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「大神と藤枝姉妹のセクシー旅行記〜ダブル・ハネムーン編〜」

〜3日目・昼
・その2〜



「――へぇ〜、大神さんって男なのに手際が良いんだね」

「はは、雑用は慣れてますから」


初体験のバーベキューだが、仲間で協力して料理するのって楽しいな。帝都に帰ったら、花組も誘って中庭でやってみるか…!

「野菜も焼けたわよー!」

「うん、丁度良い焼き加減だわ。あやめさんってお料理が上手なのね」

「ふふっ、マーサさんの火加減の調整がよかったんですよ。――大神君、味見してくれる?」

「いいですよ」

「熱いから冷ましてあげるわね。ふぅふぅ…」


エプロンをして、ふぅふぅしてくれるあやめさん。絵になるな…♪

「はい、あ〜ん」

「あーん♪もぐもぐ…。――うん、ニンジンの甘みが出てて美味いです!」

「そう、よかった」

「あやめさん、とうもろこしが茹で上がったわよ」

「じゃあ、それも焼き始めましょうか」


あやめさん、マーサさんとすっかり意気投合したみたいだな。楽しそうで何よりだ!

「――ちょっとー?このホタテ、死んでるんじゃないのー?」

「〜〜うわ…っ!?だからって火強くしすぎだっつーの!!」

「ふふ、お姉さんに比べて妹さんは、あまり料理に慣れてないみたいね」

「…ムッ!」


〜〜まずいぞ…。あやめさんとは反対にマーサさんと馬が合わないかえでさんは、マーサさんのジョークにますます不機嫌になってしまった…!!

「〜〜かえでさん!あとは俺がやりますから、盛りつけやってくれませんか!?」

「…どうしてよ?私だって魚介類ぐらい焼けるわ!」

「〜〜いや、…ほら!かえでさんって良いセンスをお持ちじゃないですか!だから、俺達の中で一番綺麗に盛りつけてくれるんじゃないかなと…!」

「あら、ほほほ!それもそうね。私のことをわかってくれるのはあなただけよ、大神君♪」

「〜〜はははは…」


〜〜ホッ、どうにか機嫌を直してくれたか…。

「――なら、私も手伝うわ」

「え?〜〜いや…、いいですよ!マーサさん!!あなたはあやめさんと野菜の方を…!!」

「あら、野菜はあやめさんに任せておけば安心だもの。――魚介類ってね、焼くのにちょっとしたコツがいるの。教えてあげるわね」

「〜〜は、はぁ…」


〜〜参ったな…。これでは、かえでさんの機嫌がまた…。――ゲシッ!!

「〜〜い…ってぇ〜…!!」

「…フン!仲良くザリガニでも焼いてれば?」


案の定、かえでさんは俺のすねを蹴飛ばすと、ふてくされながら皿を取りに行ってしまった…。

〜〜ハァ…、これじゃ何の為に代わったかわからないじゃないか…。かえでさんもあんなに怒らなくてもいいのに――。

「――おい、てめぇ!!俺の牛肉を盗んだだろう!?」

「何を〜っ!?お前こそ、俺んとこのエビを盗んだだろうがっ!!」

「〜〜ここでも喧嘩してる人がいるみたいだね…」

「…ったく、しょうがないねぇ」


強面のカーラさんが目と眉を1時55分の形に吊り上げながら、いきなり鞭を叩いたので、喧嘩中の男達はビクッと振り向いた!

「おい、お前ら!バーベキューは楽しくやるもんだろ?公共の場でルールを守れない奴はケツ蹴り上げて追い出すよ!?」

「へんっ、やれるもんならやってみろ!」

「お前、キュピピ族か?ハハッ、な〜に勝手に都市部に下りてきてんだよ?島を発展させてやったのは俺達アメリカ人だ!俺達の許可なしにうろついてんじゃねーよ!!」

「そーだ、そーだ!発展途上の民族は里に帰れー!!」

「ハン!どうしても住まわせてくれって私らキュピピ族に頭下げてきたのは、あんたらアメリカ人だろ?」

「〜〜んだとぉ!?女のくせに調子づいてんじゃねーぞ!?」

「〜〜カ、カーラ…、穏便にね…?」

「放っときなさい。そんな低レベルな人達、相手にするだけ時間の無駄よ」

「へっ、腰抜けどもめ!俺達に島を乗っ取られたのが悔しいんだろう!?」


ノーマの影響なのかはわからないが、ひどい奴もいるもんだな…。

「――おい、いい加減にしないか…!!」

「なんだ、てめぇは?東洋人は黙ってろ…!!」

「〜〜大神さん…!!」


不良が俺に掴みかかろうとしたその時、あやめさんとかえでさんが団扇で不良2人の目と鼻にバーベキューの煙がいくように扇ぎ始めた。

「うわあっ!!〜〜げほっげほ…っ!!何しやがる…!?」

「あなた達と一緒じゃ、せっかくの料理がまずくなるわ」

「私達が本気を出す前に、さっさと消えなさい!」

「〜〜くっそぉ〜!どいつもこいつもナメやがってぇ…――!!」


と、その時、ホーリーアイランド島全域を大きな地震が襲った…!何かにつかまっていなければ立っていられないほどの激しい揺れだ…!!

