。少し沈黙後、銃を突きつけるマリア。
「――聞こえなかった?」
「〜〜ご、ごめんなさい…」「〜〜ご、ごめんなさい…」
頭を下げ合うすみれとカンナ。
「わぁ、さっすがマリア!」
「本当に惚れ惚れするなぁ!女にしておくのがもったいないよ」
「大丈夫ですか、大神さん?」
「はぁ…。すまない、助かったよ…」
大神を助けるさくら。装置に恐る恐る触れる紅蘭。崩れ、壊れる。
「あ〜あ、壊れちゃった…。誰のせい〜?」
「フン!装置なんてまた作ればよろしいでしょう!?どうせ公演が終わったら、すぐ壊すんですし」
「〜〜そ、そないな言い方――!!」
「あ、どうせ作り直すんならさー、もっと派手な機能にしようぜ!」
「派手な機能?」
「あぁ!例えばワイヤーをくくりつけて、人を宙に飛ばすんだ!そしたら、活劇シーンがもっと派手になるんじゃねぇか!?」
「ちょいとカンナさん!」
カンナに近づき、顔を覗き込んで、微笑むすみれ。
「――たまには良いことおっしゃいますわねぇ!そうですわ!そしたら、こんなダサい立ち回りせずとも、私の美貌と演技がさらに輝きますもの!」
「〜〜ダ、ダサいだなんて…!ぐすっ、ひどいなぁ…」
「でも、グッドアイディアですよね!」
「確かに面白そうね。お客様にも喜んで頂けそうだし」
「わ〜い!アイリスもビューンって飛びた〜い!!」
「決まりだな!頼んだよ、紅蘭。できるだろ?」
「え?ええけど…、その装置、西遊記でしか使わへんのやろ…?」
「あ?まぁ…そうだな」
「一回でも使えれば十分ですわ!頼みましたわよ、紅蘭!セットが壊れるほど派手にして構いませんからね!」
うつむき、拳を震わせる紅蘭。
「…紅蘭?」
「さぁ、新しい装置の案も出ましたし、これで心置きなく稽古に没頭できますわね!おっほほほほ…!」
「けっ、調子の良い奴…」
稽古するさくら達。落ち込んで壊れた装置をなでる紅蘭。見つめる大神。
★ ★
舞台。一人で装置を作る紅蘭。壊れたセットも金槌で修理する。
『――装置なんてまた作ればよろしいでしょう!?どうせ公演が終わったらすぐ壊すんですし』
金槌を打つ手が止まる。
「〜〜壊してええわけないやんか…。この子らを何やと思とるんや…!?」
「――紅蘭…?」
涙目で振り向く紅蘭に懐中電灯の光。驚く大神。涙をぬぐう紅蘭。
「〜〜あー、何や、大神はんか。見回り、ご苦労様ですー」
「紅蘭…」
紅蘭に歩み寄り、工具を出して、一緒に修理し始める大神。
「あ、ええよ?これはうちの仕事やさかい!大神はんも疲れとるんやろ?はよ部屋戻って、休んでくれなはれ」
「でも、一人より二人でやる方が早く終わるだろ?」
「…おおきにな、大神はん。何や、いつも一人でやっとるから、少し照れくさいなぁ」
無理して笑う紅蘭を見つめる大神。
「…何か悩みごとでもあるのかい?」
「え?」
「いや、稽古中ずっと元気ないみたいだったからさ、少し気になって…。俺でよければ話してみてくれないか?」
「そ、そんなことないで?うち、めっさ元気やさかい!もう力が有り余って、新しい発明品作りたいくらいやわ!」
「そ、そうなのかい…?」
「せや!考えすぎやで。うち、なーんも悩みなんてあらへん!明るさと器用さだけが取り柄やしな!アハハハハ…!」
紅蘭を見つめる大神。
「あー、後はこれだけやな!これなら、うち一人で十分や。もう見回り戻ってくれてええで?途中なんやろ?」
「しかし…」
「大丈夫やて!でも、おおきにな。手伝ってもろて、嬉しかったで」
廊下を歩き、考える大神。
(紅蘭…、何だか無理して笑っていたような…。気のせいだろうか…?)