「〜〜な、何だ…!?」

「…あーあ。キュピピ族に楯突いたから、邪神ノーマの怒りにふれたんじゃないかい?」

「もうすぐレッド・ウィンド火山が噴火して、あなた達の都市部へマグマが流れ込むかもしれないわよ?」

「〜〜ひ…っ!ひいい〜っ!!」

「すぐに避難だぁぁ〜!!」


男達は飲みかけのビール缶を投げ捨て、無様に逃げていった。

「まったく…、私らの故郷をなんだと思ってるのかねぇ?」

カーラさんはため息をつきながら、川原や川の中に捨てられているゴミを野菜を買ってきた袋に入れて片づけ始めた。

アメリカ人の移民達と先住民のキュピピ族の間には不可侵条約が締結されているが、その裏では異民同士のいざこざがあるんだな…。アメリカ国内の黒人差別問題や欧州列強のアフリカ人奴隷問題、俺達・東洋人も欧米では蔑んで見られることが多い…。

どうして自分達と違う民族ってだけで差別したがったり、違う民族同士で対立が生じてしまうんだろう…?同じ地球に住んで同じ空気を吸っている仲間なのにな…。

「ありがとう。君達のお陰で助かったよ」

「困った時はお互い様ですよ」

「地震はおさまったみたいだね…。大昔みたいに災害が起こらなきゃいいけどねぇ…」

「今朝からレッド・ウィンド火山の活動が活発になってきているってニュースでやってたわ。地震が起こったのはそれが原因かもしれないけど、たった数時間で急に活発になるなんてありえないわよね?島の開発が進むにつれて自然が破壊されすぎて、生態系のバランスがおかしくなってしまったのかしら…?」


きっとノーマの力の影響が島自体に及びつつあるんだ…。〜〜早く手を打たないと、島が沈んでしまう…!

「まったく、このホーリー・アイランドはどうしちまったんだろうねぇ?自然は荒れるわ、人は喧嘩っ早くなるわ…」

「そういえば、不思議に思ってたのよ。どうして、あなた達だけ気性が荒れずにいられるのかなって…?」

「そうなんだよね…。なんでかわからないけど、僕らキュピピ族だけは普通の状態でいられるみたいなんだ」

「今朝、仲間の所に行ってみたけど、そいつらも全員なんともなかったよ」

「キュピピ族だけ…か。ノーマの子孫だから免疫でもできてるのかしら?」

「そういう君達こそ平気みたいだね?他の日本人は皆、喧嘩してるのに…」

「私は新種のウィルスが島中に蔓延して、人間の脳幹に入り込んだと思ったの。特効薬にはキュピピ族の遺伝子が必要かもって今朝から研究してたんだけど、その推測は間違いみたいね…。なら、この騒ぎは何なのかしら?」

「〜〜それは…」


俺はあやめさんとかえでさんと目を見合わせて、凛々しく頷き合った。

「――この騒動の原因について心当たりがあります。キュピピ族のあなた方にも知っておいてもらいたいことなんです」

「僕らにも…かい?わかったよ」

「あらゆる可能性を考えたいから、何でもいいから話してみてくれる?原因と対処法を思いつくかもしれないわ」

「実はこの島に来た日の夜、英雄姉妹の幽霊が私達の前に現れて…――」




島に来てから今までに俺達が体験した不思議な出来事をレオンさん達は最後まで真剣に聞いてくれた。

「――ふ〜ん、マイアとメイミの霊があんたらにねぇ…」

「なんだか信じられないな…。ノーマなんておとぎ話だと思ってたのに…」

「けれど、昨日のゾンビ事件といい、今日の喧嘩祭りとマグマの異常活性化といい…、島で起きていることを考えると納得がいくわね」

「平和なんて続いて当たり前と思ってたけど、案外脆いもんなんだな…」

「この島をもう一度平和な観光名所にする為にも、俺達はこの聖剣でノーマを倒さなくてはならないんです…!お願いします…!!キュピピ族の里に俺達を連れて行ってくれませんか!?」

「これもホーリー・アイランドとキュピピ族を守る為なんです…!」

「でも、英雄姉妹でさえ封印するしかできなかった相手にキュピピ族の族長の血を引かないあなた達でどうにかできるかしら…?」

「簡単なことさ。私達が協力してやりゃあいいんだよ!なんてったって、私とマーサは現キュピピ族族長の娘だからね♪」

「本当ですか…!?」

「族長は世襲制だからね。英雄姉妹は私達の祖先にあたるってわけさ。どうだい?申し分ない助っ人だろ?」

「〜〜ちょ…、ちょっと、カーラ…!相手は邪神ノーマなのよ!?」

「おもしれぇじゃねぇか!島を救えれば、今度は私達が英雄姉妹として名を残せるんだぜ?神だかなんだか知らねぇが、そんなもんクソ食らえだ!」

「〜〜面白いとか面白くないで判断する問題じゃないでしょうが…!」

「お願いします!俺達、ホーリー・アイランドを失くしたくないんです!!」

「旅行に来て、私達はこの島をとても気に入りました。リゾート地としての魅力はもちろん、豊かな自然、キュピピ族の方々…。長い歴史の間に築かれてきた素晴らしい独自の文化を守りたいと心から思ってるんです!」

「情けない話ですが、私達だけでは聖剣を扱えませんわ…。ノーマに対抗するにはあなた達の協力がどうしても必要なんです…!!」

「ハハッ、島の人間でないあんたらがそんなに躍起になってくれるとはねぇ…。面倒なことに首突っ込まずにおとなしく帰ればいいものを…。――でも、ジャパニーズのそういう自己犠牲精神、嫌いじゃないよ?」

「僕達で力になれるのなら、喜んで協力するよ。キュピピ族にとって、英雄姉妹は神様同然だからね。これはきっと僕らで島を救えっていう神のお告げなんだよ…!」

「カーラさん、レオンさん、ありがとうございます!」

「…でも、里に入る許可をお父様がくださるかしら?」

「マーサが頼めば平気さ。姉貴は昔から親父のお気に入りだからね」

「〜〜ハァ…、簡単に言ってくれるわね…」

「じゃ、ジムじいさんに船を借りて、キュプル川の上流へ行ってみよう!」

「私達についてきな。里まで案内するよ」

「ありがとうございます…!」




ジムじいさんとやらに蒸気船を借りる為、俺達は昨日かえでさんと訪れたブルー・スターダスト・ビーチのサーフショップを訪れた。

「――ジムじいさん、いるかーい?」

「よぉ、レオンじゃないか!」

「あっ、あのおじいさん…!!」


サーフショップのワイルドじいさんもキュピピ族だったのか…!

「よぉ、あんたらも来たのか。見とくれよ…!一晩で俺のクールな店が掘立小屋になっちまった。ったく、今の若いのは俺よりパンクしてるぜ…」

「〜〜あ〜、これはまたひどく荒らされちゃったね…」

「だろう?ゾンビが出たとかでビーチに人が寄りつかなくなっちまうしよ、商売あがったりだぜ」

「そんなことだろうと思って、蒸気船を貸りに来てやったよ。店で一番デカいのを頼むよ」

「そんなこと言われても、奥にある小さいのしかないぜ?表に出してあるやつはぜ〜んぶ壊されちまったからなぁ」

「――これでもかい?」


と、カーラさんは胸の谷間に隠してあった札束をカウンターにバン!!と置いた。ジムじいさんは札束を確認すると、しばらく沈黙してからニヤッと笑った。

「――裏口へ来な。とっておきの蒸気船を用意してやるよ」

「ヒュ〜!さっすが強欲ジジイ♪」

「〜〜こんな人のお店で借りちゃって大丈夫かしら…?」

「〜〜また途中で壊れないことを祈るわ…」




レオンさんの操縦する船で、俺達はキュピピ族の里があるキュプル川上流まで蒸気船で移動することになった。

とっておきの蒸気船とジムじいさんが豪語するだけあって、寝室、シャワー室、トイレ、食堂、バー、倉庫と長時間の水上移動を快適に過ごせる設備が整っている。

〜〜大金を渡さなきゃ教えてくれないなんて、ジムじいさんもゲンキンだよな…。それに、カーラさんもどこからあんな大金を手に入れたのか…。どう考えても店の利益だけじゃ出せそうにないし…。〜〜犯罪のにおいがプンプンするが、今は追及している場合じゃないからな…。

――それにしても随分、奥まで来たものだ。船を出し、都市部から離れて3時間…。景色はすっかり大自然のジャングルになってしまった。

まるで『宝島』のような冒険ものの活動写真を見ているみたいだ。男とは冒険にロマンを感じる生き物。子供の頃に本で読んで憧れた世界にいられて、童心に返ったみたいにワクワクうずうずしてしまう…♪