格納庫を懐中電灯で照らす大神。光武が見える。
「完璧に整備してある…。本当に機械が好きなんだな、紅蘭…」
光武に触れる大神。少し蒸気を噴射。立ち去ろうとして振り返る大神。
「今、光武が動いたような…。――気のせいか…」
立ち去る大神。
「地下はこれぐらいかな…。後は大浴場か…。――ん、電気…?」
あやめの和服がかごに置いてある。赤くなる大神。
(〜〜こ、これはあやめさんの…!!もしかして、今入ってるのって…。〜〜あぁ、体が勝手に…!!)
扉をそっと開けて覗く大神。シャワーを浴びるあやめ。真っ赤になる大神。
(あ、あやめさん…!!〜〜だめだ、覗きなんて男として恥ずべきこと…!〜〜あぁ、でも、目が逸らせない…!)
髪をかき上げ、バスタオルを巻くあやめ。
「――鼻血、出てるわよ、大神君?」
「〜〜いぃっ!?」
鼻血を袖で拭く大神。笑顔で顔を出すあやめ。
「こぉら!いつもこんなことやってるの?」
「〜〜と、とんでもありませんっ!!見回りで通りがかったら、たまたまあやめさんの服を発見して…。〜〜す、すみませんでした!!もうしませんっ!!」
土下座する大神。軽くしゃがみ、微笑むあやめ。
「――ねぇ、背中、流してあげましょうか?」
「え…?〜〜えぇ〜っ!?」
背中を流してもらう大神。緊張して背筋伸ばしたまま。
「ふふっ、そんなに緊張しないで。楽にしていてね?」
「は、はぁ…」
鏡越しにあやめを見て、慌てて目を逸らす大神。
「もしかして、女の子の裸見るの、初めて?」
「〜〜はうあっ!?は、はぁ…。〜〜すみません…!つい出来心で…」
「ふふっ、仕方ないわよ、若い男の子ですもの。正常な反応よ」
あやめの胸が背中につく。真っ赤になる大神。
「ねぇ、私のも流してくれる?せっかくの裸のお付き合いですもの」
「〜〜いいっ!?あ、あの、よろしいんですか…?」
「えぇ。ふふ、大神君となら安心してお付き合いできるしね」
どぎまぎとあやめの背中を洗う大神。次第に悲しい表情に。
「……あやめさん…」
「ん?なぁに?」
「俺…、男としての魅力、ありませんか…?」
「え?どうしたの、急に…?〜〜きゃ…っ!?」
あやめを押し倒す大神。
「あなたは俺を男として見ていない…!だから裸を見られても平気なんですよ!」
「大神君、どうしたの…?」
「あなたの目はいつもそうだ…!かわいい部下、仲の良い男友達…、〜〜そんな風でしか俺を見てくれてません…!!」
「大神君…、あ…っ!?」
あやめのバスタオルに手をかける大神。
「俺だって男です!寝る時も毎晩、隣の部屋のあなたを考えてよく眠れません!どんなに真面目ぶっていても、あなたのことを考えると俺は――!!」
ハッと正気に戻り、慌てて離れる大神。
「〜〜す、すみません!!うわ、俺、何て事を…!!しょ、処罰は覚悟の上です!!」
大神の手を握り、自分のバスタオルにかけさせ、微笑むあやめ。
「――いいわよ、あなたになら…」
「え…っ?」
「怖くなった?」
「〜〜い、いえ、あの、そういうわけじゃ…!〜〜うわぁ!?」
あやめに詰め寄られる大神。大神の頬をなでて涙ぐむあやめ。
「どうしてかしらね…?あなたとなら、全て忘れられそうな気がするの…」
「え…?あ、あやめさん…?」
見つめ合う大神とあやめ。あやめを抱きしめようとする大神。桶が落ちる音。振り向く大神とあやめ。さくらが怒りで震えて二人を見ている。
「さ、さくら君っ!?」
「お…、大神さんの…、〜〜大神さんの…」
「〜〜待て!違う!未遂だ!!話せばわかるっ!!」
「〜〜ぶぁかああああああ〜っ!!」
大神に冷水を思い切りかけるさくら。倒れる大神。
★ ★
支配人室。カーテンから朝日。写真立てで叉丹と山崎を思い出す米田。
「――葵叉丹…か…」
銀座の街。かすみが運転する車から風景を見る軍服のあやめ。叉丹を回想。
(〜〜なぜ…、こんなことに…)
霊力が高まる感覚に目を見開くあやめ。
「――止めて!!」
「え…?は、はい!」
急停車。降りて走るあやめ。
(〜〜この感覚は…!)