「――大神君」

「はい…?――わ…っ!?」


あやめさんの声がしたので振り向くと、頬にひやっと冷たい感触がした。

「ふふっ、引っかかった♪――はい。蒸気冷凍庫でキンキンに冷やしておいたココナッツジュースよ」

「わぁ、美味そう…!ありがとうございます、あやめさん」

「ふふっ、ココナッツ100%のタピオカ入りですって。カーラさんが作って下さったのよ」

「へぇ、タピオカって面白い食感なんですね。こういうのを飲むと、南の島に来たって感じがしますよね」

「ふふっ、あとはヤシの木のハンモックがあれば最高なんだけど♪」

「はは、ですね」


紫と薄桃色のムームーに着替えたあやめさんとヤシの実を器としたココナッツジュースを一緒に飲みながら眺めるジャングルは最高だ…!

「あやめさん、そのムームー、似合ってますよ」

「ありがとう。昨日、あなたがかえでとデートしている間にショッピングモールで買ったのよ」

「そうなんですか…。〜〜すみません…。もっとショッピングに時間を取れれば一緒に回れたのに…」

「気にしないで。昨日はジャックのせいで大変だったんだし…。また明日、平和になったショッピングモールを一緒に回ってくれればいいから、ね?」

「そうですね。その為にも早くノーマを倒さないと…!」

「ふふっ、大神君ったら力みすぎよ。大事な戦いを控えて武者震いがするのもわかるけど、もっと肩の力を抜かなくちゃ。どんな時でも平常心を保つのが勝利への第一歩よ?」

「そ、そうですよね…。すみません…」

「――安心して。あなたには私がついてるんだから」


と、あやめさんは俺を強く、優しく抱きしめてくれた。

「あやめさん…」

あやめさんはいつも愛情いっぱいに包んでくれて、安らぎを与えてくれる。そして、大きな力と勇気をくれる。まさに内助の功。良妻賢母だ。

美人で、賢くて、落ち着いているしっかり者で…。こんな素敵な人が奥さんなんて俺は幸せ者だ。

「俺、あやめさんと結婚できてよかったです。これからもずっと傍にいて下さいね」

「えぇ。もちろんよ、大神君」


俺とあやめさんが抱き合いながらキスに夢中になっていると、一匹の猿が身軽に枝を伝って船の甲板まで降りてきて、俺のペンダントを奪っていった…!

「あっ、待て…!」

〜〜くそっ!あれはジャックから託されたサラさんの指輪が下がった大事なペンダントなのに…!!

手癖の悪い猿は俺を挑発しているつもりなのか、歯をむき出しにしてペンダントを振り回しながらキィキィ鳴き、密林の奥へと消えてしまった…。

「〜〜くそっ、サラさんの指輪が…!」

「――駄目よ!泳いで渡ったら危険だわ…!!」


あやめさんに制止され、俺は飛び込もうとした河にピラニアの大群が待ち構えていることにハッと気づいた。

〜〜いけない、いけない…。あやめさんに平常心が大切だと諭されたばかりなのに…。

「ハァ…、まるでアマゾン河ですね…」

「ここら辺は都市部と違って、未開の地ですものね…。でも、こういう蒸気船で冒険していくアトラクションって面白そうだと思わない?今度、花やしきにつくってみようかしら♪」

「あ、それ人気出そうですね!参考資料に『とれるんですくん』で撮っておきましょうか?」

「えぇ、お願いできる?」


副司令と花やしき支部長を兼ねているあやめさんの為、俺は『とれるんですくん』のレンズを覗いて、ジャングルの不思議な動植物や蒸気船の様子を撮影していく。

「――ん…?あれは何だろう…」

「どうしたの?」

「あそこに像のようなものが建ってるんですが…」


『とれるんですくん』のズームボタンを押して、あやめさんと一緒に詳しく見てみる。う〜ん、壊されたトーテムポールのような石柱だが…?

「おそらくキュピピ族のものよ。彼らのテリトリーに近づいてきたんだわ」

「そうですね。せっかくだから、あれも記念に撮っておくか…――!」

「――あら、大神さんにあやめさん。ここにいらしたのね」

「あら、マーサさん。どうかしました?」

「そろそろお夕飯の準備を始めたいんだけど、手伝ってくれる?レオンは操縦中だし、かえでさんとカーラは島の地酒で飲み比べをしていたみたいで、すっかり酔いつぶれちゃってて…」

「〜〜んもう、かえでったら…。しょうがない娘ね…」


はは…、かえでさんとカーラさんって結構、似た者同士かもな。

「俺達が手伝いますよ。何をすればいいですか?」

「助かるわ。それじゃ、ついてきてくれる?倉庫に案内するわ」


マーサさんに連れられて、俺とあやめさんは船の地下の倉庫を目指して歩き出した。


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