神社の階段を駆け上がるあやめ。斬られた封印石の前の叉丹を見つける。
「くく…、さすがは藤枝の巫女。霊力の変化ぐらいお見通しか」
「目的は何!?何故帝都を滅ぼそうとしているの!?〜〜だってあなたは…!!」
あやめにキスする叉丹。
「――!!〜〜ん…んぅ…」
抵抗するあやめの腕を掴む叉丹。涙ぐみ、震わせる腕を下げるあやめ。
「副司令――え…!?」
来て驚くかすみ。かすみに気づき、あやめを離す叉丹。
「…残念だが、今日はここまでだ。また会おう、藤枝副司令」
立ち去る叉丹。膝をつき、唇を押さえるあやめ。駆け寄るかすみ。
「ご、ご無事ですか、副司令!?」
「〜〜少…佐…」
「え?」
(唇の感覚…。信じたくない…!〜〜でも…!)
★ ★
劇場に響くくしゃみ。蒸気体温計は38度7分。部屋のベッドで寝る大神。
「8度7分…。〜〜完璧に風邪だな…」
大浴場でのさくらを回想。
「〜〜やっぱりあれか…。はぁ…、参ったなぁ…。〜〜うぅ、寒…!」
蒲団に包まる大神。ノックする音。椿と由里が顔を出す。
「はーい…?」
「お疲れのとこ悪いんですけど、後で伝票まとめといてくれます?」
「私達、これからランチなんですよねぇ〜!」
「伝票ぉ…?ランチぃ…?」
「さくらさん達も一緒なんですよ!ねー、かすみ?」
「え?え、えぇ…」
「すぐ帰ってきますから、お留守番、お願いしますねぇ〜!」
ドアを閉める椿と由里。
「くくく、大神さんってば完全にダウンですねぇ」
「知ってる?何で風邪ひいたか。――副司令との混浴中に良い感じになってたところをさくらさんに見つかって、冷水をザッバ〜ン!」
椿に耳打ちする由里。驚くかすみ。
「きゃ〜!マジですかぁ!?修羅場〜!ってゆーか、大神さんと副司令ってそんな関係だったんですねぇ!」
「びっくりよねぇ!噂じゃ、副司令って行方不明の恋人を想い続けてるって話だったけど…。今時、そんな純愛ないわよね〜?」
「ねぇ〜?絶対新しい彼、見つけますよねぇ〜!」
あやめと叉丹のキスを回想するかすみ。
「ん?どしたの、かすみ?顔色悪いわよ」
「そんなに驚いちゃいましたぁ?」
「え?う、うん、少しね…」
歩いてくる和服のあやめにはしゃぐ椿と由里。
「あら、おめかししてどうしたの?三人でお出かけ?」
「はい〜!ちょっとさくらさん達と煉瓦亭でランチしてきま〜す!」
「副司令、大神さん、苦しそうですよ?こんな時は…、愛の看病が一番!」
「え?」
「じゃ、行ってきま〜す!」
「副司令、ファイトォ〜!」
去り際にあやめを見るかすみ。きょとんとなるあやめ。格納庫で装置を作る紅蘭。立ち上がり、憂鬱な顔で装置を見上げる。
★ ★
「――紅蘭も来られればよかったわね…」
レストランで食事する花組と風組。
「何をおっしゃいますの!?新しい装置が完成してなくて、呑気にランチができて!?この私が許しませんわ!!」
「…何でお前はいつもそう上から目線なんだよ?」
「紅蘭は今回、裏方ですのよ!?裏方は裏方の仕事を全うすべきです!それに大好きな発明に没頭できて、逆に感謝されてもおかしくありませんわ!」
「でも、アイリスだったら、一人ぼっちでお仕事するの、嫌だなぁ…」
「一人じゃないわよ?大神さんもいるもの」
怒ってハンバーグを頬張るさくら。こそこそ話すマリア達。
「…さくら、何怒ってるんだ?」
「そんなの知るわけないでしょう?」
「隊長と何かあったことは確かよね…」
「お兄ちゃんが急にお風邪引いたのも気になるよねぇ…?」
「くくく、知りたいですかぁ?」
「え?知ってるの?」
「ふふっ、情報屋・由里ちゃんをなめないで下さい!」
「〜〜由里!椿!」
「いいじゃん、な、教えてくれよ!」
「うふふ、実はですねぇ…」
ぎろっと睨むさくら。ビビる花組と風組。
「〜〜た、たまには皆でランチも良いですよねぇ〜!」
「〜〜大神さん達に何かお土産買っていきましょうか〜!おほほほ〜…」
フォークをくわえ、頬を膨らますさくら。
「…大神さんのバカ」
★ ★
事務室。厚着して伝票整理しながら、くしゃみする大神。飛ぶ伝票。
「〜〜だめだ…。数字が…ぐるぐる回って…。〜〜何で俺が事務まで…」
頭を振り、集中する大神。
「せっかくのランチだもんな…。皆には楽しんでもらいたいし…。同年代の女の子と同じようなこと、できるチャンスだもんな。〜〜あぁ…、でも数字が…6…?9…?あぁ…、天井が回ってるぅ〜…」
倒れる大神。
(う、動けん…。やばいぞ、こんなことしてる場合じゃ…ないの…に……)
気絶する大神、しばらくして気がつく。ベッドでパジャマで寝ている。
「……ここは…?」
「――気がついた?」
あやめが洗面器を持って入ってくる。
「あ、あやめさん…!?」
「よかった…。事務室で倒れてたから、びっくりしたのよ?頑張るのもいいけど、ほどほどにしなくちゃだめよ」
大神の額に手を当てるあやめ。
「うーん…。まだあまり下がってないみたいね…。今日はゆっくり寝てて。仕事は私がやっておくから」
「そ、そんな!あやめさんの手を煩わせるわけには…〜〜あぁ…」
起き上がるが、倒れこむ大神。
「ふふ、おとなしく寝てなさい。これは私からの命令よ」
「は、はぁ…」
「風邪の時ぐらい誰かに甘えたって罰は当たらないわ。そうでしょ?」
「わかりました…。……あ、あの…」
「ん?」
「昨晩は…すみませんでした。あの…、大浴場で…」
「あ…」
「俺、どうかしてました…。たぶん興奮して、我を失くしてたんだと思います…。〜〜忘れて下さい!本当すみませんでした…」
黙ってうつむくあやめ。
「あやめさん…?〜〜やっぱり嫌でしたよね!俺、本当最低で…」
「――気持ち…」
「え…?」
「大神君の気持ち…、すごく嬉しかった…」
寂しく微笑むあやめ。
「本当に嬉しかったのよ…。〜〜でも…、でもね…」
叉丹とのキスを思い出し、顔を覆って涙を流すあやめ。見つめる大神。
「…喉渇かない?お水、持ってきてあげるわね」
立ち去ろうとしたあやめの腕を掴む大神。驚くあやめ。
「俺じゃ頼りになりませんか?最近元気ないみたいだし…、よければ話して下さい!あやめさんの辛そうな顔見るの、耐えられないんです…」
「い、いやだわ…。そんな風に見える?別に何でもないのよ…?」
後ろからあやめを抱きしめる大神。赤くなって心臓が高鳴るあやめ。
「お、大神…君…?」
「〜〜だ…、だるいぃ〜…」
へなへな突っ伏す大神。拍子抜けするあやめ。
「…もう。無理して起きるからよ?」
布団をかけてやるあやめ。寝言を言う大神。手を止めるあやめ。
「〜〜うぅ…、葵…叉丹…。逃がす…ものか…、覚悟ぉ〜…」
叉丹と山崎を思い出し、うつむくあやめ。爆発音。飛び起きる大神。
「〜〜な、何だぁ!?」
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